この週末に4回目となるビットコインの半減期が訪れます。暗号資産界隈では約4年に1度の一大イベントをお祝いするカウントダウンパーティーが企画されるなど、市場関係者の注目度の高さがうかがえます。簡単におさらいすると、半減期とはビットコインのマイニングあたりの報酬=新規発行量が半分に減少するタイミングを指します。仕組みの詳細や過去の値動きについてはコインチェックコラムの記事を参照いただきたいですが、過去3回では半減期の翌年末にかけて暗号資産のブル相場が起きており、今回も2025年末にかけてビットコインの価格が大きく上昇することが期待されています。
そこで今回は半減期を通過した後のビットコインの相場展開を予想します。
※本レポートの記述は2024年4月19日公開日時点のものです
目次
ビットコインの半減期アノマリーとは?2025年の目標価格は控えめに見ても10万ドル以上
図1:ビットコインの半減期と価格動向(出所:Glassnodeよりマネックス証券作成)
図1はこれまでのビットコインの半減期ごとに半減期時点の価格からその後の高騰暴落までの価格動向を整理したものです。冒頭で述べたように、過去3回とも半減期の翌年末にかけてビットコインが大きく上昇していることがわかります。一方で、半減期の2年後には大きなハッキング事件や企業破綻が起こり、それらをきっかけに暴落が繰り返されています。このような半減期アノマリーに従い、今回もビットコインは2025年に最高値を記録し、その後2026年に暴落を引き起こす事件が起こるのではないかと言われているのです。
実際にどのような値動きになるのでしょうか。半減期時点のビットコインの価格を60,000ドルと仮定した場合、翌年の2025年末にかけては上昇率200%と控えめに予想しても120,000ドルまで高騰することになります。これが300%ならば180,000ドル、それ以上なら200,000ドルを超える可能性もあります。2024年は米国でビットコインの現物ETFが承認されたメモリアルイヤーでもあり、承認後にはビットコインがゴールド(金)と同じように上昇することが期待されています。ゴールド(金)は2004年に現物ETFが承認されてから10年以上かけて数倍の成長を遂げましたが、ビットコインはその成長を半減期後のわずか1年で達成する可能性があります。
一方で、ビットコインは半減期後に最高値を記録してから約80%前後暴落する傾向があります。今回もビットコインが2025年に200,000ドルの史上最高値を記録した場合、最大で40,000ドル付近まで暴落するリスクを警戒しなければなりません。何が暴落の引き金になるかは明言が難しいですが、現物ETFによって金融市場からより多くのお金が暗号資産市場へ流入するため、次のショックはこれまでよりも大規模な事件になる可能性があります。今ではグローバルの大手金融機関がデジタルアセット事業へ参入し、米国債や不動産、ファンドなどの金融資産をトークンとして流通させる取り組みも進んでいます。それらのトークンが分散型金融(DeFi)サービスに取り込まれることで暗号資産の売買が活発になることが予想されますが、その分、金融市場にも影響が及ぶシステマチックリスクが高まるでしょう。
半減期後のビットコインの暴落リスクを指摘しましたが、過去3回とも底値が半減期時点の価格より高い水準に留まっていることには注目です。次の4年間を考えた時に現在のビットコインの価格が最も低い水準である可能性があるというのは驚きでしょう。そのため、半減期後の調整局面を待っていると買い時を逃してしまう恐れがあり、例えば今から積み立て投資を始める方が価格の下落リスクも抑えながら中期的に大きなリターンが得られる期待が大きいでしょう。コインチェックつみたてサービスでは毎月1万円から積み立てすることができるのでぜひ活用を検討してみてください。
ビットコインの半減期後の相場を占うポイント
さて、市場はビットコインの半減期アノマリーが継続するかどうかを注目しているわけですが、半減期を通過した後の相場を占うポイントを挙げましょう。
①米国の利下げ開始とソフトランディングへの期待
一つ目は米国の金融政策と景気動向です。米国では経済指標が予想以上に強い結果となっており、利下げ開始時期が不透明な状況になっています。当初は年内2回の利下げが予想されていましたが、今ではその数が1回に減り、年内据え置きの可能性も出ています。たとえ利下げ開始時期が後ろ倒しになっても当局の利下げ方針がブレない限りは株式とともにビットコインの買いが継続すると予想します。量的引き締めの終了に向けた議論も始まっており、このような金融緩和への転換と米国経済のソフトランディングへの期待次第で上昇トレンドが継続するでしょう。
一方、米国のインフレが長期化し、追加利上げの議論に至った場合は相場全体が崩れる恐れがあります。
②米国大統領選挙の行方
初めて気づく人もいるかもしれませんが、ビットコインの半減期の年は同じく4年に1度の米国大統領選挙と重なっています。2024年も選挙イヤーとなっており、支持率の低迷するバイデン民主党政権からの政権交代への期待によって株式とともにビットコインが堅調な値動きになる可能性があります。果たしてトランプ前大統領の再選によってトランプラリーと呼ばれる上昇トレンドが再び訪れるのかが注目されます。
米国大統領選挙は証券取引委員会(SEC)の体制が見直されるという意味でも重要です。これまでゲンスラーSEC委員長が暗号資産に対して厳しい姿勢を示してきましたが、共和党の勝利でその姿勢が変化し、暗号資産関連企業の訴訟問題も落ち着く可能性があります。トランプ前大統領はもともと暗号資産に対して否定的な見方をしていましたが、今回はビットコインやNFTへの理解も示しており、暗号資産市場の発展に向けた規制改革を推し進める期待があります。
③ビットコイン現物ETFへの資金流入
米国ではブラックロックやフィデリティなどのビットコイン現物ETFへの資金流入が続いています。新しく現物ETFのオプション取引を申請する動きもあり、ビットコインが既存のデリバティブ取引に組み込まれることでより幅広い投資家が取引しやすくなるでしょう。また、今月15日には香港でビットコインおよびイーサリアムの現物ETFが承認され、5月には英国での承認を控えるなど、現物ETFのトレンドが米国外にも波及しています。このように現物ETFへの資金流入がグローバルに広がれば、より多くのお金が暗号資産市場へ流入し、ビットコインの相場はさらに上昇するでしょう。
しかし、ビットコイン現物ETFへの資金流入は株式の上昇があって初めて加速することに注意が必要です。一部ではビットコインを金に代わるデジタルゴールドとして購入する投資家もいますが、多くの投資家はビットコインを株式に並ぶリスク資産として購入します。そのため米国経済の見通しが崩れて株式が大きく下落した時は、現物ETFからの資金流出によって下落するリスクが高いでしょう。
④RWAトークンの拡大
2023年以降はビットコイン中心の相場が続いていますが、暗号資産市場が盛り上がるためにはビットコイン以外の投資先が増える必要があります。最近では先述した金融機関によるデジタルアセット事業、すなわち米国債や不動産、ファンドなどの金融資産をトークン化する「現実資産(RWA)」という分野が注目されています。この分野においてもブラックロックは先行してファンドトークン「BUIDL」を発表し、ブロックチェーン上でステーブルコインを活用した決済も可能にしています。この動きにJPモルガンやUBS、シティグループなど大手金融機関が追随し、今後はあらゆる金融資産がトークンとして取引されるようになるでしょう。さらにはRWAトークンがDeFiをはじめとするブロックチェーン上のサービスに組み込まれることで暗号資産市場が拡大することが予想されます。
一方で、米国ではSECがイーサリアム財団やユニスワップなど暗号資産プロジェクトの取り締まりに動いています。DeFiは依然として無法地帯で詐欺やハッキング事件も度々起きているため、数年のうちに規制整備が進む可能性が高いです。DeFi規制の整備が先か、RWAトークンの取引本格化が先か、どちらにしても規制強化にともなう下落には警戒が必要でしょう。
最後に、2024年は現物ETFを中心に金融市場からより多くのお金が暗号資産市場へ流入する年になり、半減期アノマリーへの期待で2025年にかけても上昇相場が継続することが期待されます。しかし、価格が高騰しブル相場が再び訪れた後には大きな暴落が起こりうることにも注意が必要です。だからこそ目先の値動きに振り回されず中長期的な成長を見越して投資戦略を立てることが重要になるでしょう。