暗号資産(仮想通貨)で損失が出たときの確定申告ガイド|損益通算のルールと注意点【2025年版】

仮想通貨(暗号資産)を運用していると、思ったように利益が出ず、含み損や実現損が膨らんでしまうこともあります。「損失が出ているのに確定申告は必要なのか?」「税金を減らすために損失をどう活かせるのか?」と悩む人も多いでしょう。

この記事では、2025年時点の税制を前提に、仮想通貨で損失が出そうなとき・出たときの考え方、損益通算できるケース/できないケース、翌年以降にできないこと(損失の繰越ができない等)を整理します。具体的な確定申告の手順や詳細な計算方法は、関連コラムへのリンクもあわせて確認してください。

※仮想通貨の税金については、2025年時点の情報をもとに記載していますが、税制や取扱いは今後変更される可能性があります。

※本記事は個人の仮想通貨における税金についての内容であり、法人の場合は異なります。

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※税金の詳細につきましては、管轄の税務署や税理士にお尋ねいただくか、国税庁の「タックスアンサー(よくある税の質問)」のページをご参照ください。

仮想通貨で損失が出そうなときにまず押さえておきたいこと

仮想通貨の損失に悩むイメージ

仮想通貨の取引で損失が出ていると、「赤字だから確定申告は関係ない」と考えてしまいがちですが、税金のルール上はもう少し注意が必要です。まずは、仮想通貨の利益・損失がどのように扱われるのかという前提を押さえておきましょう。

多くの個人投資家にとって、仮想通貨の取引で得た利益は、所得税法上「雑所得」に分類され、給与所得などと合算して税額を計算する「総合課税」の対象になります。雑所得で損失が出ても、給与所得や事業所得など、ほかの所得区分と損益通算することはできません。

一方で、同じ雑所得に区分されるほかの暗号資産の利益や、副業のアフィリエイト収入・原稿料などとは損益通算できます。つまり、「雑所得の中だけで損失を活かせる」が、「給与などとは混ぜられない」と理解しておくことが大切です。

仮想通貨の税区分や税率の考え方など、より広い前提知識を確認したい場合は、仮想通貨全般の確定申告を解説したコラムもあわせてご覧ください(仮想通貨も確定申告が必要!基礎知識・やり方・計算方法・注意点を解説)。

損失を活かすための損益通算ルール(できること・できないこと)

損益通算のイメージ

損失が出た年でも、ルールの範囲内であれば他の利益と相殺することで、結果的に税負担を抑えられる場合があります。ここでは、仮想通貨の損失について「できること・できないこと」を整理します。

同じ年の雑所得の中でできること

  • 複数の暗号資産(ビットコインやアルトコインなど)を取引している場合、同じ年の中であれば、それぞれの損益を合算できます。
  • 仮想通貨以外でも、アフィリエイト収入や原稿料など、同じ「雑所得」に区分される収入がある場合、その利益と仮想通貨の損失を相殺できます。

できないこと(よくある勘違い)

  • 給与所得や事業所得、不動産所得など、ほかの所得区分と仮想通貨の損失を通算することはできません。
  • 株式やFXなど、申告分離課税の対象となる取引の損益とも通算できません。
  • 雑所得としての仮想通貨の損失を、翌年以降に繰り越して相殺することも、原則としてできません。

暗号資産の損益通算の条件や、より具体的な計算ステップ・ケース別の注意点については、「暗号資産(仮想通貨)は損益通算できる?2025年最新の条件・計算ステップ・注意点を解説」もあわせて確認しておくと安心です。

損失が出そうなとき・出たときにやってはいけないこと

損失が出たときに避けたい行動のイメージ

損失が出ている局面では、「税金を少しでも減らしたい」という気持ちから、結果的にリスクの高い行動につながってしまうことがあります。ここでは、特に注意したいポイントを整理します。

税金だけを目的に含み損を無理に実現させない

雑所得として扱われる仮想通貨の損失は、原則として翌年以降に繰り越すことができません。そのため、「今年の税金を減らすためだけ」に大きな含み損を急いで実現させても、翌年以降に利益が出たときに活かせない可能性があります。

損失の実現は、あくまでポートフォリオ全体のリスク管理や投資方針の見直しとセットで考え、税負担だけを軸にした判断は避けるようにしましょう。

「損失が出ているから申告しなくてよい」と決めつけない

仮想通貨の取引で大きな損失が出ているように見えても、他の雑所得を含めた年間の合計がプラスになっていれば、確定申告が必要になるケースがあります。損失の有無だけで申告の要否を決めず、1年分の雑所得全体の損益を整理してから判断することが重要です。

海外取引所や複数口座の損益を「都合の良い一部だけ」見るのは危険

近年は、暗号資産に関する情報共有制度(CARF:暗号資産報告枠組み)など、国際的な情報交換の枠組みが整備されつつあります。将来的には海外取引所を含む取引情報も税務当局に提供されやすくなると見込まれているため、「一部の口座だけ申告する」「損失が出ているから申告しない」という判断はリスクが高いと言えます。

取引所やウォレットが複数にまたがっている場合でも、1年分の取引を一覧できるよう整理し、申告の要否を冷静に確認しておきましょう。CARFの位置づけや当社の対応について詳しく知りたい場合は、当社ウェブサイトの「CARFに関するご案内」をご確認ください。

損失を出した年の確定申告で確認すべきポイント

確定申告で確認すべきポイントのイメージ

ここでは、「今年は損失が出ているかもしれない」と感じたときに、確定申告の前に整理しておきたいチェックポイントをまとめます。詳細な申告手順や入力方法までは立ち入らず、「何を確認しておくと良いか」に絞って整理します。

1. 暗号資産全体+他の雑所得の年間損益を合算する

まずは、1年分の暗号資産の取引履歴を整理し、「すべての通貨を合算した結果がプラスかマイナスか」を確認します。そのうえで、アフィリエイト収入や原稿料など他の雑所得がある場合は、それらも含めて雑所得全体でプラスかマイナスかを把握しましょう。

2. プラスの場合は申告義務の有無を確認する

雑所得全体がプラスになっている場合、給与所得の有無や金額によって、確定申告が必要かどうかが変わります。会社員や公務員など給与所得がある人は、原則として年間20万円を超える雑所得があるときに申告が必要とされます。

自営業やフリーランスなど、もともと確定申告を行う必要がある人は、仮想通貨の損益も含めて毎年申告が必要です。不明点がある場合は、早めに税務署や税理士に相談しておくと安心です。

3. マイナスの場合は「繰越不可」を前提に今年のうちに整理する

雑所得全体がマイナスであれば、その年については原則として所得税の負担は発生しません。ただし、雑所得としての仮想通貨の損失は翌年以降に繰り越せないため、「今年のうちに同じ雑所得内でどこまで相殺されているか」を確認しておくことが重要です。

確定申告の具体的な手順や、e-Tax の利用方法、申告書の書き方などについては、仮想通貨全体の確定申告を解説したコラムで画面イメージを交えて紹介しています(仮想通貨も確定申告が必要!基礎知識・やり方・計算方法・注意点を解説)。

損失を出さない・出し過ぎないために今日からできること

損失を出し過ぎないためのポイントのイメージ

最後に、税金の観点から「損失を出さない・出し過ぎないために意識しておきたいこと」を整理します。投資判断そのものではなく、あくまで税務上のトラブルや後悔を減らすための視点です。

取引履歴を必ず残し、定期的に損益を確認する

複数の取引所やウォレットを使っている場合でも、1年分の取引履歴をダウンロードしておき、スプレッドシートや専用ツールなどで一覧できる状態にしておくことが大切です。定期的に損益状況を確認することで、「気づいたら大きな損失になっていた」という事態を防ぎやすくなります。

雑所得全体での結果を意識する

仮想通貨だけでなく、副業収入などを含めた雑所得全体で、1年間の結果がどうなっているかを意識することも重要です。個々の取引だけでなく、年間トータルでの損益を早めに把握しておくと、確定申告前に慌てるリスクを減らせます。

不安が大きいときは専門家に早めに相談する

損失の規模が大きい場合や、海外取引所・複雑な取引が多い場合は、早めに税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。自己判断だけで対応しようとすると、結果として申告漏れや誤った処理につながるリスクもあります。

暗号資産の損益通算や必要経費の考え方など、より詳しい情報を知りたい場合は、「暗号資産(仮想通貨)は損益通算できる?2025年最新の条件・計算ステップ・注意点を解説」もあわせて参考にしてみてください。