USDT(Tether/テザー)とは、Tether Limited社が2015年に発行を開始した世界初のステーブルコインです。価格が米ドルと連動し、「1USDT = 1ドル」を保つように設計されています。
ビットコイン(BTC)をはじめとする暗号資産は価格の変動幅(ボラティリティ)が大きいため、決済手段としての実用性・安定性には欠けるという問題点があります。
その点、米ドルと連動しボラティリティが小さいUSDTは、決済にも利用できる実用性の高さを有しています。そして、この特異性が他のデジタル通貨と一線を画す存在として、USDTは暗号資産市場で非常に高い需要を誇っています。
この記事では、ステーブルコインの代表格であるUSDTの特徴、メリット・デメリット、購入方法などについて解説していきます。
目次
USDT(Tether/テザー)とは
引用:Tether
USDT(テザー)とは、香港を拠点とするTether Limited社が2015年に発行を開始した世界初のステーブルコインです。米ドルに固定されたペッグ通貨であるUSDTは、「1USDT = 1ドル」を維持するように設計されています。
通貨名 | Tether(テザー) |
ティッカーシンボル | USDT |
発行枚数 |
供給量:約830億USDT 発行上限:なし |
コンセンサスアルゴリズム | Proof of Reserves |
時価総額ランキング(2023年8月22日時点) | 3位 |
発行元 | Tether Limited |
公式サイト | https://tether.to/en/ |
USDT(テザー)の特徴
USDT(テザー)には、主に以下の4つの特徴があります。
- 米ドルと連動するステーブルコイン
- 複数のブロックチェーンに対応している
- 海外取引所で基軸通貨として使用されている
- 時価総額がステーブルコインの中で一番大きい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
米ドルと連動するステーブルコイン
1つ目の特徴は、「米ドルと連動するステーブルコイン」である点です。
ステーブルコインにはたくさんの種類が存在しますが、価値を安定させる仕組みの違いによって以下の4種類に分類することができます。
名称 | 特徴 | 該当する通貨 |
---|---|---|
法定通貨担保型 | 米ドルや円といった法定通貨により価値が裏付けられるステーブルコイン |
・USDT(Tether) ・USDC(USD Coin) ・BUSD(Binance USD) |
暗号資産担保型(※) | 暗号資産により価値が裏付けられるステーブルコイン |
・DAI ・sUSD |
アルゴリズム型(無担保型)(※) | 裏付けとなる資産が無くアルゴリズムによって価値が一定に保たれるステーブルコイン |
・フラックス(FRAX) ・TerraUSD(UST) ・マジック・インターネット・マネー(MIM) |
コモディティ型(※) | 金や原油といった現物資産(コモディティ)により価値が裏付けられるステーブルコイン |
・Paxos Gold(PAXG) ・ジパングコイン(ZPG) |
上記のうち、米ドルに連動するUSDTは「法定通貨担保型」に分類されます。
法定通貨担保型ステーブルコインが法定通貨の価値に連動するのは、発行体が十分な裏付け資産を保有しており、法定通貨と等価な価値を持つと認知されているためです。USDTに関しても、発行済みのUSDTとTether Limited社が保有している米ドルを同量に保つことで、通貨としての価値を維持しています。
ビットコインやイーサリアムをはじめとする従来の暗号資産は価格変動(ボラティリティ)が大きく、法定通貨にはない機能を備えるものの、決済手段としての実用性・安定性には欠けるという問題点があります。
その点、法定通貨に連動するUSDTはボラティリティが小さく安定性に優れているため、資産運用や決済などさまざまな用途で利用されています。
(※)暗号資産型、アルゴリズム型、コモディティ型ステーブルコインは、設定された価値を保証するための原資産が確保されているものではなく、相場の変動等により目標価格に対して大きく下落する可能性があります。
複数のブロックチェーンに対応している
2つ目の特徴は、「複数のブロックチェーンに対応している」点です。
暗号資産の多くは1つのブロックチェーンのみに対応していますが、USDTは次のような複数のブロックチェーンを基盤として発行されています。
- Algorand
- Avalanche
- Ethereum
- EOS
- Liquid Network
- Near
- Omni
- Polygon
- Solana
上記のような複数のブロックチェーンに対応可能である点が、USDTが決済やDeFi(分散型金融)などさまざまな分野で利用されている要因と言えるでしょう。
海外取引所で基軸通貨として使用されている
3つ目の特徴は、「海外取引所で基軸通貨として使用されている」点です。
USDTが普及していない日本の暗号資産取引所とは対照的に、海外取引所やDEX(分散型取引所)ではUSDTをはじめとする多くのステーブルコインが基軸通貨として採用されています。
「日本円」が基軸通貨となっている国内の取引所では、保有する暗号資産が値上がりした際に円に換金することで利益を確定することができます。しかし、大半の海外取引所では日本円が基軸通貨として採用されていないため、ボラティリティの非常に小さいUSDTなどのステーブルコインに換金して利確するのが一般的です。
時価総額がステーブルコインの中で一番大きい
4つ目の特徴は、「時価総額がステーブルコインの中で一番大きい」点です。
USDTは数ある暗号資産の中で、ビットコイン、イーサリアムに次ぐ第3位の時価総額を誇っています(2023年8月29日時点)。
引用:CoinGecko
また時価総額だけでなく、USDTは1日の取引高においても全100種類以上あるステーブルコインの中でトップに位置しています。時価総額と取引高がともにこれだけ大きいということは、USDTの需要が非常に高く、世界中の取引所や店舗・サービスで使用されていることを意味します。
USDT(テザー)のメリット
USDT(テザー)には、主に次のようなメリットがあります。
- 価格が安定している
- 多くの海外取引所で基軸通貨として採用されている
- DEXで流動性マイニングする際に使用できる
どのような内容なのか、順番に解説していきます。
価格が安定している
1つ目のメリットは、「価格が安定している」点です。
前述したように、USDTは米ドルと価格が連動し、「1USDT = 1ドル」を維持するように設計されています。
ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産はボラティリティが大きいため、円やドルなどの法定通貨と比べると、決済などの実用性で劣るという問題があります。その点、米ドルと連動するステーブルコインであるUSDTは、決済にも利用できる実用性の高さを有しています。
多くの海外取引所で基軸通貨として採用されている
2つ目のメリットは、「多くの海外取引所で基軸通貨として採用されている」点です。
ビットコインなどの暗号資産は価格の変動幅が大きいため、資産を長期間に渡って保有するのには適していません。そのため、USDTが基軸通貨として採用されている海外取引所では、持っている暗号資産をボラティリティの小さいUSDTに換金することで、安定的に資産を保有することができます。
DEXで流動性マイニングする際に使用できる
3つ目のメリットは、「DEXで流動性マイニングする際に使用できる」点です。
DEX(Decentralized Exchange:分散型取引所)とは、ブロックチェーンを活用することで、管理者を介さずにユーザー同士で直接暗号資産の取引を行うことができる取引所のことです。代表的なサービスとしてはUniswap、PancakeSwap、SushiSwapなどがあります。
DEXでは、暗号資産の取引に必要となるトークンを一定期間預け入れる(流動性を提供する)ことで、利息や手数料を得ることができます。この仕組みのことを、「流動性マイニング」もしくは「イールドファーミング」と呼びます。
流動性マイニングでは、預け入れたトークンの価格が変動することによって「インパーマネントロス」という損失が発生します。その点、USDTはボラティリティが小さいので、流動性マイニングで使用しても安定的に利益を出すことが可能です。
USDT(テザー)の注意点・デメリット
前述したようなメリットがある一方で、USDT(テザー)には次のようなデメリットもあります。
- カウンターパーティー・リスクが高い
- ステーブルコインに対する規制が強化される可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
カウンターパーティー・リスクが高い
1つ目のデメリットは、「カウンターパーティー・リスクが高い」点です。
カウンターパーティー・リスクとは、金融商品の取引をする際に、相手方が破綻するなどして契約が履行されずに損失を被るリスクのことです。
USDTは、「1USDT = 1ドル」という固定された価格を維持するために、Tether Limited社によって中央集権的に管理されています。そのため、もしTether Limitedが不祥事を起こしたり破綻したりした場合には、USDTに対する信用がなくなり、通貨としての価値が失われる可能性があります。
ステーブルコインに対する規制が強化される可能性がある
2つ目のデメリットは、「ステーブルコインに対する規制が強化される可能性がある」点です。
2022年5月にステーブルコインのUST(TerraUSD)でディペッグ(価値の乖離)が起こり、それに起因して暗号資産市場全体が暴落したことを受けて、世界中でステーブルコインに対する規制の動きが強まりました。
日本では、2023年6月に改正資金決済法が施行されたことにより、一部のステーブルコインを取り扱う業者が規制されることになりました。規制強化に対しては、投資家保護やマネーロンダリングの防止などに繋がる一方で、イノベーションを阻害し市場からの資金流出を招く可能性があるという意見もあります。
ステーブルコインに対する規制は、今後も世界中で強化されていくことが予想されます。そのため、USDTの保有を検討する場合は、規制強化に向けた各国政府の動向を注視するのが賢明といえるでしょう。
USDT(テザー)の買い方
USDT(テザー)は国内の取引所では取り扱っていないため、国内の取引所で元手となる暗号資産を購入してから海外取引所やDEX(分散型取引所)で購入する必要があります。
具体的な手順は以下の通りです。
- ①国内の暗号資産取引所で口座開設をする
- ②取引所に日本円を入金する
- ③取引所で暗号資産を購入する
- ④購入した暗号資産を海外取引所に送金する
- ⑤USDTを購入する
暗号資産を購入するには、事前に暗号資産取引所で口座開設をする必要があります。Coincheckでは、以下の3ステップで簡単に口座開設ができます。
- アプリのダウンロード(スマートフォンで口座開設する場合)
- アカウント作成
- 本人確認
スマートフォンアプリを使えば、口座開設手続きがインターネット上だけで完結し、最短5分で申し込みをすることが可能です。Coincheckでの口座開設の詳しいやり方は、以下の記事をご覧ください。
USDT(テザー)に関するQ&A
USDT(テザー)に関するよくある疑問を、Q&A形式でご紹介します。
USDT(テザー)とは何ですか?
USDTは、Tether Limited社が2015年に発行を開始した世界初のステーブルコインです。価格が米ドルと連動し、「1USDT = 1ドル」を維持するように設計されています。
USDT(テザー)の特徴を教えてください。
USDTには、主に以下の4つの特徴があります。
- 米ドルと連動するステーブルコイン
- 複数のブロックチェーンに対応している
- 海外取引所で基軸通貨として使用されている
- 時価総額がステーブルコインの中で一番大きい
USDT(テザー)の注意点は何ですか?
USDTには、次のような注意点・デメリットがあります。
- カウンターパーティー・リスクが高い
- ステーブルコインに対する規制が強化される可能性がある
USDT(テザー)の買い方を教えてください。
USDTは国内の取引所では取り扱っていないため、国内の取引所で元手となる暗号資産を購入してから海外取引所やDEXで購入する必要があります。
具体的な手順は以下の通りです。
- 国内の暗号資産取引所で口座開設をする
- 取引所に日本円を入金する
- 取引所で暗号資産を購入する
- 購入した暗号資産を海外取引所に送金する
- USDTを購入する