
アメリカ合衆国のドナルド・トランプ氏が大統領に就任したあと、さまざまな政策や発言によりビットコインを含む金融市場は大きな変動を繰り返しています。
本記事では、アメリカやトランプ氏による暗号資産やビットコインへの影響を解説します。
この記事でわかること
目次
トランプ氏の発言で翻弄されている世界経済
2025年1月にトランプ氏が2度目の大統領就任を果たしてから約4ヶ月が経ちました。この短期間で多くの発言や政策が打ち出され、世界経済は大きく揺れ動いています。
経済面では、暗号資産に関する大統領令やトランプ関税が注目を集めました。これにより市場は一時混乱し、IMFが世界経済の成長見通しを下方修正するなど、深刻な影響が心配されています。また、ビットコインの価格にも変動が見られ、今後の相場に対する不安も広がっています。
参考:BBC NEWS JAPAN「IMFが米経済見通しを下方修正 先進国で最大の下げ幅、関税の不確実性が原因と」
暗号資産に関する大統領令
2025年3月6日、トランプ大統領は戦略的ビットコイン準備金および米国デジタル資産備蓄の創設を命じる大統領令に署名しました。この政策は、政府が押収した暗号資産を売却せずに保有し、戦略的な資産として活用することを目的としています。
具体的には、政府が押収したビットコインを戦略的ビットコイン準備金として管理し、イーサリアムやソラナなどほかの暗号資産はデジタル資産備蓄に分類します。
この政策により、アメリカは暗号資産を国家戦略の一部とする姿勢を明確に示しました。ただし、具体的な運用方法や将来的な影響については不明なため、今後の政策動向に注目する必要があります。
大統領令によるBTCの相場上昇
署名する4日前の3月2日、トランプ大統領は自身のSNSである「Truth Social」で、米国政府がビットコイン、イーサリアム、XRP、ソラナ、カルダノの5つの暗号資産において暗号資産戦略準備金を創設すると発表しました。
この発表を受けてビットコインの価格は約10%上昇し、同日中に約95,000ドルに達しています。さらに市場に大きな影響を与え、ほかの主要な暗号資産も値上がりしました。イーサリアムは約13%上昇し、XRPやソラナ、カルダノについても2日から3日にかけて価格の高騰が確認できます。トランプ氏の発言が暗号資産市場に大きな影響を与えることは間違いありません。
参考:Truth Social 「Donald J. Trump」
相互関税・報復関税などのトランプ関税による金融市場への影響
2025年4月、トランプ大統領は主要な貿易相手国の関税率を踏まえて自国の関税を引き上げることや、すべての国からの輸入品に10%の関税を課すことを発表しました。
それぞれの国が報復関税を検討するなかで相互関税の一部を90日間停止することも発表され、金融市場にさらなる混乱を引き起こしています。
トランプ関税とは
2025年4月2日、トランプ大統領はホワイトハウスで演説を行い、すべての国からの輸入品に一律10%のベースライン関税を課すと発表しました。さらに、各国の非関税障壁や既存の関税率を考慮して、国別に追加の相互関税を適用する方針を示しました。日本に対しては、非関税障壁を理由に24%の関税を課すと述べています。
この発表は、世界中の金融市場に大きな衝撃を与えました。とくに日本にとってアメリカは最大の輸出先であるので、これらの関税措置は日本経済に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
参考:JETRO 日本貿易振興機構(ジェトロ)「トランプ米大統領、多数の国に対し相互関税を90日間停止と発表、中国にはさらに税率引き上げ」
ドル安傾向が強まる
トランプ大統領が発表した関税政策により、アメリカ経済への不安が高まりました。これを受けて投資家たちはアメリカ資産のリスク回避を図ってドルを売却する動きを強め、価値が下落してドル安傾向が顕著になっています。
このドル安の影響でドル建てでのビットコインの価格が上昇する可能性がありますが、円建てやユーロ建てでは為替レートの変動により同様の上昇が見られない場合があります。そのため、ビットコインの売買をおこなう際には為替リスクを十分に考慮しなければいけません。
世界経済の後退
トランプ関税は、世界経済に深刻な影響を及ぼす可能性が高いです。この政策により金融市場の混乱が生じれば、企業業績の悪化や米国債・ドルへの信認低下が懸念され、金融システム全体の不安定化につながる恐れがあります。
実際にWTOのオコンジョイウェアラ事務局長は、報復的な貿易戦争が世界経済の成長に壊滅的な結果をもたらす可能性があると警告しました。
このように、トランプ関税政策は世界経済の後退を招くリスクを高めており、各国の経済成長や金融市場の安定性に対する影響が懸念されています。
トランプ氏は大統領就任以前から暗号資産に前向きな姿勢
かつて暗号資産に懐疑的だったトランプ氏は「ビットコインやそのほかの暗号資産は金ではない」と発言していました。しかし、2024年の大統領選挙を機に姿勢を一変させ、暗号資産市場の支援に前向きな姿勢を示しています。この転換の背景には、有権者や投資家からの支持を獲得し、米国が暗号資産の中心地であると世界にアピールする狙いがあると考えられます。
「米国を地球上の仮想通貨の首都」にすると発言
トランプ氏は2024年7月の「Bitcoin Conference」にて「米国を地球上の仮想通貨の都市にする」と発言し、注目を集めました。当時はバイデン政権が暗号資産の規制を強めていたため、この発言を受けて今後の暗号資産市場がより自由になることを期待した投資家は多かったはずです。
参考:BBC 「Why Tesla, crypto and prisons are Trump trade winners」
ビットコイン準備金を創設
2025年3月6日、トランプ大統領はビットコイン準備金の創設を発表しました。この準備金は、政府が犯罪や民事訴訟で押収したビットコインを活用し、国家の準備資産として保有することを目的としています。
大統領選挙の投票がおこなわれた2024年11月からビットコインの価格は大きく上昇し、暗号資産市場全体の注目を集めました。とはいえ、具体的な運用方法や今後の方針については明らかにされておらず、市場関係者や投資家の間でさまざまな憶測が飛び交っています。このような状況下でビットコインをはじめとする暗号資産への投資には慎重な判断が必要です。
トランプコインの発行
大統領就任直前の2025年1月20日、トランプ氏の名前を冠した暗号資産「TRUNP」が発行されました。このトークンは発表直後に急騰して1枚あたり約75ドルに達しました。ですがその後価格は急落し、2025年5月28日時点で時価総額ランキングは40位、約12ドルと大幅に下落しています。
同様に、大統領就任前夜の1月19日に妻のメラニア・トランプ氏の名前を関したミームコインである「MELANIA」も発行されましたがこちらも価格が下落し、その後大きな変動は見られません。
参考:BBC NEWS JAPAN 「トランプ氏、自らの新たな仮想通貨を発行 批判や怒りの声が業界で渦巻く」
SECの暗号資産に対する姿勢の変化
バイデン政権は暗号資産に対して慎重で、ゲーリー・ゲンスラー委員長が主導する厳しい規制が特徴的でした。この政策は暗号資産業界からの批判を招き、イノベーションの抑制や市場の不透明性を指摘されていました。
いっぽうで、トランプ政権の発足とともにSECの方針は大きく転換しつつあります。委員長が変わり、暗号資産に関する明確な規制枠組みの策定を目指して業界に歩み寄っていく姿勢を見せています。
政権交代によりSEC委員長が暗号資産規制緩和派に変更
バイデン政権ではゲーリー・ゲンスラーがSEC委員長を務めており、暗号資産は有価証券であるとして厳しい取り締まりをおこなっていました。それがトランプ政権に変わると状況が一変します。
新たに就任したのは、元SEC委員のポール・アトキンス氏です。彼は証券や投資管理業界のコンサルタントとして活躍した経歴もあり、規制緩和派としてトランプ氏に推薦されました。
米上院銀行委員会では僅差で可決となったものの、その後は無事上院本議会でも賛成多数で承認され、今後どのようなアプローチで業界の勢いを加速させていくのか注目です。
SECによるコインベース訴訟の取り下げ
2025年2月27日、SECはコインベースに対する民事執行訴訟の取り下げを正式に発表しました。この訴訟は、コインベースが投資家保護を目的とする規制当局への登録を怠ったまま運営しているとして2023年6月に提起されたものです。
取り下げの背景には、SECが暗号資産規制の方針を見直し、より明確な規制枠組みの構築を目指したいという考えがあると見られています。この取り下げは、さまざまな暗号資産ビジネスが厳しい規制からの解放につながる法的勝利となりました。
SECによるリップル社訴訟の終結の可能性
2020年12月、SECはリップル社が暗号資産「XRP」を未登録の証券として販売したとして提訴しました。2023年7月に裁判所は、機関投資家向けの販売は証券法違反と認定したいっぽうで、一般投資家向けの販売は証券に該当しないと判断しています。
この判決に対してSECは2025年1月に控訴を行いましたが3月19日に取り下げ、リップルも同様に控訴を取り下げており、両者は和解に向けた協議を進めていました。
5月8日に両者は和解に達したものの、16日に連邦地裁のトレス判事が提出された和解案が手続き上不適切であるとして却下しました。現在は、新たな和解案の提出に向けて準備が進められています。
アメリカの政策の影響を受けやすい暗号資産銘柄
米国に開発主体がおかれていたり関わりが深かったりする銘柄は、政策の影響を受けやすく、投資家の期待も高まります。そのためトランプ氏の就任後、彼の言動がきっかけとなり大きな値動きを見せることも多いです。
また、紹介する銘柄は暗号資産準備金に含まれるものでもあり、今後最注目の5銘柄と言えるでしょう。
ビットコイン(BTC)
ビットコインは、2009年に誕生した世界初の暗号資産です。中央銀行を介さずに使えるデジタル通貨として広まりました。
アメリカではとくに大口投資家や企業が資産の避難先としてビットコインを保有する傾向が強く、経済不安や金融政策によって価格が大きく動くのが特徴です。最近ではトランプ政権の再登場やビットコインETF承認といった政策面からも注目が高まり、アメリカの動向に大きく影響を受ける銘柄と言えます。
イーサリアム(ETH)
イーサリアムは、ブロックチェーン上でアプリケーションを動かせるプラットフォーム型の暗号資産です。NFTやDeFiといったWeb3分野の基盤となっており、技術力と実用性の高さから世界中で広く活用されています。
アメリカでは多くの開発者やプロジェクトがイーサリアムを採用しており、テック業界とのつながりも深いのが特徴です。いっぽうで証券に該当するかどうかを巡ってSECとの間で規制の議論が続いており、今後の政策が価格に与える影響も無視できません。
エックスアールピー(XRP)
エックスアールピーは国際送金に特化したブロックチェーンプロジェクトで、XRPはその中核を担う暗号資産です。とくに銀行や金融機関間の迅速な資金移動に強みがあり、実用面で期待されています。
アメリカのリップル社とのかかわりが深く、長らくSECとの裁判によってXRPは証券なのかが争われてきました。2025年5月に和解に達しましたが手続きは終了しておらず、今後の動向に関心が寄せられています。
ソラナ(SOL)
ソラナは、高速・低コストの処理性能に定評のある次世代型ブロックチェーンです。NFTや分散型アプリなどの開発に適しており、イーサリアムのライバル銘柄として成長してきました。
アメリカ発のプロジェクトであり近年は大手投資会社からの注目も集まっていることから、投資先としても注視されています。ただし過去にシステムダウンが起きているため、スピードと安定性のバランスが課題です。
カルダノ(ADA)
カルダノは、研究と理論に基づいて慎重に開発が進められているブロックチェーンプロジェクトです。創設者の1人は元イーサリアム共同創業者でもあり、2017年9月にローンチされました。
アメリカ国内では、教育や医療分野でのブロックチェーン活用が期待されており、ビジネスよりも社会インフラへの応用に向けた取り組みが多いのが特徴です。地味ながらも、将来的な実用性や信頼性の高さに注目が集まっています。
Coinceckで暗号資産を購入する方法
Coincheckでは、先ほど紹介したビットコインやイーサリアム、エックスアールピーをはじめ、様々な暗号資産を売買することができます。
Coincheckで暗号資産を購入する方法には、以下の2つの方法があります。
- スマホアプリで購入する
- パソコンで購入する
それぞれの購入方法をご紹介します。
スマホアプリで暗号資産を購入する方法
Coincheckのスマホアプリでは、アカウント登録と本人確認を終えたあと、以下の手順でかんたんに暗号資産を購入できます。
- 1.画面下メニューの「販売所」をタップする
- 2.表示されたコインの中から購入したい暗号資産をタップする
- 3.「購入」をタップする
- 4.購入金額を入力し、「日本円で購入」→「購入」をタップする
※Coincheckアプリのダウンロードはこちらから。
パソコンで暗号資産を購入する方法
パソコンで暗号資産を購入する際の手順は、次の通りです。
- 1.Coincheckにログインし、販売所(購入)ページに移動する
- 2.画面に表示されている銘柄の中から購入したい暗号資産を選択する
- 3.購入する数量を入力し、交換する通貨を選択する
- 4.購入金額を確認し、「購入する」をクリックする
Coincheckでは、パソコンからでも簡単に暗号資産を購入することができます。スマホだと画面が小さくて操作しにくいという方でもおすすめの方法です。
まとめ
米国政府の暗号資産業界への対応が変化してきていることは間違いないですが、SECも大統領影響下にあることやトランプ氏の発言は一貫性や実現可能性に疑問が持たれていることは注視しなければなりません。
いっぽうで、米国大統領は中間選挙前までは政策構想の修正をおこないにくい傾向にあるため、中間選挙周辺までは暗号資産やビットコインが注目され続けると考えることもできるでしょう。
暗号資産のみならず世界経済の各指標の変動が大きい時期ですが、自身でリスクを見極めてビットコイン・暗号資産投資を進めてもよいかもしれません。