Nouns(ナウンズ)とは、ピクセルドット風のキャラクターをモチーフにしたNFTコレクションです。
2021年8月8日にリリースを迎え、初日のオークションで613.37ETH(当時のレートで約2億1,300万円)もの価格で落札されたことで一気に注目を集めました。
「Nounsのどのような点に、そこまで大きな価値を見出したのか。」
なかには、このような疑問を持たれる方もいるかもしれません。そこで、この記事では「Nouns」を中心としてNouns DAOの概要や仕組みを解説していくことで、Nounsが注目される理由を1つずつ紐解いていきます。
この記事でわかること
- Nouns(ナウンズ)の特徴
- Nouns DAOの特徴
- Nouns(ナウンズ)と購入する際に必要なもの
監修大塚 雄介
コインチェック株式会社 執行役員
早稲田大学大学院修了。株式会社ネクスウェイ(元リクルート)を経て、レジュプレス株式会社に参画(2017年4月よりコインチェック株式会社に社名変更)。2018年4月にコインチェック株式会社がマネックスグループ株式会社の子会社となると同時に執行役員に就任。
目次
Nouns(ナウンズ)とは
引用:Nouns DAO
Nouns(ナウンズ)とは、2021年8月8日にリリースされた、ピクセルドット風のキャラクターをモチーフにしたNFTコレクションです。Nounsの最大の特徴は、Nouns DAOという分散型自律組織によって毎日1体のNFTが永続的に生み出され、オークションによって販売されるというシステムにあります。
毎日1体だけ発行されるNounは、イーサリアムのブロックハッシュに基づいてランダムに生成され、同じデザインのものは何1つとして存在しませんが、全てのNounは等しく希少とされています。
プロジェクト名 | Nouns(ナウンズ) |
リリース日 | 2021年8月8日 |
発行数 | 制限なし(毎日1体のNounがMintされる) |
トークン規格 | ERC-721 |
発行元 | Nouns DAO |
プロアプライス | 30.71ETH(2023年7月1日現在) |
公式サイト | https://nouns.wtf/ |
2023年7月1日のオークションでは、1体のNounは30.71ETH(約860万円)で落札されています。
コレクションがリリースされてからすでに約2年過ぎているにも関わらず、今もなお注目を集め続け、高額での取引がされているNounsは、どのような特徴を持っているのでしょうか。
次にNounsのNFTとしての特徴を見ていきましょう。
Nouns(ナウンズ)の4つの特徴
NounsのNFTには以下のような4つの特徴があります。
- 特徴①:毎日1体のNounが自動生成される
- 特徴②:Nouns NFTはフルオンチェーン上で保存
- 特徴③:Nounsの売上はDAOの活動資金としてトレジャリーに貯蓄
- 特徴④:全てのNounsがCC0(パブリックドメイン)を採用
それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
特徴①:毎日1体のNounが自動生成される
引用:Nouns DAO
1つ目のNounsの特徴は、毎日1体ずつ自動生成されるNFTである点です。
Nounsの生成を主導するNouns DAOというコミュニティでは、管理者は存在しません。特定の人物が中央集権的な力を有して運営を行うのではなく、Nounsのホルダーが平等に運営に関わる権利を有します。そういった意味で、NFTを誰の手も介さず発行し続けるこの方法は、Nouns DAOの分散型自律組織としての高い健全性を示していると言っても良いでしょう。
また、2023年7月1日時点で、Nounsは公式のオークションにて、30.71ETH(約860万円)という高額な価格で落札されています。この理由の1つとして考えられるのは、Nounsの希少性です。『Doodles』や『CryptoPunks』など、その他多くのプロジェクトが初期の段階で10,000体ものNFTをリリースするケースが多く見られる中、2021年8月8日から1体ずつ生成されているNounsの発行総量は、現在でも1,000体にも到達していません。
10,000体という他のプロジェクトで採用されているボーダーを超えるには単純計算でも、あと25年ほどかかると言われています。
このように毎日1体ずつ自動で生成される仕組みにより、NounsはDAOの健全性や希少価値を保っているのです。
特徴②:Nouns NFTはフルオンチェーンで保存
2つ目の特徴は、Nouns NFTに関する全ての情報がブロックチェーン上で保存されているという点です。これをフルオンチェーンNFTと言います。
一方で、イーサリアムブロックチェーン上で発行されるNFTの多くはそうではありません。画像・動画・テキストなどのデータを外部のストレージに保存し、その保存場所を示すURLのみ、ブロックチェーンに保存されています。この状態をオフチェーンと言います。
オフチェーンの場合、保存先のストレージが何らかの理由によって消去されてしまうと、同時にNFTのデータも消えてしまいます。一方で、NounsのようなフルオンチェーンNFTの場合、全ての情報がイーサリアムチェーン上に記録されているため、イーサリアムが完全に消滅しない限り保存された情報を失う可能性はなく、永続性という点において他のNFTとは一画を期す存在です。
これまで多くのNFTはイーサリアムチェーンを基盤にしていました。しかし近年、イーサリアムと比較してコストを100倍近く抑えた上でフルオンチェーンNFTを構築することができる「ビットコイン(BTC)NFT」に大きな注目が集まっており、既存のプロジェクトをビットコインNFTで生成するトレンドも生まれています。
この記事ではビットコインNFTについて深くは触れませんが、もし興味がある方がいれば、以下の記事でビットコインNFTついて詳しく解説した記事があるので、ぜひ読んでみてください。
特徴③:Nounsの売上はDAOの活動資金としてトレジャリーに貯蓄
3つ目の特徴は、オークションで落札されたNounsの収益が全てDAOのトレジャリーに保管される点です。トレジャリーとは、コミュニティの活動で使用される資金が貯蓄されている金庫のようなものです。このトレジャリーに貯蓄されている資金は、Nouns DAOで議論が行われた新規プロジェクトなどの活動費に利用されます。
Nouns DAOのトレジャリーのアドレスは公開されており、執筆時点(2023年7月1日)で、保有総額は28,881ETH(約81億4,200万円)にのぼります。
Nouns DAOはこの潤沢な資金源を活用して、Nounsコレクションの認知度を高めるための活動を積極的に行っているのです。
特徴④:全てのNounsがCC0(パブリックドメイン)を採用
最後の特徴として紹介するのは、Nounsの著作権が「CC0(パブリックドメイン)」という点です。
「CC0」は簡単に言うと、「作品のいかなる権利も有しない」と言う意味です。つまり、誰でもNounsのIPを用いてビジネスを展開したり、自由に二次創作を行うことができます。
引用:forces.com
従来のIPビジネスでは、著作権料などで運営の収益をあげてプロジェクト展開がされてきました。しかし、Nounsにおいてはあえて著作権料を取らずに、むしろIP利用者にNounsの認知を広げてもらうことでNouns自体の価値を高めるという構造になっています。
Nouns(ナウンズ)DAOとは
Nouns DAOとは、Nounsホルダーで構成された分散型自律組織です。そもそもDAOとは、特定の所有者や管理者が存在せずとも、事業やプロジェクトを推進できる組織を示す際に用いられます。正式名称はDecentralized Autonomous Organizationとなっており、その頭文字をとってDAOと呼ばれています。
DAOに関して詳細を知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
Nouns DAOの場合、ガバナンスの仕組みはDeFiレンディングサービス『Compound』のCompound Governanceのフォークとして実装されており、一連のスマートコントラクトとして、トークンの生成からオークション、プロジェクトの提案などがトラストレスに自動的に実行されています。
またDAOの運営、活動資金を「Treasury(トレジャリー)」と呼び、Nounsがオークションで落札された際、その売却益の100%がトレジャリーに貯蓄されます。執筆時点(2023年7月1日)でNouns DAOのトレジャリーには28,881ETH(約81億4,200万円)もの潤沢な運営資金が蓄えられており、DAOのメンバーはこの活動資金を使用する、ガバナンスの提案、また承認が可能です。
※プロジェクトの提案にはNounsを2体、プロジェクトの承認にはNounsを1体保有していることが条件となります。
引用:Nouns DAO
これまでに提案されたガバナンスの数は、324個あります。提案や承認を行う権利はNouns DAOのメンバーが持つユーティリティですが、提案されたガバナンス内容は誰でも公式サイトから見ることが可能です。
Nouns(ナウンズ)DAOが注目を集める2つの理由
次に、Nouns DAOが注目される理由について、以下の2つのポイントに絞って解説します。
- 理由①:前例の無い先進的なアバターコミュニティ
- 理由②:利他主義的なプロジェクトを数多く展開
理由①:前例の無い先進的なアバターコミュニティ
Nouns DAOが注目された理由として、第一にDAOが発行するNFTコレクションで、DAOが管理するアバターコミュニティである点が挙げられます。
そもそもNouns DAOは、ピクセルアートの権威者eBoy氏を始めとする10人の創業者「Nounder」から誕生したプロジェクトです。従来のWeb2.0的な視点で考えると、オークションを通じて落札されたNounの売上金は、NFTの制作者である創業者の元に分配されるのが至極当然です。
しかし、前述したようにNouns DAOでは、売上金は全てコミュニティの運営資金を貯蓄する「トレジャリー」に自動的に振り込まれます。彼らはこのNouns DAOというコミュニティを盛り上げるために、本来得られるはずであった利益を完全に手放しコミュニティに分散させているのです。
その代わりに創業者は最初の5年間だけ、10日に1回のペースで「Nouns」のNFTを彼らのマルチシグウォレットに自動で送信する仕組みをスマートコントラクトに導入しています。ただ、この仕組みに関しても、Nouns DAOが誕生してからまだコミュニティが分散化されていない時期において、悪意のある提案を弾くために存在する仕組みです。
最初の5年間に関して言えば、創業者はNouns全体の10%を保有することでコミュニティを守り、5年後からは創業者の立場は徐々に薄まっていきます。そうすることで、長期的な視点で完全な自律分散型のコミュニティの完成を目指しているのです。
前例の無い仕組みを採用し、真に分散化されたDAOのコミュニティ設計を示してくれたという点において、Nouns DAOはリリースから数年経過した現在においても高い評価を得ているNFTプロジェクトです。
Nouns DAOを創り上げた10名のNounder
利他主義的なプロジェクトを数多く展開
そして2つ目のNouns DAOが注目を集め続ける理由として、利益だけを追い求めない利他主義的なプロジェクトも数多く展開されている点が挙げられます。
他の多くのNFTプロジェクトに付随しているDAOは、NFTの投機的価値を高めるためのプロジェクトを中心に行う傾向があります。たとえば、コミュニティメンバーだけが参加可能なオフラインイベントの開催などが典型的な例です。これはNFTプロジェクトの認知を高めることで、自ら保有するNFTのフロア価格を高める狙いがあるため行われています。
もちろん、Nouns DAOに関しても同様のプロジェクトも一部で展開しているものの、他のDAOと比較して以下のような慈善活動や遊び心溢れる活動を展開している点が特徴的です。
Nouns DAOのプロジェクト例
- ウクライナへの人道支援
- 新種のアマガエルモドキの種に名前を付ける議案
- 国際宇宙ステーションに3DプリントされたNounを送る
このように、DAOの運営や基金の運用に加え、遊び心を持ちつつ、公にもよいことをというNouns DAOのWeb 3.0気質のようなものは新しく、多くの注目を集めたのかもしれません。
Nouns(ナウンズ)の価格推移
上のグラフは、これまでのNounsのフロアプライス(価格)の推移を表したものです。
2021年8月にリリースを迎えたNounsですが、当初のフロアは60ETHほどでしたが、翌年の2022年7月に最高額である130ETHという値まで価格が上昇しているのが見て取れます。
そこから価格は落ち着きを見せ、現在は32ETHほどの価格帯で推移しています。
日を追うごとにコミュニティが拡大し、大きなプロジェクトが行われることで、需要が高まりフロア価格に反映されるかもしれません。ですので、もし興味がある方は公式サイトからNounsのプロジェクトページをチェックしてみるのもおすすめです。
Nouns(ナウンズ)を購入する際に必要なもの
引用:Nouns DAO
Nounsは、公式サイトのオークションやOpenseaなどのセカンダリーマーケットで購入することが可能です。また購入の際には以下の2つが必ず必要になります。
- イーサリアム(ETH)
- MetaMask(メタマスク)などのウォレット
もし、まだウォレットが用意できていない方や方法がわからない方がいれば、以下の記事を参考にウォレットの準備を進めてみると良いでしょう
Nouns(ナウンズ)に関するQ&A
Nounsに関するよくある疑問を、Q&A形式でご紹介します。
Q.Nounsとはなんですか?
Nouns(ナウンズ)とは、2021年8月からリリースされた、ピクセルドット風のキャラクターをモチーフにしたNFTコレクションです。毎日一体の「Noun」がイーサリアムのスマートコントラクトによって自動で生成され、オークションにかけられます。
詳しくはこちらをご覧ください。
Q.Nounsの特徴を教えてください
Nounsには、主に以下の4つの特徴があります。
- 毎日1体のNounが自動生成される
- Nouns NFTはフルオンチェーン上で保存
- Nounsの売上はDAOの活動資金としてトレジャリーに貯蓄
- 全てのNounsがCC0(パブリックドメイン)を採用
詳しくはこちらをご覧ください。
Q.Nounはいくらで購入できますか?
2023年7月1日のオークションでは、1体のNounは30.71ETH(約860万円)で落札されています。
決して安価ではありませんが、1ヶ月前に落札されていたNounsの価格が26.52ETHだったことから、今後もフロア価格が上昇する可能性もあるでしょう。
※本記事はNFTの価格上昇を保証するものではありません。予想に反して損失を被る可能性もあるため、投資はご自身の判断と責任において行ってください。
Q.Nounsはどこで購入できますか?
Nounsを購入する方法は以下の2つです。
- Nouns DAOの公式サイトでオークションに参加する
- OpenSeaなどのセカンダリーマーケットで購入する
どちらの方法で購入するにしても「ウォレット」と「暗号資産」が必要になります。
Coincheckでの暗号資産の購入を検討している場合、以下の記事を参考に準備を進めてみると良いでしょう。
まとめ
本記事では、DAOが1日1体アバターを生成し、実にWeb3.0的なアバターコミュニティーを作り出そうという「Nouns」について紹介しました。
短期的な盛り上がりだけでなく、特にNounsの数が増加した段階でコミュニティがどのように形成されていくのか、長期的な視点でもNounsは注目したいプロジェクトです。
NounsのNFTは現在のフロア価格でも日本円で1,000万円近い金額が必要になります。しかし、Shark DAOのようにコミュニティでNounsのNFTを保有し、Nouns DAOの意思決定に関わっているコミュニティもあります。
ですので、もしこの記事でNounsに興味を持ち始め「コミュニティに参加したい」という意思が芽生えたのであれば、直接Nounsを購入するのも良いですし、Nouns DAOに関わりを持つコミュニティを探してみるのも良いでしょう。
執筆Coincheck Column編集部
Coincheck Column編集部は仮想通貨の取引経験者やブロックチェーンの知見に深いメンバーで構成されています。これから仮想通貨を始める方々に「仮想通貨について正しく理解していただき安心して取引できる」ことを目的に執筆しています。/ 運営元:コインチェック株式会社