仮想通貨投資は法人がお得?かしこい投資方法も解説します

近年、仮想通貨(暗号資産)の取引を法人で行うところが増えています。仮想通貨の取引を始める際、個人で取引するのか法人で取引するのかは大きな違いがあります。

この記事では、仮想通貨取引を法人で行う場合は個人で取引する場合とどのような違いがあるのかという点や、それぞれのメリットとデメリットを中心にご紹介していきます。

賢く投資するにはルールを知らなければなりません。法人での投資方法にも触れていますので、ご関心のある企業の方は参考にしてみてください。

執筆Coincheck Column編集部

Coincheck Column編集部は仮想通貨の取引経験者やブロックチェーンの知見に深いメンバーで構成されています。これから仮想通貨を始める方々に「仮想通貨について正しく理解していただき安心して取引できる」ことを目的に執筆しています。/ 運営元:コインチェック株式会社

仮想通貨における個人と法人の違いは税率(税金の多さ)

仮想通貨取引個人と法人の違い
個人と法人の大きな違いは税率です。

雑所得に分類される仮想通貨の税率は、所得税と住民税を合算すると15%から最大で55%となります。

累進課税制度を採用している日本では利益が多い人ほど、納める税金が多くなります。一方、法人の税率は2018年4月1日時点の法令では19%から23.4%です。

実行税率はこれに10%程度の住民税や事業税などが加算されます。ここから言えることは、利益が少ない時は個人の方が税金は少なくて済むものの、一定の利益の水準を超えると法人にしたほうが税負担を低く抑えることができるということです。

仮想通貨は損益通算や赤字の繰越ができないため、毎年利益が出るようになると、この税率の差は、悩ましいポイントになるかもしれません。

なお、仮想通貨の取引は、大規模な設備が必要なマイニングを除いて、個人でも法人でも作業の内容にはほとんど変わりはありません。

仮想通貨の取引を事業として行う場合、個人事業主として始めてその後に法人化するという方法もあります。ただし、事業内容がほとんど変わらないため、最初から法人で取引することも可能です。

※税金等の詳細につきましては管轄の税務署や税理士等にお訊ねいただくか、または国税庁タックスアンサーをご参照ください。

個人で取引するメリット

仮想通貨を個人で取引
個人で取引するメリットをもう少し詳しくみてみましょう。個人での取引は利益が少額なら、法人で取引をするよりも税負担を低く抑えることができます。

法人の設立には登記費用などがかかることや、法人の住民税は赤字でも支払いの義務があることなどを考えると、一定のコストがかかることは否定できません。その点、個人は赤字になると住民税が免除されることもあります。

また、個人の方が取引に算入するためのハードルが低く、気軽に始められることもメリットです。したがって、税率という観点だけで法人で取引を始めるのには注意が必要です。

個人で取引するデメリット

個人で取引するデメリット
一方、個人で取引する際のデメリットも押さえておきましょう。

大きなデメリットは、企業などに勤めている給与所得がある人が副業として仮想通貨の取引をする場合、給与所得との損益通算ができないことです。

仮想通貨には株式や投資信託、不動産には認められている損益通算や赤字の繰越が認められていないため、仮想通貨の取引で赤字が出た場合も、給与所得はそのまま課税対象となります。

給与所得にかかる所得税は毎月給与から天引きされているので、それほどは気にならないかもしれません。しかし、損益通算や赤字の繰越ができれば、納めすぎた税金を還付してもらうことができる場合もあるのです。

法人で取引するメリット

仮想通貨を法人で取引
法人で取引を行う最大のメリットは、利益が大きくなるほど個人での取引よりも税負担を抑えられることです。

損益通算や赤字の繰越

利益は事業所得となり、損益通算ができるほか、2018年4月1日以降の赤字は最大10年間繰り越すこともできます。

そのため、単年度で大きく損を出してしまっても、長い目で見れば取り戻すこともできるのです。

経費算入の範囲

また、法人には個人よりも経費として認められるものが増えることもメリットです。たとえば、法人は家賃を社宅として経費に算入することなどができます。

仮に家賃が10万円の部屋に住んでいる場合は、家賃の8割である8万円までは法人の経費とすることができたりもします。個人給与を家賃の分だけ減らすことで、合法的に税負担を減らすことができます。

福利厚生や保険

また、法人化すると、退職金代わりになる小規模企業共済や取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐ経営セーフティー共済の掛け金なども、経費として計上が可能です。

個人は、確定拠出年金以外に全額費用に算入できるものはほとんどありません。経費に算入しつつ福利厚生や保険を充実できるという面で、法人化のメリットは大きいといえるでしょう。

法人で取引するデメリット

法人取引のデメリット
色々とメリットがある法人での取引ですが、デメリットも確認しておきましょう。

1. 設立に費用がかかる

まず、法人の設立にはお金がかかります。

登録免許税や収入印紙代など、設立の際に役所に支払う金額はおよそ20万円程度となります。登記を専門家に依頼した場合には、別途費用がかかります。

そのため、まずは初期費用として20~30万円程度かけるメリットがあるかどうかの見極めが大切です。

2. 法人住民税がかかる

2つ目のデメリットは、赤字でも法人住民税がかかることです。

個人は赤字になると住民税が免除されることも多いですが、法人住民税は財務状況にかかわらず、最低でも年間7万円程度は支払わなければなりません。

3. 法人口座を開設できる取引所は限られている

3つ目のデメリットは仮想通貨取引のための口座を開設する場合、法人口座を開設できる取引所が限られている点です。

なお、国内の大手仮想通貨の取引所の一つであるCoincheckでは、法人での取引も可能となっています。

北米の企業ではビットコイン投資がトレンド?海外企業の購入事例

ビットコイン(BTC)

2020年、北米では複数の上場企業が資産運用の一環としてビットコイン投資を開始しました。こちらの項目では、2020年にビットコインの取得を発表した企業のうち、特に話題となった4社についてご紹介します。

MicroStrategy(マイクロストラテジー)

米ナスダック上場のソフトウェア会社「MicroStrategy(マイクロストラテジー)」は、2020年8月に約2億5,000万ドルで2万1,454BTCを購入したことをプレスリリース上で発表しました。マイケル・セイラー(Michael Saylor)CEOは、この投資に関して以下のように説明しています。

「ビットコインへの投資は、株主の長期的な価値を最大化することを目指す新しい資産運用戦略の一部です。今回の投資は、世界で最も広く採用されている暗号資産であるビットコインは信頼できる価値の保存手段であり、長期的には現金を保有するよりも魅力的で可能性のある資産であるという私たちの信念を反映しています」

参考:MicroStrategy Adopts Bitcoin as Primary Treasury Reserve Asset

また、マイケル・セイラーCEOはTwitterで、同社が2020年12月にも6億5,000万ドルに相当する2万9,646BTCを購入したことも発表しました。この購入により、MicroStrategyが保有するビットコインの総量は70,470BTCとなりました。

マイケル・セイラーCEOTwitter
引用:Michael Saylor

Square(スクエア)

2020年10月8日、Twitter創業者のジャック・ドーシー(Jack Dorsey)がCEOを務める米決済大手のSquareは、5,000万ドル相当のビットコインを購入したことを発表しました。

SquareIR
引用:Square IR

同社はTwitter上で、「暗号資産は経済的パワーを手に入れる手段であり、グローバルな金融システムに参加する方法を提供してくれると信じている」と述べました。

なお、CEOのジャック・ドーシーは以前からビットコイン肯定派として知られており、個人としても毎週1万ドル相当のビットコインを購入しているというニュースが流れ、話題となりました。

なお、同氏のTwitterアカウントのプロフィールには「#bitcoin」と一言だけ書かれており、こうしたことからもビットコインに対する強い期待感がうかがえます。

SquareIR
引用:jack

Stone Ridge Holdings Group(ストーン・リッジ・ホールディングス・グループ)

2020年10月13日、米大手資産運用会社のStone Ridge Holdings Group(SRHG)は、1億ドルを超える量のBTC(1万BTC以上)を購入したことをサイト上で公表しました。

SRHGの創業者であるロス・スティーブンス(Ross Stevens)は、上記の投資に関して次のように説明しています。

「我々は長い間、投資の観点からビットコインは現金よりも優れた資産であると考えてきました。そして、法定通貨の利息がますますマイナスとなる中で、SRHGの10,000BTC以上ある資産は、当社の財務戦略の主要な構成要素となっています」

参考:NYDIG Raises $50M in Growth Equity Funding; NYDIG Parent Stone Ridge Holdings Group Announces More Than $100M in Bitcoin as Primary Treasury Reserve Asset

NexTech AR Solutions(ネクステックARソリューションズ)

2020年12月29日、拡張現実(AR)の技術開発およびサービス提供を行うカナダのNexTech AR Solutionsは、企業として200万ドル相当のビットコインを購入したことを発表しました。

同社のエヴァン・ゲッペルバーグ(Evan Gappelberg)CEOは、今回の投資について以下のようなコメントを発表しています。

「金(ゴールド)の時価総額が10兆ドルなのに対して、ビットコインの時価総額はまだわずか5,000億ドルです。デジタルゴールドであるBTCは、いずれ市場規模で金に追いつくほどの可能性を持っており、今回の投資は株主の長期的な利益を最大化することを目的としています」

参考:NexTech To Buy $2million in Bitcoin with Treasury

なぜ2020年は企業の暗号資産市場への参入が増えたのか?

2020年1月に70万円代後半だったビットコインの価格は、3月には新型コロナウイルスの影響により一時50万円台まで下落します。しかし、その後は各国政府による金融緩和政策や北米を拠点とする機関投資家・大企業による市場参入により、上昇トレンドへ転換。年末には約300万円まで値上がりしました。

CoinGecko
引用:CoinGecko

なぜ、2020年は機関投資家や大企業が相次いで暗号資産市場に参入してきたのでしょうか?

マネックス証券チーフ・アナリストの大槻奈那氏は、上記の理由について、Coincheckが2020年12月に行なったインタビューで次のように説明しています。

「*機関投資家が暗号資産を積極的に購入している理由としては、他の資産のボラティリティ(価格変動の度合い)が低くくなってしまったことが一因*として考えられます。ボラティリティが低い金融資産では運用してもリターンが得られないため、ボラティリティが高い暗号資産に投資のターゲットが移っているのです。 実際に、この1年ほどの各金融資産の価格変動率と値上がり率の相関をグラフで表してみたのですが、それを見てもビットコインやイーサリアムなどの暗号資産のほうが、金や株式などの金融商品よりも圧倒的に価格上昇率が高いことがわかりました。 つまり、多少リスクはあっても、「ボラティリティが高くてリターンが多いものほどよく買われている」ということですね。」

CoinGecko
出典:ブルームバーグデータより大槻氏作成。ボラティリティは、20/4/1〜20/11/23の株価の標準偏差+平均値。上昇率は同期間の価格上昇率。大槻氏提供

参考:「ビットコイン200万円超。価格高騰の背景にあるものとは」マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻奈那氏インタビュー

また、ビットコインをはじめとする仮想通貨の高騰を及ぼした原因には、新型コロナウイルス対策として各国政府が行った大規模な金融緩和も挙げられます。

特に感染の被害が深刻なアメリカでは、2020年12月の時点で400兆円近くの財政出動が行われており、同政策に起因するインフレに対する危機感の増加や、法定通貨に対する信用の低下などが、避難通貨としての仮想通貨の人気を押し上げたという背景もあります。

法人で計上できる経費について

法人で計上できる経費
法人で経費算入できる経費についてみていきましょう。

固定的な費用など

年間の金額が大きなものとしては、先に述べたとおり家賃や事務所の家賃などが挙げられるでしょう。他にも固定的な費用としては、インターネット回線やスマートフォンの費用などがあります。

仮想通貨の取引を行うために、スマートフォンやコンピューターを購入した場合には、それらの端末費用も経費算入対象となり、電気代の一部も経費に算入することができる場合もあります。

書籍や雑誌、出張旅費の費用など

また、仮想通貨の業界は動きが激しいので、常に最新の情報を追うことも大切です。情報収集のための書籍や雑誌の費用、セミナーや勉強会に参加するための出張旅費、接待費用なども経費に計上できる可能性が高いでしょう。

役員報酬や退職金など

他にも、例えば家族を役員にして役員報酬を経費算入する企業も存在します。毎月の報酬を支払うことで経費に算入できるのです。

また、一定の金額までは退職金が非課税となっていることも大きなメリットです。家族が現役の役員のときは毎月役員報酬を支払い、引退する際は役員退職金として支払うことで、個人として仮想通貨の取引をするよりも、大きなお金を手元に残すこともできるでしょう。

ただし、役員報酬を経費算入するにはいくつかの条件があります。会社の経営に携わっていることが条件になること、社内規定を整備しておくこと、途中で報酬金額を変更したい場合には税務署に事前に届け出をしておくといったことなどです。

※なお税金等の詳細につきましては、専門的な内容になりますので、管轄の税務署や顧問税理士等にお訊ねいただくか、または国税庁タックスアンサーをご参照ください。

法人で仮想通貨の取引をする方法

これまで仮想通貨の取引を個人と法人で行うメリットやデメリットを見てきましたが、どういう人は法人で取引をするのがよいのでしょうか。

例えば、すでに法人化している人が、他の収益を作るために仮想通貨の取引も行うという形態などが挙げられるでしょう。法人の事業規模や資産状況によっても異なりますが、眠っている現金がある場合は、経営に影響のない金額から取引を始めるのもよいでしょう。

法人の中には、仮想通貨の取引を通じて別事業の種銭を作り、ある程度資金を作ったら別の事業に参入する企業もあるそうです。

仮想通貨は長期の事業として考えるには不透明な部分あるため、長期的には収益の柱を別に作るつもりでいた方が、事業を安定化させることに繋がるでしょう。

仮想通貨の法人取引をしたい場合は、Coincheckの公式サイトにアクセスし、新規登録画面から「法人アカウント」を選択します。

法人は税務調査の対象?

税務調査

法人での仮想通貨取引は、税務調査の対象になるのでしょうか?Q&A方式で開設します。

Q.法人での仮想通貨取引は税務調査の対象になりますか?

A.一般的に、法人化すると、個人での取引よりも税務調査の対象になる機会が増えると言われています。利益が多くなった法人の中には、数年に1度は税務調査を受けるところもあるそうです。

税務調査の対象になる具体例はありますか?

A.都市部には多くの企業がありますが、例えば地方の場合は仮想通貨の取引をしているところはそこまで多くないため、目立ってしまう可能性もあります。そのため、会計処理をしっかり行うことが大切です。

税務調査にはどのような対策を取ればいいですか?

A.会計処理が複雑になる法人の経理は、税理士などの専門家に相談しつつ進める方が、経理ミスなどの可能性を減らすことができ、安心できるとも言えます。

個人から法人への変更は可能?

個人から法人の変更
仮想通貨の取引を個人でしている人が、法人に移行することはできるのでしょうか。法人への移行自体は、いつでも自分のタイミングですることが可能です。

ただし、仮想通貨は長期間確実に利益を維持できる性質のものではないため、すべての人が法人化するのがよいとは限りません。法人化すると経費算入できるものも多い反面、初期費用や維持費などの負担も生じるからです。

例えば今後も継続して仮想通貨の取引を行いたいという人などは、法人に移行するのもよいでしょう。

サラリーマンでも法人として取引可能?

サラリーマンでも法人取引が可能か
今現在は会社員・サラリーマンをしている人が、仮想通貨のために法人化することを考えている人もいるかもしれません。

実際にサラリーマンの副業から法人化したケースもあるため、サラリーマンでも法人を作ることは可能です。ただし、企業によっては副業を就業規則により禁止しているところもあるため、注意が必要になるでしょう。

また、法人化するかどうかに関係なく、副収入の有無が例えば住民税などによって経理担当者に分かってしまうことがあります。副収入がある人は、会社の給料から納める住民税よりも多い額になっているものだからです。

住民税を自分で納付する普通徴収に変更することもできるものの、サラリーマンの多くは会社経由で納付しているため、一般的ではない可能性があるでしょう。

法人での損益通算について

法人での損益通算
個人では他の所得との損益通算ができなかった仮想通貨の取引は、法人では損益通算が可能です。

損益通算ができるとよいことの1つは、仮に本業で赤字が出ても仮想通貨で利益が出ていれば、その欠損を補うことができるということです。あくまで帳簿上での話ではあっても、法人によっては黒字であることが非常に重要な場合もあるでしょう。

例えば、金融機関が企業に融資をする際は、決算書を参考に融資が可能かどうかを判断したりします。そのようなときに決算書が赤字だと、資金を借り入れるのが難しくなってしまう場合もあるかもしれません。

反対に、仮想通貨の取引で赤字が出た場合は、本業の利益と相殺することも可能です。思っていたよりも本業で利益が出てしまったときでも仮想通貨の損失と損益通算することで、利益の圧縮をはかることができるのです。

そして、法人であれば2018年4月1日以降に発生した赤字については、翌年以降の最大10年間に渡って繰越ができます。このような点も、個人での取引においてはないメリットと言えるでしょう。

仮想通貨の所得が発生する場合

仮想通貨の所得
仮想通貨の利益である所得とは、どのようなときに発生するのでしょうか。

仮想通貨は、単に保有しているだけでは、所得は発生しません。例えば、仮想通貨の売却や仮想通貨同士の交換を行ったときなどに所得が発生します。

仮想通貨の所得は、基本的には売却や交換をしたときの「時価」×「仮想通貨の数量」-「仮想通貨の取得単価」×「仮想通貨の数量」で求めることができます。

例えば、1BTCの価格が40万円の時に、1BTCを購入したとします。そして、1BTCの価格が60万円に上昇した時に、購入した1BTCを売却すると、20万円の利益が発生し、こちらの所得に税金がかかります。

仮想通貨で利益を得るために必要な経費が発生している場合は、計算式から算出された値から、さらに年間経費を差し引くことなります。

法人のメリットを活かして仮想通貨の取引を

メリットを活かして取引を
法人での仮想通貨の取引には、税率の面や経費算入できるものの多さなど、色々とメリットがあります。ただし、法人設立の際には一定の費用がかかること、法人住民税など固定的にかかる費用があることなど、注意が必要な面もあります。

法人で取引するメリットとデメリットの両面を踏まえつつ、個々の状況についてはくれぐれも税務の専門家などに相談しつつ、取引を進めるのが良いでしょう。