
ビットコインには、発行上限が定められています。発行上限を達成すればビットコインは新規発行がされず、プロジェクトが終わってしまうと考える人も少なくありません。しかし、発行上限に到達してもビットコインの価値は下がらず「終わりの日」は来ないといわれています。本記事では、ビットコインが「終わらない理由」やその他のリスクについて解説していきます。
目次
ビットコインの終わりの日とは発行上限到達日を指す
ビットコインの「終わりの日」とは、一般的にビットコインの発行上限に到達した状態を指すことが多いです。サトシ・ナカモトによって設定されたビットコインは無制限に発行されるわけではなく、2,100万BTCが発行されると発行上限となる仕組みを採用しています。
ビットコインの半減期により終わりの日が訪れる
ビットコインには、半減期と呼ばれる仕組みがあります。半減期とはマイニングでマイナーの得られる報酬が、半分になってしまう大きなイベントです。
ビットコインはユーザーの取引の記録・トランザクションをブロックに保存し、ブロック同士を繋げることで成り立っています。マイニングは新しいブロックを生成するための承認作業を指し、マイニングに成功したマイナーにマイニング報酬が支払われます。
マイナーはマイニング報酬をもとに機材を導入したり、電気代をまかなったりするため、マイニング報酬が落ち込むとビットコインの維持作業であるマイニングを継続できなくなる場合があります。
半減期が繰り返し訪れることで、やがてマイニング報酬の一部がゼロになるため、終わりの日と表現されています。
「終わりの日」の予測は2140年
ビットコインが発行上限に達する「終わりの日」は、2140年ごろといわれています。
ビットコインは約10分で1ブロック生成され、21万ブロックごとに半減期が訪れます。半減期の周期は約4年に1回です。すべてのマイニングが終わり、33回目の半減期を迎えればビットコインは発行上限に達します。
ビットコインはマイニングにより維持されている
マイニングは、ビットコインにとって必要不可欠な作業です。ビットコインはブロックチェーン技術によって成り立っていますが、各ブロックのトランザクションの正しさを保証し続ける必要があります。ブロックチェーンの仕組みを維持するために必要な作業がマイニングです。
ビットコインは、ネットワークに参加する不特定多数の参加者(ノード)が、相互に管理をおこなう仕組み(P2P:ピアツーピア)を採用しています。ノードがマイニングによって、トランザクションを記録・承認したり、ブロックを生成したりしています。マイニングが重要な役割を担っているといえるでしょう。
マイニングでの作業は、特定の条件を満たすハッシュ値(一方向にしか変換できない不規則な文字列)を導き出すことです。直前の取引が記録されているブロックのハッシュ値とナンス値(使い捨ての32ビットの値)を用いて、膨大な計算をおこないます。
ビットコインが発行上限に達しても「終わらない」理由
発行上限に達したとしても、ビットコインは終わるわけではありません。ビットコインの発行上限は設計当初から予定されていたものであり、たとえ、発行上限に達したとしても貨幣価値を保ち、機能し続ける可能性が高いといわれています。
ビットコインのマイニング報酬は手数料も含まれる
マイニングによって得られる報酬は「ブロック報酬」と「トランザクション手数料」に分けられます。ブロック報酬とは、新しいブロックを生成したことに対して支払われる報酬で、半減期により減少する報酬を指します。
一方、トランザクション手数料は、トランザクションを処理した際にマイナーに支払われる手数料です。
つまり、ビットコインが発行上限に達したとしても、マイニング報酬がゼロになるわけではなく、ブロック報酬がなくなるだけで、手数料収入は維持されます。
ブロック報酬は半減期を経て段階的に漸減していくため、発行上限到達時点では、マイニング報酬に占めるブロック報酬の割合がかなり低くなっていると考えられるでしょう。
また、マイナーは少しでも手数料が高い取引を優先的に処理して収益を得ようとします。今後、企業や機関投資家による大口送金や企業間取引が増えれば、高額な手数料を伴う取引が安定的に発生し、マイナーの重要な報酬源になるでしょう。
そのため、発行上限に達すること自体がビットコインの「終わりの日」とは考えにくく、仮にブロック報酬が減少することでマイニングの維持が困難になるのであれば、発行上限到達以前に「終わりの日」が来ると考えるのが妥当だといえます。
ビットコインの価値がゼロになる「終わりの日」
発行上限到達ではなく、ビットコインの価値がなくなった場合もビットコインの「終わり」といえるでしょう。しかしながら、現在のビットコインの状況から価値がゼロになる可能性は限りなく低いと考えられます。
ビットコインは、世界中の企業や人との決済手段として非常に優れています。とくに、海外への送金で手数料が格安で済むことがメリットです。今後、暗号資産業界の展開によっては、ビットコインが日常的に使われる日が訪れるかもしれません。
ビットコインの価値がゼロになる可能性がある事例
価値があるといわれているビットコインでも、貨幣価値がなくなる可能性はゼロとはいえません。将来、ビットコインの価値がどうなるかは誰にも予測できませんが、さまざまな要因が価値を下げる要因になり得るでしょう。
量子コンピューターによる暗号解読
現在のノイマン型コンピューターの演算速度を大きく上回るといわれている量子コンピューターは、暗号をもとに価値を維持しているビットコインの脅威です。量子コンピューターの演算速度は、ノイマン型を大きく上回ります。一般的に、今後量子コンピューターの進化によってビットコインの暗号が突破される可能性があるといわれており、ブロックチェーン技術を根底から覆す技術になり得ます。
大規模なハッキング
ブロックチェーン自体ではなく、取引所がハッキングされてしまえばビットコインの価値が下げられてしまう恐れもあります。有名な事例では、マウントゴックス事件が挙げられます。
当時、世界最大の暗号資産の交換業者だったマウントゴックス社が不正アクセスされ、大量のビットコインが流出し、ビットコインの価格は暴落しました。ハッキングをもとにビットコインが暴落した場合、マイニング収益が悪化し、ブロックチェーンが維持されなくなる可能性があるのです。
ブロックチェーンのセキュリティは非常に高く、透明性の高いやり取りが特徴です。しかし、セキュリティがどれだけ高くても、暗号資産自体を扱う企業や団体がハッキングによる被害を受けてしまえば、どうすることもできません。
電力問題・環境保護によるマイニング規制の変化
マイニングをおこなうには膨大な電力が必要です。ビットコインが「プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)」と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムを採用している以上、マイナー同士は高性能なコンピューターを用いてマイニングをおこない、競い合います。
現在の発電施設で需要が満たせなくなると、発電所の増設をおこなう必要があります。
そのため、発電に伴う環境保護の観点から、国家レベルでのマイニング規制が強化される可能性も考えられます。電力が足りなければマイニングができなくなり、ビットコインの価値に大きな影響を与えてしまいます。
暴落とマイニング収益分岐点が乖離する
マイニングで利益と損失が同じになる点を損益分岐点と呼びます。損益分岐点は事業運営の指標になり、継続的に利益を上げるには重要な要素です。損益分岐点の計算式には、主にハッシュレートや変動費・固定費が用いられています。
暴落時にはビットコインの価値が急激に落ち、損益分岐点を大きく下回る可能性があります。マイニングで多額の損失を出し、事業運営に悪影響を及ぼすのであれば、マイニングから撤退する必要も考えなくてはいけません。
現在、多くのマイニングをおこなう企業がハッシュレートの高さ、販売管理費の高騰による課題に直面しています。収益を維持するにはコスト削減を徹底し、利益を出す仕組み作りが求められるでしょう。
ビットコインの終わりの日が到来しにくい理由
ビットコインは比較的新しい技術のため、発行上限や価値の喪失などに対してさまざまな意見がでます。ビットコインに対して強い問題意識や不安を感じてしまうかもしれませんが、悲観的になる必要はないと考えられています。
マイニング報酬がゼロになるのは遠い将来
マイニング報酬がゼロになるのは、2140年ごろといわれています。2025年現在から計算しても100年以上先の話です。将来のビットコインの動向を予測するのは困難を極めます。
仮にマイニング報酬が減少していても、ビットコインの総量は変わりません。世の中の流れによってはビットコインの希少価値が高まり、爆発的にビットコインの価値が上がる可能性もあります。
また、マイニングの報酬がなくなるのは「ブロックを生成したときの報酬」のみです。トランザクションを記録した場合の「トランザクション手数料」は残り続けます。ビットコインのビジネスが今以上に展開していけば、マイナーの需要はより高まっていくことが予想されます。
量子コンピューターの技術進歩速度が不明瞭である
量子コンピューターの実現に向けて多くの課題があり、量子ビットの安定性向上やエラー訂正処理・冷却技術の進展が挙げられています。とくに、量子ビットの不安定さには大きな課題があるといえるでしょう。量子コンピューターで使用される量子ビットは、外部からの干渉や熱などの要因によって不安定になりやすい性質があります。
また、計算中にエラーが起こりやすい問題も無視できません。量子コンピューターはエラーを訂正しながら正確な計算結果を得るため、膨大な数の量子ビットが必要です。現在の量子コンピューターでは、量子ビットの数が不足しており、実現にはまだ時間がかかる見込みです。
ビットコインの保有者が増加している
「デジタルゴールド」としてビットコインを積極的に保有する国や投資家が増加しています。多くの国や企業、投資家がビットコイン市場への関心が高まっているといえるでしょう。
国によって保有目的はさまざまですが、積極的に保有する姿勢を見せているのは、米国、イギリスをはじめとする先進国です。とくに、2025年現在、米国のトランプ大統領がみせたビットコインへの前向きな姿勢は世界中のメディアが注目し、ビットコインの需要を高めました。
ビットコインの終わりの日に備えた投資行動
ビットコインの終わりの日をリスクとして捉えるならば、リスク回避を行う投資行動を取る必要があります。
ビットコインの終わりの日に対する暗号資産運用の一例を紹介します。
新しい技術の暗号資産のリサーチを行う
ビットコインの価格変動に備えるには、最新の情報を日々収集する必要があります。とくに、ビットコインの価格変動は非常に敏感です。国際的な規制の変更や著名人の発言、サイバーセキュリティ事件などのニュースを総合的に掲載するサイトがおすすめです。
誰もが簡単に情報を入手できる時代になりましたが、YouTubeやSNSのインフルエンサーによる情報収集には注意が必要です。迅速に情報を入手できますが、情報の正確性が疑わしいケースも少なからずあり、インフルエンサーの主観が入りやすくなるのがデメリットとして挙げられます。取引所の公式HPなど、暗号資産関連のニュースを専門に扱うサイトを確認するのをおすすめします。
分散投資を行う
価格変動が激しい暗号資産への投資をおこなう場合には、さまざまな分野への分散投資を検討してもよいでしょう。暗号資産だけではなく、株式や不動産、債権など投資の幅を広げることもリスク管理のひとつです。ただし、暗号資産や株式への投資は自己責任です。できる限りリスクを低減するために、下落時に備えた運用をしていきましょう。
余裕を持った資金運用を心がける
ビットコインを運用する場合には、余裕を持った資金運用を心がける必要があります。暗号資産の将来の動きは、誰にもわかりません。ビットコインが急成長しているからといって、全財産を投資してしまうのは大きなリスクになります。生活資金を残したうえで、可能な範囲で資金運用を心がけてください。
まとめ
「ビットコインの終わりの日」とは2種類の意味で使われるケースがほとんどで「発行枚数の上限に達した場合」と「ビットコイン自体が価値を失った場合」です。どちらのケースでも楽観的な考えと悲観的な考えが混在するため、誰も将来を予測できない状態です。
しかし、ビットコインは半減期を迎えるたびに価格は大きく上昇しています。とくに、世界の注目が集まっている影響もあり、2025年8月には過去最高値を記録しました。また、暗号資産は伸びしろがある技術であり、多くの国や企業が注目しています。今後も、ビットコインへの注目は高まっていくといえるでしょう。