「マウントゴックスってどんな事件だったの?」「マウントゴックス事件の全貌が知りたい」
暗号資産(仮想通貨)の歴史を振り返った際に、このような疑問を抱いた方もいるのではないでしょうか。
今回は、世間で暗号資産の安全性、信頼性を考えるきっかけになったマウントゴックス事件の全貌を解説します。
この記事を読むことで「安全性の高い取引所の見極め方」も分かるようになります。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
マウントゴックス社(株式会社MTGOX)とは何か
世界最大級のビットコイン(BTC)取引量を誇ってた企業がマウントゴックス社です。東京に住所を構えていました。
2009年の設立当初はトレーディングカードの交換所として利益を得ていました。マウントゴックス(MTGOX)の語源はカードゲーム「Magic: The Gathering」のイニシャルと「Online Exchange(オンライン交換)」を略したものです。
しかし、2010年にビットコイン(BTC)事業へ転換すると急成長を始めます。そして、2013年には世界中のビットコイン(BTC)のうち7割以上を取り扱うほどの規模になりました。
マウントゴックス社の台頭は、投資家から暗号資産が注目されるようになった大きなきっかけになったといえます。
マウントゴックス事件とは
2014年に起こったマウントゴックス事件は投資業界に衝撃を与えました。マウントゴックス社のサーバーが何者かによってハッキングされ、ビットコイン(BTC)と預かり金が大量流出してしまったのです。
失われたビットコイン(BTC)の総額はユーザー保有分の約75万BTCと自社保有分の約10万BTCで、当時のレートでは約470億円に相当しました。
また、顧客から預かっていた資金の28億円も犯人に奪われてしまいます。この事件が打撃となり、マウントゴックス社は莫大な負債を背負うこととなりました。そして、会社更生法の適用を申請し、事実上、マウントゴックス社は経営が破綻してしまったのです。
流出事件の経緯
大まかな経緯
2011年6月19日:ハッキング被害を受ける。被害額は875万ドル以上。
2013年2月22日:オンライン決済システムを提供していた「Dwolla」のアカウントの使用が制限され、マウントゴックスとの取引を停止。
2014年2月7日:システム障害を理由に全てのビットコインの払い戻しを停止。
2014年2月28日:民事再生法適用申請を開始。このタイミングで事件が公に。
2014年4月24日:破産手続きの開始。
2015年8月1日:元CEOマルク・カルプレス氏が顧客の預かり資産を横領した疑いで逮捕される。
2018年6月22日:破産手続きから民事再生法手続きに移行。
事件が公になったのは2014年2月28日のことです。マウントゴックス社から民事再生法の適用申請と受理が発表されたのです。このときに、約75万BTCと自社保有分の約10万BTCとユーザー保有分の約75万BTC、さらに預かり金の約28億円が失われたことも同時に伝えられました。
実は、2011年よりマウントゴックス社はハッキング被害を受けており、その時点で875万ドル以上の被害を出していました。
そして、2013年2月には米国土安全保障省からの資金洗浄防止要件導入が告げられます。マウントゴックス社はオンライン決済システム「Dwolla」の一部口座との取引が停止させられました。資金も凍結させられ、措置が解除されるまでに約2カ月半かかったのです。
その時点でマウントゴックス社の経営はかなり傾いていました。2014年2月7日には「システム障害」を理由にしてビットコインの払い戻しを中止します。そして、同月中には民事再生法適用申請が開始され、マウントゴックス社のビットコイン(BTC)ユーザーの損害が確定しました。
2014年4月にはマウントゴックス社の破産手続きが始まります。実態調査が滞ったことで、他の選択肢は残されていませんでした。
それから1年以上が経ち、2015年8月には同社の元CEOマルク・カルプレス氏が逮捕されます。一部預かり金の横領などの罪が疑われたためです。結局2016年7月に保釈されたものの、暗号資産全体のイメージは大きく失墜しました。
そして、2018年6月には破産手続きは民事再生法手続きに切り替わります。マウントゴックス社が破綻当時に保有していたビットコイン(BTC)の相場が上がり、保有資産が2000億円以上になったためでした。
CEOマルク・カルプレスの関与の真相
マウントゴックス事件が波紋を呼んだのは被害額やトレンドの暗号資産が関わっていた点が大きかったといえます。ただ、事件発覚後に元CEOが逮捕されるというスキャンダルな展開も広く報道されました。
ちなみに、事件当初は純粋なハッキング被害として発表されていました。しかし、捜査が進んでいく中でマルク・カルプレス氏の口座が不自然に増えているなど、不審点が次々と見つかっていきます。そして、2015年8月1日に警察はシステム不正操作の疑いで逮捕へと踏み切りました。その直後、ユーザーからの預かり金を着服した容疑で再逮捕されています。
しかし、カルプレス氏は一貫して無罪を主張し続けました。メディアへのコメントや法廷でも顧客への謝罪は述べても、横領を認めることはありませんでした。
2017年7月11日には初公判が開かれます。ここでもカルプレス氏は自身を無罪とする姿勢を崩しませんでした。そのうえで、横領罪などの起訴内容を否定しています。
2017年7月26日には、マウントゴックス社のシステムにハッキングをした容疑でロシア人男性が逮捕されました。彼は事件の真犯人として世間の注目を集めます。
2019年3月に事実上の無罪判決を勝ち取ったカルプレス氏ですが、流出したビットコイン(BTC)と現金は資金洗浄された可能性が高く、捜査は難航しています。
事件による暗号資産への影響
投資家のみならず一般人にもマウントゴックス事件は興味深い内容でした。
当時はビットコイン(BTC)の有益性をうたっていたメディアや識者が多かったので、人々の信頼は大きく揺らぎます。当然ながら、ユーザーに莫大な損失を与えたマウントゴックス社には非難が寄せられました。
また、報道は「ビットコイン流出」「ビットコインによる経営破綻」など、人気銘柄を強調する傾向にありました。そのため、ビットコイン(BTC)へのマイナスイメージが社会的に先行し始めます。その結果、ビットコイン(BTC)から投資家たちは撤退していき価格が暴落しました。
事件が起きた根本的な原因は?
ただし、センセーショナルな報道の中で事件の本質が正しく語られなかった部分もあります。
まず、マウントゴックス事件の原因となった問題は、あくまで同社のセキュリティシステムの甘さでした。
また、取り扱う金額に見合っただけの管理体制が整っていなかったことも背景として無視できません。つまり、ビットコイン(BTC)そのものの危険性が現れたというよりも、マウントゴックス社の失態が事件の核心です。
ビットコイン(BTC)自体はハッキングされやすいわけでもなく、安全な暗号資産だともいえます。
ほとんどの暗号資産に施されている技術は十分に信頼のおけるものです。マウントゴックス事件はあくまで暗号資産管理の教訓として振り返るべきでしょう。
事件による暗号資産市場の変化
マウントゴックス事件後、暗号資産市場にも影響が生まれました。
まず、2017年4月1日に「改正資金決済法」が施行されます。この法律では「取引所の登録制と規制」が義務となりました。
そして、資金力などの条件を満たしていない企業が自由に取引所を設立することができなくなったのです。
これにより、成長率の高い暗号資産業界に次々と参入してきた中小企業の勢いが止まりました。反対に、大手企業の暗号資産サービス参入は促進されたといえます。
次に、「登録業者の規制」です。改正資金決済法の条件をクリアしたとしても、財務規制によって登録業者は厳しく審査されるようになります。資本金の最低額は1000万円に設定され、純資産額が必ずプラスであることも義務付けられました。
そして、「分別管理」のルールも敷かれます。企業の自己資金と利用者の資産が一緒に管理されている限り、横領事件の起こるリスクは高まります。それに、暗号資産以外の事業に顧客の資産が投入される可能性も出てくるでしょう。
そこで、両者を分けて管理することが決まりとなりました。
さらに、第三者的な立場にある専門家からの監査も義務に加えられます。取引所は公認会計士か監査法人による外部監査を受けなければ運営を続けられません。不審な会計処理はすぐに見抜かれる仕組みが徹底しています。
マウントゴックス事件からわかる暗号資産のリスクとは?
暗号資産全体がマウントゴックス事件によってイメージダウンしたのは事実です。ただ先述の通り、暗号資産そのものが危険なジャンルというわけではありません。その根拠はブロックチェーンへの信頼性です。
ビットコイン(BTC)の中心にある技術がブロックチェーンは、取引履歴などのデータを複数のネットワーク参加者で管理する非中央集権型で成り立っています。この方法で暗号資産を取引すれば、データを勝手に改ざんすることが非常に難しくなります。ハッキング対策としては頼もしい技術です。
ですので、暗号資産取引でユーザーが考えなければいけない一番のリスクは利用する取引所のコールドウォレット対応や保証内容が充実しているかです。また、個人のミスによって暗号資産が流出する危険もゼロではないので、自力でできる安全対策も重要です。
暗号資産取引所の安全性を見極めるポイント
暗号資産取引所の安全性を見極めるポイントは、例えば3つ挙げられます。
- コールドウォレット
- マルチシグ
- 二段階認証
コールドウォレット
ウォレットは大きく分けて2種類あり、ネットにつながっておらず完全に隔離されているものをコールドウォレットと呼び、反対に常時ネットにつながった状態のものはホットウォレットと呼びます。
ホットウォレットの場合、暗号資産の売買や送金をリアルタイムで取引するのに便利な反面、常時ネット回線に接続されていることから、ハッカーによる侵入や保管している暗号資産の流出がおこるリスクが高くなります。
一方で、USBやペーパーなどで秘密キーを保管するコールドウォレットを利用することで、オンラインから隔絶され、ハッキング対策には非常に有効です。
マルチシグ
マルチシグとは秘密の鍵を複数用意した公開認証方式のことです。公開鍵を2つ以上用意して別々の場所に保管しておくことで、その公開鍵に対応した秘密鍵をすべて、もしくは一部を使い初めて取引ができるようになります。
これまでの個人認証では予め設定したIDとパスワードを入力して個人を認証する方式でしたが、秘密キーがパスワード一つのみとなるため、個人の端末などへハッキングされると簡単に保管している暗号資産が持ち出されてしまいます。
マルチシグを利用することでハッキングが困難になり、セキュリティ対策として非常に有効です。
二段階認証
二段階認証を導入している取引所も大切なポイントです。
取引画面へのログイン時には通常、登録済みのメールアドレスやパスワードを入力しますが、二段階認証ではさらにスマートフォン宛てにログインの都度発行されるワンタイムのパスワードの入力を必要とします。
この仕組みによって、仮にメールアドレスやパスワードの情報が盗まれても、アカウントにアクセスされたり、不正出金されるといった被害を防いでくれます。
暗号資産の将来性
暗号資産はさまざまな事象によって価格が変動するジャンルです。経済界や法整備などに注意しながら、価格の変動を見守っていくことが大事です。暗号資産の将来に関わる要素として、まず課税率が挙げられます。
暗号資産による収入を雑所得として申告した場合、最高税率は55%と決して低くありません。今後、税率が低くなればますます暗号資産に投資しやすい状況が生まれます。
次に、「大手企業の事業参入」です。信頼されている大手企業の取引所が増えていけば暗号資産の価格も上がっていきます。
また、日常生活のインフラに暗号資産が用いられるなど、より世間で身近な存在になっていくとも考えられます。
そして、「運営体制強化」も外せません。マウントゴックス事件のような問題が起こらないよう取引所の多くが運営体制を見直してきています。金融庁の命令を受け、業務改善に踏み切った取引所も出てきました。
その上で「暗号資産の実用化」が進めば取引の透明性が高まります。マネーロンダリングや犯罪行為への使用などを未然に防ぎやすくなるのも魅力です。
マウントゴックス社と安全性が問われる暗号資産業界
マウントゴックス事件の全貌と暗号資産の安全性について解説しました。もう一度内容を振り返ります。
マウントゴックス事件が暗号資産の安全性・信頼性を改めて考えるきっかけとなった
安全性が高い暗号資産取引所を見極めるポイントは
- コールドウォレット
- マルチシグ
- 二段階認証
などが挙げられます。
これから暗号資産で取引を始めてみたい方は、まずはCoincheckに口座開設をしてみてはいかがでしょうか。