暗号資産のマネーロンダリングとは?手口や個人の対策方法は?

資金を不正に得たとき、その出所を不明にする工作として「マネーロンダリング」という手法が利用されることがあります。マネーロンダリングとは、どのような仕組みで行われるものなのでしょうか。

また、暗号資産(仮想通貨)におけるマネーロンダリングとは、どういった方法をさすのでしょうか。ここでは、マネーロンダリングの定義や仕組みに加え、暗号資産のマネーロンダリングについて、わかりやすく紹介します。

マネーロンダリングとは?

マネーロンダリングとは
まずは、マネーロンダリングという手法について詳しく見ていきましょう。

マネーロンダリングとは「資金洗浄」のこと

マネーロンダリングとは、日本語でいう「資金洗浄」を意味します。犯罪や不正な取引によって得た資金を、いくつかの工程を経由することにより、あたかも不正でないように見せかける工作のことです。

詐欺や横領、禁制品の売買などで得た資金を、そのまま銀行を経由して使えば、警察の捜査線上に浮かびやすくなります。これを別の口座へ次々と振り込みを繰り返すことにより、その資金の使途をあいまいにする手法などが代表的でした。

このほかにも、違法カジノなどのギャンブルで儲けたように見せかけたり、グループ間で小分けにして商品購入に充て売却する、といった手口もあります。

「振り込め詐欺」でも利用されるマネーロンダリング

近年、電子マネーやプリペイドカードなどの普及により、マネーロンダリングの手口はさらに複雑化、巧妙化しています。ニュースなどで話題となっている「振り込め詐欺」でも、振込先の口座からマネーロンダリングして悪用されるケースが多いのです。

マネーロンダリングでは、企業やお店と共謀して資金洗浄を行う場合と、無関係な第三者を巻き込んで行う場合があります。購入した金券や商品をオークションなどで売却すれば、そうとは知らずに購入してしまう人もいるでしょう。

「海外から来る商品を受け取るだけでいい」といった依頼も、マネーロンダリングに関わっている可能性があります。

「AML(アンチマネーロンダリング)」の普及が急務

こうした手口を防ぐため、AML(アンチマネーロンダリング)の普及が急務となっています。AMLとは、「資金洗浄対策」のことです。

銀行の口座を開設する際に、身分証明書の提示といった審査を受けるのも、AMLの一環となっています。オークションサイトやSNSの利用において、本人確認や認証が必要とされるのも、AMLをはじめとするセキュリティ上の重要な対策となっています。

通常のマネーロンダリングは、法定通貨を得る際に行われます。しかし、暗号資産においても、マネーロンダリングの手口が使われることがあるのです。

暗号資産でのマネーロンダリングとは?

“ビットコイン”
暗号資産でのマネーロンダリングとは、どのような手口なのでしょうか。また、暗号資産を不正に入手する方法には、どのようなものがあるのでしょうか。

世界最大級のビットコイン交換所で起きた流出事件

ビットコインにおける流出事件で、過去に起こった大規模なものに「マウントゴックス事件」があります。マウントゴックス事件とは、東京にかつてあったビットコイン交換所「マウントゴックス」で2013年に起きた、暗号資産流出事件です。

当時、マウントゴックスは世界最大級の取引量を扱う交換所でした。それが突然サイトの閉鎖とともに、多くのビットコイン(BTC)が消失したのです。この時のビットコイン(BTC)がどこへ流れたのか、2018年12月時点でも確実なことはわかっていません。

本来、ビットコイン(BTC)のブロックチェーンには、すべての取引が漏れなく記録されます。この記録のために、マネーロンダリングは難しいとされています。

しかし、以下に紹介するいくつかの手口によっては、暗号資産のマネーロンダリングを可能にしているのです。

不正に得た暗号資産を小分けに送金する

1つめは、不正に入手した暗号資産を、多数のウォレットに少しずつ分けて送金する方法です。犯人は、送金された複数のウォレットから、さらに枝分かれして送金を続けます。

ウォレットの数が多ければ多いほど、経路を辿るのに時間がかかる仕組みです。これは暗号資産に限らず、現金でも同様の手口でマネーロンダリングが行われることがあります。

現金の場合は、1度口座から引き出して現金化してしまえば、その後の足取りを追うのは困難を極めます。暗号資産の場合、複数のウォレットへ送金するだけでは、取引履歴を改ざんすることはできません。

そのため、さらに別の方法も利用してマネーロンダリングを行います。

他の暗号資産(暗号資産)と売買を繰り返す

もう1つは、多数のウォレットへ送金した暗号資産を、別の暗号資産へ交換する手口です。ビットコイン(BTC)から他の暗号資産へ交換し、また別のコインへ交換することを幾度も繰り返します。

この際、匿名で保有できるマイナーなコインを挟むことにより、資金洗浄はより強力となるのです。

小分け送金も、他の暗号資産へ交換する方法も、しっかりとした交換所を経由していれば、時間はかかりますが足取りを辿ることは可能です。しかし、本人確認の必要がない海外の販売所や取引所を経由すると、特定は困難となってしまいます。

「闇サイト」や「ダークウェブ」と呼ばれる、一般には公開されないネット上を経由して売買し、現金化するという手口もあるのです。

暗号資産のマネーロンダリングで注意するべきポイント

注意点
暗号資産のマネーロンダリングに巻き込まれないためには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

怪しい取引所、販売所から購入しない

もっとも大切なのは、信頼性が不明な業者から暗号資産を売買しないことです。本人確認などを行わない販売所や取引所での暗号資産売買は、マネーロンダリングに加担するリスクを高めます。

特に海外の取引所や、流出事件後に補償を行っていないような業者は注意が必要です。AML意識の高い、国内の暗号資産交換業者を利用することで、犯罪に加担するリスクを減らすことができるでしょう。

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ウォレットは厳重に管理する

信頼できる取引所のウォレットを使用していても、簡単なパスワードにしていたり、同じ番号を使い回したりするのは禁物です。

パスワードを推測され、乗っ取りや悪用されてしまう恐れがあるためです。アカウントを乗っ取られると、知らない間に暗号資産の売買が行われたり、送金の受け口にされてしまいかねません。

定期的なパスワードの変更や見破られにくい番号の設定に加え、2段階認証も設定しましょう。ウォレットに限らず、ネット上のアカウントを守るセキュリティ意識はとても重要です。

マイナーな暗号資産の購入は慎重に

いわゆる「草コイン」と呼ばれるような、新規のマイナー通貨の購入も、時に危険をはらみます。多くのコインが新規発行される現状では、すべてが信頼できるものとはいえません。

将来性のある良いコインもありますが、中には詐欺を目的とした、犯罪色の強いものもあるのです。マイナー通貨を多く扱う販売所も海外が多く、セキュリティ面で疑問が残ります。

新規コインがどの程度信頼できるか、見分けるためには情報の取捨選択がかなり重要です。怪しい情報を鵜呑みにせず、購入は慎重に行った方がよいでしょう。

暗号資産のマネーロンダリングに関するまとめ

まとめ
マネーロンダリングを行う人々と関わりがなくても、思わぬことから結果的に加担してしまうケースは充分あり得ます。

暗号資産のマネーロンダリングを防ぐには、身元確認を実施している国内の暗号資産交換業者の利用が安全です。

また、暗号資産に限らず、パスワード管理の徹底や、怪しい情報に踊らされないことも重要でしょう。