NFTの仕組みを図解付きで解説!活用事例や課題・問題点、将来性についても紹介

NFTは「代替不可能なトークン」を意味しており、これまで無数に存在していたデジタルデータを唯一無二のものとして、価値をつけることができます。

アートなどが非常に有名ですが、最近ではチケットやふるさと納税など、幅広い領域で活用されています。

どのような仕組みで、唯一無二のものとして、存在させることができるのでしょうか。この記事では、NFTの仕組みについて、図解を用いて詳しく解説します。

NFTとは?

NFTとは?

NFT(Non-Fungible Token)は、日本語で「代替不可能なトークン」を指し、デジタルデータに唯一無二の価値を付与します。

イーサリアム(Ethereum)を代表に、スマートコントラクトを搭載したブロックチェーンであるソラナ(Solana)やポリゴン(Polygon)などのブロックチェーン(分散型台帳技術)上で構築され、様々な場面で活用されています。

NFTの仕組みを図解で解説

NFTの仕組みを図解で解説

NFTは、デジタルデータをNFTプラットフォームに登録するだけで簡単に作成できます。デジタルデータをNFT化するには、Mintと呼ばれるプロセスが必要です。

NFTとブロックチェーンとの関係

NFTには固有のトークンIDが付与され、ブロックチェーン上に保存されます。ブロックチェーンでは、複雑な暗号により分散管理されているため、改ざんやねつ造、不正なコピーがほぼ不可能です。

NFTはブロックチェーン技術と組み合わせることで、所有権や取引履歴が永続的に記録されるデジタル資産になります。

NFTとブロックチェーンとの関係

NFTの新規発行の仕方(Mint:ミント)

NFTを新規で発行するプロセスをMint(ミント)、あるいはMinting(ミンティング)と呼びます。Mintは「鋳造」を意味する単語です。ブロックチェーン上ではデジタルデータに固有のトークンIDを付与します。

2025年現在、主なMintの方法は、従来方式「Mint」と新方式「Lazy Minting(レイジーミンティング)」の2種類です。各方法でガス代(手数料)の発生するタイミングが異なります。

Mintでは、デジタルデータをNFTマーケットプレイスに登録した際にNFT化され、作成者がガス代を支払います。一方、Lazy Mintingでは、購入者がガス代を支払う仕組みです。デジタルデータが購入されるまではIPFS(Inter Planetary File System:分散型ストレージ)に一時的に保管され、購入後にNFT化されます。

NFTの新規発行の仕方

NFT化できるデジタルデータの種類

NFT化できるデジタルデータの種類

NFT化できるデジタルデータは、多種多様です。一般的には画像、動画、音声、3Dデータ、記事コンテンツなどが該当します。主なデータは下記です。

  • JPEG、PNG、GIF、SVG(画像データ)
  • MP4、WEBM(動画データ)
  • MP3、WAV、OGG(音声データ)
  • GLB、GLTF(3Dデータ)

ただし、NFTプラットフォームによってNFT化できるデジタルデータは異なり、データサイズの制限などもあります。詳細は、利用するプラットフォームの利用規約を確認してください。

NFT生成時や購入時にかかるガス代

NFT生成時や購入時にかかるガス代

NFT生成時のガス代は、無料〜数千円程度のバラツキがあります。ネットワークの混雑状況やトランザクションの計算量によって異なるためです。

加えて、NFTプラットフォームが採用する発行方法もガス代に影響します。従来方式のMintでは、NFT作成者がガス代を支払う仕組みです。一方、新方式のlazy mintingの場合には、購入者がガス代を支払います。

NFTの仕組みを支える規格ERC721、ERC1155、ERC20とは?

NFTの仕組みを支える規格

ERC(Ethereum Request for Comments)とは、イーサリアムのブロックチェーン上にスマートコントラクトとトークンを導入するために必要な規格です。似たような言葉にEIP(Ethereum Improvement Proposal・イーサリアム改善提案)という言葉がありますが、EIPはイーサリアム自体の規格にかかわる改善提案が行われています。

そのEIPの中にERCが存在しています。NFTで利用される代表的なERCは、ERC721、ERC1155、ERC20です。尚、ERCのIssue番号は、Githubで提案された順番が採用されています。

ERCの仕組み

ERC721の特徴

ERC721は、スマートコントラクト内でNFTを取り扱うための規格です。2018年1月に、William Entriken(ウィリアム・エントリケン)、Dieter Shirley(ディーター・シャーリー)、Nastassia Sachs(ナスタシア・サックス)らによって提案されました。ERC721により、開発者はブロックチェーン上で簡単に追跡、転送できるデジタルデータを作成できるようになりました。

ERC721は一般的に全てのNFTに対応し、主に下記の機能が提供されます。

     
  • トークン所有者のアドレスの取得
  •  
  • トークン所有者のNFTの数
  •  
  • ネットワーク上で利用可能なトークンの総供給量
  •  
  • NFTの所有権の移動
  •  
  • NFTの転送
  •  
  • NFTの転送権限の移動

ただし、NFT発行に関する機能は、ERC721で定義されていません。NFTの新規発行は、ERC721のサブクラスである「ERC721Mintable」で定義されています。

ERC1155の特徴

ERC1155は、従来までのERC20とERC721のトークンに対応した規格です。種類の異なるトークンを一回のトランザクションで処理できることが、ERC1155の大きなメリットとして挙げられます。2018年にEnjin CTOのWitek Radomski(ウィテク・ラドムスキ)によって提案されました。

ERC1155が導入される以前は、異なるトークンには個別のERC規格で対応をしなければいけませんでした。無駄な重複作業は、プロジェクトの効率を大きく落としてしまう要因だったと言えるでしょう。ERC1155導入後は、重複作業を削減し、NFTの送信手数料を大幅に削減できました。

また、ERC1155の誕生で安全な送信ができるようになったことにも注目です。例えば、間違ったアドレスにトークンを送信してしまった場合でも、トークンを回収できる機能を備えています。

ERC20の特徴

ERC20は、イーサリアムのブロックチェーン上にFT(Fungible Token:代替可能なトークン)を実装するための規格です。スマートコントラクトの規格として、2015年11月にFabian Vogelsteller(ファビアン・フォーゲルシュテラー)、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)によって提案されました。2017年9月に正式採用され、今日までイーサリアムエコシステム内のトークン発行や運用の基盤を支えています。

ERC20により、下記のトークンの操作や管理に関する機能が標準化されています。

     
  • トークンの転送
  •  
  • トークンの残高取得
  •  
  • 総供給量の取得
  •  
  • サードパーティによる使用承認

ERC20を基盤とするトークンであれば、異なるプロジェクトであったとしても互換性を保つことができます。ウォレットや取引所、DApps(分散型アプリケーション)などにも対応し、イーサリアム系ブロックチェーンの利便性を大幅に向上させました。

NFTの課題と注意点

NFTの課題と注意点

NFTにより、従来のインターネットでは実現できなかったビジネスが可能になります。しかし、様々なメリットがある一方、法的な問題や課題が顕在化してきました。トラブル回避には、利用者がリテラシーを高める必要があるでしょう。

法的、規制上の課題

NFTなどの先進的な技術の急速な普及に伴い、法的および規制上の課題が浮き彫りになりました。

現在の法律では、NFTのような新しいデジタル資産を適切に扱う想定がされていないため、様々な法的リスクを生み出しています。

また、各国で異なる規制アプローチが取られていることも、NFTの大きな課題と言えます。

トラブルや詐欺の問題

NFT市場では、トラブルや詐欺事件が少なからずあるのが現実です。具体例でいえば、NFTプロジェクトを装い、投資詐欺やマルチ商法に勧誘する事件などが報告されています。

近年は、SNSの発展により、悪意ある勧誘が様々なシーンで行われています。利用者が正しいリテラシーを持ち、トラブル回避に努める必要があるでしょう。

しかし、国内でもNFT市場の法整備が進みつつあり、金融庁や経産省などの関係府省庁で、環境整備に向けた検討がされています。今後は、利用者が不利益を被らないような仕組みが確立されていくことが予想されます。

著作権や所有権に関する問題

NFT市場では、著作権と所有権に関する問題が多く発生しています。特に、問題視されているのは、利用者の著作権に対する考え方です。

NFTは、デジタルデータの唯一性と所有権を証明する技術ですが、必ずしも著作権が移転するわけではありません。NFTの所有権と、作品の著作権は別物です。通常、著作権は原作者に留保されます。

例えば、有名アーティストのNFTを購入した利用者が、購入したNFTを商業目的で使用した場合、著作権法に抵触する恐れがあります。また、著作権を持たない第三者が、他人の作品をNFT化して販売するケースも違法になる可能性が高いと言えるでしょう。

まとめ

NFTはデジタルデータに唯一性を付与できる仕組みとして、様々な業界で活用されています。これは、ブロックチェーンの利便性に大きく寄与した仕組み(EIPやERCなど)の功績と言えるでしょう。

また、NFTを新規発行するには、NFTプラットフォームでデジタルデータをMintする必要があります。Mintには複数の方式があり、ガス代の発生するタイミングが異なります。自身の運用方法にあったプラットフォームを活用するのがおすすめです。

弊社が運用する「Coincheck NFT」では、NFT出品時のガス代が無料なだけではなく、購入時のガス代も無料です。なお、Coincheckは関東財務局登録済みの暗号資産交換業者です。

 

著者神崎なつめ

  

1996年生まれ。Web3.0、仮想通貨、買取などの記事を執筆。雑誌『アルトコインナビVol.2』(双葉社)などを手掛けた。また、一般社団法人古物査定士認定協会の広報として、アート・骨董品・お酒などの分野で監修をしている。