IEO(Initial Exchange Offering)とは?メリット、やり方、コインチェックで実施されたIEOについて

「暗号資産(仮想通貨)の「IEO」って何?ICOとどんな違いがあるの?」

IEOは2019年頃から火が点いて、今や多くの取引所で行われるようになりました。

日本でも、コインチェックが運営する「Coincheck IEO」が2021年7月1日に国内初のIEOによるPalette Tokenの購入申込みを開始し、話題になりました。

この記事では、IEOの仕組み、特徴・メリット、過去にIEOで販売されて話題となったトークンなどについて解説します。

IEO

Coincheck IEO公式ページはこちら

IEO(Initial Exchange Offering)とは

IEOとは「イニシャル・エクスチェンジ・オファリング(Initial Exchange Offering)」の略で、暗号資産を用いて企業がプロジェクトの推進のために資金調達する方法です。

まず、IEOで資金調達したい企業がトークンを発行し、その販売を取引所に委託します。取引所は自社での上場・販売を前提に、発行されるトークンだけでなく、発行元企業についても十分に調査します。

問題がなければ、取引所が自社のユーザーに対してIEOを実施し、新たなトークンが販売されます。こうして集められた資金(暗号資産)は、手数料を差し引いて発行元企業に渡り、それを資金源としてプロジェクトの開発が進められます。

各資金調達方法の比較

IEO

IEO以外にもICO、STO、IDO、といった種類のトークン発行による資金調達方法があります。以下ではそれぞれのトークン発行による資金調達方法の特徴、IEOと比較した場合の違いを紹介します。

IEOとICOの違い

IEOとICOの一番の違いは「トークンの発売元」です。IEOではトークンを取引所が販売していますが、ICOではトークンをプロジェクトチームが発行しています。

ICO(Initial Coin Offering:新規暗号資産公開)は企業がプロジェクトの内容や方針をホワイトペーパーなどで公開するとともに、トークンを発行します。そのプロジェクトに賛同する投資家がトークンを買い、その販売益で発行元企業はプロジェクトを推進していきます。投資家は発行元企業から投資額に見合うサービスを受けたり、買ったトークンが将来的に値上がりして利益を得たりできます。

ICOは株式公開よりも簡単に低コストでできるため、さまざまな企業で行われてきました。しかし、ICOでは発行元企業やプロジェクトの信頼性・健全性が客観的に評価されず、投資家自身が判断しなくてはなりません

そこで登場したのがIEOです。
IEOは、取引所が中心となってプロジェクトのトークン販売、資金調達をサポートします。取引所のユーザーに対してトークンの販売を行うため、取引所はIEOを行うプロジェクトについて精査します。そのため、客観的に信頼性や健全性が担保されます。

IEOとSTOの違い

IEOとSTOの大きな違いは、証券制の有無です。

STOとはSecurity Token Offeringの略で、トークンを利用した資金調達手段の1つです。

STOで発行するトークンはセキュリティトークン(Security Token)と呼ばれ、特定の国の法律において有価証券と定められます。そのためトークンの扱いは、有価証券に適用される法律に準拠しなければなりません。

つまりSTOで発行するトークンとは、既存の株式や債券といった有価証券がブロックチェーンの技術を用いて発行されることによってデジタル化したものにあたります。それゆえに、STOで発行されるトークンは「デジタル証券」とも呼ばれています。

一方で、ICOやIEOで発行されるトークンは証券性を持ちません。

トークンの信頼性の観点からIEOとSTOを比較すると、IEOでは取引所の権威性やブランドをもとに信頼性を確保し、STOでは法律的な裏付けから信頼性を確保します。

いずれにしてもIEO、STOは、ICOよりも投資家保護が促進されます。

IEOとIDOの違い

IEO、ICO、STOの他に、IDOというトークンの販売手段もあります。

IDOとはInitial DEX Offeringの略で、こちらもトークンを利用した資金調達手段の1つです。

IEOとIDOの大きな違いは、トークンの発売元です。IEOではトークンを中央集権型取引所(CEX)が販売しますが、IDOでは分散型取引所(DEX)が販売します。

特定の管理者がいない暗号資産取引所のことを「分散型取引所(DEX)」と呼びます。そのDEXにて行われるトークンの販売方式を、IDOと呼びます。

トークンの信頼性の観点からIEOとIDOを比較すると、IEOでは取引所の権威性やブランドをもとに信頼性を確保する一方で、IDOでは客観的な信頼性の確保は難しいです。

なぜならば、DEXは管理者が存在しないため、そのDEXでIDOするプロジェクトの信頼性を精査する専門家がいないからです。

IEOのメリットとは

IEO

IEOには、発行元と取引所、ユーザーのそれぞれにメリットがあります。ここでは、代表的な以下4つのメリットを紹介します。

  • ①取引所が審査を行うため信頼性が高い
  • ②上場の時期が決まっている安心感
  • ③取引所のユーザーなら誰でも参加できる
  • ④発行元にもメリットがある

メリット① 取引所が審査を行うため信頼性が高い

1つ目のメリットは、「取引所が審査を行うため信頼性が高い」点です。

ICOとは異なり、IEOでは取引所が発行元企業やプロジェクト内容を審査します。取引所としては自社で販売するトークンですから、いい加減なものを扱うわけにはいきません。技術力や運営の健全性などを慎重にチェックし、問題なしと判断されて初めて上場・販売に踏み切ります。

JVCEA会員である取引所は協会の自主規制に沿った基準なので、「絶対に安全」とは言い切れません。しかし、多くの暗号資産を扱う取引所ならば、それだけ多くの審査経験があり、独自のノウハウを持っているはずです。審査を通ったという信頼性は高いといえます。

メリット② 上場の時期が決まっている安心感

2つ目のメリットは「上場の時期が決まっている安心感」です。

IEOでは、販売した取引所への上場を前提として販売が行われ、上場までのスケジュールもほぼ決まっています。
一方、ICOでは、トークンを発行し資金調達を行っておきながら、そのまま上場が中止されたり、名も知られていないようなマイナーな取引所に上場されたりすることがしばしば起こりました。

取引所が介在するIEOではそうした心配がなく、確実に取引できるという安心感があります。

メリット③ 取引所のユーザーなら誰でも参加できる

3つ目のメリットは、「取引所のユーザーなら誰でも参加できる」点です。

IEOが行われるとき、取引所は自社のユーザーに対してIEO実施の告知をします。その取引所に口座を持っているユーザーであれば、誰でもこのIEOに参加が可能です。多くの参加希望者が殺到しますが、参加できるかどうかは抽選で決められます。

取引所にとっても、IEOを実施することで多くのユーザーを集めることができるメリットがあります。

メリット④ 発行元にもメリットがある

4つ目は、「発行元にもメリットがある」点です。

トークンを発行する企業側にもメリットがあります。IEOで多額の資金を集めるためには、より多くのユーザーにリーチできる大手取引所を使いたいと思うでしょう。多くのユーザーを抱える取引所ならば信頼性も高く、そうした取引所がIEOを引き受けることで、自社と自社プロジェクトの信頼性も増します。投資家の募集を自社で行わねばならないICOと比較すると、非常に大きなメリットです。

IEOに参加するには

暗号資産

IEOは、以下の手順に沿って参加するのが一般的です。

  • ①取引所にアカウントを開設
  • ②取引所に入金・申込
  • ③抽選・トークンに交換

どのような内容なのか、順番に見ていきましょう。

1. 取引所にアカウントを開設

IEOに参加するには、まずその取引所のユーザーになる必要があります。IEOを行っている取引所は限られています。口座開設の手間や手数料、所要日数などにも注意しつつ、取引所を選びましょう。

2. 取引所に入金・申込

IEOに申し込みする際には、対象通貨を購入するための資金を取引所に入金しておく必要があります。

国内の取引所が行うIEOの場合、「販売価格 × 申込口数」に手数料を加えた金額分の暗号資産や日本円を取引所の口座に入金しておく必要があります。

口座への入金が完了したら、各取引所が指定する方法にしたがってIEOに申し込みます。

3. 抽選・トークンに交換

IEOへの参加を申し込み、期日になると抽選が行われます。抽選に当選すると保有している取引所の暗号資産が、自動的に新規発行されたトークンに交換されます。

コインチェックがこれまでに実施したIEO

IEO

コインチェックは2021年7月にCoincheck IEOを提供し、パレットトークンのIEOを実施しました。そして、2023年2月〜3月にかけては、フィナンシェトークン(FNCT)をIEOにて販売する予定です。

  • 【2021年7月】パレットトークン(Palette Token /PLT)
  • 【2023年2月〜3月 ※実施予定】フィナンシェトークン(FNCT)

【2021年7月】パレットトークン(Palette Token /PLT)

国内販売所・取引所大手であるCoincheckでは、IEO事業の実施について2019年8月から検討を開始しました。
2021年7月にIEOプラットフォーム「Coincheck IEO」の提供を開始し、株式会社HashPaletteと日本初となるIEOによる資金調達を実現しました。

国内初のIEO銘柄として採択されたのは、エンターテインメント領域に特化したNFTプラットフォーム「パレット(Palette)」で利用されるトークンである、「パレットトークン(Palette Token)」です。

パレットは、複数企業によって構成される「Palette Consortium(パレットコンソーシアム)」で運営するデジタルアイテムを発行・管理・流通させるためのブロックチェーンネットワークです。

企業はパレットを用いることで、NFTの発行・配布・流通を全て透明性の高いパレットチェーン上で簡単に行うことが可能となります。

パレットトークンのIEOは大変ご好評いただき、申し込み倍率は24.11倍にまでなりました。

パレットトークンの価格推移

パレットトークンの価格は、2023年1月25日の時点でIEOでの販売価格を大きく上回っています。

IEOでの販売価格4.05円から始まり、Coincheckでの取り扱い初日にその約11.5倍となる46.1290円を記録しました。

その後も最高値を更新し、現在の最高値は2021年8月23日に記録した98.8980円となっています。結果としてIEOでの販売価格からは、約24.4倍にまで到達しました。

パレットトークンの現在価格は、以下のページから確認できます。

「パレットトークン/円(PLT/JPY)のリアルタイムチャート(相場)・レート(価格)」

【2023年2月〜3月 ※実施予定】フィナンシェトークン(FNCT)

コインチェックでは2023年の2月〜3月にかけて、株式会社フィナンシェが発行する「フィナンシェトークン(FNCT)」をコインチェックが提供する「Coincheck IEO」にて販売する予定です。

株式会社フィナンシェについて

株式会社フィナンシェ(以下、フィナンシェ)は、NFT事業やクラウドファンディング事業を手掛けるブロックチェーン事業者です。

フィナンシェが手掛けるNFT事業では、日本の代表的なサッカーリーグである、J1のサッカークラブなどのNFTの発行や販売、企画、運用を行っています。実際に取り扱いのあるトークンでは、湘南ベルマーレやアビスパ福岡などの有名サッカーチームや、卓球のプロチームである琉球アスティーダなどが挙げられます。

フィナンシェでは、個人やスポーツクラブ、プロジェクトなどを含め、のべ100タイトル以上のトークンを扱っています。

フィナンシェ|FiNANCiE https://financie.jp/

フィナンシェトークン(FNCT)について

今回、コインチェックとフィナンシェの提携により行われるIEOでは、「フィナンシェトークン」が発行・販売されます。

フィナンシェトークンはイーサリアム上で発行され、フィナンシェが提供するクラウドファンディング2.0サービス「FiNANCiE」で発行されたスポーツクラブなどのトークンやNFTの活用・流通の活性化、「FiNANCiE」のユーザーへインセンティブ付与などを目的としています。

フィナンシェは、トークンを発行・活用し、「FiNANCiE」上で発行されたトークン同士をより効果的につなげることで、トークンの価値を長期的に向上させ、「FiNANCiE」のエコシステムにおける「ユーザー主体の運営」の実現を目指します。

コインチェックでは本取り組みにより、フィナンシェが目指す「会社がいらない”個の時代”における、ファンや顧客との新しい関係の構築」を支援していきたいと考えています。

また、本IEO実現で調達した資金の一部はフィナンシェの提供する「FiNANCiE」及びNFT事業の更なる拡大に充当する予定です。

お問い合わせ先  https://bit.ly/2TLINyc

フィナンシェトークンの詳細については、こちらの記事をご覧ください。

IEOに関するQ&A

IEOに関するよくある疑問を、Q&A形式でご紹介します。

IEOとは何ですか?

IEOとは「イニシャル・エクスチェンジ・オファリング(Initial Exchange Offering)」の略で、企業がプロジェクト推進のために暗号資産交換業者を介してトークンを発行・販売し、資金調達する方法です。

IEOのメリットは何ですか?

IEOには、主に次のようなメリットがあります。

  • 取引所が審査を行うため信頼性が高い
  • 上場の時期が決まっている安心感
  • 取引所のユーザーなら誰でも参加できる
  • 発行元にもメリットがある

IEOの参加方法を教えてください。

IEOは、以下の手順に沿って参加するのが一般的です。

  1. 取引所にアカウントを開設
  2. 取引所に入金・申込
  3. 抽選・トークンに交換

これまでコインチェックで実施されたIEOについて教えてください。

これまでコインチェックが手がけてきたIEOとしては、以下の2つが挙げられます(2023年2月時点)。

  • 【2021年7月】パレットトークン(Palette Token /PLT)
  • 【2023年2月〜3月 ※実施予定】フィナンシェトークン(FNCT)

まとめ

この記事で解説したIEOのメリット4つを振り返りましょう。

  • 取引所が審査を行うため信頼性が高い
  • 上場の時期が決まっている安心感
  • 取引所のユーザーなら誰でも参加できる
  • 発行元にもメリットがある

このように、IEOは従来ブロックチェーン上で行われてきたICOなどの資金調達・トークン販売の方法に比べ、複数のメリットがあります。
Coincheck IEOでは、コインチェックのアカウントを持っていれば誰でも気軽に抽選・売買に参加できるため、IEOへの投資を検討してみてはいかかでしょうか。