ステーブルコインとは?特徴や仕組みと種類、規制と最新動向・将来性を解説

ステーブルコイン(Stablecoin)とは、法定通貨やコモディティなど特定の資産価格と連動することを目的に設計された暗号資産の一種です。ビットコインやイーサリアムをはじめとする従来の暗号資産は価格変動(ボラティリティ)が大きく、法定通貨にはない機能を備えるものの、決済手段としての実用性・安定性には欠けるという問題点がありました。

法定通貨に連動するステーブルコインであれば、暗号資産でありながら法定通貨と同等の価値を持つことができます。ステーブルコインの誕生により、暗号通貨のまま価値を安定に保ちやすくなりました。

今回の記事では、ステーブルコインについて詳しく解説していきます。

 

寄稿者迫田 晃祐

  

鳥取県出身。大学院卒業後、2019年に信越化学工業に入社。半導体の材料開発を経験した後、2022年よりコインチェックに入社。リサーチャーとして暗号資産の上場審査を担当している。暗号資産との出会いのきっかけは2020年のコロナショック。急変動を繰り返しながらも着実に成長する暗号資産に可能性を感じ、クリプト業界への転職を決意。現在は「技術の分かるリサーチャー」を目指し、コーディングの習得にも精力的に取り組んでいる。  

目次

ステーブルコインとは?意味をわかりやすく解説

ステーブルコイン(Stablecoin)とは、米ドル等の法定通貨やコモディティなど特定の資産価格と連動することを目的に設計された暗号資産の一種です。ビットコインやイーサリアムをはじめとする従来の暗号資産は価格変動(ボラティリティ)が大きく、法定通貨にはない機能を備えるものの、決済手段としての実用性・安定性には欠けるという問題点がありました。

法定通貨に連動するステーブルコインであれば、暗号資産でありながら法定通貨と同等の価値を持つことになります。ステーブルコインの誕生により、暗号通貨のまま価値を安定に保ちやすくなりました。

ステーブルコインの特徴

ステーブルコインの最大の特徴は、暗号資産でありながら「価格の安定性」がある点であり、決済手段や送金手段としての利用が期待されています。
また、あくまでも暗号資産であり、ブロックチェーン技術に基づいているため、迅速で低コストな送金を可能とするという特徴もあります。

ステーブルコインの仕組みと種類

ステーブルコインの特徴

ここから先はステーブルコインの種類について解説します。
ステーブルコインにはたくさんの種類が存在しますが、価値を安定させる仕組みの違いによって大きく4種類に分類することができます。

(※)暗号資産担保型、アルゴリズム型(無担保型)、コモディティ型ステーブルコインは、設定された価値を保証するための原資産が確保されているものではなく、相場の変動等により目標価格に対して大きく下落する可能性があります。

法定通貨担保型

法定通貨担保型は、その名の通り米ドルや円といった法定通貨により価値が裏付けられるステーブルコインです。
代表的な法定通貨担保型ステーブルコインは以下の通りです。いずれも米ドルに連動するステーブルコインであり、2026年1月時点で暗号資産の時価総額で上位にランクインしています。

  • USDT(Tether)
  • USDC(USD Coin)

引用:CoinMarketCap

法定通貨担保型ステーブルコインが法定通貨の価値に連動するのは、発行体が十分な裏付け資産を保有しており、法定通貨と等価な価値を持つと認知されているためです。
代表例にあげた2種のステーブルコインについては、発行体が指定する手続きを行うことで米ドルと1:1で交換することができ、償還の仕組みを提供することが価格安定の基礎となっています。

合わせて、償還を確実に実行できるかという点も重要視されます。発行体がステーブルコイン発行量と同等以上の資産を保有していることが確認できないと、全ての保有者に対して償還を実行できることを信用できません。

そうした背景もあり、多くの発行体は裏付け資産に関するレポートの公開を定期的に行っています。発行体は現金同等物による担保を行いつつ、一部を国債等の信用リスクの低い資産で運用することで収益を上げています。

暗号資産担保型

暗号資産担保型はその名の通り、暗号資産により価値が裏付けられるステーブルコインです。

代表的な暗号資産担保型ステーブルコインには以下があげられます。

  • DAI
  • sUSD

暗号資産を担保とする場合、担保比率は発行量と同額では不十分です。法定通貨と異なり、暗号資産はボラティリティが高い(価格変動が大きい)ため、暗号資産の価格が下落した場合、担保割れのリスクがあるからです。

このため、暗号資産担保型ステーブルコインでは担保とする暗号資産の価格が下落しても価値を保てるように「過剰担保」を導入する場合が多いです。DAIの場合、2023年6月16日時点で160%以上の担保があることをオンチェーンデータから確認することができます。

DAI

引用:daistats

また、担保とする暗号資産が大幅に下落した場合でも担保割れしないよう、強制決済の仕組みが導入されています。DAIの場合、担保とする暗号資産が下落し最低担保比率を下回ると、担保は自動的に清算(売却)されます。利用者は、それを回避するために担保を追加する必要があります。
暗号資産担保型ステーブルコインは過剰担保が必要で資金効率が悪いとされていますが、暗号資産の世界で完結するステーブルコインとして機能しています。

【補足】
Dai(DAI)は、イーサリアムブロックチェーン上で稼働する暗号資産(仮想通貨)です。
※Dai(DAI)は1DAI = 1米ドルを目標価格として設定しており、実際に1米ドル付近で価格が推移していることから、暗号資産型ステーブルコインと認識されていますが、相場の変動等により目標価格に対して大きく下落する可能性もあります。

アルゴリズム型(無担保型)

アルゴリズム型(無担保型)は、裏付けとなる資産が無い代わりに、アルゴリズムによって価値が一定に保たれるステーブルコインです。

代表的なアルゴリズム型ステーブルコインには、過去の事例としてTerraUSD(UST)があげられます。
後述で詳しく解説しますが、USTは、ガバナンストークンLUNAとの交換をアルゴリズムとして利用し、ドルペッグを維持しようとしましたが、2022年5月にその仕組みが破綻し、市場から退場しました。

暗号資産市場には、様々な仕組みのステーブルコインが存在します。USTのような純粋なアルゴリズム型以外にも、一部を担保資産、一部をアルゴリズムで調整する「部分アルゴリズム型」(例:フラックス/FRAX)も存在します。

アルゴリズム型のステーブルコインは、暗号資産担保型のステーブルコインと同様に、市場の需給を調整することで価格を一定に保とうとする点は共通しています。

例えば、米ドルに連動するアルゴリズム型ステーブルコインの場合、市場価格が1ドルを上回った際に「売り」が促進され、1ドルを下回った際に「買い」が促進されるアルゴリズムを採用すると、理論上はドルに連動するステーブルコインとして機能すると想定されます。

しかし、過去の破綻事例からも明らかになった通り、主要な暗号資産を担保としないアルゴリズム型ステーブルコインは安定性を担保することが難しく、より安定したアルゴリズムを模索することが必要です。

コモディティ型

コモディティ型は、金や原油といった現物資産(コモディティ)により価値が裏付けられるステーブルコインです。

現物資産は実物そのものに価値があるという性質がある一方、輸送や分割が困難といったデメリットもあります。コモディティ型ステーブルコインは、現物資産と等価の価値を持ちながら簡単に取引でき、少量から購入可能と現物資産のデメリットを補完する点が特徴です。
仕組みとしては法定通貨担保型と同様で、発行体が担保として現物資産(コモディティ)を保有しており、現物資産と等価であると認知されることが価格連動の基礎となっています。
コモディティ型ステーブルコインの代表例としてはPaxos Gold(PAXG)やジパングコイン(ZPG)が知られています。

ステーブルコインはなぜ重要なのか

ステーブルコインはなぜ重要なのか

ここまででステーブルコイン市場が急速に成長してきたことを説明しました。では、なぜステーブルコインは重要な資産と考えられているのでしょうか。

一言でいうと、ステーブルコインは暗号資産のボラティリティと相関が低いものの、法定通貨にはないブロックチェーンの強みを兼ね備えている資産であるからです。

暗号資産はボラティリティが高く、価値が頻繁に変動します。相場の不確実性が高まった際は、価格変動リスクを減らすため「安全資産へ交換したい」という需要が発生しますが、ステーブルコイン誕生以前は暗号資産を売却することで法定通貨へ換金するしかありませんでした。法定通貨への換金は取引所でしか行えないため、保有する暗号資産を取引所に移転する必要もありました。

ステーブルコイン誕生後は暗号資産のまま価値を保ちやすくなりました。暗号資産のステーブルコインへの交換はAMM(Automated Market Maker)を利用したサービスでも可能であるため、取引所への移転は必ずしも必要ではありません。

ステーブルコインは暗号資産としての性質を継承している点も強みです。法定通貨とは異なりステーブルコインはブロックチェーン上で発行されるトークンであるため、P2P(Peer to Peer)での送金が可能です。そのため、安い手数料で即時送金することができます。

また、これはステーブルコイン自身の特性によるものではありませんが、ステーブルコインが暗号資産取引の基軸通貨として利用されるようになったことで市場流動性を高める役割を担うようにもなりました。取引所はステーブルペアを提供することで、特定の暗号資産の流動性を向上することができるようになりました。

ステーブルコイン市場の成長について

ステーブルコイン市場の成長について

暗号資産の歴史は2009年にビットコインが誕生したことに始まりますが、ステーブルコインが本格的に利用されるようになったのはここ数年のことです。
2020年初頭のステーブルコイン市場の時価総額は1兆円にも満たない状況でした。しかし、2022年12月時点では20兆円を超えており、ステーブルコイン市場が急速な発展を遂げてきたことが分かります。

2022年は業界関係者の間で「クリプトウィンター(冬の時代)」と囁かれるように、暗号資産市場が大きく冷え込んだ1年となりました。暗号資産の総時価総額は2021年のピーク時から1/3以下の1兆ドル割れとなっており、暗号通貨の取引高も大幅に減少している状況となっているなかでの成長でした。

2025年10月初旬にステーブルコインの時価総額が3,000億ドル(約44兆円)を突破し、ステーブルコインのさらなる成長が観測されています。
参考:Stablecoins break $300B market cap post 47% growth year-to-date

一方、ステーブルコイン市場は事情が異なります。以下の図は暗号通貨の総時価総額とステーブルコインの総供給量の推移を比較したものです。暗号資産の総時価総額は2021年のピーク時から1/3以下と大幅に減少した一方、ステーブルコインの総供給量はピーク時からさほど減少しておらず高止まりしています。

低調な相場環境でもステーブルコインの償却需要はそこまで多くなく、暗号資産市場に資金が留まっているものと考えられます。

こうした背景にはステーブルコインのユースケースの拡大があると考えられます。代表例としてはDeFi(分散型金融)サービスの台頭です。利用者は、流動性マイニングやイールドファーミングといったDeFiサービスに資金を預け入れることで手数料や金利収入を得ることができます。こうしたDeFi運用はステーブルコインでも可能であり、ステーブルコイン保有のインセンティブになっていると考えられます。

また、今後は企業によるユースケースの拡大も見込まれます。

Circleの決済ソリューションにApple payが統合されました。加盟店側がApple Payを受け付けやすくなったことで、USDC決済の導線が広がりました。

米プエルトリコ自治区の銀行「FV Bank」がUSDCの顧客入金に対応することを発表しています。これまで暗号資産は投機的な資産としてのユースケースが多かったですが、決済手段や銀行入金といった実生活に紐づくユースケースが増えることで、ステーブルコイン保有のインセンティブは更に高まるものと考えられます。

ステーブルコインのメリット

ステーブルコインのメリット

ステーブルコインの主なメリットとして、価格が安定している点と送金にかかる時間が短い点が挙げられます。
ここでは、ステーブルコインのメリットについて詳しく解説します。

価格が安定している

ステーブルコインの価値は法定通貨に紐づけられているため、ビットコインなどのほかの暗号資産と比べて価格変動のリスクが低いという特徴があります。
値動きが激しい暗号資産を保有している期間が長ければ長いほど、資産価値が高まる可能性がある一方で、価値を大きく減らす可能性も高くなります。

長期間取引する予定がなく、下落リスクを避けたい場合には、価格が安定している資産であるステーブルコインをリスクヘッジのための資産移管先として選ぶのが有効です。
暗号資産同士の取引(交換)となるため、特別な手続き不要でスムーズに取引でき、高い利便性を有しているといえます。

送金にかかる時間が短い

ステーブルコインは、従来の法定通貨同士の取引とは異なり、送金するにあたって銀行などの仲介機関を介する必要がなく、即時送金が可能です。

世界中どこにいても即時送金することが可能であるため、国際送金の効率を向上させることが期待されています。
また、送金はブロックチェーン上で行われるため、24時間365日いつでも取引可能な点も大きなメリットといえるでしょう。

ステーブルコインのデメリット

ステーブルコインのデメリット

ステーブルコインにはメリットがある一方で、デメリットも存在します。
ここでは、ステーブルコインの持つデメリットを3つ説明します。

担保の信頼性に欠ける場合がある

ステーブルコイン発行元の企業の財務状況や裏付け資産に対する信頼性が欠けていると、価格が急変動してしまう可能性があります。
いくら価格が安定しているとはいえ、その価値が常に保証されているわけではないことは、理解しておかなければなりません。

ステーブルコインを保有する場合には、その銘柄がどのような方法で価値を担保しているのかを正しく把握しておくことで、思わぬ暴落に巻き込まれるリスクを低減することができます。

ハッキングや詐欺のリスクがある

ステーブルコインとはいえ暗号資産である以上、ハッキングや詐欺のリスクがあることは念頭に置いておかなければなりません。
スマートコントラクトや取引所の脆弱性を突いたハッキングによって資産が流出する可能性があります。

また、ステーブルコインに対する知識の浅さを悪用した詐欺に利用されて、思わぬところで損害を被る可能性もあります。

ディペッグが発生するリスクがある

ディペッグとは、ステーブルコインが法定通貨との連動性を失った結果として引き起こされる、価格乖離のことです。
本来、価格が安定していることが利点であるステーブルコインにとって、その価格が基準価格から乖離してしまうことは、暴落が暴落を呼ぶリスクを秘めています。

ステーブルコインのディペッグ事例

ここまで説明の通り、ステーブルコインはここ数年で急速に市場規模を拡大してきました。しかし、昨今は規制の必要性が世界中で議論されています。

この背景にはステーブルコインの安定性が疑問視されていることがあります。長期にわたって安定に価値を維持するステーブルコインがある一方で、価格維持の仕組みが不十分なものもあり、一部ではステーブルコインの価値が崩壊する事例も発生しています。
ここでは実際にステーブルコインがディペッグ(価値の乖離)した事例について紹介します。

USTの崩壊

これまでに最も話題となったディペッグの事例としては、2022年に起こったUSTの崩壊があげられます。
USTはアルゴリズム型ステーブルコインであり、ガバナンストークンであるLUNAとUSTの供給量を調整することで価値を安定化する仕組みを採用しています。崩壊が起こる直前、LUNAとUSTは暗号資産の時価総額ランキングでいずれもトップ10に入るほど規模の大きなプロジェクトとなっていました。

2022年5月10日、大口のUST大量売却をきっかけにUSTの価値が0.60ドルまで下落する大幅なディペッグが発生しました。その後、一時は0.95ドル付近まで価値を回復したものの、信用不安の広がりによるLUNAとUSTの一斉売りに歯止めが掛からず、最終的にLUNAとUSTは共に暴落することとなりました。

2022年5月のLUNA(左)、UST(右)の価格推移

2022年5月のLUNA(左)、UST(右)の価格推移

引用:CoinMarketCap

崩壊に至った直接の原因は分かりませんが理由は様々考えられます。Terraネットワークのレンディングプロトコル「Anchor Protocol」ではUSTを預けるとAPY約20%と高金利で運用することができました。UST保有者の多くがこのプロトコルを利用していたと考えられるため、市場流通するUSTの量が少なく価格が崩れやすい状態になっていたと考えられます。
また、運営元が保有する準備金が不十分であったことも要因の一つです。

Terra運営元であるTerraform Labsは万が一ペッグが外れた場合の資金として35億ドル相当のBTCを保有していました。しかし、暴落直前(2022年5月7日)のLUNA、USTの時価総額はそれぞれ233億ドル、187億ドルと準備金よりも遥かに大きく、信用不安による売りを吸収するには不十分でした。

アルゴリズム型ステーブルコインは裏付け資産が存在しないため、暴落前からそのリスクを指摘する声はありました。しかし、現実に時価総額1兆円を超える暗号資産が数日の内に無価値に近い状態となったことで、改めてアルゴリズム型ステーブルコインのリスクが浮き彫りになった事件といえます。

担保型ステーブルコインでも価格変動は起こる

では、裏付けのあるステーブルコインであればディペッグが起こらないかというと、そうではありません。
USTが崩壊した際は、アルゴリズム型に留まらずステーブルコイン全体に対する信用不安が広がりました。USTの下落に追従する形で法定通貨担保型のUSDTでもディペッグが発生し、一時0.95ドルまで価格を下げたのです。

2020年には暗号資産担保型のDAIでもディペッグが発生しています。2020年3月の暗号通貨市場が暴落した際には、MakerDAOのオークションシステムが正常に機能しなくなり400万ドルの負債が生じる状況となりました。担保不足を解消するため、Maker DAOはガバナンストークンMKRを追加発行することを決定しましたが、オークションの入札はDAIで行う必要があったため、DAI需要の高まりからDAIの価格が一時1.12ドルまで高騰しました。

ステーブルコインは公開市場で自由に売買されるという性質上、需給の状況によって基準価格との乖離が発生するケースがあります。ただし、裏付け資産により担保される場合においては乖離が発生したとしても、それを解消する反対売買のインセンティブがあるためペッグを取り戻すことができると考えられます。

一方、アルゴリズム型ステーブルコインには担保が存在しないため、価格維持の機構はアルゴリズムのみに委ねられます。取り付け騒ぎのような極端な売買が発生してもペッグを維持する仕組みが開発されない限り、アルゴリズム型ステーブルコインのユースケースは拡大しないと筆者は考えています。

ステーブルコインの規制

ステーブルコインの規制

ステーブルコインの利便性が認知される一方で、価値の安定しないものも存在することから、適切な規制を設ける必要性が議論されています。
ステーブルコインはブロックチェーン上で発行される暗号資産であるため、P2Pの送金が可能です。この特性は便利な反面、世界中どこにでも送金できてしまうため、マネーロンダリングやテロ資金用途で利用されるリスクがあります。

こうした背景から規制の必要性が議論されていますが、P2Pの送金を一国の規制で対応するのは困難であるため、国・地域で規制を設けることとは別に、国際レベルでの規制も考えていく必要があります。

国内の動向

日本では、世界に先駆けてステーブルコインを規制するための法律が制定されています。

2022年6月、参議院本会議にて可決・成立した改正資金決済法(正式には「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」)では、デジタルマネー類似型に区分されるステーブルコインを「電子決済手段」として規律することになりました。

以下の図の通り、改正資金決済法において法定通貨建てステーブルコインは「デジタルマネー類似型」と「暗号資産型」に分類されます。「デジタルマネー類似型」に該当するのは発行価格と同額での償還が約されるステーブルコインであり、具体的には法定通貨担保型のステーブルコインが対象となります。

一方、「デジタルマネー類似型」に区分されないその他のステーブルコインは「暗号資産型」に分類され、暗号資産として規制を受けることになります。具体的には暗号資産担保型、アルゴリズム型のステーブルコインが該当します。

改正資金決済法におけるステーブルコインの分類

引用:金融庁資料

また、改正資金決済法の特徴としては、ステーブルコインの発行・管理を行う「発行者」と流通を担う「仲介者」の役割が明確に分けられることです。

以下の図の通り、「デジタルマネー類似型」ステーブルコインを発行できる機関は、銀行、資金移動業者、信託会社に限定されます。また、「デジタルマネー類似型」ステーブルコインの流通を担う「仲介者」は登録制となり、電子決済手段取引業者等のライセンスを取得した者に限られることとなりました。

「暗号資産型」ステーブルコインの流通については改正前の資金決済法と変わらず、暗号資産交換業者が仲介を行うことができることとされています。

ステーブルコインの発行者と仲介者

引用:金融庁資料

したがって、暗号資産交換業者が今後「デジタルマネー類似型」ステーブルコインを取り扱うには、電子決済手段取引業者等の仲介のためのライセンスを取得する必要があることが示されました。

世界の動向

ステーブルコインの国際的な規制の枠組みについては、現在FSBやFATFと呼ばれる組織がステーブルコインの規制を主導しています。
FSBとは、Financial Stability Board(金融安定理事会)の略称で、国際金融の安定化に関する措置、規制、監督を行う国際組織です。主要25か国・地域の中央銀行をはじめとする複数金融団体の代表が参加しています。
FSBは2022年10月、「暗号資産関連の活動に関する国際的な規制」に関する文書を公表しています。この文書ではグローバル・ステーブルコインについて、利用者の償還権と、価値安定メカニズムについての要件について高い規制基準が適用されるべきとしています。

FATFとは、Financial Action Task Force(金融活動作業部会)の略称で、マネーロンダリングやテロリストへの資金供与を防ぐための対策基準をつくる主要国の連携組織です。OECD加盟国を中心とする計39の加盟国・地域から構成され、日本も加盟しています。

FATFは2020年7月、「いわゆるステーブルコインに関するG20財務大臣・中央銀行総裁へのFATF報告書」を公表しています。この文書ではアンホステッドウォレットを経由するP2P取引によりマネーロンダリングやテロリストへの資金供与のリスクがあることを指摘しており、効果的な規制が必要であるとしています。

国・地域単位では様々な方法での規制を検討しています。例えば、EUでは2022年10月に暗号資産市場規制法案(MiCA)を可決しており、ステーブルコインの発行者は保有者がいつでも裏付資産と交換できるようにするといった内容が盛り込まれています。

国内のステーブルコインに関する最新情報

前述したように、2023年6月に改正資金決済法が施行されたことにより、日本国内でもさまざまな企業が収益機会の獲得を目指してステーブルコインの関連業界に参入してきています。

ここでは、こうした事業者の参入事例を中心に、国内のステーブルコインに関する最新ニュースを紹介していきます。

【2025年8月】JPYCが日本円建ステーブルコイン「JPYC」を発行

JPYC

引用:JPYC公式HP

JPYC株式会社は、電子決済手段の発行及び償還、ステーブルコイン等ブロックチェーンに関するコンサルティングを行っている企業です。

同社はこれまで、「JPYC Prepaid」という法的には自家型前払式手段(プリペイド)に分類されるコインを発行していました。自家型前払式手段である「JPYC Prepaid」は、払い戻しに対応していません。そのため、一般的なステーブルコインである「デジタルマネー類似型」で可能な、ステーブルコイン保有者が法定通貨を請求することができませんでした。

しかし、2025年8月18日、同社は資金移動業者の登録を取得したため、日本円と1:1で交換可能な日本円建ステーブルコイン「JPYC」の発行・償還サービスを提供する予定だと発表しました。

日本円が裏付けとなるステーブルコインの発行は国内初となり、今後のサービス開始に注目が寄せられているようです。

参考:JPYC株式会社ニュースリリース

【2023年6月】三菱UFJ信託銀行が開発を進める「プログマコイン」が技術提携を発表

プログマコイン

引用:プログマコイン公式HP

三菱UFJ信託銀行株式会社は2023年6月2日、株式会社Datachainおよびドバイに本社を構えるTOKI FZCOと提携して、ステーブルコインのクロスチェーンインフラの構築を開始していくことを発表しました。

3社は、ステーブルコイン発行管理基盤「プログマコイン(Progmat Coin)」によって、今後さまざまなパブリックチェーン上で発行・流通される予定のステーブルコインが、クロスチェーン取引を行えるようにするためのインフラ構築を目指すとしています。

プログマコイン(Progmat Coin)とは、「1coin =1円」で価値が固定化された、分散型台帳技術(DLT)上で移転可能なステーブルコインの発行・管理を目的としたプラットフォームで、三菱UFJ信託銀行が開発を進めています。

発表によると、クロスチェーンインフラの構築によって次の3つのユースケースが実現されるとのことです。

  • ①クロスチェーンスワップ:異なるパブリックブロックチェーン上のステーブルコイン同士の交換
  • ②クロスチェーン決済:NFTやガバナンストークン等の異なるパブリックブロックチェーン上のステーブルコインによる決済
  • ③クロスチェーンレンディング:異なるブロックチェーン上のレンディングプロトコルでステーブルコインを活用した取引を実行

なお、本取り組みは2024年第2四半期(7月〜9月)の実現を目処に推進される予定です。
参考:パブリックブロックチェーン間のステーブルコイン利用取引を可能とする、「Progmat Coin」×「Datachain」×「TOKI」の技術提携について

【2023年3月】きらぼし・みんな・四国の3行がステーブルコインの実証実験を開始

2023年3月2日、Web3の開発を手がけるG.U.Technologies株式会社は、同社が共同運営するパブリック・ブロックチェーン「Japan Open Chain」上で、3つの金融機関とともにステーブルコイン発行に向けた実証実験を開始したことを発表しました。

引用:Twitter(@GUnet)

実証実験に参加するのは、東京きらぼしフィナンシャルグループ、みんなの銀行、四国銀行の3行で、最終的には銀行勘定のテスト環境および本番環境とも連携しながら、法的に裏付けのあるステーブルコインの発行を目指すとしています。

参考:国内銀行各行が日本法に準拠するステーブルコインを「Japan Open Chain」上で発行へ

【2022年2月】金価格との連動を目指す「ジパングコイン」リリース

ZIPANG COIN

引用:Zipangcoin(ジパングコイン)

2022年2月、三井物産の子会社である三井物産デジタルコモディティーズは、コモディティ型ステーブルコインの「ジパングコイン」をリリースしました。
ジパングコイン(ZPG)は、金(ゴールド)価格との連動を目指している暗号資産です。インフレヘッジ機能など金の特性を備えており、1ZPGが金1グラムの価格と同価値になるように設計されています。

なお、ジパングコインには以下の3つの特徴があります。

  • ①分散投資・インフレヘッジのための「金」としての特徴
  • ②金価格に連動することを目指す、信頼性の高い暗号資産としての特徴
  • ③デジタル化 ・小口化によって、より身近な「金×暗号資産」としての特徴

引用:Zipangcoin(ジパングコイン)

金価格に連動することを目指すジパングコインは、新しい資産運用の形として暗号資産業界を中心に注目を集めています。

ステーブルコインの今後・将来性

日本円と連動するステーブルコインが登場してきたこともあり、日本国内でもステーブルコインについての注目度が高まりつつあります。
ここでは、ステーブルコインの今後・将来性について考察していきます。

国際送金分野での利用が期待できる

先にも述べた通り、ステーブルコインには送金にかかる時間が短いという特徴があるため、国際送金における時間を大幅に削減できる可能性を秘めています。
また、従来の国際銀行間通信協会(スイフトネットワーク)を利用した国際送金を利用した場合と比べて、送金にかかる手数料も低減させることが可能です。
ステーブルコインの流通によって、海外にいる留学生への仕送りや出稼ぎの外国人労働者による母国への送金など、様々な面での活用が期待されています。

サプライチェーンでの活用が模索されている

商品をエンドユーザーへと供給するまでの流れにおいて、一連の工程を効率化させることを目的として、発注書や請求書などの書類を電子化する取り組みが広がっています。
ここにブロックチェーン技術を導入し、ステーブルコインでの決済を可能にすることで、照合作業を削減したり記録ミスを防止したりすることが期待されています。

決済コストの低減

現在、企業間での取引において、多くの場合で銀行振込や請求書払いが利用されていますが、これらの手法は決済のたびに手数料がかかってしまうことが課題として挙げられます。
もしステーブルコインを導入した場合、従来の現金ベースの決済と比較して、手数料と手続きにかかる労力をともに低減させることが可能となります。

ステーブルコインの一覧

ステーブルコインが登場してから現在に至るまで、すでに100を超えるほどの種類が登場しています。
ここでは、代表的なステーブルコインを3つ紹介します。

USDT

USDT(テザー)は、Tether Limited社が2015年2月に発行開始した世界初のステーブルコインです。
米ドルの価格に連動する法定通貨担保型に分類され、「1USDT=1ドル」を保つように設計されています。
ほかの暗号資産と比べると安定性が非常に高く、資産運用や決済など様々な場面で使用されており、ステーブルコインの中で時価総額が一番大きいという特徴があります。

USDC

USDC(USD Coin)とは、米国の非営利組織「Center」が発行している法定通貨担保型のステーブルコインで、USDTと同様に米ドルの価格に連動します。
USDCは、会計の透明性がある点や発行量・流通量の把握ができる点で評価されています。

DAI

DAI(ダイ)は、イーサリアムのブロックチェーン上で構築されているMaker Protocolを通して発行され、MakerDAOという分散型自立組織によって運営されているステーブルコインです。
暗号資産を担保とする分散型ステーブルコインの代表として、広く知られています。

まとめ

ステーブルコインは、法定通貨やコモディティなどの特定の資産価格と連動することを目的に設計された暗号資産の一種です。
暗号資産ながらも法定通貨と同等の価値が担保されていることから、決済手段や送金手段としての活用が期待されている一方で、担保資産の透明性や基準価格からの乖離が課題とされています。
日本におけるステーブルコインの発行・流通について法整備が進むなか、今後は、国際送金やサプライチェーンでの活用が望まれています。