ビットコインの相場は2022年の大手暗号資産取引業者FTXの破綻などのニュースが影響し、長い間低迷しています。しかし、2024年にビットコインの価値は急上昇し、12
万ドル(1,600万円)を突破しました。ビットコインの価格が上昇した背景には「ドナルド・トランプ大統領」が絡んでいるといわれています。
そこで、本記事ではビットコインの価値が急上昇した理由をわかりやすく解説します。また、トランプ大統領が公約・発言した内容とビットコインの価格上昇の関係性にも触れていきます。
目次
トランプ氏当選後1週間で50%以上の値上がりを見せる
2024年11月にドナルド・トランプ氏が次期大統領に当選確実になり、同年12月にはビットコインの価格は12万ドル(1,600万円)を突破しました。10月時点では1,000万円台を推移していたため、50%以上の値上がりしたことになります。
トランプ大統領の思惑で動く金融市場は「トランプトレード」とも呼ばれています。ビットコインや暗号資産もトランプトレードに含まれていますが、その中でも非常に大きな動きをしているといっても過言ではありません。暗号資産業界にとって大きな追い風となっています。
トランプ氏は2021年ごろは仮想通貨懐疑派だった
大統領選がおこなわれる3年前、トランプ氏はビットコインに対して懐疑的な発言を繰り返していました。SNSでは「ビットコインやその他の暗号資産は、お金ではない。その価値は、非常に不安定で私は好きではない」とコメントしています。「ビットコインは米ドルに対しての詐欺」と強く批判をしていたのは印象的でした。
また、バイデン政権でも暗号資産に対して批判的な考えを持つ議員が多くいました。トランプ氏が暗号資産に対して懐疑的な考えを持っていたとしても、決しておかしなことではありません。
出典:BBC「Crypto world hoping for Trump election win」
上昇の要因
トランプ大統領がビットコインや暗号資産を支持して、相場は大きく上昇しました。しかし、なぜトランプ氏は、ビットコインや暗号資産を支援するようになったのでしょうか。本人から名言はされていませんが、考えられる要因について考察していきます。
仮想通貨推進派の議員が多数当選
暗号資産の非営利団体である「スタンド・ウィズ・クリプト」の調査によれば、今回の選挙で仮想通貨支持派の議員が多数当選しているといわれてます。下院274人・上院20人が当選し、上下院全体(上院100人・下院435人、計535人)の50%以上が、仮想通貨の賛成派です。
次期トランプ政権は暗号資産推進派が多いことから、業界は一気に活性化しました。結果、ビットコインと暗号資産の相場が急激に上昇したものと考えられます。
バイデン政権は暗号資産に懐疑的だった
バイデン政権では、暗号資産に対して消極的で懐疑的な対応をしていました。一部のメディアからは「バイデン氏はビットコインや暗号資産は脅威で、規制をしてまでもつぶそうとしている」といわれるほどです。
また、バイデン氏が指名した米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長も、暗号資産に否定的な考えを持っていました。「暗号資産はもう米国で必要ない」と、SECはバイナンス(Binance)やコインベース(Coinbase)などの大手暗号資産取引所を提訴するほどです。
バイデン政権により、暗号資産業界は強い規制を受け続けていました。しかし、次期トランプ政権では、暗号資産に友好的な政権に変わります。その大きな反動により、暗号資産の相場が急激に上昇したのは自然なことでしょう。
出典:BBC
「Why Tesla, crypto and prisons are Trump trade winners」
トランプ氏が発表したビットコイン関連の公約や発言など
公式の場やSNSでトランプ氏は、ビットコインや暗号資産に有利だと感じられる公約や発言を繰り返しました。とくに、暗号資産業界に大きな影響を与えた内容について触れていきます。
SECの次期委員長にポール・アトキンス氏を指名
トランプ氏はゲイリー・ゲンスラーSEC委員長を交代させ、次期委員長にポール・アトキンスを指名すると宣言していました。アトキンス氏は暗号資産推進派で、暗号資産の規制緩和を提唱してきた人物です。ゲンスラー委員長体制では暗号資産に対して非常に厳しい規制をしてきましたが、アトキンス氏は柔軟な対応を取るといわれています。
トランプ氏は、アトキンス氏を「常識的な規制を追求する、実績あるリーダーだ」と評価しています。さらに「米国をかつてないほど偉大な国にするためにデジタル資産やその他のイノベーションが不可欠であることも認識している」とコメントを残しました。
なお、2024年12月4日、トランプ氏は公約通りにSEC次期委員長にポール・アトキンス氏を指名しました。
出典:CNN
「Bitcoin surges above $100,000 for the first time as Trump picks pro-crypto SEC chair」
米国を「地球上の仮想通貨の首都」にすると発言
トランプ氏は、2024年7月27日テネシー州ナッシュビルの「Bitcoin Conference」でスピーチをおこないました。スピーチではビットコインや暗号資産を強く支持し「アメリカが暗号資産の首都となり、世界のビットコインの超大国となることを実現する」と宣言しました。(原文:promising to make the US the “crypto capital of the planet”.)
出典:BBC
「Why Tesla, crypto and prisons are Trump trade winners」
出典:BBC
「Crypto world hoping for Trump election win」
「国家の戦略的ビットコイン備蓄」を創立すると発言
2024年1月時点で米国が保有するビットコインは約21万枚で全体の約1%を占めます。トランプ氏は、ビットコインを外貨準備金(通貨当局がすぐに使用できる対外資産)の一部として売却せずに保有する可能性を示唆しました。
また、トランプ氏は「国家の戦略的ビットコイン備蓄」を創立すると発言しており、米国政府がビットコインを備蓄した場合、市場への供給量が減少するため、価格上昇が予想されています。(原文:creating a “strategic national bitcoin stockpile” similar to the US government’s gold reserves.)
出典:BBC
「Crypto world hoping for Trump election win」
暗号資産に積極的なイーロンマスク氏を「政府効率化省(DOGE)」に登用
トランプ大統領は「政府効率化省(Department Of Government Efficiency:DOGE)」を新設し、トップに「イーロン・マスク氏」を起用すると発表しました。
マスク氏は大統領選で、トランプ陣営に少なくとも1億1,900万ドル(約180億円)を献金したと報じられています。トランプ大統領の勝利に大きく貢献した人物といえるでしょう。
DOGEは、正式な政府機関ではなく「政府外部からの助言と指導を提供する」諮問委員会だといわれています。主な目的は「政府の官僚機構の解体、過剰な規制の削減、無駄な支出の削減、連邦機関の再編」のようです。
出典:BBC
「【米政権交代】 マスク氏を「政府効率化省」トップに起用、トランプ次期大統領が発表 ラマスワミ氏も抜擢」
まとめ
ビットコインの相場が上昇した理由には、トランプ大統領の公約・発言が大きく影響しています。米国政権も暗号資産に友好的な議員が多く、今後も暗号資産に有利な政策になることが予想されます。今後もビットコインの相場は伸びていく可能性があります。
また、さまざまなメディアで「トランプトレード」の今度について議論がされています。少なくとも、2年後の中間選挙までは公約した体制を持続する可能性があるのではないでしょうか。