2023年6月1日に改正された「犯罪による収益の移転防止に関する法律」で、暗号資産(仮想通貨)のトラベルルールの実施が義務付けられました。
このトラベルルールは暗号資産入出金に関わる重要な枠組みですが、ユーザーにはどのような影響があるのでしょうか。
本記事では、トラベルルールについてわかりやすく解説しながら、ユーザーが対応する事項や、Coincheckでのトラベルルール対応についてを説明します。
※仮想通貨の税金については、2024年2月13日時点の情報となります。
この記事でわかること
目次
トラベルルールとは
トラベルルールとは、「暗号資産・電子決済手段の取引経路を追跡することを可能にするため、暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者に対し、暗号資産・電子決済手段の移転時に送付人・受取人の情報を通知する義務」というルールのことです。
(犯罪による収益の移転防止に関する法律 第十条の三、第十条の五)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000022
https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230526-2/00.pdf
つまり、ユーザーは暗号資産(仮想通貨)の送金時に、送金先と送金元の情報提供が必要になるという新たな枠組みと言えます。
また、トラベルルールは、FATF(金融活動作業部会)が「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策」についての国際基準(FATF基準)において、各国の規制当局に対して導入を求めているものです。
テロリストや反社会的勢力、その他の犯罪者が電子的な資金移転システムを利用することを防ぎ、不正利用があった場合にはその追跡を可能にすることを目的として設定されました。
トラベルルールでのユーザーへの影響
トラベルルールとは、あくまでの暗号資産の送受金・入出金に関わるルールになります。暗号資産取引所内だけで完結する売買やトレード、日本円の入出金は今まで通り行えるため、ユーザーへの影響を考える際は暗号資産の送受金・入出金だけということを考慮しましょう。
トラベルルールが導入されることにより、ユーザーには大きく3つの影響があります。
- 送金可能な暗号資産が限定的になる場合がある
- 異なるソリューションの暗号資産取引所には送金できなくなる場合がある
- 送金先の情報の把握が必要になる
トラベルルールが導入の影響を知るために、自身が利用する暗号資産取引所などに導入されているトラベルルール対応技術を把握する必要があります。主なトラベルルール対応技術は2つあり、「Travel Rule Universal Solution Technology」(TRUST)と「Sygna Hub」(Sygna)というものがあります。まずは、これらには2024年2月15日現在、相互に互換性が無いという点を覚えておきましょう。
CoincheckはTRUSTを採用しており、国内ではbitFlyerが、米国ではCoinbaseも採用しています。
その他のTRUSTのメンバーはCoinbaseのホームページより確認できます。(掲載されているすべての業者がTRUSTによる送受信を開始しているわけではございません。)
なお、日本の法令上、以下の通知対象国・地域に日本国を加えた取引所以外への送金や、Metamaskなどの個人のウォレットへの送金には、トラベルルールが適用されません。(マネーロンダリングなどが疑われる場合は取引が制限される可能性があります。)
通知対象国・地域(トラベルルールが適用される国)※2023年7月5日時点 アメリカ合衆国、 アルバニア、 イスラエル、 カナダ、 ケイマン諸島、 ジブラルタル、 シンガポール、スイス、 セルビア、 大韓民国、 ドイツ、 バハマ、 バミューダ諸島、 フィリピン、 ベネズエラ、 香港、マレーシア、 モーリシャス、 リヒテンシュタイン、 ルクセンブルク
送金可能な暗号資産が限定的になる場合がある
TRUSTを採用している暗号資産取引所では、送金できる暗号資産が限定されています。今後、開発の進展により送金可能な暗号資産が増える可能性があります。
トラベルルール対応技術が異なる暗号資産取引所には送金できなくなる場合がある
日本国内の暗号資産取引所では、「TRUST」と「Sygna」というトラベルルール対応技術のどちらかが導入されています。両者ともトラベルルールには対応しているものの、2024年2月15日時点では、相互互換性がないため、異なるソリューションを導入している暗号資産取引所同士では送金ができません。
送金先の情報の把握が必要になる
トラベルルールとは、先述の通り「暗号資産の送金時に、送金先と送金元の情報提供が必要になる」というルールです。
そのため、トラベルルールに該当する暗号資産送金時には、送金先の情報をある程度把握しておく必要があります。
2024年2月15日時点では、送金時に必要になる情報は、送金元のアドレス、サービス名、受取人種別、受取人氏名(または法人名)、国と地域が必要となります。
詳細についてはこちらをご確認ください。
暗号資産(仮想通貨)でトラベルルールが設置された背景
暗号資産は、インターネットに接続していれば、誰が・どこでも・いつでも送受金できるという特性があります。
この特性は暗号資産のメリットであり、今まで決済サービスや銀行サービスに繋がれることのできなかった人々への可能性が示されたり、既存金融の弱点を克服する兆しが見えたりしました。
しかし、残念ながら暗号資産はマネーロンダリングやテロ資金供与、反社会的勢力などにも利用可能性があり、問題視する声は少なくありません。実際にハッキングなどで奪われた暗号資産は追跡が困難になったケースもありました。
そこで、トラベルルールでは不正利用があった場合にはその追跡を可能にすることを目的としています。
暗号資産を犯罪で利用する際は、最終的に誰かがどこかで法定通貨に換金する場合が多いため、出口をより強固にモニタリングを行えば追跡可能性が上がるといえます。
トラベルルールの関連法について
暗号資産においてのトラベルルールが定められた法律は、犯罪による収益の移転防止に関する法律 第十条の五です。
トラベルルールの枠組みがさらに変更される可能性もあります。しかし、法律はまったく理由なく制定される場合はほとんど無いため、FATF(金融活動作業部会)の動向等を注視すると、今後の日本の法令改正の動き等が想定しやすくなることでしょう。
(犯罪による収益の移転防止に関する法律 第十条の三、第十条の五)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000022
コインチェックではトラベルルールに対応している?
Coincheckでは2023年5月31日からトラベルルールに対応しており、「Travel Rule Universal Solution Technology」(TRUST)を導入しています。
取引所や販売所での売買や、NFTの売買、入出庫、日本円の入出金などは今まで通り変わらずご利用いただけます。
なお、暗号資産の送金時には、トラベルルールに準じた情報入力が必要になります。
Coincheckでのトラベルルール対応の送金方法に関しては、こちらをご覧ください。
まとめ
暗号資産のトラベルルールは、基本的には暗号資産を送受金する際のルールになります。国内の取引所内で売買するだけならば、今まで通り変わらずに取引が行えます。
他の取引所などに送金をする場合は、その取引所がトラベルルールに対応しているか、また対応していなくても送金が可能なのか、トラベルルール対応技術の種類はどれかなどをよく確認しましょう。