暗号資産/ビットコインETFとは?国内の状況と上場が却下された理由とは?

この記事でわかること

ビットコインETFとは、ビットコイン価格に連動したETF(上場投資信託)のことです。
ビットコインETFは今、かなり注目されているトピックです。事実として2021年10月19日、アメリカのニューヨーク証券取引所において、ビットコインの先物価格に連動したETFが上場しました。
このニュースは暗号資産業界外からの注目度も高く、これを皮切りにより多くの投資家の投資対象として、暗号資産であるビットコインの選択肢が生まれました。
しかしながら、

  • ビットコインETFの概要
  • なぜビットコインETFが注目されているのか

等のトピックをしっかり理解できている方は少ないと思います。

そこでこの記事では、ETFの基礎知識から最新の暗号資産市場への活用に至るまで網羅的な情報をお届けします。業界内で盛り上がっているトピックからは、投資チャンスが生まれる可能性が高いです。ぜひ本記事の内容をご覧いただき、今後の投資判断のご参考にしていただければ幸いです。

目次

そもそもETFってどういうものなの?

ETF

ETFとはExchange Traded Fundの略称であり、取引所で取引される投資信託(上場投資信託)のことを指します。上場投資信託とは証券取引所に上場している投資信託を意味し、特定の指数(日経平均株価など)に連動する仕組みです。

ETFは日銀(日本銀行)が日本のデフレ脱却を目指し、金融緩和のため2013年4月から開始しました。ETFはさまざまな種類から選ぶことができ、商品の性格上、自然に分散投資されるという特徴があります。

ETFは主に、REIT(不動産投資信託)・コモディティ(先物)・レバレッジ型(ブル型)・インバース型(ベア型)と呼ばれる種類があります。

ETFは通常の株式と同様に市場でいつでも売買することができ、信用取引も可能です。売り買いの価格は、取引所で買い手と売り手の需給によって決定されています。

株式投資と投資信託のそれぞれの特徴を合わせ持っており、一般の人でも気軽に売買できることが、ETFのメリットだといえるでしょう。

現物ETFと先物ETFの違い

ETFには主に、現物ETFと先物ETFという2つの種類があります。
2021年10月19日にアメリカ合衆国のニューヨーク証券取引所において上場したビットコインETFは先物価格に連動したETF、いわゆる先物ETFに分類されるETFです。
この章では2つのETFの種類について詳しく解説していきます。

現物ETFとは

現物ETFとは、その名の通り金融商品の現物に投資するETFです。
現物ETFの価格は、投資対象の金融商品の現物価格との連動を目指しています。

現物ETFの購入者は、ETFを通常の株式や債券と同じように市場で売買することができます。
個別の株式や債券よりも、ETFにすることで市場における流動性が向上し、取引に際する利便性は向上します。

先物ETFとは

一方で先物ETFとは、先物取引に投資を行うETF、又は先物取引の価格を用いる指標(インデックス)にETF価格が連動するETFのことです。

2021年10月19日にアメリカで初めて暗号資産のETFとして承認されたビットコインETFは、この先物ETFに該当します。

先物取引とは金融デリバティブ(派生商品)の一つです。「あらかじめ定められた期日」に株式や債券といった「特定の金融商品」を「あらかじめ定められた価格」で売買することを約束する取引のことを指します。

ビットコイン先物ETFが上場することで、暗号資産取引所の口座や暗号資産ウォレットを開設せずともビットコインへの投資が可能となります。より多くの投資家層へビットコイン投資を拡大させていくための、大きな要因になる可能性があります。

ビットコインETFのメリットは何?

メリット

ビットコインETFの主なメリットには、例えば下記の5点が挙げられます。

  • 1.暗号資産の信用が高まる
  • 2.機関投資家による資金が流入する
  • 3.信用取引ができる
  • 4.流動性が高く売買しやすい
  • 5.税金面でのメリット

1. 仮想通貨の信用が高まる

1つ目は、暗号資産の信用が高まる可能性があることです。

ビットコインETFが証券取引所に上場したという事実は、ビットコインという金融商品が取引所の厳しい審査に合格したことを意味します。取引の透明性やセキュリティ確保など、投資家保護が一定レベルを超えている金融商品として、ビットコインがある程度認められたことの裏付けです。

上記より、ビットコインETFの上場は、投資対象として適正だと取引所が認めたことになるため、暗号資産の社会的信用が高まるとも言えるでしょう。

2. 機関投資家による資金が流入する

2つ目は、機関投資家による投資資金が流入する可能性があることです。

機関投資家は、預かった資金を安全に運用する義務があります。そのため、投資家保護が十分でないものには投資できないのです。

仮想通貨の取引所でビットコイン(BTC)を購入することができなくても、ビットコインETFが上場を果たせば、そちらは投資対象に加えることができます。

その結果、ビットコイン(BTC)に資金が流入し、価格上昇などが期待できると言われています。

3. 信用取引ができる

3つ目は、信用取引ができることです。ETFは売りから入ることもできます。
価格下落局面でも取引が成立しやすくなり、取引がより活発になる可能性があります。

加えて信用取引を活用することで、少ない投資金額でもハイリターンを狙える可能性があります。レバレッジという倍率の設定を行うことで、自分の元手以上の取引金額でトレードを行うことができます。結果的に、大きなリターンを獲得できる可能性があるのです。
ただし、信用取引は大きなリターンを狙いやすい一方で、それに伴って背負うリスクが増加します。投資家は、十分注意して投資判断を行う必要があります。

4. 流動性が高く売買しやすい

トレーダーにとって、ストレスのない取引を行うためには高い流動性が大切です。流動性が低い状態だとトレーダーが希望する価格での売買が成立しずらくなり、約定までの時間も長くなります。

従来よりも大規模な売買を行いたいというニーズがあり、なおかつ運用資金が潤沢な方にとっては、ETFの登場によってビットコインへ投資するハードルが低下したと考えることができます。

税金面でのメリット

5つ目は、ケースによっては税負担が減少する可能性があることです。

ビットコイン(BTC)の売却益は、雑所得として総合課税の対象とされています。総合課税の場合、所得が高いほど税率が高くなる仕組みです。

一方、ビットコインETFは、金融商品として申告分離課税の対象となります。申告分離課税の場合は、税率は一定です。そのため、非常に大きな利益を手にしたときに、税負担が少なくなるメリットがあります。

ビットコインETFのニュースが与えるチャートや値動きへの影響は?

不安

ビットコインETFに関連するニュースは、ビットコインの価格や暗号資産市場全体に対して非常に大きなインパクトがあります。事実として、ニュースが発表された前後の価格変動を観察すると、顕著な暴落と暴騰を観察することができます。

たとえば、ウィンクルボス兄弟が行ったビットコインETF申請がSEC(米証券取引委員会)に却下された際、ビットコイン価格は急落しました。

申請却下が発表される前までは、承認によって機関投資家が参入し、ビットコイン(BTC)の取引量が増加すると市場は期待していました。そのため、ビットコイン価格は急騰していたのです。しかし、申請却下によりその期待は失望に変わり、ビットコイン価格の暴落を引き起こしました。

チャート

引用:ビットコイン/円(BTC/JPY)

一方で2021年10月15日にSEC(米証券取引委員会)がビットコイン先物ETFの取り扱いをアメリカで初めて承認した際、ビットコイン価格は急上昇しました。

当時のチャートは上掲のようになっています。ビットコイン先物ETFが承認された2021年10月15日のチャートをご覧いただくと、ビットコイン価格が一日で急上昇し日本円建てで700万円を突破したのが分かると思います。なおこの日の高値である714万円は、ビットコインの過去最高値になっていました。

ビットコインETFの申請と却下、承認までの経緯

ビットコインETFの承認までには、幾多の紆余曲折がありました。
この章では、これまでのビットコインETFの申請と却下の歴史を振り返っていきましょう。

ウィンクルボス兄弟の申請

まず、2017年3月に、ウィンクルボス兄弟がビットコインETFの申請を行い、SEC(米国証券取引委員会)に却下されるということがありました。

その後、2017年12月には、CBOE(シカゴ・オプション取引所)にビットコイン先物取引が上場を果たします。先物取引が承認されれば、ビットコインETFも上場が認められるのではないかと期待が高まりました。

しかし、2018年1月、SECがビットコインへの懸念点を発表します。それを受けて、ビットコインETFを申請していた4つのファンドによる申請取消が行われました。上場が認められる条件を満たさないと自主的に判断し、出直すために申請取消を行ったのです。

CBOE(シカゴ・オプション取引所)による申請

2018年3月には、CBOEがSECにビットコインETFの承認を要請するに至り、いくつかのファンドも続いて申請を行います。ただし、ビットコインETFの上場は厳しく、2018年8月に、SECは9つのビットコインETFの承認拒否を行ったのです。

その後、2018年8月に、SECの上級幹部によるビットコインETF再審査開始の発表が行われます。2018年10月には、SECが再審査中のビットコインETFに修正箇条を提出し、市場では承認の可能性が出てきたという観測が出ている状況です。

Bitwise(ビットワイズ)による申請

2019年1月、資産運用会社の「Bitwise(ビットワイズ)」がビットコインETFを申請しました。しかし申請から9ヶ月後の2019年10月、相場操縦の可能性や暗号資産市場における詐欺的行為の横行という問題が解決されていないという理由で上場を拒否されています。

カナダ、バミューダ、ブラジル、ドバイでのビットコインETFの承認

ビットコインETFが世界で初めて承認された国はカナダです。
2021年2月11日にカナダの資産運用会社「Purpose Investments(パーパス・インベストメンツ)」が、ビットコインETFがカナダ規制当局から承認されたと発表しました。

またカナダ以外にも、バミューダ、ブラジル、ドバイでのビットコインETFの承認事例があります。
2021年2月、バミューダ証券取引所でビットコインとその他5銘柄を組み入れた暗号資産ETFが承認を受け、取引が開始されました。この暗号資産ETFはビットコインとイーサリアムで組み入れ銘柄の約96%を占めています。

2021年6月23日には、CVM(ブラジル証券取引委員会)に承認されていたビットコインETFの取引が、ブラジルの証券取引所「B3」にて開始されました。

そしてドバイでは、同じ2021年6月23日にカナダの資産運用会社「3iQ社」のビットコインETF「QBTC」が、Nasdaq Dubai(ナスダックドバイ)という取引所にて取引が開始されました。

プロシェアーズ社のビットコイン先物ETFの承認

2021年10月15日、SEC(米証券取引委員会)がビットコイン先物ETFの取り扱いをアメリカで初めて承認しました。

承認されたビットコイン先物ETFは、「Proshares(プロシェアーズ)」というETF群の「プロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETF」です。なおProsharesとは、アメリカの投資ファンド会社である「ProFunds Group(プロファンズ・グループ)」が扱うETFの総称です。

このETFは先物ETFですので、ETF自体の価格は実際のビットコインの現物価格に直接連動するわけではなく、ビットコインの先物取引の価格に連動します。

ビットコイン先物ETFが承認されたというニュースは市場にも影響を及ぼし、ビットコイン価格は日本円建てで700万円を突破して過去最高値を記録しました。

アメリカで2、3番目となるビットコイン先物ETFの登場

なお、ビットコイン先物ETFには既に2、3番目が存在しています。
ビットコイン先物に連動するETFとしてはアメリカで2番目となる「バルキリー・ビットコイン・ストラテジーETF」が2021年10月22日に上場しました。

加えてアメリカで3番目のビットコイン先物ETFである「ヴァンエック・アンド・ソリッドX・ビットコイン・ストラテジーETF」は、2021年11月16日にアメリカのCBOE(シカゴ・オプション取引所)に上場し、取引が開始されました。

なおヴァンエック社が申請した現物のビットコインETFは、2021年11月12日にSEC(米証券取引委員会)から非承認となってしまいました。理由は依然として「相場操縦や詐欺的行為を防ぎ、投資家の利益を守るための要件を満たしていない」というものでした。

今後、ビットコインETFが盛り上がっていくに連れて、ビットコインの注目度も向上していく可能性が高いです。とりわけ現物のビットコインETFが承認された際には、今まで以上に市場への好材料となるでしょう。

時価総額2位の暗号資産、イーサリアム(ETH)のETFへの期待

ビットコインETFの承認が暗号資産市場を盛り上げたのを皮切りに、イーサリアム(ETH)関連のETFに関する注目も高まっています。イーサリアムとは時価総額がビットコインに次ぐ2位で、ビットコインとは異なるユースケースを想定されて開発された暗号資産です。

事実として、アメリカの資産管理会社「Kelly Strategic Management(ケリー・ストラテジック・マネジメント)」は2021年11月29日に、イーサリアムの先物ETFの申請をSECに提出しています。もしこの申請が承認された場合、暗号資産市場にとってかなりの好材料となり得ます。イーサリアムの価格上昇も期待できるでしょう。

ブラックロックがビットコイン現物ETFを申請

この出来事をきっかけに、ビットコイン現物ETF承認への風向きが変わり始めたと思う方も少なくはないのでしょうか。

2023年6月15日、世界最大の資産運用会社であるブラックロック(BlackRock)が、そのETFブランド「iシェアーズ(iShares)」を通じて、ビットコイン(BTC)を基にした現物ETFの設立を目指していることが明らかになりました。

ブラックロックが米証券取引委員会(SEC)に提出した書類によると、この新しいファンドは「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(iShares Bitcoin Trust)」と命名され、その主な資産はカストディアンである暗号資産取引所コインベース(Coinbase)が保有するビットコインによって構成されます。

これまでSECは、グレイスケール(Grayscale)、ヴァンエック(VanEck)、ウィズダムツリー(WisdomTree)などの資産運用会社が提案したビットコイン・スポットETFの申請を却下してきました。しかし、ブラックロックは10兆ドル(約1400兆円)を超える運用資産残高(AUM)を持ち、CEOのラリー・フィンク(Larry Fink)はSECやその委員長であるゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)と匹敵する政治力を有しているため、今回の申請には大きな注目が集まりました。

このニュース発表後、ビットコイン価格は約1%上昇し、2万5700ドル手前まで反発しています。

グレールスケールがSECに訴訟で勝利

2023年8月29日、暗号資産運用会社グレースケール・インベストメンツが、米証券取引委員会(SEC)に対する裁判で勝利を収めました。

グレースケールは、店頭取引されているグレースケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)をビットコインの上場投資信託(ETF)に変更するために申請していましたが、SECはこれを却下。しかし、米国裁判所は8月29日の提出書類で、控訴裁判所の判事ネオミ・ラオ氏がグレースケールの再審査申請を認め、SECによるGBTC上場申請の拒否を無効とするよう命じました。

引用:X(旧Twitter)

グレースケールのCEOマイケル・ソネンシャイン氏は、法律チームが裁判所の意見を「積極的に検討中」であると述べ、この勝訴を受けてビットコインは約2万8000ドルまで価格が一時上昇しました。

コインテレグラフによるブラックロックETF承認との「誤報」

10月16日、米資産運用会社ブラックロック(BlackRock)が規制当局より現物ビットコインETF(上場投資信託)の承認を受けたという米暗号資産(仮想通貨)メディアのコインテレグラフ(Cointelegraph)による報道を否定したことで、一時ビットコイン(BTC)価格が突然急騰し、その後急騰以前の価格に戻るという激しい値動きを見せました。

コインテレグラフは16日、米証券取引委員会(SEC)がブラックロックによる現物ビットコインETFの申請を承認したと公式Xで速報ニュースとしてポスト。しかし、その後同メディアはポストを一部修正し、その後削除対応を行いました。

引用:Cointelegraph

誤報という少し残念な形になってしまったものの、誤報による価格高騰から市場のビットコイン現物ETF承認への期待の大きさが顕著に現れたニュースとなったと言えるでしょう。

ビットコイン現物ETFが米証券保管振替機関(DTCC)のリストに一時掲載、承認期待高まる

2023年10月24日、ビットコインの価格が年間最高値を更新し、一時約3万5000ドルまで高騰しました。この価格上昇の一因となったと思われる出来事として現物ビットコインETFが米証券保管振替機関(DTCC)のリストに掲載された件が挙げられます。掲載されていたETFはブラックロックが米証券取引委員会(SEC)に申請中の「アイシェアーズ・ビットコイン・トラスト(iShares Bitcoin Trust)」。ティッカーシンボル「IBTC」としてDTCCのウェブサイトにあるETF一覧に掲載されていました。

引用:X(旧Twitter)

一度「IBTC」がリストから削除されたものの、翌日25日には再掲載された。なお、実はIBTCは同年8月からDTCCのリストに掲載されていたとも報告されており、リストへの掲載は規制当局の承認を意味するものではないとも説明されています。
しかし、ビットコイン価格が年間最高値を更新した点からも見て取れるように、市場はビットコイン現物ETFが認可される兆しに大きな期待を抱いていることが分かります

SECがビットコイン現物ETFを承認

そしてついに、2024年1月10日、米証券取引委員会(SEC)は計11本のビットコイン現物ETFを承認すると発表しました。

今回承認されたのは米資産運用大手のブラックロックやフィデリティ、アーク・インベストメンツなどが申請していた10本と、グレースケール・インベントメンツが求めていたビットコインで運用する未上場投資信託のETF転換です。

ビットコイン現物ETFが承認されたことで、投資家はSECの監督下にある証券会社の証券口座を通じて株式などと同様に売買することができ、仮に証券会社が破綻しても投資家の資産は保護されます。加えて7兆ドル(約1,000兆円)の市場規模を持つETFには、金や不動産に投資するETFが既に多く存在し、これにビットコインの現物ETFが新たに加われば、これからより機関投資家や個人投資家がETFを投資対象に組み入れやすくなるでしょう。

審査をしているSEC(米証券取引委員会)はどういう機関?

ビットコインETFの上場申請があった場合における承認可否のための審査については、SEC(エスイーシイー)が行っています。SECは、Securities and Exchange Commissionの頭文字をとった略語です。

日本語にすると米国証券取引委員会のことで、投資家保護を目的として設立されました。主な機能は、市場における証券取引で違法行為が行われていないかどうかの監視などを通じて、投資家保護を実現することです。

SECは、アメリカの連邦政府機関で、日本の証券取引等監視委員会とほとんど同じ機能を果たしています。アメリカにも、日本における金融商品取引法と同じような法律である証券取引法があり、その法律に基づいて活動をしている点が特徴です。

市場の監視や証券会社の管理などを行うことによって、投資家が損害を受けないように日々活動しています。ビットコインETFの承認可否判断についても、投資家保護の観点から問題がないかどうかが焦点です。

日本でビットコインETFは取引できるのか?

ここまでETFの概要、承認による価格変動の動向、承認までの歴史を丸っと解説してきました。
ここまでのトピックを理解した上で、
「では実際に日本でビットコイン先物ETFを購入することはできるのか?」
という疑問が出てくると思います。

結論としては、日本でビットコインETFを取引することはできません(2021年11月時点)。
その理由には、日本の金融庁の暗号資産投資に対するスタンスが起因しています。

日本国内の証券会社において海外取引所に上場したETFが取り扱われるためには、海外で上場したETFに関する日本の金融庁に向けた申請が必要です。例えばアメリカで最も早く承認されたビットコイン先物ETF「プロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETF」の場合、運営会社の「ProFunds Group(プロファンズ・グループ)」が届出書を日本で提出する必要があるのです。

ビットコインをポートフォリオに組み込む意義

ビットコインETFが日本で承認されない理由について理解いただけたと思います。
ここではビットコインETF、ないしビットコインを自身の資産ポートフォリオに組み込む意義について解説してきます。なおポートフォリオとは、自身が運用する資産や金融商品の割合や組み合わせ方を指す言葉です。

インフレに対するヘッジ手段

ビットコインはインフレに対するヘッジ手段にもなり得ます。
その決定的な理由は、ビットコインの総供給量が2100万枚と定められているからです。ビットコインの供給量が一定である点は、ビットコインがインフレに対して強い資産であるということを示しています。

同じようにインフレに対するヘッジ手段として想像しやすいのはゴールド(金)だと思います。しかしゴールドは将来的な採掘量がきっちりと定められているわけではありません。もしかすると、新たな金脈が発見されて、全体の供給量が増加することも考えられます。それと比べると、ビットコインは総供給量が2100万枚にきっちりと定められているため、供給量の側面だけで見ると金よりも適切なインフレへのヘッジ手段だと言えるのではないでしょうか。

ここでインフレについて、少しだけ詳しく解説します。
インフレという言葉は、モノの値段が上昇することだと認識されている方が多いと思いますが、厳密に言うとこのインフレの定義は異なります。インフレとは、法定通貨の価値が減少することです。

一般的にモノの供給量が多くなると、そのモノの価格は低下します。これは法定通貨にも同じことが言えます。コロナ禍における各国政府は、大規模な金融緩和を行い経済のパニックを沈めようとしました。この金融緩和において大量に法定通貨が発行され、法定通貨自体の価値が低下したのです。

法定通貨の価値が減少すると、相対的にモノの価格は上昇しますよね。事実として、コロナ禍における金融緩和は世界同時株高を発生させました。この事例は、政府の匙加減によって法定通貨の発行量が決定できてしまうという問題点を浮き彫りにしました。

政府によるインフレ進行が止まらなかった場合において、ビットコインは政府に依存しないインフレヘッジの手段になり得ます。

ビットコインETFのまとめ

今回の記事では、ビットコインETFに関する包括的な内容を紹介しました。
あらためてこの記事でお伝えしたかった事項をまとめます。

  • ETFの概要やメリット
  • 先物ETFの仕組み
  • ビットコインETFに関するニュースが市場に与える影響
  • ビットコインETFの申請や却下、承認までの経緯
  • ビットコインETFの承認を行うSEC(米証券取引委員会)とはどのような機関なのか
  • ビットコインETFが日本で取引できない理由
  • ビットコインをポートフォリオに組み込む意義

ビットコインETFが承認されることで、暗号資産がより広く投資家にとって身近な存在になります。

将来的には現物のビットコインETFが承認されることで、ビットコインへの投資が一般的になる世界が到来する可能性があります。その際の価格上昇の恩恵を受けるため、今からビットコインへの投資を開始することをおすすめします。
この記事が、ビットコインETFについて知るための参考情報としてお役に立てれば幸いです。