ブロックチェーンとは?定義・特徴・活用事例までわかりやすく解説

「ブロックチェーンってよく聞くけど、何ができるものなの?メリットやデメリットは?」

最近、暗号資産(仮想通貨)の取引に興味を持った方や、ニュースなどで話題を耳にした方は、このような疑問を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ブロックチェーンとは、ビットコイン(BTC)をはじめとする多くの暗号資産で採用されている情報を記録・管理するための技術です。ブロックチェーンは、暗号資産の枠を超えて、さまざまな取引を自動化・効率化するなど、多くの可能性を秘めています。

ここでは、ブロックチェーンの定義や特徴、メリット・デメリット、その活用事例について解説します。

ブロックチェーンとは?定義は「改ざんに強い分散型台帳」

分散管理

引用:総務省「平成30年版 情報通信白書

ブロックチェーンを一言で表すと、情報を分散的に記録・管理するための技術です。ひとまとまりの情報をブロックのようにまとめ、それを次から次へと鎖のようにつないでいく構造を持つことから、ブロックチェーンと呼ばれます。

ブロックチェーンは、日本語では「分散型台帳技術」の一例ともいわれ、総務省によると「情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続して、取引記録を暗号技術を用いて分散的に処理・記録するデータベースの一種」と説明されています。少し難しく感じますが、「分散」や「台帳」というキーワードを押さえることがポイントです。

「分散」は文字どおりあちこちに分けて保管しておくこと、「台帳」はお金のやりとりや不動産情報などの重要なことがらを記録したもののことを指します。つまり、情報をブロックごとにまとめて鎖のようにつなぎ、分散して管理するのがブロックチェーンというわけです。

本記事の後半でも解説しますが、分散管理という特徴から、ブロックチェーンは「改ざんに強い」という性質を持ちます。この強固な性質や、その他いくつかの理由によって、ブロックチェーンは次世代のデータ管理方法として注目されています。

ブロックチェーンと従来の中央集権型データベースの違い

ブロックチェーンは「分散管理」という点が大きな特徴ですが、従来のデータ管理とはどのように異なるのでしょうか。

一般的な台帳といえば、会計帳簿や賃金台帳、住民基本台帳や登記簿などが挙げられます。これらは企業や地方自治体、国といった特定の組織が管理をしています。こういった従来型の仕組みを、「中央集権型データベース」といいます。

一方で、ブロックチェーンには特定の管理者がいません。台帳の全部、あるいは一部を、暗号資産を取り扱う参加者全員が共有して記録・保存しています。これが分散型台帳です。ブロックチェーンは、誰が、いつ、どのような情報を台帳に書き込んだのかを明確にして共有し、不正な改ざんを防ぎながら運用できる技術なのです。

ビットコイン≠ブロックチェーン

ブロックチェーンについて深く知らない方でも、「ブロックチェーンとビットコインは一緒に語られることが多い」という印象を持っている方は多いかもしれません。両者は密接に関係していますが、イコールではありません。

ブロックチェーンは「技術」であり、ビットコインはそれを活用した代表的な「仕組み」です。ビットコインは「仮想通貨・暗号資産」と呼ばれるブロックチェーン上でやり取りされる通貨であり、同時に、ブロックチェーンの仕組みを維持する参加者に対する報酬にもなっています。

報酬がなければ、参加しようという人が現れず、仕組みを維持できなくなってしまうかもしれません。このため、ビットコインはひとつの暗号資産でありながら、ブロックチェーン技術を社会に定着させる重要な役割を持っています。ブロックチェーンの基本的なアイデア自体は以前からありましたが、ビットコインの登場までは持続的な運用が困難だったのです。

なお、ビットコインは最初に登場した仮想通貨(暗号資産)であり、知名度も高い存在ですが、現在では他にも多くの暗号資産が存在しています。ここでは説明のしやすさからビットコインを例に挙げましたが、「ブロックチェーンは技術であり、暗号資産はその上に成り立つ仕組みである」という関係性は他の暗号資産にも共通しています。

ブロックチェーンに関連した4つの特徴

分散管理

さまざまな技術が駆使されているブロックチェーンは、情報の改ざんやハッキングなどに対する耐久性が高い情報管理技術といわれています。実際に、世界で初めて開発された暗号資産であるビットコイン(BTC)で利用されているブロックチェーンは、これまで一度も改ざんやハッキングの被害を受けたことがありません。(※一方、取引所等の第三者サービスでは被害例あり)

ここでは、ブロックチェーンの安全性や利便性の高さを裏付ける、4つの代表的な特徴についてご紹介します。

1.P2P(ピアツーピア)ネットワーク:分散して管理する仕組み

ビットコインなどのブロックチェーンでは、情報の管理にP2Pネットワークを採用しているため、安全性が高いといわれています。

P2Pネットワークとは、複数のノード(node)がデータを分散して情報共有するシステムのことです。ノードとは、「ビットコインなど、特定の暗号資産のネットワークに接続したコンピュータ端末」のことで、peer(ピア)とも呼ばれています。

P2P

従来のクライアントサーバシステムでは、サーバが故障するなどしてダウンすると、システム全体が停止してしまうという問題があります。

しかし、P2Pネットワークを利用している場合は、複数のコンピューターがデータを分散して管理しているため、たとえサーバーの1つがハッカーによる攻撃によってダウンしたとしても、全体に問題は起こらなくなっています。

ハッカーによってデータのファイルが失われた場合でも、他のサーバにデータが保管されているため、再び復元することも可能です。多くのユーザーのコンピューターにデータが分散して保存されることで、リスクも1カ所に集中せずに分散されます。

このように、P2Pネットワークを採用しているブロックチェーンは、ユーザーが相互に監視しあう分散型のシステムになっており、これまでの中央集権型のシステムとは異なる特徴を持っています。

2.暗号技術:ペアの鍵で安全を守る仕組み

ビットコインのブロックチェーンが安全と考えられる理由として、暗号技術が導入されていることも挙げられます。

暗号技術とは、データの内容を第三者にわからない形式に変換し、その変換したデータを元に戻すための技術のことを指します。暗号技術は、公開鍵と秘密鍵の2つを利用してデータをやり取りすることが特徴です。公開鍵と秘密鍵はペアになっており、暗号化したデータは、この2つがないと複号できない仕組みになっています。

公開鍵は第三者にも公開されますが、秘密鍵がないと暗号の解除は行えません。そのため、秘密鍵さえ盗まれなければ、暗号資産の安全性は確保されます。しかし、逆にいうと秘密鍵は厳重に管理することが大切です。

秘密鍵を万が一第三者へ渡してしまった場合、データを漏えいさせてしまったり、暗号資産が盗まれてしまったりする可能性があります。

3.PoW(プルーフ・オブ・ワーク):取引を承認する方式のひとつ

ビットコインのブロックチェーンが安全と考えられる理由として、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムが導入されていることも挙げられます。

PoWとは、取引の承認システムを指します。ビットコインの場合、ブロックチェーンへブロックを追加するためには、非常に難解な計算問題を解く必要があります。

こちらの計算作業(取引の承認作業)のことをマイニングと呼び、マイニングが最初に成功した人には、報酬としてビットコインが与えられる仕組みになっています。いち早くマイニングに成功するためには、膨大な計算作業を高速に行える高性能なコンピューターの導入が必要です。

そのため、個人がビットコインのマイニングで成功することは難しい状況となっています。また、1つのブロックを改ざんしようとした場合、その後のブロックも改ざんする必要があるため、不正するには多くの手間と時間を要します。

これにより、ビットコインのブロックチェーンは非常に改ざん困難な仕組みとなっています。

なお、PoWはすべてのブロックチェーンで採用されているわけではなく、ビットコインをはじめとする一部の暗号資産で採用されている方式です。他の暗号資産での承認方式についてはこの記事では触れませんが、ブロックチェーンでは「取引を承認する」ことが必要であり、その方法がいくつかあることと、その代表的な手法がPoWであることをまず覚えておくと理解しやすいでしょう。

4.スマートコントラクト:条件達成で自動的に取引成立する仕組み

スマートコントラクト

スマートコントラクトとは、人の手を介さずに契約内容を自動で実行してくれる仕組みのことです。あらかじめ、どういった条件になったら契約するかをプログラミングしておくことで、条件達成時に自動で取引が成立します。

ブロックチェーン技術に組み込むため、「契約内容が改ざんされない」「中央管理者を介在させず契約内容が自動で実行される」という2つの条件を満たすことができます。

このように、第三者を介さずに契約プロセスを自動化できるので、取引期間の短縮化や人件費の削減などを実現できるのが、スマートコントラクトの大きなメリットです。

ただし、スマートコントラクトは、すべての暗号資産が実装している機能ではありません。スマートコントラクトを搭載した代表的な暗号資産は、イーサリアム(ETH)です。スマートコントラクトの可能性に注目した人々の手によって、すでにさまざまなサービスが生み出されています。

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーン

ブロックチェーンには、主に以下の3つの種類があります。

  • パブリック型
  • プライベート型
  • コンソーシアム型

それぞれどのような特徴があるのか、順番に見ていきましょう。

パブリック型

パブリック型のブロックチェーンは、中央に管理者がおらず、不特定多数のユーザーによって管理されているブロックチェーンです。

取引の仲介者がおらず、透明性のあるデータがインターネット上に公開されていることが特徴です。そのため、パブリック型のブロックチェーンは、オープン型のブロックチェーンと呼ばれることもあります。

パブリック型のブロックチェーンは他の種類のブロックチェーンと比べて、安全性が非常に高い特徴があります。その反面、ブロックチェーン上に新しい情報を書き込むためには、多くの処理と時間を要するデメリットがあります。

プライベート型

プライベート型のブロックチェーンは、個人や単独の組織などで管理され、ルール変更が容易であり、取引承認スピードも速いことが特徴です。パブリック型のブロックチェーンが持っている「処理速度が遅い」という問題がない反面、透明性は低いという特徴もあります。

プライベート型のブロックチェーンでは情報は外部に公開されないためプライバシーが確保され、閉じたシステム内でブロックチェーンにデータを格納できます。このような特徴から、プライベート型は一般企業や金融機関による利用が想定されており、許可型(パーミッション型)のブロックチェーンとも呼ばれています。

コンソーシアム型

コンソーシアム型のブロックチェーンは、複数の組織やグループなどによって管理されているブロックチェーンです。コンソーシアム型は、分散性、安全性、処理速度において、パブリック型とプライベート型との中間の性質を兼ね揃えています。

より具体的にいえば、コンソーシアム型は単一の組織ではなく複数の組織やグループによって管理されているため、プライベート型に比べて高い分散性と安全性が備わっています。

一方で、パブリック型とは異なり参加者を限定しているため、プライベート型のような速い処理速度も備えています。このような特徴から、コンソーシアム型のブロックチェーンは同業の複数企業が協力してつくるブロックチェーンへ活用されています。

取引情報が記録されるまでの流れ

取引情報が記録されるまでの流れ

ブロックチェーンでは、取引が発生するとその情報が生成・検証され記録されていきます。そのプロセスを、簡単にご説明しましょう。

トランザクション:取引情報の生成

まずは、「トランザクション」と呼ばれる、取引情報を生成する作業が行われます。

例えば、AさんがBさんに1BTCを送金するというトランザクションを生成します。あらかじめ登録している秘密鍵を使って署名すると、ネットワークに接続している、ほかのノードがその内容を確認していきます。

ここで問題が見つかった場合には、そのトランザクションは廃棄され、その先の処理は行われません。

マイニング:データの検証と承認

トランザクションに問題がなければ、暗号資産取引の参加者によって、取引データが検証されます。

先ほどの「PoW(プルーフ・オブ・ワーク)」の説明で触れたとおり、この検証方法にはいくつか種類があり、それぞれのブロックチェーンでどの方式を採用しているかは異なります。ここでは、代表的な暗号資産であるビットコインのブロックチェーンを例として紹介します。

PoWを採用しているビットコインでは、正しい取引をまとめてブロックを作り、そのブロックを誰がチェーンに追加できるかを競います。この一連の作業を「マイニング(採掘)」と呼び、参加者を「マイナー(採掘者)」と呼びます。

ブロックチェーンでは、データのかたまりを専用の関数で変換し、「ハッシュ値」という値に置き換えます。PoWでは、マイナーは調整用の数値を変えて何度もハッシュ計算を行い、ネットワークが定めた条件を満たすハッシュ値を最初に見つけなければいけません。もっとも早く正解にたどり着いたマイナーが、その取引を承認する権利を得るのです。

マイニング

分散型台帳:記録

マイニングの計算競争に勝ったマイナーは、新しいブロックを過去のブロックに連結して記録します。

新しくつながったブロックは、ネットワークの全参加者(ノード)に配布・共有され、改ざんが困難な状態になります。ブロックを記録したマイナーは、作業の報酬としてあらかじめ決められた額のビットコインを受け取ります。そして、マイニングが完了した段階で初めて、AさんからBさんへの「1BTCの送金」が実行されます。

ブロックチェーンの3つのメリット

ブロックチェーン

ブロックチェーンのデータ記録方法などについて見てきましたが、ユーザーとしてはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、ビットコインのブロックチェーンを例にして、3つの主なメリットを紹介します。

  • 1.改ざんが非常に難しい
  • 2.利用コストが安い
  • 3.システム全体としての安定性が高い

1.改ざんが非常に難しい

1つ目のメリットは、「改ざんが非常に難しい」ことです。ブロックチェーンは、データのブロックが鎖状に連なったものですが、その連結には「ハッシュ値」という特殊な値が使われています。

そして、ブロックの中の情報を改ざんすると、このハッシュ値がまったく違うものに書き換わってしまい、世界中のノードによって、すぐに改ざんしたことがわかります。

さらに重要なことは、「それぞれのブロックは自分の1つ前のブロックのハッシュ値を情報として持っている」ということです。改ざんによってあるブロックのハッシュ値が変わってしまったら、次に連なるブロックにも手を入れて、書き換わったハッシュ値に合致するようにしなくてはなりません。

これは単に、「文字列を打ち換える」という簡単な作業ではなく、高度な計算を繰り返してようやくできることです。たとえそれができたとしても、さらにその次のブロックへと作業を続けなくてはならないのです。

それが途方もない作業だということは、容易に理解できるでしょう。ブロックチェーンのこうした特性によって、ビットコインのセキュリティが保たれています。

ただし、記録を確認・検証してブロックをつないでいくマイナー(採掘者)たちが結託し、全体の過半数を占めるほどの計算能力を持ったなら、ブロックチェーンに対するさまざまな攻撃が理論上は可能です。

これは「51%攻撃」と呼ばれるものですが、現実的にそれを実行することは、極めて難しいとされています。

2.利用コストが安い

2つ目のメリットは、「利用コストが安い」ことです。ブロックチェーンは、銀行や送金サービスといった従来の管理者を介することなく、ネットワーク参加者同士で直接やり取りができます。そのため、管理者に支払う仲介手数料と比べると、ブロックチェーンの利用手数料は比較的安く済むケースが多いのです。

特に、海外送金ではこのメリットが大きく、ビットコインを使えば金融機関を通すよりも低い手数料で取引を行うことが可能といわれています。

3.システム全体としての安定性が高い

3つ目のメリットは、「システム全体としての安定性が高い」ことです。これは、ブロックチェーンが分散管理されていることに由来します。

集中管理型の場合、何らかのトラブルでメインシステムが止まってしまうと、取引全体が停止してしまいます。通常は、安全策としてサブシステムを用意しておくものですが、コストを考えればそれにも限界があります。

ところが、分散管理型ならば、どこかに不具合が起こっても全体が止まることがありません。あるマイナーがマシントラブルを起こし、ブロックの生成がまったくできなくなったとしても、ほかのマイナーが作業すれば次々とブロックが作られます。

システム全体の安定性は、取引の信頼性を大きく左右します。その意味では、世界中のノードによって支えられているブロックチェーンには、大きな安定感があるといえます。

実際にビットコインは、2009年に取引が始まった当初2度の停止があって以降、システムは停止していません。

ブロックチェーンの3つのデメリット

ブロックチェーン

数々のメリットを持つ半面、ブロックチェーンには次の3つのデメリットもあります。メリットと同様に、代表的な暗号資産であるビットコインを例にして解説します。

  • 1.スケーラビリティ問題を抱えている
  • 2.関連法規の未整備
  • 3.電力消費などに関わる環境問題がある

ビットコインでの取引を検討している人は、デメリットについても把握しておきましょう。

1.スケーラビリティ問題を抱えている

スケーラビリティ問題

1つ目のデメリットは、「スケーラビリティ問題を抱えている」ことです。これは、ビットコインの取引量が増えることによって送金に時間がかかったり、送金要求が承認されなかったり、取引手数料が高騰したりするといった一連の問題のことを指します。

ビットコインが登場した当初、取引量はまだ微々たるものでした。エンジニアたちのあいだで、半ば趣味のように、あるいは実証試験のように取引されていたのです。

しかし、ビットコインが世間に知られるようになり、その可能性に多くの人々が注目するようになると、取引量は急速に増えてスケーラビリティ問題を抱えるようになりました。

取引の遅延が起こり、早く処理するために手数料が高額になりやすく、それを嫌って利用者が離れていくリスクもあります。

取引量が増えることへの対応はビットコインにとって大きな課題であるため、さまざまな対策が打ち出され、試行錯誤が行われています。

2.関連法規の未整備

2つ目のデメリットは、「ブロックチェーン関連法規がまだ整備されていない」ことです。

ビットコインをはじめとする暗号資産は、まだまだ新しい技術です。ブロックチェーンを使った多くの実験的な改良がなされ、その技術を活かした多種多様なサービスが世界中で生み出されています。そのため、法律が追いつかずに、未整備の状況が発生しやすくなります。

日本では、2017年4月1日に施行された「改正資金決済法」によって、暗号資産として暗号資産が定義され、その後も金融庁を中心に、法整備や業界の健全性確保など、行政としての動きが続いてきました。

しかし、ブロックチェーンを利用した新たなサービス、新たなビジネスを起こしたとしても、それが法的に問題ないかどうかという懸念は、常に残ります。日本では合法だとしても、ほかの国では違法とされるケースもありえます。

ブロックチェーンの関連技術とそこから生まれるサービスの法的整備は、今や世界各国の課題にもなっています。

3.電力消費などに関わる環境問題がある

ブロックチェーンでは、ブロックをつなげるために大量の計算が行われます。

特に、ビットコインが採用するPoWという承認方法では、マイナーが計算競争をすることで報酬を得る人が決まります。その仕組みのため、ビットコインの利用が拡大するにつれて、世界全体での電力消費量も増えていきます。

ビットコインが有名となった今では、電力消費が多いことが環境への負荷を高めていることが問題視されています。こうした課題を背景に、たとえばイーサリアムという暗号資産では、承認の方式をPoWから電力消費の少ない方式に切り替える取り組みが行われました。

ブロックチェーンの分岐とは?

ブロックチェーン

ひとつながりのブロックチェーンが分岐することもあります。分岐には、大きく分けてソフトフォークとハードフォークという種類があり、これらは分岐前後のシステムの互換性の有無が異なります。

また、ハードフォークを行うべきかどうかをめぐってコミュニティが対立した場合には、複数のチェーンが残る「分裂」が発生します。

ビットコインは、過去にいくつかのケースを経験しています。たとえば「Segwit」や「P2SH」といった機能は、合意形成による分岐として実装されました。一方で、「ビットコインキャッシュ」や「ビットコインゴールド」は、コミュニティの対立から生まれた分裂によって誕生した暗号資産です。

ブロックチェーン技術の活用事例

ブロックチェーン

ビットコインをはじめとした暗号資産にとどまらず、ブロックチェーンは多方面に応用され、多種多様なサービスを生み出しています。

その多くは、改ざんへの強さやスマートコントラクトの機能が活用されており、その広がりはとどまるところを知りません。それらブロックチェーンの活用例のいくつかを分野ごとにご紹介しましょう。

地方自治体:長崎県・兵庫県

ブロックチェーン技術は、既に多くの地方自治体で活用・実証実験が行われています。ブロックチェーンを活用することでハンコレス化やデジタル化を目指し、地方創生を積極的に推し進めようとする取り組みが盛んです。詳しくはこちら
の記事で説明していますが、ここでは長崎県長崎市と兵庫県養父市のふたつの事例をご紹介します。

長崎市電子契約システムの実証実験
参考:長崎市理財部契約検査課「長崎市電子契約システムの実証実験について」

2021年9月、長崎市は東芝デジタルソリューションズ株式会社とブロックチェーンを活用した契約事務のデジタル化に関する連携協定を締結しています。東芝デジタルソリューションズ株式会社が、長崎市に導入している電子調達システムとブロックチェーンを連携させ、電子契約システムを構築しました。

契約事務手続きの効率化と、コロナ禍における接触機会の削減を目的として導入実験を行っており、社会全体のデジタル化を促進することが期待されます。

2022年6月には、兵庫県養父市は吉本興業株式会社との連携協定のもと、メタバース「バーチャルやぶ」をオープンしました。

メタバース内において、市内の観光名所や、かつて栄えた明延鉱山のワールドなどの体験型コンテンツを用いて市の魅力を発信しています。また、メタバース上には養父市役所も再現されており、「メタバース市民証」を発行することが可能です。

地域の魅力発信に加えて、人々の交流拠点を設ける観点からも、つながりの創出が期待されます。

参考:メタバース「バーチャルやぶ」オープン | 養父市公式ホームページ

金融:貯蓄、送金、証券取引、資金調達など

ブロックチェーンは金融の世界でも盛んに取り組まれており、日々新しい活用事例が生まれています。

比較的初期から盛んな事例としては、暗号資産による送金は、金融機関を介さないため手数料が非常に低く、しかも24時間機能するため、海外為替取引などに活用されています。

また、株券などの有価証券をデジタル化し、ブロックチェーンで管理すれば、高いセキュリティを維持したまま運用コストを下げることができ、取引手数料の抑制につながります。

このように有価証券をデジタル化したものをセキュリティ・トークンと呼び、日本でも一部の証券会社がブロックチェーンを使った不動産投資の商品を販売するなど、実際の運用が始まっています。

2025年の動きとしては、世界的にステーブルコインの取り組みが盛んです。ステーブルコインとは、ドルや円などの法定通貨と価格がほぼ連動するように設計された仮想通貨のことです。

一般的に、仮想通貨は価格変動の幅が大きいことがリスクと捉えられてきましたが、それを解消することで、決済や送金など、より実用的な用途での利用が期待されています。

米国では、2025年7月にステーブルコインに対する法整備が進み、「GENIUS(ジーニアス)法」が成立するなど、ステーブルコインを発行する際の規制が整いつつあります。日本では、Fintech企業のJPYCが、国内初となる円建てのステーブルコイン発行に向けて、国の登録を得る見通しというニュースが話題になりました。

認証:本人確認、著作権管理、公証など

「認証」の分野でもブロックチェーンは大きな活用の可能性があると期待されています。

たとえば、株式会社Digital Platformerは、チケットサイトとの協業で、NFTチケットプラットフォームにおける個人認証にブロックチェーン技術を導入しています。これにより、厳密で利便性の高い認証を実現しています。

また、楽曲や文章、写真、映像作品などの著作権管理や公正証書の発行など、改ざんが許されない分野での応用も検討されています。

公共サービス:各種申告、納税、投票、医療など

世界では、いまだに多くの人が法的なIDを所持していないという問題があります。2016年に設立されたID2020は、誰もが安全で信頼できるIDを持てるようにすることを目標にスタートした国際的なプロジェクトです。

世界的コンサルティング企業でID2020の創業メンバーであるAccenture(アクセンチュア)が、ブロックチェーンと生体認証システムを活用して開発したデジタルIDを、2030年までに普及させることを目標に掲げてきました。

2023年には、ID2020は Digital Impact Alliance(DIAL) に統合され、その活動はデジタルIDの国際的な標準化や実証プロジェクトへと引き継がれています。

参考:ID2020

このような公共のIDのほかに、ブロックチェーンをベースとした行政サービスが作られれば、選挙の投票のほか、各種申告や納税などをオンラインで行うことが可能になるかもしれません。

また、病歴や受診記録などをブロックチェーンに保存しておき、各医療機関で共有・参照できるようにすれば、万一の事故などで緊急搬送された際にも、的確な治療をすみやかに受けることができる可能性もあるでしょう。

エンターテイメント:クリプトスペルズ(CryptoSpells)

CryptoSpells
引用:クリプトスペルズ

ゲームの世界でも、ブロックチェーンが活用されています。クリプトスペルズ(Crypto Spells)は、2019年6月25日に正式リリースされ、初日で売上金額が600ETH(当時のレートで約3,000万円)を突破した人気NFTゲームです。

ゲームの管理・運営にブロックチェーンを利用しているので、カードの発行枚数、所有者、取引履歴などの情報が改ざんされにくいという特徴があり、デジタル上のカードに資産としての価値を付与することが可能です。

このような特徴を生かして、クリプトスペルズではゲーム内で使用するカードをユーザー同士で自由に売買できます。

なお、コインチェック株式会社は、2020年11月よりクリプトスペルズを提供するCryptoGames株式会社と連携を開始しました。

参考:Coincheck、NFTマーケットプレイス事業において日本最大級のBCG「CryptoSpells」と連携を開始

Coincheck NFTでは、クリプトスペルのNFTカードを取引することができます。詳細は以下の記事をご覧ください。

不動産:NOT A HOTEL

ブロックチェーンの持つ耐改ざん性、安定性、信頼性、さらにスマートコントラクトによる高効率な自動契約機能は、各種データ管理や登記の自動化に適しています。

車の登録や土地の登記、債権の売買なども、仲介者の手を借りずに自動的かつ確実に契約が実行されることで、時間とコストの削減効果は非常に大きいといえます。

さらにはホテルに宿泊する権利や、そこで行われるイベントへの参加権を組み合わせたメンバーシップNFTとして販売するなど、不動産業界へのブロックチェーンの新たな活用方法も広がっています。

NOT A HOTEL
引用:NOT A HOTEL

「あたらしい暮らし」を提唱するNOT A HOTELは、「世界中にあなたの家を」をコンセプトとした、アプリ上で自宅と別荘、ホテルを自由に切り替えることができるホテル及び住宅販売を行うライフスタイルサービスです。

NOT A HOTELのオーナーは、所有物件を自宅や別荘として利用するか、ホテルとして貸し出すかを、アプリ上から簡単に切り替えられます。利用時のチェックインからチェックアウトまで、アプリで完結させることができます。

費用がかかりがちな住宅保有におけるコストを、シェア購入で分散させたり、使わない日をホテルとして貸し出したりすることで収益化を図れるのです。

またNOT A HOTELでは、メンバーシップ会員権をNFT化した「NOT A HOTEL NFT」の販売も行っています。メンバーシップ会員になることで、ユーザーは一日単位でNOT A HOTELを利用したり、NOT A HOTEL主催の食やワイン、アートなどを楽しめるイベントへ参加したりすることができます。

ブロックチェーンのまとめ

ブロックチェーン

ブロックチェーンには、メリットだけでなくデメリットもあります。しかし、ブロックチェーンはうまく活用すれば、暗号資産(仮想通貨)取引のみならず、社会全体を支えるインフラにもなりえます。

ブロックチェーンを活用したサービスは日々生み出されて、従来の作業がより効率化され、同時に新たな価値も生み出されています。ブロックチェーンはまさに、将来を変える可能性を秘めているテクノロジーといえるでしょう。