ブロックチェーンゲーム(BCG・NFTゲーム)の心臓部であるエコシステムとは?その特徴と重要性を解説

ブロックチェーンゲーム(BCG・NFTゲーム)の心臓部であるエコシステムとは?その特徴と重要性を解説

国内ゲーム会社のブロックチェーンゲーム(以下BCG)開発表明やBCG企業が東京ゲームショウに出展するなど、徐々に日本国内のBCGへの熱が高まりが見受けられます。

娯楽として親しまれていたゲームが「Play to Earn」と言われるようにゲームをプレイしてお金を稼ぐことが可能になりました。本記事では、ブロックチェーンの活用により、これまでとは違った体験や価値を生み出すBCGの心臓部とも言えるエコシステムについて解説をしていきます。

 

寄稿者工藤北斗

 

大学卒業後、放送局でテレビドラマ制作、自動車メーカーでエンジニアを経験した後、22年10月コインチェック入社。入社以前は、ブロックチェーンゲームギルドを運営しており、個人としても日々ブロックチェーンゲームをプレイ中。根っからのゲーマーであり、某スマートフォンゲームの国内大会で日本3位の成績を収めた。  

ブロックチェーンゲーム(BCG・NFTゲーム)におけるエコシステム

ブロックチェーンゲーム(BCG)においてエコシステムは非常に重要な存在です。BCGの心臓部分といっても過言ではありません。それらの重要性について説明する前に、まずはBCG、エコシステムのそれぞれについて簡単に説明します。

ブロックチェーンゲーム(BCG・NFTゲーム)とは

BCGとは、ブロックチェーンを利用して作られたゲームのことでブロックチェーンゲーム(BlockChain-Game)の頭文字をとったものです。

それぞれのゲームが個々にトークン、NFTを発行するなど独自のエコシステムを有しています。
ゲームをプレイすることでそれらのトークンが入手可能で、「Play to Earn」と呼ばれるようにゲームをして仮想通貨を稼ぐことが可能です。

エコシステムとは

エコシステム(ecosystem)とは、ブロックチェーンで発行された仮想通貨によって成り立つ社会・経済・仕組みなどのことです。

ブロックチェーンの活用により、誰もが独自の仮想通貨を容易に発行できるようになりました。特定の仮想通貨が使用できる範囲ないし特定の仮想通貨が新たに創り出す世界のことをエコシステムといい、その仮想通貨を元にした新たな社会が創り出されます。

ブロックチェーンゲーム(BCG・NFTゲーム)におけるエコシステムの重要性

現実世界の社会において紙幣が大量に発行された場合、社会に流通する紙幣が増え、紙幣の価値は下がってしまいます。これと同じ現象がBCGの世界においても起きる可能性があります。

BCGではユーザーがゲームをプレイすることでトークンを入手することが可能です。しかし、それらが無計画かつ無限にプレイヤーが入手できた場合、上記で述べたようなインフレが起きてしまい、トークンの価値は下がってしまいます。
トークンの価値が下がることで新規のユーザーはゲームに参入しにくく、また既存ユーザーの数も減少していってしまい、最終的にはゲーム自体の持続が困難となってしまいます。

このような現象を起こさないために、発行されるトークンの量を制限したり、トークンの使用先などを緻密にエコシステムとして設計する必要があります。

BCGが世に出て以降、様々なエコシステムが設計されていますが、未だ絶対的な正解と言われるエコシステムは登場していません。現実世界において国家ごとに法律や経済政策が異なるように、もしかしたら絶対的な正解がないのかもしれません。

トークン数によるエコシステムの種類

エコシステムと独自のトークン発行は、密接な関係にあり、BCGが世に出て以降、トークンを有した様々なエコシステムが登場しました。最初期のBCGでは、トークン発行は行われておらず、独自トークンがないものでした。
その後、独自トークンを1つ発行したシングルトークンと呼ばれる形態が登場しました。さらに、ガバナンストークン、ユーティリティトークンと言われる2つの独自トークンを発行するデュアルトークンが登場し、現在まで主流となっています。

独自トークンなし

独自トークン発行を行っていないBCGでは、NFTとイーサリアム(ETH)などのブロックチェーンのネットワーク基軸通貨を用いてエコシステムが構成されます。

BCGで発行される独自トークンは市場価格のボラリティが大きく、価格が暴騰暴落しやすい特徴があります。独自トークンを発行しない場合、時価総額、出来高が非常に大きいネットワーク基軸通貨を使用するため、BCGで使用するトークン価格のボラリティが小さくなることが特徴です。

代表的なゲームタイトルは、世界各国のクラブと公認契約を結んでおり、当社のNFTマーケットプレイス「Coincheck NFT」でも取り扱っている「Sorare」です。当初はサッカーリーグのみでしたが、現在はアメリカバスケットボールリーグのNBA、アメリカ野球リーグのMLBなど3種のスポーツを取り扱っています。

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引用:Sorare

実名選手のカードであるNFTを集めてオリジナルのチームを結成し、現実世界での試合成績がゲーム上のスコアに反映され、そのスコアによって報酬としてETHやレアカードNFTを入手することができます。報酬で得たETHを取引所などで交換したり、NFTを売買したりすることによってユーザーは利益を得ます。

シングルトークン

シングルトークンでは、1種類の独自トークンとNFTを中心にエコシステムが構成されます。

独自トークンの特徴としては、外部環境の影響を受けず、開発運営がコントロールしやすいところです。独自トークンを発行せずにネットワーク基軸通貨を使用する場合、ゲーム本体に関係ない部分での影響を受ける可能性があります。また、デュアルトークンと比較するとトークンが一つのため、エコシステムがシンプルになるメリットもあります。ユーザーは、この独自トークンを取引所などで法定通貨と交換することにより利益を上げることができます。

代表的なゲームタイトルとしては、職業をテーマとしたNFTカードバトルの「JobTribes」です。独自トークンとして、DEAPcoin(DEP)を使用します。

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引用:JobTribes

職業をモデルとしたカードは有名漫画家などによってデザインされ、NFTカード化されています。NFTカードは、他のユーザーに貸出や売買することも可能となっています。またDEAPcoinは、JobTribesのゲームだけでなく、NFTゲームプラットフォーム「PlayMining」でも使用可能です。PlayMiningではJobTribes以外にも様々なBCGがあり、複数のBCGで一つのエコシステムを構成しているとも言えます。

デュアルトークン

デュアルトークンと言われるエコシステムでは、ガバナンストークン、ユーティリティトークンの2種類の独自トークンが発行されます。ガバナンストークン保有者は、ゲーム運営に関わる一定の権利を得ることができます。ゲームによって異なりますが、ゲームの運営方針をガバナンストークン保有者によって決める仕組みなどがあります。

ユーティリティトークンは、主にゲーム内でアイテム購入などに使用することができるトークンです。ユーティリティの言葉の意味「実用性」にある通り、ゲーム内でキャラクターのレベルアップなど何かしらの目的に対して使用することからユーティリティトークンと名付けられています。

また、デュアルトークンシステムでは、ユーティリティトークンがゲーム内報酬として配布されることが多いです。ユーザーは、ユーティリティトークンを取引所などを通して、法定通貨と交換することで利益を上げることができます。

代表的なゲームタイトルとしては、Move to Earnで知られる「STEPN」があります。ガバナンストークンとしてGMT、ユーティリティトークンとしてGSTを発行しています。

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引用:STEPN

靴のNFTを購入し、現実世界で歩いたり走ったりすることでトークンを得ることができます。リリースしてしばらくはユーティリティトークンであるGSTのみがゲーム内報酬として得ることができましたが、現在ではGMTも得ることができます。GSTは靴のレベルアップや修理に使用します。

その他の特徴的なエコシステム

独自トークンの発行数の違い以外にもエコシステムはBCGタイトルごとに様々です。その中のいくつかを紹介します。

スカラーシップ

スカラーシップとは、NFT保有者がNFTを他のユーザーに貸出し、そこで得た利益をNFT保有者と借りた方で分配するシステムのことです。

NFT保有者は自らプレイすることなく、トークンを稼ぐことが可能で、借りた方は先行投資でNFTを購入することなくBCGをプレイ、そしてトークンを稼ぐことができます。簡単に言えば、「お金はあるけど時間がない方」と「時間はあるけどお金はない方」のマッチングを実現しています。

先ほどもご紹介した「JobTribes」にもスカラーシップ機能があります。

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引用:Scholarship | JobTribes - ジョブトライブス 公式サイト|ブロックチェーン連動トレーディングカードゲーム

ドル建てオラクル

ブロックチェーン自体にもオラクル問題と言われているものがありますが、BCGのオラクルとは異なるものです。BCGにおいてのオラクルは、報酬で得られる独自トークンの量がアメリカドルの法定通貨ベースになっているものを指します。

ゲーム内のとあるクエストの報酬が常に10ドル分の独自トークンだとします。この場合、トークン価格が低いうちは報酬トークンの量が多く、トークン価格が上がった際に報酬のトークン量が少なくなります。これによって、トークン価格が上がったとしても市場で売却されるトークン数が少なくなるので、トークン価格が下落しにくくなるという原理です。

ただこのシステムには弱点があり、トークン価格が上がっているうちは狙い通りの挙動をするのでいいのですが、トークン価格が下落を始めると報酬トークン量がだんだんと増えていき、市場で売却されるトークン数も比例して増大していきます。結果として、トークン価格の下落がさらに加速していってしまいます。

上記の弱点を持つことから、現在ではゲーム内報酬にオラクル型を採用している新規BCGリリースはあまり見かけなくなりました。

最近の動向

最近のBCGでは、独自トークンの価格を安定させることを狙った特徴的なエコシステムが次々に登場しています。

Tweet to Earnで知られるTwitFiでは、トークン価格の下落を防ぐために、スマートコントラクトによる制御でNFTの売上金の一部でトークンのバイバックを行っています。運営による手動ではなく、スマートコントラクトによる制御なので透明性が高いことも特徴です。

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引用:TwitFi

また、世界的に有名なIP「キャプテン翼」を題材としたBCG「キャプテン翼 -RIVALS- 」では、トークン価格が一定値を超えると開発運営がトークンを売却、一定値を下回ると買い支えるなどステーブルコインのようにトークン価格を一定値にペッグさせることを目指すようなエコシステムが登場しています。

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引用:『キャプテン翼』について

日々新たなBCGがリリースされており、今後も革新的なエコシステムをもったBCGが登場することを期待しています。