USDT(Tether/テザー)とは、米ドルに1:1で連動するステーブルコインで「1USDT = 1ドル」を保つように設計されています。
ビットコイン(BTC)をはじめとする暗号資産は価格の変動幅(ボラティリティ)が大きく、決済手段としての実用性・安定性に課題があります。
その点、米ドルと連動しボラティリティが小さいUSDTは、決済や資金の一時退避、取引所間の資金移動などで広く利用されています。
この記事では、USDTの特徴、メリット・デメリット、今後の動向、購入時の注意点についてわかりやすく解説します。
USDT(Tether/テザー)とは
引用:Tether
値動きの大きい暗号資産の中で、USDT(テザー)は「ほぼ1ドル」を目安に推移するステーブルコインです。香港を拠点(※)としていた Tether Limited社が 2014年に発行を開始。主な対応ネットワークはTRONとEthereum、2024年にはTONにも対応しました。
※2025年にエルサルバドルへの本社移転を発表(ただし主要な親会社は英領バージン諸島登録)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通貨名 | Tether(テザー) |
| ティッカーシンボル | USDT |
| 発行枚数 | 供給量:約1,800億USDT(2025年10月現在)/ 発行上限:なし |
| コンセンサスアルゴリズム | 各チェーンに依存(Ethereum:PoS/TRON:DPoS/TON:PoS) |
| 時価総額ランキング (2025年10月現在 CoinMarketCapより) |
3位 |
| 発行元 | Tether Limited |
| 公式サイト | https://tether.to/en/ |
USDTの特徴
USDT(テザー)には、主に以下の4つの特徴があります。
- 米ドルと連動するステーブルコイン
- 複数のブロックチェーンに対応している
- 海外取引所で基軸通貨として使用されている
- 時価総額がステーブルコインの中で一番大きい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
米ドルと連動するステーブルコイン
1つ目の特徴は、「米ドルと連動するステーブルコイン」である点です。
ステーブルコインにはたくさんの種類が存在しますが、価値を安定させる仕組みの違いによって以下の4種類に分類することができます。
| 名称 | 特徴 | 該当する通貨 |
|---|---|---|
| 法定通貨担保型 | 米ドルや円などの法定通貨・国債などを担保に発行される。発行体が準備資産を保有し、価値を1通貨=1ドル前後に保つ。 | USDT(Tether) USDC(USD Coin) FDUSD(First Digital USD) |
| 暗号資産担保型(※) | ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を担保に発行される。担保の価格が下がると清算されるリスクがある。 | DAI sUSD |
| アルゴリズム型(無担保型)(※) | 需給バランスを調整する仕組みで価格を一定に保つ。担保資産がないため、相場次第で価格が崩れることもある。 | USTC(旧TerraUSD) |
| コモディティ担保型(※) | 金などの実物資産(コモディティ)に価値を裏付ける。原資産の価格が下がると価値も変動する。 | Paxos Gold(PAXG) ジパングコイン(ZPG) |
上記のうち、米ドルに連動するUSDTは「法定通貨担保型」に分類されます。
法定通貨担保型ステーブルコインが法定通貨の価値に連動するのは、発行体が十分な裏付け資産を保有し、1枚あたりの価値が法定通貨と等価だと認められているためです。
USDT(テザー)も、Tether社が保有する米ドルや短期国債などの資産を裏付けに発行されており、発行量と準備資産のバランスによって価値を維持しています。
また、準備資産の状況は外部会計事務所(BDO)による四半期ごとの報告書で開示され、透明性が保たれています。
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産は価格変動が大きく、法定通貨にはない利便性を持つ一方で、決済手段としての安定性には課題があります。
その点、米ドルと連動して価格が安定しているUSDTは、資金の一時退避や取引所間の送金手段として広く活用されています。
(※)暗号資産型、アルゴリズム型、コモディティ型ステーブルコインは、設定された価値を保証するための原資産が確保されているものではなく、相場の変動等により目標価格を保てなくなる可能性があります。
複数のブロックチェーンに対応している
2つ目の特徴は、「複数のブロックチェーンに対応している」点です。
多くの暗号資産は1つのブロックチェーン上でのみ発行されていますが、USDT(テザー)は複数のネットワークを基盤に発行・流通しています。
2025年時点で主に利用されているのは、以下のネットワークです。
- TRON(TRC20)
- Ethereum(ERC20)
- TON(The Open Network)
- Polygon
- Solana
- Avalanche
- Algorand※
- EOS※
※Algorand と EOS は2024年に新規発行が停止され、2025年9月以降は発行・償還は停止、転送のみ限定的に継続という運用方針に変更されています。
このように複数のネットワークに対応していることで、USDTは決済・送金・DeFi(分散型金融)・取引所間の資金移動など、幅広い用途で利用されています。
とくにTRONは手数料(ガス代)が安く、送金速度が速いことから、日常的な送金や海外取引所間の資金移動に多く使われています。一方、EthereumはDeFiやNFTなどのWeb3サービスでの利用が中心です。
ネットワークによって送金手数料や対応サービスが異なるため、送金先がどのネットワークをサポートしているかを事前に確認しておくことが重要です。
海外取引所で基軸通貨として使用されている
3つ目の特徴は、「海外取引所で基軸通貨として使用されている」点です。
USDTは、日本の取引所ではまだ取扱いがありませんが、海外の主要取引所や分散型取引所(DEX)では基軸通貨として定着しています。たとえば、BinanceやBybit、OKXなどの大手海外取引所では、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの多くの通貨ペアがUSDT建てで取引されています。
これは、価格の安定したステーブルコインであるUSDTが、相場の急変時に一時的な資金退避先として機能するためです。暗号資産が値上がりしたタイミングでUSDTに換えておけば、価格変動の影響を受けずに資産の価値を保つことができます。また、他の取引所へ送金したり、DeFi(分散型金融)などのサービスに活用したりする際にも、USDTは中継通貨として利用されています。
時価総額がステーブルコインの中で一番大きい
引用:CoinGecko
4つ目の特徴は、「時価総額がステーブルコインの中で一番大きい」点です。
USDTは数ある暗号資産の中でも、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)に次ぐ第3位の時価総額を維持しています(2025年10月時点)。
発行残高はおよそ1,800億USDT(約1,800億ドル相当)に達しており、ステーブルコインの中では圧倒的な規模です。
引用:CoinGechoより
また、USDTは1日の取引高でも全ステーブルコインの中でトップに位置しています。
時価総額と取引量がともに大きいことは、それだけ市場での需要が高く、流動性が安定していることを意味します。この流通量と取引の多さこそが、世界中の取引所やサービスでUSDTが基軸通貨として利用され続けている理由のひとつです。
USDTのメリット

USDT(テザー)には、主に次のような3つのメリットがあります。
- 価格が安定している
- 海外取引所で基軸通貨として利用されている
- DEX(分散型取引所)で流動性マイニングに活用できる
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
価格が安定している
1つ目のメリットは、「価格が安定している」点です。
USDTは米ドルと連動しており、「1USDT=1ドル前後」の価格を維持するよう設計されています。
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産は値動きが大きく、短期間で価格が大きく上下することもあります。そのため、日常の決済や一時的な資産保有には不向きな面もあります。
一方、米ドルに連動するUSDTはボラティリティが小さく、価格の変動が限定的です。
その安定性から、決済や送金、他通貨の取引ペアとしても広く利用されています。
世界各国の取引所で幅広く利用されている
2つ目のメリットは、「海外取引所で基軸通貨として利用されている」点です。
USDTは、Binance(バイナンス)やBybit(バイビット)などの海外大手取引所で主要な取引ペアとして採用されています。これにより、投資家はボラティリティの大きい暗号資産をUSDTに換えることで、一時的に価格変動の影響を避けつつ資産を保持できます。
また、取引所間の送金やDeFi(分散型金融)サービスへの入出金にも活用されており、世界的な流通性の高さがUSDTの大きな強みといえるでしょう。
DEXで流動性マイニングに活用できる
3つ目のメリットは、「DEXで流動性マイニングに活用できる」点です。
DEX(分散型取引所)とは、ブロックチェーン上でユーザー同士が直接取引できる取引所のことです。代表的な例として、Uniswap、PancakeSwap、SushiSwapなどがあります。
これらのDEXでは、ユーザーがトークンを預けて流動性を提供することで、手数料や報酬を得る仕組み(=流動性マイニング、またはイールドファーミング)が存在します。この際に価格変動の影響を受けるリスク(インパーマネントロス)を抑えるため、価格の安定したUSDTが頻繁に利用されています。
USDTの注意点・危険性・デメリット

前述したようなメリットがある一方で、USDT(テザー)には次のようなデメリットもあります。
- カウンターパーティー・リスクが高い
- ステーブルコインに対する規制が強化される可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
カウンターパーティー・リスクが高い
1つ目のデメリットは、「カウンターパーティー・リスクが高い」点です。
カウンターパーティー・リスクとは、金融取引の相手方が破綻や不正などにより、契約どおりの履行ができず損失を被る可能性を指します。
USDTは「1USDT=1ドル」の価値を保つために、発行元であるTether Limited社が中央集権的に運用しています。そのため、もしTether社が経営破綻したり、資産運用に不正があった場合には、USDTの信頼が失われ、通貨としての価値が下落するおそれがあります。
この点は、ビットコインのように分散管理される暗号資産とは異なり、
発行体の信用に依存するステーブルコイン特有のリスクといえるでしょう。
ステーブルコインに対する規制が強化される可能性がある
2つ目のデメリットは、「ステーブルコインに対する規制が強化される可能性がある」点です。
2022年に起きたステーブルコイン TerraUSD(UST) の価格乖離(ディペッグ)をきっかけに、世界各国でステーブルコインの健全性や発行体の透明性を求める動きが強まりました。
日本では、2023年6月に改正資金決済法が施行され、ステーブルコインが「電子決済手段(EPI)」として制度上に位置づけられました。これにより、ステーブルコインを発行・取り扱う事業者は金融庁の登録や監督の対象となっています。
こうした制度整備は、投資家保護やマネーロンダリング防止の観点では前進といえますが、
一方で、過度な規制が市場の成長や技術革新の妨げになる懸念も指摘されています。
また、2025年時点ではUSDTは日本国内の暗号資産交換業者(Coincheckを含む)では取り扱いがありません。取引を行う場合は、海外取引所または自己管理型ウォレット(DeFi)などを利用する形となります。
今後も国際的なルール整備が進む見込みのため、USDTを保有・利用する際は、各国の規制動向や制度改正のニュースを確認しておくことが重要です。
USDTの最新動向と今後の展望

USDT(テザー)は、2025年時点でも世界最大のステーブルコインとして高いシェアを維持しています。市場の変化や各国の規制に対応しながら、Tether社は運用の透明性を高め、ネットワーク構成の見直しを進めています。
ここでは、2024年から2025年にかけての主な動きと、今後注目されるポイントを整理します。
最近の動きと注目ポイント(2024〜2025年)
- 2024年4月:USDTがTONで稼働開始。TelegramのエコシステムでP2P送金などの実需が広がる足場に。
- 2024年〜2025年夏:利用が少ない旧ネットワーク(Omni/BCH-SLP/Kusama/EOS/Algorand)のサポート縮小を発表 → 2025年9月1日をもって5つのレガシーチェーン(Omni/BCH-SLP/Kusama/EOS/Algorand)でのサポートを終了し、運用資源を主要チェーンへ集中
- 四半期ごと(継続):準備資産のアテステーション(BDO)を継続公開。2025年Q2の報告も公表済み。
- 2025年9月:米国市場向けの新トークン構想「USA₮(USAT)」を発表。米国内規制準拠型のドル建てステーブルコインとして別ラインを計画
今後の展望
送金・決済や取引の“基盤通貨”としての役割は当面継続。一方で、チェーンの集約や米国向けトークンの並行展開など、規制対応と透明性の強化に舵を切る動きが続きそうです。主要ネットワーク(TRON/Ethereum/TON)を中心に運用が整理される一方、地域規制に応じたプロダクト分化(例:USA₮)にも注目しておくと安心です。
USDTの購入方法

USDT(テザー)は世界的に最も取引量の多いステーブルコインのひとつですが、2025年時点では日本国内の暗号資産交換業者(Coincheckを含む)では取り扱いがありません。
そのため、USDTを取得したい場合は、国内取引所で暗号資産を購入し、それを海外取引所や分散型取引所(DEX)へ送金して交換する必要があります。
具体的な手順は以下の通りです。
- 国内の暗号資産取引所で口座開設をする
- 取引所に日本円を入金する
- 取引所で暗号資産を購入する
- 購入した暗号資産を海外取引所に送金する
- USDTを購入する
暗号資産を購入するには、まず国内取引所で口座を開設する必要があります。
Coincheckでは、以下の3ステップで簡単に手続きが完了します。
- アプリをダウンロードする(スマートフォンで口座開設する場合)
- アカウントを作成する
- 本人確認を行う
スマートフォンアプリを使えば、口座開設手続きはインターネット上で完結し、最短5分で申し込みを完了できます。口座開設後は、日本円を入金してビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産を購入し、それを海外取引所または分散型取引所(DEX)に送金してUSDTを取得します。
なお、送金時にはネットワーク(TRON/Ethereum/TONなど)の選択に注意が必要です。誤ったネットワークを指定すると、送金した資産を失う可能性があります。
USDTに関するQ&A
USDTに関してよく寄せられる質問を、基本的なポイントに絞って紹介します。
仕組みや安全性、利用範囲などを確認しておきましょう。
USDTは安全ですか?
USDTは、米ドルや短期米国債などの資産を裏付けとして発行されているステーブルコインです。発行元のTether社は、保有する準備資産の内訳を外部会計事務所(BDO)による四半期ごとの報告書で公開しており、一定の透明性が確保されています。
ただし、USDTは中央集権的に管理されている通貨であり、Tether社の運営体制や規制対応に依存している点には注意が必要です。また、報告書は「監査」ではなくアテステーション(保証報告)形式で行われており、完全な会計監査とは異なります。
したがって、一般的な利用において大きなリスクは高くありませんが、民間企業による発行である以上、100%の安全が保証されているわけではない点を理解しておくことが重要です。
日本でUSDTは使えますか?
2025年時点では、日本国内の暗号資産交換業者(Coincheckを含む)ではUSDTの取り扱いはありません。そのため、国内でUSDTを直接購入したり、送金や決済に利用したりすることはできません。
USDTを保有したい場合は、海外の暗号資産取引所や分散型取引所(DEX)を通じて取得する必要があります。ただし、海外取引所の利用には日本の法制度の保護が及ばないリスクもあるため、送金や管理を行う際は十分に注意しましょう。
USDTはどのネットワーク(TRC20・ERC20・TON)を使えばいいですか?
USDTは、複数のブロックチェーン上で発行されています。代表的なネットワークには、TRON(トロン)、Ethereum(イーサリアム)、TON(テレグラム・オープン・ネットワーク) などがあります。
それぞれのネットワークには、送金手数料(ガス代)や速度、互換性に違いがあります。たとえば、TRON版のUSDT(USDT-TRC20)は手数料が安く、取引所間の送金などによく使われます。一方、Ethereum版(USDT-ERC20)はDeFi(分散型金融)サービスでの利用が多く、対応範囲が広いのが特徴です。
ただし、送金時に異なるネットワークを選ぶと資産を失う恐れがあるため、送付先の取引所やウォレットがどのネットワークに対応しているかを必ず確認しましょう。
USDTが凍結されることはありますか?
USDT(テザー)は、Tether社によって中央集権的に管理されており、不正取引やマネーロンダリングなどの疑いがある場合、特定のウォレットアドレスが凍結(ブロック)されることがあります。
実際に、Tether社は過去に司法当局の要請を受け、不正に取得された資金やハッキング関連アドレスを凍結した事例を公表しています。こうした対応は、利用者保護や法令遵守の観点から行われており、一般の正規ユーザーが通常の取引を行っている限り、アカウントが凍結される可能性は極めて低いとされています。
USDTを利用する際は、信頼できる取引所やウォレットを利用し、送金先アドレスを慎重に確認することが重要です。
USDTに税金はかかりますか?
USDT(テザー)を含む暗号資産は、売却や他の暗号資産との交換などで利益が確定した時点で課税対象となります。日本では、暗号資産で得た利益は「雑所得」に区分され、総合課税として所得税および住民税が課されます。たとえば、次のようなケースでは課税対象となります。
- USDTを日本円に換金した場合
- USDTで他の暗号資産を購入した場合
- USDTを使って商品やサービスを購入した場合
一方、USDTを保有しているだけでは課税されません。取引履歴や価格データを正確に記録し、確定申告の際に正しく申告できるよう準備しておきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の税務アドバイスや投資勧誘を行うものではありません。税制は改正される可能性があります。具体的な税務については、必ず税理士にご相談ください。
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