Robinhood Chainの実態と金融インフラ戦略【Onchain Report】

本レポートでは、米証券大手Robinhoodが開発する独自レイヤー2(L2)ブロックチェーン「Robinhood Chain」を取り上げます。

Robinhoodは2013年に米国で創業したオンライン証券会社です。手数料無料の株式取引を武器に、ミレニアル世代やZ世代を中心に利用者を拡大し、2018年には暗号資産取引サービスへ参入しました。近年では株式トークンや暗号資産サービスの拡充を進めるとともに、株式などのトークン化資産(RWA)の取引・保有・活用をオンチェーンへ広げる構想を打ち出しています。こうした取り組みの一環として、Robinhoodは2025年6月にRobinhood Chainの構想を発表し、2026年7月にはメインネットを公開しました。

以下では、公式発表や市場分析に加え、オンチェーン分析ツール「Dune Analytics」などから取得したデータをもとに、Robinhood Chainの利用実態を整理します。そのうえで、証券会社が独自ブロックチェーンを展開する狙いと、金融市場への示唆を考察します。

なお本記事は情報提供を目的とした調査・解説であり、特定の金融商品や暗号資産への投資を勧誘するものではありません。

このレポートでわかること

Robinhoodとは

Robinhoodとは

Robinhood(ロビンフッド)は、2013年に米国で創業したオンライン証券会社です。株式取引手数料を無料化した「コミッションフリー」のビジネスモデルを武器に、従来の証券会社が十分に取り込めていなかったミレニアル世代やZ世代を中心に利用者を拡大しました。

2018年には暗号資産取引サービスへ参入し、その後もオプション取引や先物取引、高金利の預金サービス、クレジットカード、サブスクリプションサービス「Robinhood Gold」、予測市場などへ事業領域を拡大しています。現在では株式や暗号資産をはじめ、さまざまな金融サービスを一つのアプリで提供するプラットフォームへと成長しています。

Robinhoodの歴史

Robinhoodは2013年に創業し、2015年に手数料無料の株式取引サービスを開始しました。当時、米国では株式売買に手数料を支払うことが一般的でしたが、同社はコミッションフリーという新たなビジネスモデルを打ち出し、ミレニアル世代やZ世代を中心に急速に利用者を拡大しました。2018年には暗号資産取引サービスへ参入し、株式だけでなく暗号資産も一つのアプリで取引できる投資プラットフォームへと発展しました。

2020年から2021年にかけては、「GameStop(ゲームストップ)」などのミーム株ブームの中心的な取引プラットフォームとして世界的な注目を集めました。一方で、決済機関への証拠金負担の増加を受け、一部銘柄の取引を一時制限したことから大きな議論を呼びました。同年にはナスダックへ上場し、個人投資家を代表するオンライン証券会社として存在感を高めました。

その後は暗号資産市場の低迷や規制環境の変化にも対応しながら事業を拡大し、2025年には暗号資産取引所Bitstamp(ビットスタンプ)を買収しました。また、欧州では株式トークン(Stock Tokens)の提供を開始したほか、予測市場「Rothera(ロセラ)」や独自レイヤー2ブロックチェーン「Robinhood Chain」を発表するなど、近年も新たな金融サービスやインフラの展開を進めています。

Robinhoodの現在地とこれから

Robinhoodは現在、自社を単なるオンライン証券会社ではなく、「金融スーパーアプリ(Financial Super App)」へ進化させることを目指しています。

現在のRobinhoodは、一つのアプリ上で株式・ETF、オプション、暗号資産、先物、予測市場、銀行サービスなど幅広い金融サービスを提供しています。同社の収益も、株式や暗号資産の取引関連収益だけでなく、顧客預かり資産から得られる金利収入(Net Interest Revenue)、有料会員サービス「Robinhood Gold」のサブスクリプション収益、クレジットカードなど、多様な収益源によって支えられています。

一方で、これまでRobinhoodは顧客との接点(フロントエンド)は保有していたものの、取引や決済を支えるインフラの多くは外部事業者へ依存してきました。例えば、株式取引では証券市場や決済機関、暗号資産ではパブリックブロックチェーン、予測市場では外部取引所などがそれぞれ重要な役割を担っており、そのたびに手数料や収益の一部を外部へ支払う構造となっていました。

近年のRobinhoodは、この構造を見直しています。具体的には、Bitstampの買収による暗号資産取引基盤の獲得、予測市場「Rothera」の立ち上げ、欧州での株式トークン(Stock Tokens)の提供、独自レイヤー2ブロックチェーン「Robinhood Chain」の開発などです。これらはいずれも、これまで外部事業者へ依存していた取引・決済・資産管理などの機能を自社グループ内へ取り込む取り組みと位置付けられます。

Robinhoodは金融サービスを拡充しているだけでなく、それらを支えるインフラまで自社で保有することで、金融サービス全体を垂直統合(Vertical Integration)する企業への転換を進めています。その中心的な役割を担うのが、独自レイヤー2ブロックチェーン「Robinhood Chain」です。

同チェーンは単なるブロックチェーンではなく、株式などのトークン化資産(RWA)の発行・保有・取引・決済を支える共通インフラとして構想されています。Robinhood Chainを理解するには、チェーン単体ではなく、Robinhood全体の事業戦略の中で捉えることが重要になるでしょう。

独自L2「Robinhood Chain」とは

Robinhood Chainは、Robinhoodが開発したEthereumのレイヤー2(L2)ブロックチェーンです。同チェーンは、基盤技術として「Arbitrum Orbit」を採用しています。Arbitrum Orbitは、Ethereum向けL2ソリューション「Arbitrum」のロールアップ技術を活用し、企業や開発者が用途に応じた独自のブロックチェーンを構築できるフレームワークです。

Robinhoodの2025年6月の発表によると、Robinhood Chainでは株式トークンの発行・保有・取引基盤となることが想定されています。まずは欧州で提供されている株式トークンを対象とする方針が示されており、2026年8月時点でも米国株を同チェーン上で取り扱う計画は公式には発表されていません。こうした段階的な展開の背景には、米国と欧州における規制環境の違いなどがあると考えられます。

また、将来的には未公開株や社債など、より幅広い金融資産のオンチェーン化も構想されています。さらに、セルフカストディ型ウォレットへの対応や24時間365日の取引環境など、ブロックチェーンの特性を活かした金融サービスの提供も目指しています。

このようにRobinhood Chainは、株式トークンをはじめとするトークン化資産を支える基盤として発表されています。

金融事業者はなぜチェーンを自前で持ちたがるのか

金融事業者はなぜチェーンを自前で持ちたがるのか

Robinhoodによる独自ブロックチェーンの開発は、特殊な事例ではありません。近年では、暗号資産取引所や金融事業者が独自ブロックチェーンを開発する動きが広がっています。

代表例として、Coinbaseは独自L2「Base」、Krakenは「Ink」を立ち上げています。いずれもEthereumのL2として構築されており、自社サービスとの連携を前提に、高速かつ低コストな取引環境を提供しています。

こうした動きについては、「シーケンサー収益を得ること」が主な目的として語られることがあります。EthereumのL2では、ネットワーク上の取引を取りまとめる「シーケンサー」が取引手数料(ガス代)を受け取り、Ethereumへのデータ投稿費用などを差し引いた収益を得る仕組みとなっているためです。

オンチェーン分析プラットフォーム「Token Terminal」のデータによると、Coinbaseが運営するBaseでは、2026年第2四半期のネットワーク収益(Revenue)は約1,090万ドルとなっています。一方で、Coinbaseが公表した同四半期の売上高は約12.2億ドルであり、ネットワーク収益が占める割合は約0.9%にとどまります。このような状況を踏まえると、独自チェーンが継続的な収益を生み出す可能性はあるものの、現時点ではそれだけで取引所が独自チェーンを開発する理由を説明するのは難しいでしょう。

むしろ重要なのは、「垂直統合(Vertical Integration)」という考え方です。これまで取引所はユーザーとの接点を持ちながらも、ブロックチェーンや決済基盤などのインフラは外部事業者へ依存してきました。しかし、自社でブロックチェーンを保有すれば、決済や資産管理、アプリケーション基盤まで自社グループ内で保有できるようになります。これにより、外部事業者へ支払っていた手数料の一部を自社グループへ取り込めるだけでなく、サービス同士をシームレスに連携させ、新機能や新サービスを迅速に開発しやすくなります。

実際、Baseはネットワーク収益を生み出すだけでなく、USDCやCoinbase Walletを通じてCoinbaseのオンチェーンサービス全体を支える基盤としても機能しています。つまり、独自チェーンの価値はネットワーク収益そのものよりも、自社サービス全体を支える共通インフラとして機能する点にあると考えられます。

Robinhood Chainも、こうした業界全体の流れの中で誕生した独自チェーンの一つと位置付けられます。

Robinhood Chainの展望と可能性の考察

ただし、Robinhoodが目指しているのは、単に株式トークンを動かすためのブロックチェーンを保有することだけではない可能性があります。

Robinhoodの公式発表では、Robinhood Chainは株式トークンをはじめとするトークン化資産(RWA)の基盤として紹介されています。また、同社は「金融スーパーアプリ」の実現を掲げており、株式、暗号資産、予測市場、銀行サービスなど、多様な金融サービスを一つのプラットフォームで提供しています。

こうした事業戦略を踏まえると、将来的にはこれらのサービスをRobinhood Chain上へ段階的に統合していく可能性も考えられます。その場合、Robinhood Chainは株式トークン向けのブロックチェーンにとどまらず、金融サービス全体を支える共通の決済・資産管理基盤(Settlement Layer)として機能することになります。

例えば、株式トークンに加え、暗号資産、ステーブルコイン決済、予測市場などが同じ基盤上で展開されれば、ユーザーは複数の金融サービスをシームレスに利用できるようになります。また、Robinhood自身もサービス間の連携を強化しながら、新たな金融商品の開発や機能追加をより迅速に進められる可能性があります。

もちろん、現時点でRobinhoodがこうした構想を公式に明らかにしているわけではありません。しかし、Robinhoodが掲げる金融スーパーアプリ構想や、近年進めている垂直統合戦略を踏まえると、Robinhood Chainを金融サービス全体を支える共通基盤として位置付ける見方には一定の合理性があります。

では、Robinhood Chainは現時点でどのように利用されているのでしょうか。次章では、オンチェーンデータをもとに、その利用実態を見ていきます。

数字で読むRobinhood Chainの全体像

どのような資産が積み上がっているか

Robinhood Chainでは、7月以降にプロトコル預かり資産(TVL)が急速に拡大しています。データプロバイダーごとにTVLの集計対象や定義は異なるものの、いずれのデータでもローンチ後に資産流入が継続している点は共通しています。そのため、本レポートではTVLの絶対額よりも、資産流入の推移や資産構成の変化に注目します。

なお、TVLの絶対額には集計方法による差があります。2026年8月時点では、オンチェーンデータサイト「DeFiLlama」で約4.8億ドル、Entropy Advisors作成のDuneダッシュボード「Protocol TVL」では約8.8億ドルとなっており、両データには大きな乖離が見られます。

もっとも、両データに共通しているのは、Robinhood Chainのローンチ後にTVLが一貫して増加している点です。つまり、絶対額の定義には差があるものの、ネットワークへ資産が継続的に流入しているという方向性は共通しています。そのため、本レポートではTVLの絶対額そのものよりも、資産流入の推移や資産構成の変化に注目します。

※本レポートで掲載するTVLや資産分類は、Entropy Advisors作成のDuneダッシュボードを基準としています。DeFiLlamaなど他のデータプロバイダーとは集計対象や定義が異なるため、数値は一致しません。

※「Asset Landscape」のRWAカテゴリーは、Robinhood Chain上のすべての株式トークンやRWA関連資産を包括的に示すものではありません。約3,000万ドルという数値は、あくまで同ダッシュボード上のRWAカテゴリーの残高を示しています。

データ出典:DeFiLlamaDune(Entropy Advisors)

Robinhood ChainのTVL推移(DeFiLlama)

Robinhood ChainのTVL推移(出典:DeFiLlama

Robinhood ChainのTVL推移(Dune Analytics)

Robinhood ChainのTVL推移(出典:Dune Analytics、Entropy Advisors作成ダッシュボード

誰が使っているのか

Robinhood Chainでは、7月上旬を境に利用者数とトランザクション数が急速に拡大しています。日次トランザクション数は、7月前半まで数十万件規模で推移していましたが、その後は一気に700万~1,000万件前後まで増加し、8月上旬には1,400万件近くまで拡大しました。ピーク後はやや落ち着いたものの、足元でもおおむね900万~1,200万件前後の水準を維持しており、ローンチ直後の一時的な盛り上がりにとどまらず、高い利用水準が続いています。

日次トランザクション数の推移

日次トランザクション数の推移(出典:Dune Analytics

アクティブアドレス数も同様に7月上旬から急増し、その後は20万~35万アドレス程度で推移しています。特徴的なのは、新規アドレスと既存アドレスの双方が一定規模で維持されている点です。既存アドレス数はおおむね15万~20万前後で安定して推移しており、一度利用したアドレスが継続的にネットワーク上で活動している様子が確認できます。一方で、新規アドレスも毎日一定数流入しており、8月上旬には再び大きく増加する日も見られました。

アクティブアドレスの推移を見る限りでは、既存アドレスの利用が維持される一方、新規アドレスも継続的に流入していることが確認できます。ローンチ直後のブームが完全に収束したというよりは、新たな利用者を呼び込みながら一定数の既存ユーザー基盤も維持している状況がうかがえます。

アクティブアドレス数の推移

アクティブアドレス数の推移(出典:Dune Analytics

何が利用を支えているのか

Robinhood Chainの利用拡大を支えている大きな要因の一つが、ローンチパッドを起点としたミームコイン取引です。日次DEX(分散型取引所)取引高は7月上旬に急拡大し、その後も数億ドル規模で推移しています。日による変動は大きいものの、7月以降は高い取引活動が継続しています。

日次DEX取引高の推移

日次DEX取引高の推移(出典:Dune Analytics

DEX取引高の内訳を見ると、ローンチパッド発行トークンが市場の大きな割合を占めています。ローンチパッド発行トークンの多くはミームコインとみられ、新規トークン発行数も7月中旬以降に大きく増加しました。複数のローンチパッドから毎日数万件規模の新規トークンが発行されており、その増加時期に合わせてローンチパッド発行トークンの取引高も拡大しています。

新規トークン発行数の推移

新規トークン発行数の推移(出典:Dune Analytics

実際、DEX取引高に占めるローンチパッド発行トークンの割合は、おおむね3〜5割程度で推移しています。ETHなど既存資産の取引も大きい一方、ローンチパッド発行トークンがDEX市場の主要な取引対象の一つとなっていることが分かります。

DEX取引高に占めるローンチパッド発行トークンの割合

DEX取引高に占めるローンチパッド発行トークンの割合(出典:Dune Analytics

つまり、現在のRobinhood Chainでは、既存資産の売買に加えて、新たに発行されるミームコインを巡る取引が活発に行われています。新規トークンの発行が増えた時期には、その売買も活発化しており、DEX取引高が高い水準で推移する背景の一つになっていると考えられます。

一方で、この構造は今後の成長を見るうえで注意すべきポイントでもあります。ミームコイン市場は投機的な性質が強く、市場環境によって取引量が大きく変動します。現在の高い利用水準は、ローンチパッドを起点としたミームコイン取引に大きく支えられている可能性があります。そのため、中長期的な成長を実現するには、株式トークンやRWA、DeFiなど、ミームコイン以外のユースケースがどこまで利用を拡大できるかが重要なポイントになるでしょう。

ミームコイン取引の推移

ミームコイン取引の推移(出典:Dune Analytics

※本レポートのDEX取引高は、Uniswap V2/V3/V4上の取引を集計対象としており、Robinhood Chain上のすべてのDEXを網羅するものではありません。一方で、現時点では主要なDEX取引の多くがUniswap V2/V3/V4に集中していると考えられることから、市場全体の動向を把握するための代表的な指標として利用しています。

※「Launchpad発行トークン」は各ローンチパッドから発行されたトークンを指します。本レポートでは、その多くがミームコインとみられることから、ミームコイン取引の近似値として分析しています。

※新規トークン発行数とDEX取引高には同時期の増加が確認できますが、本データのみから両者の因果関係を直接示すものではありません。

ネットワーク収益要因の分析

ここまでの分析から、Robinhood Chainではローンチパッドを起点としたミームコイン取引がネットワーク利用を押し上げていることが分かりました。では、その活発な利用は実際にネットワークの収益へ結び付いているのでしょうか。ここでは、ネットワーク全体の手数料収益・トランザクション数と、主要DEXの取引高をBaseと比較しながら、Robinhood Chainの収益構造を確認します。

まず、日次ネットワーク手数料収益を見ると、Robinhood Chainは7月上旬以降に急速に収益を拡大しています。特に7月中旬から下旬にかけてはBaseを上回る日が多く、ピーク時にはBaseの数倍規模の手数料収益を記録しました。短期間ながら高い手数料収益を生み出していたことが確認できます。

日次ネットワーク手数料収益の比較(Robinhood Chain vs Base)

日次ネットワーク手数料収益の比較(出典:Dune Analytics

一方、日次DEX取引高を比較すると、Robinhood ChainはBaseと同程度、あるいは下回る日も少なくありません。それにもかかわらず、手数料収益ではBaseを上回る場面が多く見られました。

日次DEX取引高の比較(Robinhood Chain vs Base)

日次DEX取引高の比較(出典:Dune Analytics

その背景を探るためにトランザクション数を見ると、7月中旬以降はBaseと同程度、あるいは上回る日も多く見られます。また、「DEX取引高100万ドル当たりトランザクション数」を比較すると、Robinhood ChainはBaseよりも高い水準で推移しています。つまり、同程度のDEX取引高を生み出すために、より多くのオンチェーントランザクションが発生している構造であることが分かります。前項で確認したように、ローンチパッドで発行されたミームコインの売買が活発だったことが、この特徴の背景にあると考えられます。

DEX取引高100万ドル当たりトランザクション数の比較(Robinhood Chain vs Base)

DEX取引高100万ドル当たりトランザクション数の比較(出典:Dune Analytics

さらに、1トランザクション当たり平均手数料を見ると、Robinhood Chainは7月中旬から下旬にかけてBaseを大きく上回っています。トランザクション数が多かったことに加え、1件当たりの平均手数料も高い水準で推移したことが、ネットワーク全体の手数料収益を押し上げた要因の一つと考えられます。ミームコイン取引が活発だった時期には、ネットワーク利用の増加などを背景に平均手数料も上昇し、結果として手数料収益の拡大につながった可能性があります。

1トランザクション当たり平均手数料の比較①

1トランザクション当たり平均手数料の比較(出典:Dune Analytics

1トランザクション当たり平均手数料の比較②

1トランザクション当たり平均手数料の比較(出典:Dune Analytics

※日次ネットワーク手数料収益は、ガス使用量とガス価格から算出したネットワーク全体の手数料収益です。シーケンサーやRobinhoodの利益を直接示すものではありません。

※日次トランザクション数は、成功・失敗の両方のトランザクションを含みます。そのため、実際の成功取引件数とは一致しません。

※日次DEX取引高は、Robinhood ChainおよびBase上のすべてのDEXを完全に網羅したものではなく、主要DEXを対象に集計しています。

※「DEX取引高100万ドル当たりトランザクション数」は、同じDEX取引高を生み出すためにどれだけ多くのオンチェーントランザクションが発生したかを示す参考指標です。ネットワークの優劣や効率性を直接示す指標ではありません。

トークン化資産の利用状況

Robinhoodは、Robinhood Chainを株式トークンをはじめとするトークン化資産を支える基盤として位置付けています。しかし、ローンチ初期のオンチェーンデータを見る限り、実際のネットワーク利用を支えているのは、株式トークンなどのRWAよりも、ローンチパッドで発行されたミームコインを中心とする取引です。

トークン化資産残高はローンチ以降一貫して増加しており、7月末には約2,700万ドルまで拡大しました。2026年8月時点では約3,000万ドルに達しています。内訳を見ると株式トークンが大半を占める一方、ETFや米国債、コモディティについても残高が徐々に積み上がっており、取り扱う資産の種類は着実に広がっています。

トークン化資産残高の推移

トークン化資産残高の推移(出典:Dune Analytics

一方、日次取引高を見ると、株式トークン単体の取引も継続的に行われているものの、ミームコインとのスワップ取引が大きな割合を占める日も多く見られます。現時点では、トークン化資産の取引は拡大しつつある一方で、その利用はミームコイン市場との相互作用に大きく支えられている状況と言えるでしょう。

この結果は、Robinhood ChainがRWA基盤として失敗していることを意味するわけではありません。株式やETFなどのトークン化資産は、発行体や流動性、市場参加者の拡大に時間を要する一方、ミームコインは短期間で利用を集めやすい特徴があります。そのため、ネットワークの立ち上げ期に投機的な取引が利用を牽引する構図は、他のブロックチェーンでも見られる現象です。

トークン化資産の日次取引高

トークン化資産の日次取引高(出典:Dune Analytics

※本章で集計しているトークン化資産は、Robinhoodが発行した株式・ETF・コモディティ・米国債トークンを対象としており、Robinhood Chain上のすべてのRWAを網羅したものではありません。

※「ミームコイン×株」は、株式トークンとローンチパッド発行トークン(主にミームコイン)のスワップ取引を示しています。株式トークン単体の売買とは区別して集計しています。

Robinhood Chainの現状評価

Robinhood Chainは、株式トークンをはじめとするトークン化資産(RWA)の基盤として発表されました。しかし、ローンチから約1ヶ月間のオンチェーンデータを分析すると、現時点の利用実態は、そのイメージとは大きく異なっています。

TVLやトークン化資産残高は着実に積み上がっているものの、ネットワーク全体の利用を牽引しているのは株式トークンではなく、ローンチパッドを通じて発行されたミームコインです。DEX取引高の多くはミームコイン取引によって構成され、それに伴うトランザクション数の増加がネットワーク手数料収益を押し上げていました。

この状況については、解釈によって評価が分かれるところでしょう。しかし、本レポートでは、この状況を単純に「RWA戦略が機能していない」と評価するのは適切ではないと考えます。なぜならブロックチェーンでは、まず流動性を獲得し、その上にアプリケーションや実需が形成されるケースが少なくありません。EthereumやSolana、Baseなどでも、リテールユーザーの投機需要が初期の流動性を支え、その後のエコシステム拡大につながってきました。今回の分析結果も、Robinhood Chainが同様のプロセスをたどっている可能性を示しているように見受けられます。

実際、Robinhood ChainではBaseと同程度のDEX取引高でありながら、より多くのトランザクションが発生し、ネットワーク手数料収益もBaseを上回る日が多く確認されました。また、オンチェーン分析プラットフォーム「Token Terminal」が公表するネットワーク収益の推移は、本レポートで分析したネットワーク手数料収益の推移とも概ね整合しています。同データによると、Robinhood Chainはローンチ後約1ヶ月(2026年8月時点)で約410万ドルのネットワーク収益を計上しています。

現在の収益水準を単純に年率換算すると約4,900万ドル規模となります。また、この収益ペースが3ヶ月継続したと仮定すると約1,230万ドルとなり、Robinhoodが公表した2026年第2四半期総純収益13.1億ドルの約0.9%に相当します。現時点ではRobinhood全体から見ればまだ小さな事業ですが、ローンチから約1ヶ月という短期間でここまで収益を積み上げた点は注目に値します。

つまり、今回のオンチェーンデータから見えてきたRobinhood Chainの実像は、「RWAチェーン」として完成した姿ではなく、将来の金融サービスを支えるための流動性を獲得し、その流動性をネットワーク収益へ転換しているチェーンというものです。そして、その土台の上で株式トークンなどのトークン化資産を段階的に拡大していく戦略を描いている可能性があります。

金融事業者が独自ブロックチェーンを持つ意味

金融事業者が独自ブロックチェーンを持つ意味

今回の分析で最も興味深かったのは、金融事業者が独自ブロックチェーンを保有する意味が、オンチェーンデータから少し見えてきたことです。

これまで独自チェーンの意義は、「シーケンサー収益を得られること」と説明されることが少なくありませんでした。しかし、Robinhood全体の売上に対して現在のネットワーク収益は約1%程度と推計されており、現時点ではそれだけで独自チェーンの価値を説明することはできません。

一方で、今回の分析からは別の姿が見えてきました。ブロックチェーンでは、流動性が集まればトランザクションが増え、トランザクションが増えればネットワーク収益が生まれます。Robinhood Chainでは、ミームコインを中心とした投機需要が流動性を生み、その流動性がネットワーク収益へ転換されていました。これは、ネットワークそのものが収益を生み出す金融インフラとして機能し始めていることを示しています。

さらに重要なのは、その流動性をどのように活用するかです。現在はミームコイン取引がネットワーク利用の中心ですが、将来的に株式トークンやETF、未公開株、ステーブルコイン決済、予測市場などが同じネットワーク上へ統合されれば、Robinhood Chainは単なるRWAチェーンではなく、同社が掲げる金融スーパーアプリ全体を支える共通インフラとして機能する可能性があります。

本レポートでは、独自ブロックチェーンの本当の価値は、シーケンサー収益そのものではなく、「流動性を獲得できること」にあると考えます。流動性が集まれば、ネットワーク収益が生まれ、開発者やアプリケーションが集まり、さらに金融サービスの選択肢も広がっていきます。今回の分析から見えてきたのは、Robinhood Chainがまさにその第一段階にあるという姿です。

この視点は、日本の金融業界にも重要な示唆を与えます。今後の競争は、「どの資産をトークン化するか」だけではなく、「どのように流動性を獲得し、その流動性を継続的なネットワーク収益へ転換し、最終的に金融サービス全体へ結び付けられるか」というネットワーク戦略そのものへ移っていく可能性があります。

Robinhood Chainはまだローンチ初期段階にあります。しかし今回のオンチェーンデータは、金融事業者が独自ブロックチェーンを保有する価値は、シーケンサー収益そのものではなく、投機需要によって獲得した流動性を、ネットワーク収益、さらには金融サービスへと段階的に転換していくことにあるという一つの可能性を示しています。

Robinhood Chainが本当に成功したかどうかを判断するのは、まだ時期尚早でしょう。しかし今回のオンチェーンデータからは、「まず流動性を獲得し、その流動性を金融インフラへ育てていく」という一つの可能性が見えてきました。今後、その流動性が本来の目的であるトークン化資産市場へどのように波及し、金融スーパーアプリ全体を支える基盤へ発展していくのか。この点が、Robinhood Chain、そして金融事業者による独自ブロックチェーン戦略の成否を占う重要な評価軸になると考えられます。

免責事項

本レポートは、キリフダ株式会社が情報提供を目的として作成したものです。

本レポートの内容は、人工知能(AI)を活用して生成・編集されています。情報の正確性・完全性については万全を期しておりますが、AIによる生成物であることの性質上、誤りや不正確な情報が含まれる可能性があります。内容については必ずご自身でご確認ください。

本レポートは、特定の金融商品・暗号資産への投資を勧誘・推奨するものではありません。掲載されている情報は、いかなる投資判断の根拠となるものでもなく、投資に関する最終的な決定はご自身の判断と責任においてお願いいたします。

暗号資産への投資には価格変動リスクをはじめとするさまざまなリスクが伴います。投資を行う際は、関連法令・規制を遵守の上、必要に応じて専門家にご相談ください。

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References

  • [1] Robinhood, “Robinhood Accelerates Global Expansion With Robinhood Chain Mainnet, Stock Tokens & Agentic Trading” —robinhood.com
  • [2] Robinhood, “Robinhood Chain Launches Public Testnet” —robinhood.com
  • [3] Robinhood, “Robinhood Launches Stock Tokens, Reveals Layer 2 Blockchain and Expands Crypto Suite in EU and US With Perpetual Futures and Staking” —robinhood.com
  • [4] Entropy Advisors, “Robinhood Chain: Network Overview” —dune.com
  • [5] “The Robinhood Trenches” —dune.com
  • [6] Token Terminal, “Robinhood Chain Revenue” —tokenterminal.com
  • [7] キリフダ, “Robinhood Chainの概況とBaseの比較” —dune.com