暗号資産のスケーラビリティ問題とは?言葉の意味や問題になる理由・解決策を解説

ビットコインやイーサリアムなどで、スケーラビリティ問題という言葉を聞いたことがある人は少なくないでしょう。暗号資産におけるスケーラビリティ問題とは、取引処理能力以上の取引が行われたときに発生する送金詰まりや、それに伴う手数料の上昇などを指します。さらに、それらの課題を解決することが容易でないことも含め、スケーラビリティ問題とすることもあります。

本記事では、スケーラビリティ問題はなぜ発生するのか、解決策にはどのような方法があるのかなどを解説します。

スケーラビリティとは

スケーラリビティとは、主にIT関連の用語で、システムやネットワーク、機器、ソフトウェアなどの拡張性を指す言葉です。つまり、規模の拡大可能か、また負荷が増大した際に対応可能性についての言葉です。

暗号資産におけるスケーラビリティ

暗号資産とは、一般にブロックチェーンを用いた分散型ネットワークと、その上で使えるトークンを指します。
暗号資産におけるスケーラリビティとは、1秒などの単位時間あたりに処理可能な取引件数を指すことが多いです。

有名な暗号資産のスケーラビリティ・1秒間の取引処理件数(TPS=Transaction Per Second)は、ビットコイン(BTC)が7、イーサリアム(ETH)が15、ポリゴン(POL)が7,000、ソラナ(SOL)が50,000と言われています。

スケーラビリティ問題とは

スケーラビリティ問題

暗号資産におけるスケーラビリティ問題とは、主に取引に時間がかかったり、手数料が暴騰したりする問題を指します。
暗号資産は、送金の速さや手数料の安さから技術的革新と捉えられている一面があるため、スケーラビリティ問題に直面することは、暗号資産のメリットを失っているとも言えます。

そのため、多くの暗号資産ではスケーラビリティ問題を解決するためのソリューションを提案したり、新規の暗号資産ではスケーラビリティ問題が起こらないような設計を行ったりなど、様々な対策が練られています。

手数料(ガス代)が高騰する仕組み

取引承認に時間がかかる場合、手数料を高く設定すると取引承認を早くすることができます。暗号資産のマイナー(ネットワーク維持者)は、ブロックチェーン上で支払われる手数料を受け取れるためです。

そのため、送金詰まりが発生した際は、早く送金・取引したい人は高額な手数料を支払うものの、1秒あたりに処理可能な取引件数は変わらないため、加速度的に手数料が高騰します。

スケーラビリティ問題が抱えるリスクとは

ボラティリティ(価格変動)が大きい暗号資産では、送金遅延が発生した場合に任意のタイミングで売却ができず、損をする可能性があります。実際に、相場急変時には送金需要が増え、送金詰まりが発生することがあり、売りたくても売れずに相場の下落だけを眺めた経験のある人も少なくありません。

また、スケーラビリティ問題は、暗号資産に「重要な局面で思ったように使えない」という印象を与えかねず、普及への足かせになる一因とも言えるでしょう。

スケーラビリティ問題が発生する原因

ブロックチェーン技術は改ざんが難しく、記載内容が透明であることがメリットとして語られていますが、改ざんが難しいとは、逆説的にアップデートも難しくなります。

採用しているコンセンサスアルゴリズムにより詳細な決定フローは異なりますが、ブロックチェーンのアップデートには、ネットワークを維持している通称マイナーの意見や、トークン保有者の合意形成を行う必要があります。

全員が納得するような方策であり、かつブロックチェーンに大幅な変更が必要ないものであれば簡単にアップデートができますが、スケーラビリティ問題に関係する問題は、簡単にはアップデートできないことがほとんどです。

実際、ビットコインではスケーラビリティ問題への考え方の違いでビットコインキャッシュにハードフォークをした歴史があります。ハードフォークとは、ブロックチェーンの仕様の変更を伴うアップデートで、アップデート前後のブロックチェーンには互換性がなくなります。

スケーラビリティ問題を解決するための技術とは

スケーラビリティ問題を解決する方法としては、ブロックチェーンへ書き込むデータを圧縮する手法であるSegwitや、1ブロックに書き込めるデータ量を増やす方法、サイドチェーンやセカンドレイヤーと呼ばれる別のチェーンを用意する方法などが挙げられます。

また、新規の暗号資産については、初めからスケーラビリティ問題に直面しないように、コンセンサスアルゴリズム自体を更新するといった方法もあります。

しかし、いずれの方法にもメリット・デメリットが存在し、それぞれ完璧な方法と断言できるわけでもありません。

スケーラビリティ問題の解決には、暗号資産のコミュニティの性質や、コンセンサスアルゴリズムによる利用者とネットワーク維持者の利益相反、セキュリティリスクなどを個別に検討し、技術を導入しなければなりません。

主要暗号資産のスケーラビリティ問題について

主要な暗号資産にもスケーラビリティ問題を抱えているものがあります。代表的なビットコインとイーサリアムにもスケーラビリティ問題があり、それぞれ別の解決方法で模索しています。

ビットコインはPoWというコンセンサスアルゴリズムを採用しており、非中央集権と分散性、マイニングが大きな特徴です。スケーラビリティを拡張する方法で「SegWit」「ライトニングネットワーク」「ビックブロック化」などが検討されました。
ビットコインでは、ブロックチェーン自体を変更する方策が検討されやすい傾向にあります。

イーサリアムはPoSというコンセンサスで、簡略に示すとトークンを多く持っている人の決定権が大きい仕組みです。イーサリアムでは、特定の機能に絞ったサイドチェーンやセカンドレイヤー(レイヤー2、L2)を活用する検討が多く行われています。

なお、同じく歴史の長い暗号資産であるXRPは、TPSが1,500とビットコインとイーサリアムよりも大幅に大きいものの、XRPはビットコインなどのブロックチェーンとは性質が異なるため、また違ったものと認識しておきましょう。