P2P(ピアツーピア)とは?仕組みやメリット、活用事例を紹介

P2P(ピアツーピア)とは、サーバーを介さずに端末同士で直接データのやり取りを行う通信方式のことです。

LINEやビットコイン、ファイル共有ソフトなどに活用されているP2Pは、新たな通信方式としてさまざまな業界から注目されており、活用の幅は今度ますます拡大していくと言われています。

この記事では、P2Pの仕組みや従来のクライアントサーバー方式との違い、メリット・デメリット、活用事例などについて解説していきます。

P2P(ピアツーピア)とは

P2Pとは「Peer to Peer」の略称のことで、サーバーを介さずに端末(PC、スマホなど)同士で直接データのやり取りを行う通信方式のことを指します。

Peerには、「(地位・能力などが)同等の人、同僚、仲間」などの意味があり、ネットワークに接続している端末のことを、“ピア”もしくは“ノード”と呼びます。そして、P2P技術を用いてピア(ノード)同士が接続されているネットワークのことを、「P2Pネットワーク」といいます。

クライアントサーバー方式との違い

ネットワークの通信方式には、P2P方式の他に従来型の「クライアントサーバー方式」があります。

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両者の最も大きな違いとしては、中央集権的なサーバーの有無が挙げられます。一般的な通信方式として知られるクライアントサーバー方式では、利用者が操作するクライアント(端末)からの要求に基づいて、サーバーがデータの提供を行います。私たちが普段インターネットでアクセスするサイトは、主にこちらの方式を採用しています。

一方、P2P方式では情報を一元管理するサーバーが存在せず、ネットワークに接続している端末同士で直接データの検索や転送を行います。P2Pでは、1つの端末がクライアントとサーバーの両方の役割を担っています。具体的には、情報を所持している端末がサーバーの役割をするのに対して、情報を必要としている端末がクライアントとなり、サーバー役の端末に対してデータの検索要求を行います。

なお、P2Pの技術はLINEやビットコインに代表される暗号資産、ファイル共有ソフトなどで活用されています。

P2P(ピアツーピア)の種類

P2Pの種類

P2Pには、以下の3つの種類があります。

  • ピュアP2P
  • ハイブリッドP2P
  • スーパーノード型P2P

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ピュアP2P

ピュアP2Pの仕組み

「ピュアP2P」とは、中央サーバーを設置せずに各ノード間で直接ファイルの検索と転送を行う一般的なP2Pの方式のことを指します。対等の立場と機能を持った端末同士で、直接通信を行います。

サーバーを利用しないピュアP2Pでは、端末同士でデータや情報を分散して持ち合い、不足しているデータを補い合いながら情報ネットワークを構築しています。具体的には、情報を必要としている端末がクライアントとなり、情報を所持している他の端末に対して検索要求を行うことで情報を取得する仕組みとなっています。

ハイブリッドP2P

ハイブリッドP2Pの仕組み

「ハイブリッドP2P」とは、従来のP2Pネットワークにサーバーを用いる通信方式のことを指します。

ハイブリッドP2Pでは、「どのノードがどんな情報を持っているか」というインデックス情報の管理をサーバーが行い、実際のデータのやり取りはノード間で直接行います。この通信方法は、クライアントサーバー方式とP2P方式を組み合わせていることから、“ハイブリッド方式”と呼ばれています。

スーパーノード型P2P

スーパーノード型P2Pの仕組み

「スーパーノード型P2P」とは、ノードのインデックス情報を“スーパーノード”と呼ばれる特別な端末が管理する方式のことです。

スーパーノードには、優れた処理能力を持っていて通信回線が安定している端末が複数選ばれます。スーパーノードとして選ばれた端末は、ネットワークに参加しているノードの情報を管理し、各ノードからの要求に応じて必要な情報の検索を行います。

P2P(ピアツーピア)のメリット

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P2Pには、主に以下の3つのメリットがあります。

  • 通信環境が安定している
  • 匿名性が高い
  • 低コストでシステムを構築できる

どのような内容なのか、順番に解説していきます。

通信環境が安定している

1つ目のメリットは、「通信環境が安定している」点です。

1つのサーバーで情報の管理と処理を行う従来のクライアントサーバー方式では、アクセスが集中してサーバーがダウンしてしまうと、クライアントは情報を受け取ることができません。このように、サーバーダウンによりネットワーク全体が停止してしまうことを「ダウンタイム」といいます。

それに対して、P2P方式では複数の端末でデータを分散管理することで回線にかかる負荷を軽減し、クライアントサーバー方式よりも高速な通信を行うことができます。また、特定のクライアントが停止しても残りのアクティブな端末同士で通信を継続できるため、ネットワークが停止することがない「ゼロダウンタイム」を実現することも可能です。

匿名性が高い

2つ目のメリットは、「匿名性が高い」点です。

P2Pではデータがネットワーク上に分散されるため、すべてのノードの情報が把握されにくく匿名性が確保されやすい仕組みになっています。プライバシーを守られながら通信できる点は、ネットワーク参加者にとって大きな利点と言えるでしょう。

低コストでシステムを構築できる

3つ目のメリットは、「低コストでシステムを構築できる」点です。

特定の中央サーバーによってデータの管理を行うクライアントサーバー方式では、膨大な情報の処理ができる高性能なサーバーを用意する必要があります。それに加えて、サーバーの保守・運用費などのランニングコストもかかるため、システムの構築・維持に高額な費用がかかります。

一方、P2Pではサーバーを用意する必要がないため、クライアントサーバー方式に比べて低コストでシステムを構築することができます。

P2P(ピアツーピア)のデメリット

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先ほど紹介したようなメリットがある一方で、P2Pには次のようなデメリットもあります。

  • ウイルスが拡散しやすい
  • ネットワーク帯域が圧迫されやすい

各内容について、以下で解説していきます。

ウイルスが拡散しやすい

1つ目のデメリットは、「ウイルスが拡散しやすい」点です。

P2Pでは、サーバーを介さずに端末同士で直接データをやり取りするため、接続先にセキュリティ上の問題があると通信中に被害を受けてしまう可能性があります。

また、網の目のように無数のPCが接続されているので、ウイルスがネットワーク全体に拡散しやすいことや、感染源を特定するのが困難な点もデメリットとして挙げることができます。

例えば、2000年代初頭に流行したファイル共有ソフトの「Winny」もP2Pを利用していたことから、一時期「暴露ウイルス」と呼ばれる情報漏洩系のウイルスに感染するユーザーが続出し、社会問題にまで発展しました。

ネットワーク帯域が圧迫されやすい

2つ目のデメリットは、「ネットワーク帯域が圧迫されやすい」点です。

P2Pではデータの送受信を断続的に行うため、ネットワーク帯域が圧迫されやすくなります。そのため、P2Pを利用したアプリケーションを使用している間は、他のアプリケーションの通信環境に影響を与えることがあります。

P2P(ピアツーピア)の活用事例

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続いて、P2Pの活用事例についてご紹介します。P2Pの技術は、主に次のようなアプリやサービスなどに利用されています。

  • ビットコイン
  • LINE
  • ファイル共有ソフト(Winnyなど)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ビットコイン

ビットコイン(BTC)に代表される暗号資産では、P2Pの通信方式が使われています。

ビットコインでは、銀行などの管理者を介することなく、ユーザー間で直接資金のやり取りが行われるシステム(P2Pネットワーク)を採用しています。そして、過去の取引情報はブロックチェーンと呼ばれるデジタル台帳にすべて記録されており、誰でも自由に閲覧することができます。

このブロックチェーンは、P2Pネットワークに参加しているノードによって分散管理されているため、一部のコンピューターが故障したりハッキングなどにあっても、システムダウンすることなく安定的にネットワークを運営することができます。

また、多数の端末でデータを共有しているため、悪意を持ったユーザーがデータを改ざんしようとしてもすぐに発見することができ、ハッキングを防止することもできます。

LINE

無料通信アプリとして日本で圧倒的なシェアを誇る「LINE」でも、P2Pの技術が活用されています。

LINEでは、ユーザーIDなどのアカウント情報はサーバーで一元管理されていますが、チャット上で送信される画像や動画はP2Pで共有されています。

P2Pを利用することで、大規模なサーバーを用意しないでもサービスの提供が行えるため、運営コストの節約につながり、それが結果的にLINEが無料で使用できる要因の1つとなっていると言われています。

ファイル共有ソフト(Winnyなど)

WinnyやBitTorrentなどのファイル共有ソフトでも、P2Pは活用されています。

ファイル共有ソフトとは、インターネット上で不特定多数のユーザーとファイルを交換するためのソフトのことで、WinnyやBitTorrentの他にもNapster、WinMX、Shareなどさまざまな種類が開発されました。

しかし、交換されるファイルの大半がゲームや音楽、漫画、映画などから違法に複製されたものだったことから、ファイル共有ソフトの使用をめぐっては著作権法違反の容疑で逮捕・起訴される利用者が続出しました。

P2P(ピアツーピア)に関するQ&A

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P2Pに関するよくある疑問を、Q&A形式でご紹介します。

P2Pとは何ですか?

P2Pとは「Peer to Peer」の略称のことで、サーバーを介さずに端末(PC、スマホなど)同士で直接ファイルのやり取りを行う通信方式のことを指します。

クライアントサーバー方式とP2P方式の違いは?

両者の最も大きな違いとしては、中央集権的なサーバーの有無が挙げられます。クライアントサーバー方式では、利用者が操作するクライアント(端末)からの要求に基づいて、サーバーがデータの提供を行います。

一方、P2P方式では情報を一元管理するサーバーが存在せず、ネットワークに接続している端末同士で直接データの検索や転送を行います。

P2Pにはどんな種類がありますか?

P2Pには、以下の3つの種類があります。

  • ピュアP2P
  • ハイブリッドP2P
  • スーパーノード型P2P

P2Pのメリットを教えてください。

P2Pには、主に以下の3つのメリットがあります。

  • 通信環境が安定している
  • 匿名性が高い
  • 低コストでシステムを構築できる

まとめ

P2Pの仕組みや種類、メリット・デメリット、活用事例などについて解説してきました。

サーバーを介さずに端末同士で直接ファイルのやり取りを行うP2Pには、サーバーダウンのリスクがなく安定して通信できたり、低コストでネットワークシステムを構築したりできるメリットがあります。

すでにLINEやビットコインなどに活用されているP2Pは、新たな通信方式としてさまざまな業界から注目されており、活用事例は今後さらに増えていくことが予想されます。