「ブロックチェーンってよく聞くけど、どういう仕組みなの?」
最近、暗号資産(仮想通貨)の取引を始めた方や、興味を持った方の中には、そのような疑問を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ブロックチェーンとは、ビットコイン(BTC)をはじめとする多くの暗号資産で採用されている情報を記録・管理するための技術です。ブロックチェーンは、暗号資産の枠を超えて、さまざまな取引を自動化・効率化するなど、多くの可能性を秘めています。
ここでは、ブロックチェーンの基礎知識とメリット・デメリット、その可能性について解説します。
目次
ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンは一言でいえば情報を記録・管理するための技術です。ひとまとまりの情報をまとめ、それを次から次へと鎖のようにつないでいく構造を持つことから、ブロックチェーンと呼ばれます。
日本語では「分散型台帳技術」ともいわれます。分散型台帳技術を解説すると、「台帳」はお金のやりとりを記録したもので、「分散」は文字どおりあちこちに分けて保管しておくことを指します。
通常、台帳といえば会計帳簿や賃金台帳、住民基本台帳や登記簿などが挙げられ、これらは企業や地方自治体、国といった特定の組織が管理をしています。一方でブロックチェーンには特定の管理者はおらず、台帳の全部、あるいは一部を、暗号資産を取り扱う参加者全員が共有し、保存・管理しているのです。これが分散型台帳であり、ブロックチェーンは、誰が、いつ、どのような情報を台帳に書き込んだのかを明確にして共有し、偽造できないような形で保存・管理する技術になります。
ブロックチェーンの4つの特徴
さまざまな最先端技術が駆使されているブロックチェーンは、情報の改ざんやハッキングなどに対する耐久性が高い情報管理技術と言われています。実際に、世界で初めて開発された暗号資産であるビットコイン(BTC)で利用されているブロックチェーンは、これまで一度も改ざんやハッキングの被害を受けたことがありません。
ここではブロックチェーンの安全性や利便性の高さを裏付ける、4つの代表的な特徴についてご紹介します。
1.P2P(ピアツーピア)ネットワーク
ビットコインなどのブロックチェーンでは、情報の管理にP2Pネットワークを採用しているため、安全性が高いと言われています。
P2Pネットワークとは、複数のノード(node)がデータを分散して情報共有するシステムのことです。ノードとは、「ビットコインなど、特定の暗号資産のネットワークに接続したコンピュータ端末」のことで、peer(ピア)とも呼ばれています。
意味合いとしては、先ほどご紹介した「分散型台帳技術」と同じなので、P2Pは分散型台帳技術の英語での呼び方と思っていただけると分かりやすいでしょう。
従来のクライアントサーバシステムでは、サーバが故障するなどしてダウンすると、システム全体が停止してしまうという問題があります。
しかし、P2Pネットワークを利用している場合は、複数のコンピューターがデータを分散して管理しているため、たとえサーバーの1つがハッカーによる攻撃によってダウンしたとしても、全体に問題は起こらなくなっています。
ハッカーによってデータのファイルが失われた場合でも、他のサーバにデータが保管されているため、再び復元することも可能です。多くのユーザーのコンピューターにデータが分散して保存されることで、リスクも1カ所に集中せずに分散されます。
このように、P2Pネットワークを採用しているブロックチェーンは、ユーザーが相互に監視しあう分散型のシステムになっており、これまでの中央集権型のシステムとは異なる特徴を持っています。
2.暗号技術
ビットコインのブロックチェーンが安全と考えられる理由として、暗号技術が導入されていることも挙げられます。
暗号技術とは、データの内容を第三者にわからない形式に変換し、その変換したデータを元に戻すための技術のことを指します。暗号技術は、公開鍵と秘密鍵の2つを利用してデータをやり取りすることが特徴です。公開鍵と秘密鍵はペアになっており、暗号化したデータはこの2つがないと複号できない仕組みになっています。
公開鍵は第三者にも公開されますが、暗号の解除は秘密鍵がないと行うことができません。そのため、秘密鍵さえ盗まれなければ、暗号資産の安全性は確保されますが、逆にいうと秘密鍵は厳重に管理することが大切です。
秘密鍵を万が一第三者へ渡してしまった場合、データを漏えいさせてしまったり、暗号資産が盗まれてしまう可能性があります。
3.PoW(プルーフ・オブ・ワーク)
ビットコインのブロックチェーンが安全と考えられる理由として、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムが導入されていることも挙げられます。
Powとは、簡単にお伝えすると、取引の承認システムを指します。ビットコインの場合、ブロックチェーンへブロックを追加するためには、非常に難解な計算問題を解く必要があります。
こちらの計算作業(取引の承認作業)のことをマイニングと呼び、マイニングが最初に成功した人には、報酬としてビットコインが与えられる仕組みになっています。いち早くマイニングに成功するためには、膨大な計算作業を高速に行うことができる高性能なコンピューターの導入が必要です。
そのため、今では個人がビットコインのマイニングで成功することは難しい状況となっています。また、1つのブロックを改ざんしようとした場合、その後のブロックも改ざんする必要があるため、不正するには多くの手間と時間を要します。
これにより、ビットコインのブロックチェーンは非常に改ざん困難な仕組みとなっています。
4.スマートコントラクト
スマートコントラクトとは、人の手を介さずに契約内容を自動で実行してくれる仕組みのことです。ブロックチェーン技術が利用されているため、「契約内容が改ざんされない」「中央管理者を介在させず、契約内容が自動で実行される」という2つの条件を満たすことができます。
このように、第三者を介さずに契約プロセスを自動化できるので、取引期間の短縮化や人件費の削減などを実現できるのが、スマートコントラクトの最大のメリットです。
ただし、スマートコントラクトは、すべての暗号資産が実装している機能ではありません。よく知られたところでは、イーサリアム(ETH)がこの機能を実装しています。ブロックチェーンの可能性に注目した人々の手によって、すでにさまざまなサービスが生み出されています。
ブロックチェーンの種類
ブロックチェーンには、主に以下の3つの種類があります。
- パブリック型
- プライベート型
- コンソーシアム型
それぞれどのような特徴があるのか、順番に見ていきましょう。
パブリック型
パブリック型のブロックチェーンは、中央に管理者がおらず、不特定多数のユーザーによって管理されているブロックチェーンです。
取引の仲介者がおらず、透明性のあるデータがインターネット上に公開されていることが特徴です。そのため、パブリック型のブロックチェーンは、オープン型のブロックチェーンといわれることもあります。
パブリック型のブロックチェーンは他の種類のブロックチェーンと比べて安全性が非常に高いという特徴があります。その反面、ブロックチェーン上に新しい情報を書き込むためには多くの処理と時間を要するというデメリットがあります。
プライベート型
プライベート型のブロックチェーンは、個人や単独の組織などで管理され、ルール変更が容易であり、取引承認スピードも速いことが特徴です。パブリック型のブロックチェーンが持っている「処理速度が遅い」という問題がない反面、透明性は低いという特徴があります。
プライベート型のブロックチェーンでは、情報は外部に公開されないためプライバシーが確保され、閉じたシステム内でブロックチェーンにデータを格納できます。このような特徴から、プライベート型は一般企業や金融機関による利用が想定されており、許可型(パーミッション型)のブロックチェーンとも言われています。
コンソーシアム型
コンソーシアム型のブロックチェーンは、複数の組織やグループなどによって管理されているブロックチェーンです。コンソーシアム型は、分散性、安全性、処理速度の全てにおいて、パブリック型とプライベート型との中間の性質を兼ね揃えています。より具体的にいえば、コンソーシアム型は単一の組織ではなく複数の組織やグループによって管理されているため、プライベート型に比べて高い分散性と安全性が備わっています。一方で、パブリック型とは異なり参加者を限定しているため、プライベート型のような速い処理速度も備えています。このような特徴から、コンソーシアム型のブロックチェーンは同業の複数企業が協力してつくるブロックチェーンへ活用されています。
取引情報が記録されるまでの流れ
ブロックチェーンでは、取引が発生するとその情報が生成・検証され記録されていきます。そのプロセスを、簡単にご説明しましょう。
トランザクション:取引情報の生成
まずは、「トランザクション」と呼ばれる、取引情報を生成する作業が行われます。
例えば、AさんがBさんに1BTCを送金するというトランザクションを生成します。あらかじめ登録している秘密鍵を使って署名すると、ネットワークに接続している、ほかのノードがその内容を確認していきます。
ここで問題が見つかった場合には、そのトランザクションは廃棄され、その先の処理は行われません。
マイニング:データの検証と記録
トランザクションに問題がなければ、暗号資産取引の参加者によって、取引データが検証されます。
そしてデータの内容や記録の手順に問題がなければ、ひとかたまりのブロックとしてブロックチェーン上に連結され、記録されます。これが「マイニング(採掘)」と呼ばれる作業で、検証する人を「マイナー(採掘者)」と呼びます。
マイナーは検証する作業の報酬として、決まった額のビットコインを受け取ります。そして、マイニングが完了した段階で初めて、AさんからBさんへの「1BTCの送金」が実行されます。
ビットコイン(BTC)におけるブロックチェーンの3つのメリット
ビットコインに使われているブロックチェーンには、主に以下のような3つのメリットがあります。
- 1.改ざんが非常に難しい
- 2.管理運用コストが安い
- 3.システム全体としての安定性が高い
1.改ざんが非常に難しい
1つ目のメリットは「改ざんが非常に難しい」ということです。なぜビットコインに使われているブロックチェーンは改ざんが難しいのか、その仕組みを簡単に説明します。
ブロックチェーンは、ひとまとまりのデータが鎖状に連なったものですが、その連結部分には「ハッシュ値」という特殊な文字列が使われています。
そして、ブロックの中の情報を改ざんすると、このハッシュ値がまったく違うものに書き換わってしまい、世界中のノードによって、すぐに改ざんしたことがわかります。
さらに重要なことは、「それぞれのブロックは、自分の1つ前のブロックのハッシュ値を情報として持っている」ということです。改ざんによってあるブロックのハッシュ値が変わってしまったら、次に連なるブロックにも手を入れて、書き換わったハッシュ値に合致するようにしなくてはなりません。
これは単に「文字列を打ち換える」という簡単な作業ではなく、高度な計算を繰り返し、ようやくできることです。たとえそれができたとしても、さらにその次のブロックも…と、延々と作業を続けなくてはならないのです。
それが途方もない作業だということは、理解できるでしょう。ブロックチェーンのこうした特性によって、ビットコインのセキュリティが保たれています。
ただし、記録を確認・検証してブロックをつないでいくマイナー(採掘者)たちが結託し、全体の過半数を占めるほどの計算能力を持ったなら、ブロックチェーンに対するさまざまな攻撃が理論上は可能です。
これは「51%攻撃」と呼ばれるものですが、現実的にそれを実行することは、極めて難しいとされています。
2.管理運用コストが安い
2つ目のメリットは「管理運用コストが安い」ということです。すでにご説明したように、ブロックチェーンは複数のノードによって、データが保存・管理されています。
これを一元管理するとしたら、莫大なコストがかかります。サーバーだけでも相当な容量が必要ですし、その後の保守や管理費も含めたら、膨大なコストになります。
しかし、世界中のノードが分散管理すれば、そうした費用がかかりません。ビットコインを日常的に使っているユーザー、暗号資産取引で利益を狙う投資家、ブロックを作りチェーンを伸ばしていくマイナーなど、ビットコインに関わるあらゆる人たちが、少しずつマシンパワーを提供することで、情報が保存・管理されるのです。
これは、分散管理ならではの、大きなメリットです。そのため、ビットコインは、送金手数料を低く抑えることができます。
特に海外送金の場合に有利に働き、ビットコインは金融機関よりも遥かに安い手数料での取引が可能です。
3.システム全体としての安定性が高い
3つ目のメリットは「システム全体としての安定性が高い」ということです。これは、ブロックチェーンが分散管理されていることに由来します。
集中管理型の場合、何らかのトラブルでメインシステムが止まってしまったら、取引全体が停止してしまいます。通常は、安全策としてサブシステムを用意しておくものですが、コストを考えればそれにも限界があります。
ところが分散管理型ならば、どこかに不具合が起こっても、全体が止まるということがありません。あるマイナーがマシントラブルを起こし、ブロックの生成がまったくできなくなったとしても、ほかのマイナーが作業すれば、次々とブロックが作られることになります。
システム全体の安定性は、取引の信頼性を大きく左右します。その意味では、世界中のノードによって支えられているブロックチェーンには、大きな安定感があるといえます。
実際に、ビットコインは2009年に取引が始まってから、これまで一度もシステムが停止したことはありません。
ビットコイン(BTC)におけるブロックチェーンの3つのデメリット
数々のメリットを持つ半面、ブロックチェーンには次のような3つのデメリットもあります。
- 1.時間あたりの取引数が少ない
- 2.スケーラビリティ問題を抱えている
- 3.関連法規の未整備
ビットコインの取引を行う人は、デメリットについても把握しておきましょう。
1.時間あたりの取引数が少ない
1つ目のデメリットは「時間当たりの取引数が少ない」ことです。ビットコインの場合、1つのブロックを生成するために約10分かかります。つまり理論上では、AさんがBさんに1BTCを送金すると、その取引が承認されて実際に送金されるまで10分かかる、ということになります。
また、ビットコインは、1つのブロックの記録容量が小さいこともあって、現状、ビットコインがさばけるトランザクション(取引)の数は、1秒間に7件ほどといわれています。
こうした課題を解決するため、メインのブロックチェーンから分岐する「サイドチェーン」を作ったり、ブロックチェーンの外側で取引を繰り返して最終的な結果だけをメインチェーンに記録する「オフチェーン」の手法を使ったりして、取引速度を上げる対策が進められています。
2.スケーラビリティ問題を抱えている
2つ目のデメリットは「スケーラビリティ問題を抱えている」ということです。スケーラビリティ問題とは、ビットコインの取引量が増えることによって送金に時間がかかったり、送金要求が承認されなかったり、取引手数料が高騰するといった一連の問題のことを指します。
ビットコインが登場した当初、取引量はまだ微々たるものでした。エンジニアたちのあいだで、半ば趣味のように、あるいは実証試験のように取引されていたのです。しかし、ビットコインが世間に知られるようになり、その可能性に多くの人々が注目するようになると、取引量は急速に増えてスケーラビリティ問題を抱えるようになりました。
取引の遅延が起こり、早く処理するために手数料が高額になりやすく、それを嫌って利用者が離れていくリスクもあります。
取引量が増えることへの対応は、ビットコインにとって大きな課題なので、さまざまな対策が打ち出され、試行錯誤が行われています。
3.関連法規の未整備
3つ目のデメリットは「関連法規がまだ整備されていない」ということです。
ビットコインをはじめとする暗号資産は、まだまだ新しい技術です。ブロックチェーンを使った多くの実験的な改良がなされ、その技術を活かした多種多様なサービスが世界中で生み出されています。そのため、法律が追い付かずに、未整備の状況が発生しやすくなります。
日本では、2017年4月1日に施行された「改正資金決済法」によって、暗号資産として暗号資産が定義され、その後も金融庁を中心に、法整備や業界の健全性確保など、行政としての動きが続いてきました。
しかし、ブロックチェーンを利用した新たなサービス、新たなビジネスを起こしたとしても、それが法的に問題ないかどうかという懸念は、常に残ります。日本では合法だとしても、ほかの国では違法とされるケースもありえます。
ブロックチェーンの関連技術とそこから生まれるサービスの法的整備は、今や世界各国の課題にもなっています。
ブロックチェーンの分岐とは?
ひとつながりのブロックチェーンが分岐することもあります。意図的に行われる分岐としては、まずバージョンアップを目的としたもの。もうひとつは、新たな暗号資産を作るためのものです。
ビットコインは、過去にどちらの分岐も経験しています。それによって、「Segwit」や「P2SH」といった機能が実装され、「ビットコインキャッシュ」や「ビットコインゴールド」などの新たな暗号資産が生まれました。こうした分岐は、今後も必要に応じて行われることでしょう。
ブロックチェーンの活用事例
ビットコインをはじめとした暗号資産にとどまらず、ブロックチェーンは多方面に応用され、多種多様なサービスを生み出しています。
その多くは、改ざんへの強さやスマートコントラクトの機能が活用されており、その広がりはとどまるところを知りません。それらブロックチェーンの活用例のいくつかを分野ごとにご紹介しましょう。
地方自治体
ブロックチェーン技術は、既に多くの地方自治体で活用・実証実験が行われています。例えば証明書や市民証、契約書などのデータを電子化してブロックチェーンで管理すれば、強固なセキュリティによる改ざん防止が実現できます。さらにブロックチェーンを活用することでハンコレス化やデジタル化を目指し、地方創生を積極的に推し進めようと活動する地方自治体も存在します。
契約事務のデジタル化「長崎県長崎市」
参考:長崎市理財部契約検査課「長崎市電子契約システムの実証実験について」
2021年9月、長崎市は東芝デジタルソリューションズ株式会社とブロックチェーンを活用した契約事務のデジタル化に関する連携協定を締結しています。東芝デジタルソリューションズ株式会社が長崎市に導入している電子調達システムとブロックチェーンを連携させ、電子契約システムを構築しました。
契約事務手続きの効率化とコロナ禍における接触機会の削減を目的として導入実験を行っており、電子契約システムを通じて決済記録や届出の申請など社会全体のデジタル化を促進することが期待されます。
吉本興業とコラボした地方創生型メタバース「兵庫県養父市」
吉本興業株式会社との連携協定のもと、養父市はメタバース「バーチャルやぶ」をオープンしました。
メタバース内において、市内の観光名所やかつて栄えた明延鉱山のワールドなど体験型コンテンツを用いて市の魅力を発信しています。また、メタバース上には養父市役所も再現されており、「メタバース市民証」なるものも発行することが可能です。
地域の魅力発信に加えて、人々の交流拠点を設ける観点からもつながりの創出が期待されます。
参考:メタバース「バーチャルやぶ」オープン | 養父市公式ホームページ
金融(貯蓄、送金、証券取引、資金調達など)
暗号資産による送金は、金融機関を介さないため手数料が非常に低く、しかも24時間機能しますから、すでに海外為替取引などに活用されています。
また、株券などの有価証券を電子データ化し、ブロックチェーンで管理すれば、高いセキュリティを維持したまま運用コストを下げることができ、取引手数料の抑制につながります。さらに、保有株数に応じて議決権を付与すれば、ブロックチェーン上で株主決議を行うことも可能となるかもしれません。
独自デジタル通貨発行「三菱UFJフィナンシャル・グループ」
三菱UFJフィナンシャル・グループは、2020年度内にブロックチェーンを活用した独自のデジタル通貨「coin(コイン)」を発行する方針であることを明らかにしました。
スマホアプリ上で銀行口座の預金とcoinを交換することが可能で、個人間送金の高速化および低コスト化の実現が期待されています。
また、coinは決済手段としても利用される予定で、サービス開始初期は共同運営先のリクルートが提供するWebサービス(ホットペッパーグルメ、じゃらん等)で利用可能になるとのこと。
なお、実用に関してはボラティリティの高さが問題視される暗号資産ですが、同コインは「1コイン=1円」のステーブルコインとして発行される予定です。
参考:朝日新聞デジタル「三菱UFJ、デジタル通貨「コイン」を今年度後半に開始」
認証(本人確認、著作権管理、公証など)
ブロックチェーン上に記録された個人情報のうち、必要なものだけを参照するしくみがあれば、あらゆる場面での個人認証が、身分証明書を提示することなく可能になるかもしれません。
また、楽曲や文章、写真、映像作品などの著作権も、ブロックチェーン上に記録しておくことで、その後の盗用などに対して正当な権利を主張できます。
現在、同様の機能を持つものとして、公証人が発行する「確定日付」がありますが、ブロックチェーンを使えば、公証人の手を借りずに公正証書を発行することができるとも言われています。
デジタルコンテンツの権利情報処理「ソニー/ソニー・ミュージックエンタテインメント/ソニー・グローバルエデュケーション」
ソニー株式会社、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント、株式会社ソニー・グローバルエデュケーションは、ブロックチェーン技術を基盤としたデジタルコンテンツの権利情報処理システムを開発しました。
ブロックチェーンを活用することで、改ざんが困難な形で事実情報を記録できるので、高い安全性と透明性を兼ね備えた権利情報処理の手段として実用化されていくことが期待されています。
ソニーのデジタルコンテンツの著作権管理に利用される同システムは、まずはデジタル教科書などの教育コンテンツから導入して、音楽、映画、VRコンテンツ、電子書籍などに段階的に導入されていく予定です。
参考:ソニー「ブロックチェーン基盤を活用したデジタルコンテンツの権利情報処理システムを開発」
公共サービス(各種申告、納税、投票、医療など)
ブロックチェーンをベースとした行政サービスが作られれば、選挙の投票のほか、各種申告や納税を、オンラインで行うことが可能となるかもしれません。
また、血液型やアレルギー、これまでの病歴や受診記録などをブロックチェーンに保存しておき、各医療機関で共有・参照できるようにすれば、万一の事故などで緊急搬送された際にも、的確な治療をすみやかに受けることができる可能性もあるでしょう。
ブロックチェーンでデジタルIDを発行「ID2020」
引用:ID2020
世界では、いまだに11億人もの人が法的なIDを所持していないという問題があります。ID2020は、こうした人々にIDを付与することを目標に活動する国連主導のプロジェクトです。
世界的コンサルティング企業でID2020の創業メンバーであるAccenture(アクセンチュア)が、ブロックチェーンと生体認証システムを活用して開発したデジタルIDを、2030年までに普及させることを目標にしています。
参考:ID2020
エンターテイメント
ゲームの世界でも、ブロックチェーンが活用されています。例えば、個性的なキャラクターをペットとして育てる「CryptoKitties」というNFTゲームでは、スマートコントラクトによる課金システムがとられており、その機能を使って育てたキャラクターをNFTとして個人間で売買することができます。
また、各種オンラインゲームの中で使われている通貨を、別のゲーム内でも使えるような両替システムを組むこともできますし、理論上はゲーム内で稼いだ通貨をビットコインなどの暗号資産に、さらにはドルや円といった法定通貨に換えることも可能です。
もちろん、実現するには法的な高いハードルがありますが、それができればゲームと現実の世界が、直接リンクすることにもなるでしょう。
ブロックチェーンゲーム「クリプトスペルズ(CryptoSpells)」
引用:クリプトスペルズ
クリプトスペルズ(Crypto Spells)は、2019年6月25日に正式リリースされ、初日で売上金額が600ETH(当時のレートで約2,000万円)を突破した人気NFTゲームです。
ゲームの管理・運営にブロックチェーンを利用しているので、カードの発行枚数、所有者、取引履歴などの情報が改ざんされにくいという特徴があり、デジタル上のカードに資産としての価値を付与することが可能です。
このような特徴を生かして、クリプトスペルズではゲーム内で使用するカードをユーザー同士で自由に売買することが可能です。
なお、コインチェック株式会社は、2020年11月よりクリプトスペルズを提供するCryptoGames株式会社と連携を開始しました。
本連携のもと、クリプトスペルズで利用可能なNFTを、2021年に提供を予定しているCoincheckのNFTマーケットプレイスにおいて取扱うことを検討していきます。
参考:Coincheck、NFTマーケットプレイス事業において日本最大級のBCG「CryptoSpells」と連携を開始
不動産
ブロックチェーンの持つ耐改ざん性、安定性、信頼性、さらにスマートコントラクトによる高効率な自動契約機能は、各種のデータ管理や登記の自動化に適しています。車の登録や土地の登記、債権の売買なども、仲介者の手を借りず、自動的かつ確実に契約が実行されることで、時間とコストの削減効果は非常に大きいといえます。
さらにはホテルに宿泊する権利や、そこで行われるイベントへの参加権を組み合わせたメンバーシップNFTとして販売するなど、不動産業界へのブロックチェーンの新たな活用方法も広がっています。
NOT A HOTEL
引用:NOT A HOTEL
「あたらしい暮らし」を提唱するNOT A HOTELは、「世界中にあなたの家を」をコンセプトとした、アプリ上で自宅と別荘、ホテルを自由に切り替えることができるホテル及び住宅販売を行うライフスタイルサービスです。
NOT A HOTELのオーナーは、所有物件を自宅や別荘として利用するか、ホテルとして貸し出すかをアプリ上から簡単に切り替えることが可能です。利用時のチェックインからチェックアウトまで全てアプリで完結させることができます。 費用がかかりがちな住宅保有におけるコストを、30日単位でのシェア購入で分散させたり、使わない日をホテルとして貸し出すことで収益化を図ることもできるのです。
またNOT A HOTELでは、メンバーシップ会員権をNFT化した「NOT A HOTEL NFT」の販売も行っています。メンバーシップ会員になることで、ユーザーは一日単位でNOT A HOTELを利用することができたり、NOT A HOTEL主催の食やワイン、アートなどを楽しめるイベントへ参加することができます。
ブロックチェーンに関するQ&A
ブロックチェーンに関するよくある疑問を、Q&A形式でご紹介します。
Q:ブロックチェーンとは何ですか?
ブロックチェーンは、さまざまな取引履歴を信頼性のある形で保存することが可能なシステムです。トランザクションと呼ばれる取引データをブロックで管理し、それらのブロックを次から次へと鎖のようにつないでいく構造を持つことから、ブロックチェーンと呼ばれています。
Q:ブロックチェーンの特徴を教えてください。
ブロックチェーンでは、ネットワークに参加する全員が情報を分散して共有・管理することで、誰が、いつ、どのような取引を行ったのかを明確にして、偽造やハッキングができないようにしています。このような仕組みを、分散型台帳技術、またはP2P(ピアツーピア)ネットワークといいます。
Q:ブロックチェーンにはどのような種類がありますか?
ブロックチェーンには主に、パブリック型、コンソーシアム型、プライベート型の3種類があります。
Q:ブロックチェーンにはどんなメリットがありますか?
ビットコインには、「改ざんが非常に難しい」、「管理運用コストが安い」、「システム全体としての安定性が高い」などのメリットがあります。
ブロックチェーンのまとめ
ビットコインのバックボーンを支えるブロックチェーンについて、その基礎から将来性までを解説してきました。
ブロックチェーンには、メリットだけでなくデメリットもあります。しかし、ブロックチェーンはうまく活用すれば、暗号資産取引のみならず、社会全体を支えるインフラにもなりえます。
ブロックチェーンを活用したサービスは日々生み出されて、従来の作業がより効率化され、同時に新たな価値も生み出されています。ブロックチェーンはまさに、将来を変える可能性を秘めているテクノロジーと言えるでしょう。