暗号資産(仮想通貨)の流通にともない、暗号資産を規制して、管理しようとする動きも出てきています。
ここで言う「暗号資産の規制」とは、どのようなものをさすのでしょうか。購入や売買するにあたって、注意するべきことはあるのでしょうか。ここでは、日本や世界が発表している暗号資産の規制内容について、わかりやすく解説しています。
暗号資産にはどのような規制が生じているのか、購入や売買における規制はあるのかなど、初心者向けに基本情報をご紹介します。
※仮想通貨の税金については、2024年2月13日時点の情報となります。
暗号資産の規制ってどんなもの?
まずは、暗号資産の規制のうち、主だった内容について見てみましょう。
暗号資産の流通拡大にともない、規制の声が高まっている
2017年頃から、暗号資産の流通は一気に拡大しました。
それまで一部のユーザーの間でだけ取引されていた暗号資産が、価格の上昇などに伴い、一般の人々へと知名度を一気に広げることとなったためです。暗号資産の流通が広がれば、暗号資産を売買できる暗号資産の販売所や取引所も増えます。
暗号資産を活用したサービスや、新しい暗号資産の発行なども同様です。こうした動きのほとんどは、「既存のサービスや経済をよりよくするため」という目的で開発が進められています。
暗号資産に関する犯罪が発生
しかし、中には暗号資産の仕組みを悪用しようと企んだり、実際に犯罪の手口に利用するケースも出てきました。暗号資産に限ったことではありませんが、流通が増えると悪用されるリスクが大きくなるのは世の常です。
そうした事情を受け、暗号資産に関わるさまざまな問題を未然に防止するため、規制に向けた動きが活発になってきています。
暗号資産の取引に対する規制
暗号資産の規制は、日本国内では販売する側の規制がメインとなっています。
個人で暗号資産を購入したり、売買することに関しては、いまのところ大きな規制はありません。販売する側の規制としては、例えば以下のようなものが挙げられます。
ICOに対する規制
ICOとは、イニシャルコインオファリング(Initial Coin Offering)の頭文字をとったものです。
日本語では「新規暗号資産公開」とも訳されています。簡単にご紹介すると、新規にビジネスや事業を立ち上げようとする企業や団体などが、その資金調達のツールとして暗号資産を発行し公開することです。
ここで公開される暗号資産は、企業が開発した独自の暗号資産となります。暗号資産を公開株式のようにして、事業を運営するための投資を募る手法です。
真剣に事業を開発しようとしている団体がある一方で、構想だけで実体のないものや、悪徳な業者が関わっているものもあり、現状のICOは玉石混交の状態となっています。こういったICOの新規発行について、規制や管理を強めて消費者を守ろうとしているのが世界的な流れです。
匿名通貨に対する規制
ICOだけでなく、匿名通貨に対する規制も強化に向けて進んでいます。
匿名通貨とは、送金する際の情報について、匿名性を保持できる暗号資産のことです。ビットコインなどの暗号資産では、送金元の情報がすべてブロックチェーン上に記録され、誰でも見ることができるよう公開されています。
取引の透明性が高く、第三者の監視がきく状態です。この透明性の高さから、銀行などの管理母体を必要とすることなく、通貨としての取引が成り立っています。
しかし、ある意味ではプライバシーが確保されないシステムであるとも言えるでしょう。これに対して、匿名通貨は送金時の情報が暗号化され、情報がわからないような仕組みとなっています。
「いつ誰がどこにどれだけ送ったのか」という履歴を隠せるため、プライバシーを保護することが可能です。匿名通貨はプライバシーが守れる反面、違法な取引に悪用されやすい側面があります。
このため、今のところは日本では匿名通貨についても、新規発行や取引の規制対象となりつつあります。
暗号資産取引所・販売所に対する規制
暗号資産の売買ができる暗号資産の取引所や販売所についても、近年では、世界的に規制が進んできています。日本国内で暗号資産の売買や交換を行う業者は、すべて金融庁への登録制となっており、アカウント作成時も本人確認が必要です。
しかし、インターネットとパソコンがあれば、海外の暗号資産の取引所を経由して暗号資産を購入することが可能です。このときに、国から承認されていない暗号資産の取引所や、身分証明などが必要なく、アカウントを作れてしまう取引所もあります。
こういった取引所では、送金元や受け取ったウォレットの所持者の詳細情報が把握できず、犯罪の温床となる可能性が高いのです。暗号資産を取り扱う業者には、セキュリティや運営資金に加え、犯罪へ加担しないためのシステムに対するリスク管理能力などが必要です。
こうした基準は、国が統一して審査や規制を行うのが望ましく、世界でも規制の動きが強まっています。その他の暗号資産購入や、個人的な売買については、日本ではいまのところ容認の方向となっています。
しかし、国によっては、ビットコインなどの暗号資産購入や、取引そのものを規制しようとする動きもあるのです。海外での暗号資産における規制は、どのようになっているのでしょうか。
海外における暗号資産の規制状況の事例
海外における暗号資産の規制状況については、以下のようになっています。
欧米の規制状況
アメリカでは州によって法律が違うため、厳しいところとそうでないところに分かれています。
国としては、2018年に販売所や取引所について、日本と同様に登録制とするよう発表しています。今後も課税面などで更なる規制が生まれる可能性もありますが、日本と同様、暗号資産取引については、おおむね容認する方向です。
ヨーロッパでは、ドイツやフランスに、国としての規制をもうける動きが出ています。ドイツでは決済など、暗号資産の利用方法によっては課税が減免されたり、フランスでは暗号資産の先物取引が規制対象となっています。
欧米の傾向としては、「暗号資産を正しく流通させるための前向きな規制」と捉えられそうです。
アジアの規制状況
アジアでは、国によって暗号資産の規制に大きな差が見られます。
たとえば、韓国やタイ、台湾などでは、日本と同様に「容認しつつも適宜規制する」という姿勢です。韓国では、一時全面的に暗号資産取引の規制を強化していましたが、2019年に入って一部緩和され、交換や売買は現在も継続して行われています。
アジアの中でもIT先進国であるインドでは、当初全面禁止の方向でしたが、インドの財務省にあたる機関は禁止を否定しており、現在は容認に転じつつあるようです。
中国の規制状況
一方、中国では暗号資産取引は全面的に禁止する方向です。これには、中国政府が推進している事業へ投資を限定したいという意向もあるのかもしれません。
ただし、実際には個人間での取引には規制があるものの、中国は暗号資産のマイニング大国として知られています。しかし、2019年4月に入って中国政府がマイニングの禁止を検討しているなどのニュースも流れており、今後の動向には注視する必要があります。
ロシアの規制状況
ロシアでは、当初暗号資産の取り扱いについて強い規制を打ち出す姿勢を見せていました。
2018年5月に1度法案が可決されましたが、その後マイニングに関する規制を削除したり、暗号資産を「デジタルライト」という用語へ変更したりといった修正が見られ、現時点で大きく決まった枠組みはないようです。
プーチン大統領は、2019年中に暗号資産について何らかの規制を進める方針であるとしており、世界情勢や暗号資産の流通状況などを見ながら、適宜整備していくものと予想されます。
南米やアフリカなどのその他の国の規制状況
先進各国が国を挙げて、暗号資産の規制を進める中、南米やアフリカなどのいわゆる途上国では、国による規制の進捗は遅めです。
特にアフリカ諸国では、自国の法定通貨が安定していない国が多く、暗号資産の比ではないほど、法定通貨の価格上下が激しい国もあります。銀行や物流面で信頼に足る企業も少ないため、アフリカ国内では暗号資産の取引が活発になりつつあるようです。
本来暗号資産は、そのような途上国が、安定して取引できるツールとして利用されるべきとの声もあります。ただ、そういった地域ほどマフィアや犯罪と繋がりやすく、不正利用が蔓延する懸念もあります。
こうした途上国にこそ、早期の規制を敷き、法整備によって正しく活用されることが望まれるでしょう。こうしてみても、暗号資産は世界的な規制が進みつつあることがわかります。
規制と言っても、暗号資産を廃止する動きではなく、安全で安定した取引を継続するための前向きな規制が多くなっています。その中でも、とりわけ日本では、暗号資産の規制がかなり進んでいます。
世界基準で見ても、日本の暗号資産に対する法整備や管理体制は整っていると言えるでしょう。
日本国内における暗号資産の規制状況
次に、日本国内の規制状況について、更に詳しく見てみましょう。
暗号資産による収益に対する課税の規制
日本で暗号資産を売買した際、もっとも頭に入れておきたいのが課税についての規制です。
国税庁では、暗号資産によって得られる収益を「雑所得」として扱う旨をさだめています。雑所得とは、事業によって得たものではない所得とみなされる利益のことです。
雑所得は他の損失と差し引いたり、次年度へ繰り越すことができません。同じ雑所得に該当するものとして、株やFXなどの金融取引が挙げられます。
しかし、株やFXには「租税特別措置法」と呼ばれる特例があり、一定の税率軽減や3年間の損失繰越などが認められています。暗号資産にはこの特例がないため、最高で55%の税率が科される可能性があります。
暗号資産を購入し、持っているだけでは課税対象となりません。暗号資産を売却して日本円に換金したり、暗号資産で別の暗号資産を購入した場合には、課税対象となるので注意が必要です。
暗号資産で課税対象となる売買を行った場合は、給与所得者であってもかならず確定申告をするようにしましょう。
詳しくはこちら:暗号資産(仮想通貨)にかかる税金とは?計算方法から確定申告のやり方まで解説
※税金等の詳細につきましては管轄の税務署や税理士等にお訊ねいただくか、または国税庁タックスアンサーをご参照ください。
暗号資産交換業者に対する規制
日本国内では、暗号資産の販売所や取引所にも厳しい規制がもうけられています。
日本国内で暗号資産の交換や売買を行う事業者は、「暗号資産交換業者」として、金融庁への登録が義務づけられています。2017年頃までは、金融庁への登録申請中のまま取引が行える「みなし業者」という設定がありましたが、現在ではみなし業者に対する審査もかなり厳しくなっています。
販売所への規制は、そこで暗号資産の購入や売買をする消費者を守るための規制でもあります。暗号資産を始めるなら、管理方法や匿名通貨の取り扱いといった規制をクリアし、暗号資産交換業者の承認を受けた販売所、取引所で購入するのがよいでしょう。
新規ICOに対する規制が強化される
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など、現在広く流通している暗号資産は、価格の乱高下はあるものの、暗号資産としてその価値は認められています。
これとは別に、新規にICOで発行されている暗号資産を購入する場合は注意が必要です。ICOには、将来性が期待されるものがあるのも事実です。
その反面、犯罪者集団が資金調達を目的として発行していたり、実際に開発できる予定がないものも含まれており、玉石混合の状態となっています。こうしたICOについては、世界中で厳しく規制していく動きです。
日本国内でも同様に、指針や審査基準などをさだめる流れとなっています。とはいえ、具体的な内容はまだ詳細には決まっておらず、これからの動向が注目されます。
暗号資産の規制に関するまとめ
暗号資産は世界的に認知されるとともに、国ごとに規制が進んでいます。
一部の国では全面禁止の措置を取っているところもありますが、おおむね暗号資産の流通については前向きです。暗号資産が正しく使われ、悪用されないための前向きな規制が整備されようとしています。
これは消費者にとってもメリットのあることで、その中でも日本はかなり具体的な規制が行われており「暗号資産先進国」であるとも言えるでしょう。暗号資産のシステム自体は、有用性や将来性が大きく期待できるものです。
だからこそ、多くの国々が規制をしつつ、容認する方向で動いています。「規制されているから大丈夫」と安易に考えるのはおすすめしませんが、暗号資産の取引を行う際には、金融庁の認可を受けた日本国内の暗号資産の取引所・販売所で行うようにしましょう。
暗号資産のチャートは、世界情勢によっても大きく変化していきます。売買時の課税についても念頭に置きつつ、規制情報については、常に最新の情報に触れていくことが大切です。