暗号資産(仮想通貨)のトラベルルールとは?仕組みや適用範囲について解説

2023年6月1日に改正された「犯罪による収益の移転防止に関する法律」で、暗号資産(仮想通貨)のトラベルルールの実施が義務付けられました。その後も、対象国が追加されるなどの広がりを見せています。

このトラベルルールは暗号資産の送金・移転に関わる重要な枠組みですが、日常の取引では深く意識しないことも多いでしょう。

本記事では、トラベルルールについてわかりやすく説明しながら、ユーザーが対応する事項や、Coincheckでのトラベルルール対応について解説します。なお、本記事の内容は執筆時点の2026年3月の情報に基づきます。

トラベルルールとは?

トラベルルールとは?

トラベルルールとは、金融庁によると「暗号資産・電子決済手段の取引経路を追跡することを可能にするため、暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者に対し、暗号資産・電子決済手段の移転時に送付人・受取人の情報を通知する義務」を課したもの、と説明されています。

簡単に言うと、暗号資産の送金時に「誰から誰へ送られたか」という情報を、事業者間で共有する仕組みのことです。

なお、トラベルルールは暗号資産の送受金に関する規制であり、1つの取引所内で完結する売買やトレード、日本円の入出金には直接的には影響しません。そのため、日常的な取引すべてに影響があるわけではなく、「外部への送金・外部からの受け取り」の場面で主に関係してくるルールと理解しておくとよいでしょう。

出典:金融庁「暗号資産・電子決済手段の移転に係る通知義務(トラベルルール)」

暗号資産・電子決済手段についての法律で義務付けられている

この制度は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」と、その具体的な要件を定めた施行令・施行規則に記載されています。

トラベルルールは、FATF(金融活動作業部会)が「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策」についての国際基準(FATF基準)において、各国の規制当局に対して導入を求めているものです。

日本でもこの流れを受けて制度が整備されており、テロリストや反社会的勢力などによる資金移転の不正利用を防止し、万が一問題が発生した場合でも追跡できるようにすることを目的としています。

送付人・受取人の情報を通知しなければならない

トラベルルールにより、暗号資産(仮想通貨)を送金する際には、多くの場合、送金元・送金先の情報入力が求められます。

日本では2023年から運用が開始されており、現在は各取引所の送金フローに組み込まれています。そのため、暗号資産の取引を行っている方であれば、「受取人(送金先)の氏名やウォレットアドレスを入力する」といった形で、すでにこのルールに基づく操作を経験しているケースも多いでしょう。

引用:金融庁「暗号資産・電子決済手段の移転に係る通知義務(トラベルルール)」

トラベルルールの適用範囲

トラベルルールの適用範囲

国内投資家の立場では、「トラベルルールは多くの取引で対応が必要である」と思っておくのが安心なスタンスですが、適用にならない範囲もあります。

通知対象国・地域もしくは日本国内の取引所への送金で適用

トラベルルールの対象は、金融庁が定める通知対象国・地域(法域)、および日本国内の暗号資産交換業者間での取引です。具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 日本国内の暗号資産交換業者間での送金
  • 海外の通知対象法域の暗号資産交換業者と日本国内の暗号資産交換業者間での送金

海外の通知対象法域は、相手国・地域においても同等の規制が整備されているかどうかを基準に金融庁が定めています。対象は段階的に拡大しており、2025年には新たに30の法域が追加されています。

参考:金融庁「トラベルルールの対象法域について」

個人のウォレットへの送金は適用外

一方で、MetaMaskなどの個人ウォレットへの送金については、原則としてトラベルルールの対象外とされています。

また、金融庁が定める通知対象法域に含まれていない国・地域の暗号資産交換業者への送金も制度上は対象外ですが、実際には取引所ごとの自主的なルールにより、送金自体が制限されるケースもあります。

このように、暗号資産の送金に関しては、法律で定められたルールに加えて、各取引所が独自に設けている安全対策も存在します。実務上は、この2つのルールをあわせて理解しておくとよいでしょう。

トラベルルールによるユーザーへの具体的な影響とは?

トラベルルールによるユーザーへの具体的な影響とは?

トラベルルールの運用により、ユーザーは主に3つの影響を受けています。すでに導入から数年が経過しているため、現在ではルールを意識せず、送金手続きの一部として自然に対応しているケースも多いでしょう。なお、こちらに記載の内容は、今後の制度整備や技術の進展によって変化する可能性もあります。

  • 送金可能な暗号資産が制限されることがある
  • 異なるソリューションを採用する暗号資産取引所には送金できないことが多い
  • 送金先の情報の把握が必要になる

これらを理解するうえで、前提知識としてトラベルルールに対応する技術(ソリューション)の違いを押さえておくことが重要です。

現在、代表的な仕組みとして、「Travel Rule Universal Solution Technology(TRUST)」「Sygna Hub(Sygna)」の2つが広く利用されています。2026年3月時点では、これらのソリューション間に互換性がない点が重要なポイントです。

Coincheckでは、トラベルルール対応ソリューションとしてTRUSTを採用しています。Coinbaseが公開しているTRUSTのメンバー一覧には、国内ではbitFlyerやCoincheck、海外ではCoinbaseなどが掲載されています。その他のTRUSTのメンバーはCoinbaseのホームページより確認できます。なお、TRUSTのメンバーとして掲載されている場合でも、各事業者の対応状況などによって送金可否は異なるため、必ずしもすべての事業者間で送金できるとは限りません。

参考:Coinbase「Travel Rule Universal Solution Technology」

送金可能な暗号資産が制限されることがある

TRUSTは、すべての暗号資産に最初から対応しているわけではありません。たとえば、比較的新しく発行された銘柄や、技術的に特殊な仕様を持つ銘柄については、TRUSTの仕組みに対応していない可能性があります。そのため、暗号資産によっては送金が制限されるケースもあります。

なお、今後の開発や対応の拡大により、送金可能な暗号資産の種類が増えていく可能性もあります。

異なるソリューションを採用する暗号資産取引所には送金できないことが多い

日本国内の暗号資産取引所では、「TRUST」と「Sygna」というトラベルルール対応技術のどちらかが導入されています。両者ともトラベルルールには対応しているものの、2026年3月時点では互換性がありません。

このため、異なるソリューションを導入している暗号資産取引所同士では送金ができない、もしくは制限されるケースがあります。

送金先の情報の把握が必要になる

トラベルルールとは、先述の通り「暗号資産の送金時に、送金先と送金元の情報提供が必要になる」というルールです。

そのため、トラベルルールに該当する暗号資産送金時には、送金先の情報をある程度把握しておく必要があります。

2026年3月時点では、送金時に必要になる情報は、送金元のアドレス、サービス名、受取人種別、受取人氏名(または法人名)、国と地域です。詳細についてはCoincheck FAQの送金時に必要な情報をご確認ください。

トラベルルールに関するよくある質問

トラベルルールに関するよくある質問

トラベルルールに関するよくある疑問についてまとめました。

Q. トラベルルールが設置された背景は?

A.不正利用時に資金の流れを追跡しやすくするためです。

暗号資産は、インターネットに接続していれば、誰でも・どこでも・いつでも送金や受取ができるという特性があります。この特性は暗号資産のメリットであり、今まで決済サービスや銀行サービスにつながることができなかった人々への可能性が示されたり、既存金融の弱点を克服する兆しが見えたりしました。

一方で、こうした利便性の高さから、マネーロンダリングやテロ資金供与、反社会的勢力による不正利用に使われるリスクも指摘されています。実際に、ハッキングなどで不正に取得された暗号資産の追跡が困難になるケースもありました。

こうした背景から、不正利用があった場合でも資金の流れを追跡しやすくするために、トラベルルールの導入が提唱されました。FATF(金融活動作業部会)は、「マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策」に関する国際基準(FATF基準)の中で、各国の規制当局に導入を求めています。

その流れを受け、日本でも制度整備が行われ、2023年に運用が開始されています。日本では、警視庁の犯罪収益対策室(JAFIC)が、疑わしい取引に関する施策の立案などを行っています。

参考:警視庁「犯罪収益対策室(JAFIC)とは」

参考:警視庁「犯罪収益移転防止に関する年次報告書」

Q. FATFとは?

A.マネーロンダリング対策などの国際基準を策定する組織です。

FATFとはFinancial Action Task Forceの略で、日本語では「金融活動作業部会」と呼ばれます。38の国・地域と2つの地域機関が加盟しています。

マネーロンダリングやテロ資金供与を防止するための国際的な基準を策定する組織で、いわゆるブラックリストと呼ばれる「非協力国・地域」の指定なども行っています。

参考:財務省「国際的なマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策」

Q. トラベルルールに関連する法律はどんなものがある?

A.犯収法とその施行令・施行規則です。

トラベルルールは、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」と、その具体的な要件を定めた施行令・施行規則に基づいて定められています。今後も時代の変化に合わせて変更が加えられる可能性もありますので、日々のニュースをチェックしておくとよいでしょう。

参考:金融庁「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令の一部を改正する政令案等の公表について」

参考:犯罪による収益の移転防止に関する法律 第十条の三、第十条の五

参考:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令 第十七条の二、第十七条の三

参考:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第三十一条の四、第三十一条の七

Q. トラベルルールの注意点は?

A.送金先情報の正確な入力と、送金可否の確認が必要です。

ユーザーの観点では、これまで紹介してきた内容も踏まえ、主に以下のようなポイントに注意が必要です。

  • 送金先の氏名・住所・ブロックチェーンアドレスなどの情報が必要になる
  • 入力情報に誤りがあると、送金が失敗したり、処理に時間がかかったりする可能性がある
  • 異なるソリューションを採用している取引所には送金できない場合がある
  • 送金できない暗号資産銘柄が存在する可能性がある
  • 送金できない国・地域がある可能性がある
  • 対象となる国・地域は変更されるため、最新情報の確認が必要

Coincheckはトラベルルールに対応している

Coincheckはトラベルルールに対応している

Coincheckでは2023年5月31日からトラベルルールに対応しており、「Travel Rule Universal Solution Technology」(TRUST)を導入しています。

なお、暗号資産の送金時には、トラベルルールに準じた情報入力が必要になります。Coincheckでのトラベルルール対応の送金方法に関しては、Coincheck FAQのトラベルルール対応の送金方法をご覧ください。