暗号資産(仮想通貨)の中心的な存在に「ブロックチェーン」が挙げられます。ブロックチェーンの技術は従来のネットワーク技術とは大きく異なるため、仕組みや安全性について十分に把握してから暗号資産を運用したいものです。そこで本記事では、ブロックチェーンの仕組みや安全性について分かりやすく解説していきます。
目次
ブロックチェーンの仕組み

ブロックチェーンは「分散型台帳技術」とも呼ばれ、ネットワーク上の台帳を指します。従来のネットワーク技術と比較して、分散性や透明性が高いことが特徴です。トランザクション(取引)を記録するブロック同士を、鎖でつないだような構造をしています。なお、ブロックチェーンの定義や特徴、活用事例はブロックチェーンとはで詳しく解説しています。
トランザクションによる取引情報の記録
ブロックチェーン上の取引の記録や履歴を「トランザクション」と呼びます。トランザクションが承認されることで、ブロックチェーンに取り込まれます。
ブロックによる取引データの管理
ブロックチェーンにおける「ブロック」とは、一定数のトランザクションを格納したものです。ブロックに記録できるデータ容量には上限が決められていますが、容量がいっぱいになるかどうかにかかわらず、あらかじめ決められた一定のペース(例えばビットコインの場合は約10分)で次のブロックが生成されます。
P2Pネットワークによる分散管理
P2P(Peer to Peer)ネットワークとは、中央集権的なサーバーを介さずに、PCやスマホ、タブレットなどの端末同士で直接データのやり取りを行うネットワークの通信方式です。ブロックチェーンは、P2Pネットワークの採用により次のメリットがあります。
- 通信環境の安定
- 匿名性が高い
- システムの運用コストが低い
ブロックチェーンの暗号技術

ブロックチェーンは、独自の暗号技術により安全性が保たれています。ブロックチェーンの正確性や信頼性を担保するのに活躍するのは、「ハッシュ」や「ナンス」と呼ばれる概念です。
ハッシュ関数とハッシュ値
ハッシュ値は、一方通行にしか変換できない不規則な文字列を指します。あるデータをハッシュ関数でハッシュ化すれば、常に同じハッシュ値が得られる仕組みです。少しでもデータが変われば、全く異なるハッシュ値が得られることが特徴です。
ビットコイン(BTC)では、トランザクションの識別や、ブロック生成時の計算に使用されています。また、イーサリアムでは、データの整合性の確保やアドレス生成に使用されます。
ナンス(number used once)
ナンスとは「number used once」に由来する用語で、ブロックチェーン上で一度だけ使われる特別な番号です。主に「ブロックナンス」と「トランザクションナンス」とに分けられます。
例えば、ビットコイン(BTC)では、マイニング時に特定のハッシュ値を生成するために「ブロックナンス」が使われます。ハッシュ関数にランダムなナンスを代入する計算を繰り返し、特定の条件を満たすナンスを見つけ出さなくてはいけません。
イーサリアム(ETH)でのナンスは「トランザクションナンス」として、運用や管理に重要な役割を果たします。すべてのイーサリアムアカウントは、トランザクションごとに増加するナンスカウンターを持っています。ナンスによりトランザクションの順序が守られ、重複が防がれる仕組みです。
また、ユーザーがウォレットからトランザクションを送信する際にも、トランザクションナンスが使われ、ネットワーク上で取引の正確な順序と整合性が保たれます。
ブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズム
コンセンサスアルゴリズム(合意形成アルゴリズム)は、ブロックチェーン上で参加者(ノード)が合意形成を行うルールです。ブロックチェーンには、中央集権的な管理者がいません。ブロックの生成者や、トランザクションの正しさを証明する方法など、ブロックチェーンの運用方法を決める必要があります。
コンセンサスアルゴリズムはさまざまで、暗号資産ごとに異なります。
- PoW(プルーフ・オブ・ワーク):ビットコイン、ライトコインなど
- PoS(プルーフ・オブ・ステーク):イーサリアムなど
- PoH(プルーフ・オブ・ヒストリー):ソラナなど
詳しくはコンセンサスアルゴリズムの基礎をご覧ください。
ブロックチェーンが安全だと言われる理由

ブロックチェーンには、中央集権的な管理者が存在しません。ノード同士で管理されているにもかかわらず、非常に安全なシステムだと言われているのにはさまざまな理由があります。
公開鍵と秘密鍵
ブロックチェーン技術には、セキュリティを高めるために「公開鍵・秘密鍵」と呼ばれる仕組み(公開鍵暗号方式)が存在します。公開鍵暗号方式は暗号技術の1つで、主に「取引が本人によるものかを証明するための鍵(秘密鍵)」と、「その証明が正しいかを検証するための鍵(公開鍵)」という、役割の異なる2つの鍵を用いるのが特徴です。
ブロックチェーンでは主に、取引(トランザクション)が本当に本人によるものかを証明する「デジタル署名」にこの仕組みが使われています。所有者は秘密鍵を使って取引データに署名を行い、ネットワーク上の参加者は公開鍵を使ってその署名が正しいか(改ざんされていないか)を検証し、なりすましを防ぎます。
マークルツリーによる改ざん防止
ブロックチェーン技術におけるマークルツリーとは、各ブロック内部のトランザクションを要約しているデータの構造を指します。データの要約や、検証時の計算にハッシュ関数を用いているため、ハッシュツリーとも呼ばれています。
1970年代に米国の計算機科学者「Ralph C. Merkle(ラルフ・C・マークル)」によって考案されました。ビットコイン(BTC)に限らず、分散型ネットワークの整合性確認などに使われています。
ブロックチェーンのリスクと課題

透明性や安全性が高いと言われているブロックチェーンにも、リスクや課題は存在します。ブロックチェーンに参加する際は、リスクや課題を正しく把握し、適切な対応を心がけましょう。
51%攻撃
「51%攻撃」とは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)のブロックチェーンで発生する問題です。ネットワーク全体の計算力の過半数を悪意のある主体が占めることで、不正な取引を承認する行為を指します。
実際には、PoWのブロックチェーンである「ビットコインゴールド(BTG)」「モナコイン(MONA)」「イーサリアムクラシック(ETC)」で多大な被害が発生しました。
詳しくはビットコイン(BTC)の51%攻撃とは?をご覧ください。
秘密鍵の紛失
秘密鍵の紛失は深刻な問題です。自身の資産へのアクセスを証明する秘密鍵や端末をなくしてしまった場合は、復元できません。ウォレットにアクセスできなくなるため、二度と資産を引き出せなくなるだけではなく、送金もできなくなります。
第三者に秘密鍵を盗まれてしまった場合には、注意が必要です。秘密鍵の盗難は、資産を奪われてしまったことと同じ意味を持ちます。秘密鍵の管理は、厳重に行う必要があるでしょう。
端末やサーバーのリスク
ブロックチェーン技術がセキュリティ面に優れ、安全だと言われていても、PCやスマホなどの端末やサーバーがハッキングされてしまう場合があります。
例えば、暗号資産取引所のハッキングによる事件が挙げられます。2014年に発生したマウントゴックス事件、2024年のDMMのビットコイン流出事件では、多くの暗号資産が流出してしまいました。
量子コンピューターの開発
量子コンピューターの誕生も、暗号資産業界にとって脅威になると言われています。量子コンピューターとは、量子力学の原理を活用した次世代の計算機です。従来のコンピューターと比較して非常に演算能力が高いことが特徴で、大幅に高速化できる可能性があります。
高い演算能力を持つ量子コンピューターが実用化されれば、PoWのブロックチェーンは、51%攻撃により不正な取引が承認されてしまう可能性があります。また、公開鍵から秘密鍵を逆算でき、資産が流出してしまう可能性もあります。
しかし、量子コンピューターの開発は、当面先になると言われています。また、各ブロックチェーンは量子コンピューターに対しての対策を行っているため、脅威は差し隔ったものではないという意見も少なくありません。