ブロックチェーンのトリレンマとは?ユーザーへの影響や重要性を解説

ブロックチェーンには、「性能(scalability)・安全性(security)・分散性(decentralization)」の3つが同時に成立しないというトリレンマが存在します。

ブロックチェーンのトリレンマとはどういうものなのか、またユーザーとしてブロックチェーンのトリレンマをどう意識すればよいのかを詳しく解説していきます。

また、事前知識として、トリレンマとは三者択一(3つのうち1つは捨てなければいけない)という言葉で、二者択一のジレンマ(2つのうち1つは捨てなければいけない)に似たものということを覚えておきましょう。

ブロックチェーンのトリレンマとは

ブロックチェーンのトリレンマとは

ブロックチェーンのトリレンマとは、ブロックチェーンにおいて性能(scalability)・安全性(security)・分散性(decentralization)が3つ同時に成立することはなく、同時には2つずつしか成立しないという経験則です。

例えば、性能(スケーラビリティやスループット)が高いブロックチェーンでは、安全性(セキュリティ)か分散性のどちらかしか高められないといったものです。

実際に性能が高いブロックチェーンでは、プライベート型のブロックチェーンのような形を取り、安全性(セキュリティ)は高いものの分散性が低いことが多いです。

京都大学が「ブロックチェーンのトリレンマを表現する数式を発見」

これまで、ブロックチェーンのトリレンマは経験則的には正しいといえるものの、トリレンマを証明・表現することはされていませんでした。

しかし、京都大学の研究グループが「ブロックチェーンのトリレンマを表現する数式を発見―性能・安全性・分権性のうち2つだけが成立することを立証―」という研究成果を発表しました。

同研究は2024年6月5日に、国際学術誌「IEEE Access」掲載され、ブロックチェーンのトリレンマに関する数理的な表現が公開されています。

引用:京都大学

ブロックチェーンのトリレンマの要素

ブロックチェーンのトリレンマの要素

ブロックチェーンのトリレンマは「性能(scalability)・安全性(security)・分散性(decentralization)」の三要素により構成されています。

それぞれの概念を詳細に解説します。

性能・スケーラビリティ

ブロックチェーンの性能とは、スケーラビリティやスループット力を指します。

ブロックチェーンの性能を測るためには、「TPS」などの指標が使われることが多いです。TPSとは、「Transactions Per Second」の略で、一秒間あたりに処理可能な取引(トランザクション)の数を示しています。

ブロックチェーンにより、一秒間あたりに処理可能な取引数、つまりTPSには差があり、ブロックチェーンの性能として注目されます。

また、単純な取引処理件数だけでなく、1ブロックに書き込めるデータ量の上限などもあります。ブロックチェーンの性能をより細かく考える場合、基本的には1ブロックあたりに処理できるデータ量と、どれだけの速度で1ブロックが生成可能かを考えればよいです。

安全性・セキュリティ

安全性・セキュリティが最も重視される点では、トランザクション履歴、つまりブロックチェーンが改ざんされないかということです。

ブロックチェーンの安全性・セキュリティは、一般的にブロックチェーンへの計算難易度と分散性に依存します。

なお、安全性・セキュリティにおいて分散性は重視されますが、分散性が重要なのはパブリックチェーンにおける場合です。プライベートチェーンでは、安全性・セキュリティを高めるためには、分散性はあまり重要ではないとも言えます。

そのため、ブロックチェーンのトリレンマにおける安全性・セキュリティでは、ブロックチェーンやそれを取り巻く環境のアルゴリズム的な安全性・セキュリティの高さや、全体的なエコシステムの強固さと考えると良いでしょう。

分散性

ブロックチェーンの分散性とは、多くのノードやマイナー、バリデータなど、ブロックチェーンを維持するユーザーが多数、多くの地域にいることを指します。

ブロックチェーンの分散性が高いと、不正なデータ改ざんへの耐性が高くなります。

分散性が低下することで発生する一般的なトラブルとしては、51%攻撃などが挙げられます。

また、ブロックチェーンを維持するユーザーが特定の地域等に集中していると、なんらかの地政学リスクが生じる可能性もあるでしょう。

製造業のQCD(トリレンマ)が類似の概念

製造業のQCD(トリレンマ)が類似の概念

ブロックチェーンのトリレンマに類似する概念では、「製造業のQCD(トリレンマ)」が挙げられます。

製造業のQCDとは、「Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)」の頭文字をとったもので、これら3つの要素は同時に高レベルに達成することができないといわれています。

ブロックチェーンのトリレンマというと体感的にわかりにくい方も多いかもしれませんが、製造業における類似のトリレンマに当てはめて考えることで、ブロックチェーンのトリレンマに関しての理解が進むでしょう。

ユーザーからみたトリレンマの重要性

ユーザーからみたトリレンマの重要性

ブロックチェーンのトリレンマは、暗号資産の取引やブロックチェーンを利用するユーザーにとって、取引のしやすさやブロックチェーンの持続性において重要です。

ブロックチェーンのトリレンマとは、先ほどの通り「性能・安全性・分散性」のうち、2つしか同時に達成しにくいというものです。

例えば、高額な資金量を確実に決済したい場合、着実な送受金などの信頼性を重視したいため、「性能」よりも「安全性・分散性」を重視することになります。その場合、選択できるブロックチェーンはビットコイン(BTC)などになるでしょう。

反対に、複雑なスマートコントラクトを処理したい場合、分散性よりも「性能・安全性」を重視することとなり、イーサリアム(ETH)を選択するといったようなものです。

このように、ブロックチェーンのトリレンマは、利用するユーザーの間でも、ある程度無意識下では意識されるような概念であるため、より合理的・効率的にブロックチェーンを利用する上では、ある程度重要であるといえるでしょう。

ブロックチェーンのトリレンマが発生する理由

ブロックチェーンのトリレンマが発生する理由

ブロックチェーンのトリレンマは、ブロックチェーンにおいて1秒間に処理できるトランザクションの数や、データ量に限りがあることで発生します。

ブロックチェーンにはスケーラビリティ問題を解決するために、単位時間あたりに処理可能な取引数を引き上げようとする試みが多く存在します。

しかし、ブロックチェーンの性能を引き上げると1ブロックあたりのデータ量が増加したり、取引承認に必要な計算力が大きくなってしまったりします。その結果として、参加できるノードやバリデータ、マイナーなどのブロックチェーンを維持するユーザーの参入障壁が上がり分散性が低下したり、ブロックチェーンのセキュリティ自体が低下してしまうことがあります。

ブロックチェーンのトリレンマを克服する取り組み

ブロックチェーンのトリレンマを克服する取り組み

ブロックチェーンのトリレンマは、ブロックチェーンにおいて避けられない問題ですが、トリレンマを克服する取り組みも行われています。

レイヤー2ソリューション

レイヤー2ソリューションは、ブロックチェーンのトリレンマが重視されるレイヤー1ブロックチェーンに対して、別の場所で取引処理などを行ってまとめた結果を書き込むようなソリューションです。

主にイーサリアムなどで活発な取り組みであり、ArbitrumやOptimismなどが著名です。

レイヤー2ソリューションのメリットとして、元のレイヤー1ブロックチェーンへの大規模な変更を行わず、レイヤー1ブロックチェーンの処理を減らすことでスケーラビリティ(性能)を向上させることができるといった特徴があります。

シャーディング

シャーディングとは、ブロックチェーンの処理を分割して行う仕組みです。

ブロックチェーン全体を細かく分割して取引処理することで、トランザクションを並列処理することが可能になります。

コンセンサスアルゴリズムの変更

ブロックチェーンのトリレンマが生じた場合、コンセンサスアルゴリズムの変更も解決手段のひとつです。

ビットコインやイーサリアムも、トランザクション処理の仕組みは定期的に変更されることがあり、スケーラビリティ問題を中心としてトリレンマ克服の取り組みが随時試みられています。

ブロックチェーンのトリレンマに関するまとめ

ブロックチェーンのトリレンマに関するまとめ

ブロックチェーンのトリレンマは、暗号資産を取引するユーザーが知らず知らずのうちに意識している概念です。

今後のブロックチェーン関連の成長を占う上でも欠かせない概念であるため、ブロックチェーンのトリレンマを意識して、ブロックチェーン関連の動向に注目しても良いのではないでしょうか。