本記事では、CoinbaseとMorphoが共同で提供する「Bitcoin-Backed Loans with Morpho」を題材に、CeFi(中央集権型金融)とDeFi(分散型金融)のそれぞれの役割と、両者を組み合わせたCeDeFiというアーキテクチャが金融事業者に対して何をもたらすのかを整理します。
なお本記事は情報提供を目的とした調査・解説であり、特定の金融商品や暗号資産の投資を勧誘するものではありません。
このレポートでわかること
目次
Coinbaseとは何か
Coinbaseは2012年に創業した米国の暗号資産プラットフォームです。登録ユーザー数は約1.08億人、2025年通年の取引総額は5.2兆ドルに達し、暗号資産取引所としての規模は業界最大級です。ただし現在のCoinbaseは、単なる取引所の枠を超えたブロックチェーンインフラ企業としての側面が強まっています。

Coinbaseの取り組みは多岐に渡り、以下のようなものが挙げられます。これら以外にも予測市場のような新しいアセットクラスや証券トークナイズによるオンチェーン金融などの取り組みも進めています。
| 取り組み内容 | 概要 |
|---|---|
| 暗号資産取引所 | リテール・機関向け取引プラットフォーム |
| Base | Coinbaseが開発・運営するEthereum L2ブロックチェーン |
| トークンの発行 | ビットコインなどのトークンを1:1で裏付けたラップドトークンの発行 |
| x402 | HTTPの決済レイヤーを拡張するペイメントプロトコル |
| Bitcoin-Backed Loans | 本記事が取り上げるBitcoin担保ローンサービス |
| クリプトカード | USDCなどのステーブルコインをはじめとした決済 |
KYC・AMLを含む規制対応の実績と1億人超のユーザー基盤を持ちながら、DeFiプロトコルと接続するためのゲートウェイ機能を担うという立ち位置が、今回のサービスを理解する上での前提となります。
Morphoとは何か
Morphoは、Ethereumエコシステム上に構築されたパーミッションレス・ノンカストディアルのオンチェーンレンディングインフラです。
暗号資産の貸し借りを実現するDeFiプロトコルとしては、AaveやCompoundが広く知られています。これらは「共有プール型」と呼ばれ、複数の担保資産と貸出資産が一つの大きなプールを共有し、利用率に応じて金利が自動調整される仕組みです。プールを共有する構造上、あるマーケットの不良債権リスクが他のマーケットに波及する可能性があります。
| 比較軸 | Aave / Compound | Morpho Blue |
|---|---|---|
| 市場構造 | 共有流動性中心 | 市場ごとに分離 |
| リスク管理 | プロトコル全体管理 | 市場単位で隔離 |
| 市場作成 | DAO主導 | Permissionless |
| 金利モデル | 標準化IRM | 市場ごとに選択可能 |
| 柔軟性 | 低〜中 | 高 |
| 流動性 | 集約されやすい | 分散しやすい |
| 主な強み | 深い流動性 | カスタマイズ性 |
レンディング市場における違い
一方で、Morphoは各市場が独立しており、「担保資産・貸出資産・価格オラクル・金利モデル・清算閾値(LLTV)」の5パラメータで独立して定義されていることで、あるマーケットのリスクが他のマーケットに伝播しない設計になっています。

出典:Morpho Docs
TVLは2026年5月時点で約76億ドルを超えており、DeFi貸付プロトコルとして急速に存在感を高めています。

出典:DefiLlama
Bitcoin-Backed Loans with Morphoとは何か
Bitcoin-Backed Loans with Morphoは、Coinbaseのリテールユーザーがアプリ上で完結した借入体験を得ながら、バックエンドではMorphoのオンチェーンレンディング市場を利用する構造の金融サービスです。

ユーザーの体験はシンプルです。Coinbaseのアプリ上で担保となる暗号資産を選択し、借入額を入力し、利用規約に同意するだけです。その裏側では、次のプロセスが自動的に処理されています。
- CoinbaseがBTCを受け取り、cbBTC(ビットコインを1:1で裏付けたラップドトークン)に変換する
- cbBTCをBase上のMorphoスマートコントラクトにロックする
- MorphoプロトコルがUSDCを貸し出す

ユーザーはDeFiプロトコルやスマートウォレットを直接操作した感覚がないまま、オンチェーンのローンを利用することになります。「フロントはCeFi、バックはDeFi」という設計が、このサービスの本質です。
サービスのトラクション
サービスは2025年1月に米国でローンチされ、その後ETH・cbETH担保への対応拡張、借入上限の引き上げ、英国への展開と段階的に規模を拡大してきました。
ローンチから約1年3ヶ月で累計23.9億ドル(約3,500億円)の借り入れが実行されています。2025年5月時点でアクティブな借入ユーザーは約3万人です。

借入金額・ユーザーのトラクション
借入の担保資産は、約90%がBTC、ついで約5%がETHが使われており、LTV・LLTVの水準が高い資産が担保資産のほとんどを占めていることがわかります。

実行中の借入金額は、約11.8億ドル(約1,770億円)で、以下のグラフに示すような推移で増加しています。2025年11月頃や2026年2月頃で借入額の落ち込みが確認できるのは、BTCの価格変動時に清算が発生したため、2026年2月6日頃に発生した1日で約1万ドル近くの値動きによって清算が発生していることが予想されます。

実行されている借入額の日次推移

2026/2/6のタイミングで1日で1万ドル近くの上下幅が発生
また、CoinbaseはMorphoを使ったUSDCの貸し付けもサービスとして組み込んでおり、ユーザーはCoinbaseのアプリ上からUSDCを預け入れることで、Morpho市場の需給に応じた変動利回りを受け取る仕組みとなっています(2026年5月時点の参考値:年率4.1%〜4.5%程度。市場環境により変動します)。このサービスは累計22.4億ドル近くが預け入れられており、2026年5月時点で約2.8億ドル近くのステーブルコインの残高があります。

この残高はMorphoが提供するVaultのうちの2割近くを占めており、一時は4割近くの供給をCoinbaseによって供給されていました。Coinbaseが提供することによる安心感やUXの簡便さとDeFiの透明性や利回りを組み合わせることで、DeFiの複雑性をCoinbaseのブランドで包んで一般ユーザーに届けることに成功している事例と言えます。

サービスの仕組み
借入条件と担保資産
ユーザーは担保資産を預け入れることでLTV(残高÷担保時価)が49〜75%を上限として借入を実行することができます。例えば、1BTCが80,000ドルの時、60,000ドルまで借入を実行することができます。
一方で、借入実行後に1BTCが80,000→69,767ドルまで下がると、担保資産の清算ラインとなる86%を下回るため清算が実行されます。Morphoのスマートコントラクトが自動・即時に清算を執行します。清算時にはペナルティとして担保の4.38%が追加徴収されます。
LTVが上昇する主な要因は以下の3つです。
- 担保資産の価格下落
- 利息の蓄積による借入残高の増加
- 追加借入による借入残高の増加
借入する際の通貨はUSDCで統一されています。信用審査はなく、返済期日も設けられていません。利用資格は「米国在住(ニューヨーク州を除く)かつ本人確認済みのCoinbaseアカウント保有者」で、英国では2026年4月から限定的なアクセスが開始されています。借入をする際には、以下の対応する担保資産を預け入れることで借入を実行することができます。
| 担保資産 | 最大借入額(USDC) | 最大借入LTV | 清算ライン |
|---|---|---|---|
| BTC | 500万ドル | 75% | 86% |
| ETH・cbETH | 100万ドル | 75% | 86% |
| XRP・DOGE・ADA・LTC | 未公表 | 49% | 62.5% |
注記: SOLの取り扱いもありますが、表には未記載(Coinbase)。
金利・手数料
金利は変動制で、Morpho市場の需給に応じて毎ブロック生成時(数秒ごと)に更新されます。BTC担保での現在水準は年率約6%程度です。
米国の金利水準は市場環境によって異なりますが、平常時では概ね年率4〜8%程度で推移することが多く、借入需要が高まる局面では10%を超える場合もあります。暗号資産担保ローンとしては比較的低い金利水準に位置付けられます。
また、手数料は借入時に一括で発生します。借入額25万ドルまでは2%、超過分については1%が適用されます。この手数料は元本に加算されるため、以降の利息計算にも含まれます。
サービスにおけるCoinbaseのスタンス
Bitcoin-Backed Loans with Morphoにおいて、Coinbaseが自社を「UIプロバイダー」として位置づけていることは、本サービスの構造を理解する上で重要な点です。
ローンの実行主体はMorphoのスマートコントラクトであり、Coinbaseは清算プロセスに介入できません。規約上、Coinbaseは清算損失・サービス障害・価格変動に起因する損失に対して一切の責任を負わず、損害賠償の上限は「支払済み利用料または100ドルのいずれか高い方」と定められています。
また、借り入れたUSDCをCoinbase上のトレードに使用することは禁止されています。これはレバレッジ取引に類する行為を回避するための措置と考えられます。担保中の暗号資産は取引・移動が不可能なロック状態に置かれます。
| 項目 | Coinbaseの立場 |
|---|---|
| ローン実行主体 | Morphoスマートコントラクト(Coinbaseではない) |
| 清算への介入 | 不可 |
| 損害賠償上限 | 支払済み利用料 or 100ドルの高い方 |
| 担保中の暗号資産の扱い | 取引・移動不可(ロック状態) |
| 借入USDCの利用制限 | Coinbase上のトレードへの使用禁止 |
従来のCeFiレンディングサービスでは、プラットフォーム事業者が貸付業者として一定の責任を負い、清算や債権管理を含むオペレーションを自社で担います。これに対しBitcoin-Backed Loans with Morphoは、Coinbaseがフロントエンドとしてユーザー体験を提供しながら、貸付に関わるリスクの所在をスマートコントラクトに移転した設計です。
CeDeFiのメリットとデメリット
Bitcoin-Backed Loans with Morphoが体現するCeDeFiモデルの特徴を、既存のCeFiのレンディングやDeFiのレンディングとの比較で整理します。
そもそもCeDeFi(セディファイ/シーディファイ)とは

CeDeFi(セディファイ/シーディファイ)は、Centralized DeFi の略称で、取引所など CeFi の使いやすさと、DeFi プロトコルの自動実行・透明性を組み合わせた金融の形です。ユーザーは従来型の取引所と同様の操作感のまま、裏側ではスマートコントラクト上でレンディングや清算が動きます。
CeDeFiのメリット
信用審査コストのカット
過剰担保(借入時のLTV上限は75%)によって信用審査を代替しており、借り手の属性評価プロセスが不要です。与信審査にかかる人件費・システムコスト、および不良債権リスクが原理的に発生しない設計です。
清算・回収業務のスマートコントラクトへの委任
LTV 86%到達時の清算は、スマートコントラクトが判断・執行します。清算タイミングの判断や債権回収の交渉といった、従来の貸付業務で大きなコストを占める工程がコードに置き換えられています。
DeFiへのアクセシビリティを向上し、ユーザー体験の向上
DeFiのオープン性・利回り・透明性とCEXの使い慣れている環境・安心感を組み合わせてトレードオフを縮めることができます。特にマスアダプションの文脈では、技術的ハードルを下げることが参加者層の拡大に直結します。
CeDeFiのデメリット・リスク
価格急落時の自動清算リスク
担保資産の価格が急落した場合、LTVが短時間で86%を超えるケースがあります。スマートコントラクトは猶予なく清算を執行するため、2022年のような急落局面では連鎖的な清算が発生しうる構造です。従来の貸付では貸し手が清算判断に裁量を持てる場面がありますが、このモデルでは一切介入できません。
規制上の利用可能地域の制約
現在は米国(ニューヨーク州を除く)と英国(限定)のみで利用可能です。暗号資産担保ローンに関する規制整備の状況が国ごとに異なるため、グローバル展開には時間を要する見通しです。
Coinbaseによる損失補償の不在
CoinbaseはUIプロバイダーとして定義されており、清算損失・システム障害・価格変動に起因する損失への賠償責任を原則として負いません。ユーザーはスマートコントラクトの動作リスクを自己負担することになります。
まとめ
Bitcoin-Backed Loans with Morphoは、Coinbaseが提供するユーザー体験(KYC・UI・ブランド)と、Morphoが提供するオンチェーンレンディングインフラを組み合わせた、CeDeFiアーキテクチャの現時点での代表的な実装例です。
サービス開始から約1年3ヶ月で累計23.9億ドルの貸付実行額を達成した事実は、「CeFiのUIをDeFiのインフラに接続する」アプローチが市場から受け入れられていることを示しています。信用審査なし・清算の自動化・オープンな流動性市場による低金利という組み合わせは、従来の貸付ビジネスとは異なるコスト構造を実現しており、その設計思想は既存の金融事業者にとって参照価値があります。
一方で、価格急落時の自動清算リスク、事業者による損失補償の不在、地域規制による展開制約といった課題は、従来のCeFiが担保していた要素をスマートコントラクトと利用者自身が引き受ける形になっています。
ユーザーがより簡単にDeFiにアクセスする新しい手段として、今後もCeDeFiに注目が集まります。
免責事項
本レポートは、キリフダ株式会社が情報提供を目的として作成したものです。
本レポートの内容は、人工知能(AI)を活用して生成・編集されています。情報の正確性・完全性については万全を期しておりますが、AIによる生成物であることの性質上、誤りや不正確な情報が含まれる可能性があります。内容については必ずご自身でご確認ください。
本レポートは、特定の金融商品・暗号資産への投資を勧誘・推奨するものではありません。掲載されている情報は、いかなる投資判断の根拠となるものでもなく、投資に関する最終的な決定はご自身の判断と責任においてお願いいたします。
暗号資産への投資には価格変動リスクをはじめとするさまざまなリスクが伴います。投資を行う際は、関連法令・規制を遵守の上、必要に応じて専門家にご相談ください。
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References
- [1] Morpho, Variable Rate Market (Morpho Blue) —docs.morpho.org
- [2] DefiLlama —defillama.com
- [3] Dune, Morpho, Coinbase Onchain Borrowing & Lending —dune.com