仮想通貨元年といわれた2017年には、ビットコインで巨額の資産を築いた人も登場しました。
ビットコインの台頭で長者番付にランクインしている人の一例を挙げると、サトシ・ナカモトやウィンクルボス兄弟などがいます。ビットコイン以外の通貨でランクインした人も含めると、世界には数多くの「億り人」が存在していることが分かります。
世界の仮想通貨長者のことを知るとともに、日本の仮想通貨事情などについても押さえておきましょう。
2017年に急増したビットコイン長者とは?
ビットコイン長者とは、主に2010年以降にビットコインの価格が上昇したのに伴って、巨額の資産を築いた人のことをいいます。
中には、ビットコイン以外のアルトコインの取引で億り人になった人もいます。億り人とは、仮想通貨の取引で日本円で1億円以上の資産を築いた人のことです。
日本でも、2017年の仮想通貨の価格上昇で多くの億り人が登場しました。ビットコインの価格推移を見てみると、2017年1月の最安値は8万円代でした。
これが同じ年の12月には、220万円以上を記録しています。ビットコインが使用開始された当時は1BTCあたり1円にも満たなかったことを踏まえると、急激な価格上昇であったことが分かるでしょう。
世界のビットコイン長者にはどんな人がいる?
こうした仮想通貨の値上がりに上手に乗ることができたのが、ビットコイン長者です。
彼らは長者になるために何か特別なことをしたわけではなく、その多くはただ持っていただけといわれています。仮想通貨の情報を発信しているサイト「UseTheBitcoin」が2018年7月に発表したデータを元に、ビットコイン長者にランクインした人物について紹介します。
サトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto)
まずビットコイン長者番付にはずせないのは、ビットコインの考案者であるとされる匿名の人物、サトシ・ナカモトの存在です。
ビットコインは、2008年11月にサトシ・ナカモトが発表した論文に端を発する通貨です。ですが、サトシ・ナカモトは考案者であること以外、国籍も性別も分かっていません。
2010年までは開発チームと連絡を取っていましたが、翌年の2011年以降、行方が分からなくなっています。そんなサトシ・ナカモトは、発行済みのビットコインのかなりの部分を保有しているとみられています。
初期の頃にマイニングされたビットコインを元に考えると、サトシ・ナカモトが保有するビットコインは110万BTC以上であると推計されています。サトシ・ナカモトはこれまで保有しているビットコインにはほとんど手をつけておらず、法定通貨への換金も行っていません。
もし、保有しているビットコインを売却すれば、一瞬で法定通貨で巨額の資産を築くことができるでしょう。
ウィンクルボス兄弟(Winklevoss twins)
テイラー・ウィンクルボス氏とキャメロン・ウィンクルボス氏の双子の兄弟は、ビットコインの億万長者と言われています。
2018年2月7日にフォーブス誌が発表した「世界の仮想通貨長者ランキング」で、それぞれ9億〜11億ドルの資産を持っていたウィンクルボス兄弟が、4位にランクインしました。兄弟はアメリカ人で、ハーバード大学を卒業しています。
ウィンクルボス兄弟は仮想通貨の長者番付にランクインしていることで知られていますが、元々はFacebookのアイディアを盗用したとして、マーク・ザッカーバーグを訴えたことで有名になった人たちです。2010年の映画「ソーシャル・ネットワーク」で、アーミー・ハマーが1人2役で演じたことでも話題となりました。
2011年に兄弟は訴訟に勝利して、2013年に兄弟はザッカーバーグから得た6500万ドルの賠償金のうち1100万ドルで150万BTCを購入しました。彼らが投資を始めた当時のビットコインのレートは約120ドルでしたが、その後200倍以上に値上がりし、巨額の富を築いたのです。
兄弟の保有しているビットコインは、供給されている全ビットコインの約1%とみられています。兄弟はビットコイン関連のベンチャーや仮想通貨の取引所も立ち上げ、現在でも仮想通貨業界で活躍しています。
ギャヴィン・アンドレセン(Gavin Andresen)
ギャヴィン・アンドレセン氏は、サトシ・ナカモトのビットコイン構想を実現させた人物の一人です。
ギャヴィン・アンドレセン氏は長らくサトシ・ナカモトではないかと見られていた人物の一人でしたが、本人は否定しています。ビットコインの開発に関わる中心的な人物だったため、ビットコイン財団からはその貢献を讃えられて20万ドル分のビットコインを支払われました。
その後は、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボのプロジェクトなどに参画しています。
ロジャー・バー(Roger Ver)
ロジャー・バー氏はビットコインの神としても知られるエンジェル投資家です。少なくとも10万BTCを保有しているとされています。
経済的な自由や個人的な自由を重視するリバタリアンでもあるロジャー・バー氏は、大学を中退してビットコイン関連のプロジェクトに参加するようになりました。
無政府主義者であるロジャー・バー氏は、2014年にアメリカの市民権を放棄してカリブの小さな島に移住しました。ビットコインでの利益は、自分の夢である国家の建設計画に使うと見られています。
また、ロジャー・バー氏はビットコインの総合ポータルサイトを運営しているBitcoin.comのCEOを務めています。現在では、ビットコインキャッシュ(BCH)の普及に力を入れていることで知られています。
ビットコイン以外の仮想通貨で富を築いた人物
次に、ビットコイン以外の仮想通貨に投資することで、世界的な富豪となった人たちがどんな人物なのかをみていきましょう。
クリス・ラーセン(Chris Larsen)
1人目はリップル社の共同創業者として知られる、クリス・ラーセン氏です。
スタンフォード大学でMBAを取得した後、2012年にジェド・マケーレブ氏とともにリップル社を創業しました。ラーセン氏は、発行済のリップルのうち約52億XRPを所有しているともいわれ、2018年にフォーブス誌が発表したアメリカで最も裕福な400人「Forbes 400」のうち383位にランクインされています。
このランキングにはアマゾンのジェフ・ベゾス氏や、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏など、世界を代表するIT業界の著名人がランクインしていますが、これまで仮想通貨の業界人が入ることはありませんでした。
保有する仮想通貨資産は、発表された当時で75〜80億ドルといわれています。そのため、この発表は大きな話題を呼びました。
ジョセフ・ルービン(Joseph Lubin)
2人目はイーサリアムの共同創業者であるジョセフ・ルービン氏です。
ジョセフ・ルービン氏は、世界でも有数のブロックチェーン企業であるコンセンシスの創業者でもあります。コンセンシスは、企業にセキュリティ監査や仮想通貨の新規発行に関わるサービスを提供しています。
キャリアのスタートはロボット工学の分野でしたが、その後金融の分野に転向しました。イーサリアムの最大の保有者としてみられており、推定仮想通貨の資産は10〜50億ドルです。仮想通貨長者番付ランキングでは2位にランクインしました。
マシュー・メロン(Matthew Mellon)
3人目はメロン財閥の御曹司であるマシュー・メロン氏です。メロン財閥は、アメリカのモルガン財閥やロックフェラー財閥と並ぶ名門です。
メロン家はアメリカでも有数の裕福な家柄として知られています。マシュー・メロン氏は1870年代にメロン商会やメロン銀行を創業したトーマス・メロンの直系の子孫です。
2016年のフォーブス誌のランキングでは、米国内のリッチなファミリーの22位にランクインし資産総額は115億ドルと伝えられました。マシュー・メロン氏は長年薬物依存に苦しんでおり、仮想通貨を始めた当時も、家族は彼が薬物乱用者にありがちな妄想に取り憑かれていると考え、投資をやめさせようとしていたといいます。
実際、初期の頃に投資していたビットコインは、家族の説得に応じる形で手放しています。その後、銀行や金融機関のプロジェクトに用いられるリップルに魅力を感じたメロンはXRPに200万ドル投資し、仮想通貨で9〜10億ドルの資産を築きました。
しかし、彼は薬物依存を克服できず2018年4月に亡くなったと伝えられています。
日本にはどれくらいいる?国内のビットコイン長者
これまで海外の仮想通貨長者を紹介してきましたが、日本国内にも仮想通貨で資産を築いた人はいます。
2017年の確定申告で雑所得の収入が1億円以上だったのは549人、そのうち仮想通貨の取引による収入を申告したのは331人いたことを、2018年5月に日経新聞が報じました。
集計の対象となったのは仮想通貨を売却して、利益を確定したのちに申告した人だけとなっています。確定申告しなかった人や、利益を確定させずに仮想通貨のまま保有していた人もいたであろうことを考えると、300人強という数字は少ないのではないかという業界関係者の見方が伝えられています。
仮想通貨の税金事情
業界関係者の声にもあるように、仮想通貨の取引で利益が出ているにもかかわらず申告をしていない人が相当数いると考えられています。そこで続いては、仮想通貨の税金事情を知っておきましょう。
仮想通貨の取引で得た利益にかかる税金について
仮想通貨を始めるなら、仮想通貨取引にかかる税金の仕組みを理解しておくことが大切です。まず、仮想通貨による所得は、雑所得に分類されることを覚えておきましょう(2019年5月末時点)。
投資という点では同じように見える株やFXとは、税率が異なります。株やFXは、いくら利益を出しても、利益に対する税金は申告分離課税のため、一律20.315%(所得税15.315%+住民税5% ※所得税に復興特別税を含む)となります。
しかし、仮想通貨には累進課税が適用されています。利益が多くなれば税率が高くなる仕組みとなっており、税率は5%から最大45%まで幅があります。
利益が4,000万円を超えると所得税は45%、ここに10%の住民税が加算されるため、実際に負担する税率は55%となります。
詳しくはこちら:仮想通貨にかかる税金とは?計算方法から確定申告のやり方まで解説
※税金等の詳細につきましては管轄の税務署や税理士等にお訊ねいただくか、または国税庁タックスアンサーをご参照ください。
確定申告を怠ると膨大な税金が課せられる恐れも
確定申告したことで半分以上を税金に取られるくらいなら、申告しない方がよいと思う人もいるかもしれません。しかし、確定申告をしないとペナルティが課せられます。
申告をしなかった場合には、本来納付すべき税額に対して50万円までは15%、それを超える部分については20%の無申告加算税がプラスされます。なお、税務署の指摘前に自主的に申告をした場合には無申告加算税が軽減されます。
また、本来所得税は毎年3月15日までに納付することになっていますが、期限後の申告で所得税を納める場合は、申告書を提出した日が納付期限となります。さらに本来納める税額に加えて、延滞税も支払う必要があります。
黙っていれば分からないと思うかもしれませんが、そう考えるのは早計です。マイナンバーで個人の金融取引の履歴を簡単に調べられるようになったことに加えて、仮想通貨の盛り上がりで、国は仮想通貨の取引に対して監視の目を光らせています。
仮想通貨で多額の利益を出した場合は、必ず確定申告をするようにしましょう。
仮想通貨で得た利益に発生した税金を抑える方法とは
仮に、仮想通貨の取引をして巨額の資産を作ることに成功したとします。
しかし、日本では仮想通貨取引は総合課税の対象であり、多いときは半分以上を税金として納めなければなりません。億り人を目指して仮想通貨を始めたのに税金で持っていかれてしまうと、やる気を削がれるという人も多いのではないでしょうか。
そこで少しでも納税金額を抑えるために、ここでは2つの方法を紹介します。
1. トレードの頻度を調整する
1つは仮想通貨同士のトレードでも課税対象となるため、トレード頻度を調整することです。
取引の機会が減れば、利益が計上される機会も減ります。これによって、結果的に課税対象額を抑えられることもあるでしょう。
2. 含み損を決済して確定する
もう1つの方法は、保有している仮想通貨に含み損が発生している場合に、あえてその通貨を決済して損を確定させておく方法です。
含み損とは、株式や仮想通貨などの時価が、取得時の価格を下回っているときの損失のことをいいます。雑所得は他の所得とは損益通算ができませんが、同じ仮想通貨同士であれば、同一年度内で損益通算は可能です。
損失を確定させることで、仮想通貨全体の利益を圧縮できるかもしれません。
仮想通貨取引を始めてビットコイン長者を目指すには
世界には仮想通貨で巨額の財産を築いた人がたくさん存在します。
海外に存在する億り人の資産規模には及ばないかもしれませんが、日本国内でも少なくないビットコイン長者が誕生しています。
仮想通貨で成功した人の多くは、世間が仮想通貨に注目する前に取引を始めていますが、数百万〜数千万円単位で元手を用意できる人は、今からでも一定の成功を収められるかもしれません。
一方、元手が少ない人が億り人を目指すなら、アルトコインの中で、まだ世の中から大きな評価を得ていない通貨を発掘することも必要かもしれません。仮想通貨に使える余剰資金のある人は、まずは仮想通貨の取引所の口座開設から始めてみてはいかがでしょうか。