ビットコイン(BTC)の分裂とは、ビットコインの仕組みの根幹であるブロックチェーンの仕様変更の際に、「従来の通貨」と「新しい通貨」の2つに分かれることです。
ビットコインから分裂した代表的な通貨としては、2017年8月に誕生したビットコインキャッシュ(BCH)が挙げられます。
本記事では、ビットコイン分裂の全体像を次のポイントに沿ってわかりやすく解説します。
- ビットコイン分裂が起こる仕組みと背景
- これまでに誕生した代表的な派生通貨
- 分裂がもたらすメリットとデメリット
- 分裂が起きた際に取るべき基本的な対処法
ビットコイン分裂の対処法を確認しておくことで、今後のビットコイン分裂の際に正しい行動ができるようになるでしょう。
目次
ビットコイン(BTC)の分裂とは?
ビットコイン分裂の仕組み(ハードフォークとソフトフォーク)
ビットコインの分裂とは、ルール(仕様)が変わるときに意見が分かれ、ビットコインとは別の通貨が生まれることです。
つまり、同じ履歴を引き継いだまま「新しいルールのチェーン」が分かれて動き始めるイメージです。厳密には、このような分岐を「ハードフォーク」と呼びます。
ビットコインだけでなくイーサリアムのような他の暗号資産においても分裂は起こり得ますが、ビットコインは特に顕著で、これまでハードフォークをきっかけに多数の派生通貨が生まれてきました。(2026年2月時点)派生通貨は多数存在しますが、主要なものは一部に限られます。
なお、ハードフォークが起こる場合に、必ずしも暗号資産の分裂が起こるわけではないことは念頭に置きましょう。
ビットコイン(BTC)が分裂したら新通貨も保有できる
ビットコインのブロックチェーンが分裂した際には、新通貨のブロックには旧通貨のブロックがコピーされることになるため、分裂時には旧通貨保有者は、旧通貨と新通貨の両方を保有していることになるのが基本的な考え方です。
ブロックチェーンとは、「ビットコインの取引を記載した台帳のようなもの」と説明できます。そのため、新通貨は分裂時に旧通貨の台帳をコピーしているとも言い換えられるので、旧通貨保有者は、新通貨を旧通貨と同量に持っている状態になります。
例えば、ビットコインからビットコインキャッシュが分裂した際を例にあげると、ビットコイン(BTC)を10BTC持っていたら、ビットコインキャッシュ(BCH)も10BCH付与されるという考え方です。
ただし、分裂した際の新通貨への対応方針は、取引所やウォレットの方針に依存するため、全ての分裂の度に必ず付与されるとは断言できません。
Coincheckの考え方は「計画されたハードフォーク及び新コインへの対応指針」を参照
ビットコインが分裂する理由は関係者の意見の不一致
ビットコインの分裂は、ブロックチェーンの仕様変更であるハードフォークの際に起こりますが、仕様変更に関して関係者全員が同意していれば分裂は起こりません。
ビットコイン関係者とは、下記のような人たちのことを指します。
- 開発者
- マイナー
- 取引所
- 所有者
関係者全員が仕様変更に関して同意していれば、新しい仕様にアップデートされ、ビットコインとして引き続き存続していくことになります。
しかし、ブロックチェーンの仕様変更に関して、
- 仕様変更すべき
- リスクがあるので従来の仕様を維持するべき
のように「旧通貨派」「新通貨派」と意見が対立した際には、旧通貨が残ったまま、仕様をアップデートした通貨も誕生してしまい、2つの通貨に分かれてしまうのです。
ビットコインのような暗号資産においては、政府のような中央管理者が存在しないために、仕様に関する関係者の意見の不一致が原因で分裂が起きてしまうということを覚えておきましょう。
イーサリアムとイーサリアムクラシックの分裂も同様に、関係者の意見の不一致によって発生しました。
ビットコインキャッシュ(BCH)について詳しく解説!
ビットコインキャッシュ誕生の理由
ビットコインにおいては、ブロックサイズ(取引を記録するデータ容量)が上限1MBと決まっていましたが、取引量が増加してきたことが原因で「スケーラビリティ問題」が深刻化していました。
「スケーラビリティ問題」とは、ブロックサイズが小さい場合にすぐに容量が一杯になってしまって処理が追いつかなくなり、送金遅延を引き起こしたり、取引手数料の高騰を引き起こしたりすることを指します。
この大きな問題を受けて、仕様変更に関する議論が関係者の間で持ち上がりましたが、意見が一致しませんでした。
そこで、下記のような別々の解決方法を実施するに至り、ビットコインは2つに別れることになりました。
- ビットコイン(旧通貨):問題解消のため、データサイズの大きい署名部分を別領域に移して実質ブロックサイズを拡大できる『Segwit』を実装する仕様変更
- ビットコインキャッシュ(新通貨):問題解決のため、ブロックサイズを拡大する仕様変更(2017年8月には8MBに拡大、その後2018年5月には32MBに拡大)
このような意見の不一致によって、ビットコインはビットコインとビットコインキャッシュに分かれることになったのです。
ビットコインが分裂して誕生した主要通貨
現在(2026年2月)までに、70回以上分裂したとされているビットコインではありますが、多くの通貨は値がついておらず、開発が進んでいるかどうかもよく分からない状態です。
本章では、ビットコインから分裂した通貨の中で、ある程度の価格と知名度のある4つの通貨について、分裂理由を含めて解説していきます。
<ビットコイン分裂によって誕生した主要通貨>
| 通貨名 | 分裂時期 |
|---|---|
| ビットコインキャッシュ | 2017年8月 |
| ビットコインゴールド | 2017年11月 |
| スーパービットコイン | 2017年12月 |
| ビットコインダイアモンド | 2017年11月 |
おおよその価格を記載しましたが、暗号資産は大きく価格が変動する可能性があります。
<それぞれの通貨の特徴>
ビットコインキャッシュ
ブロックの容量が一杯になって送金遅延を引き起こす「スケーラビリティ問題」解決のために仕様変更を行い、誕生した通貨。
ビットコインゴールド
ビットコインにおいては、一部の集団がマイニングを行い独占していると言われています。そこで、マイニング独占を解消して、個人でもマイニングができるような仕様変更を行ったことによって誕生した通貨。
スーパービットコイン
ビットコインのあらゆる問題解決のために誕生し、取引時間とコストを大幅に改善したと言われている通貨。
ビットコインダイアモンド
ビットコインにおける、ブロックの容量が一杯になって送金遅延を引き起こす「スケーラビリティ問題」のさらなる解消とマイニング分散化を目指して仕様変更したことで誕生した通貨。
上記4つの新通貨をはじめとして、ビットコインは2017年後半に頻繁に分裂しています。2026年2月時点では分裂の波は過ぎ去っているものの、今後分裂が起こることも大いに考えられます。
なぜなら、ビットコインの分裂理由を見ても分かるように、ビットコインには未だにいくつもの問題があるため、問題を解消するための仕様変更が今後も予想されるからです。
ビットコインキャッシュもビットコインABCとビットコインSVに分裂
2017年8月にビットコインから分裂したビットコインキャッシュですが、ビットコインキャッシュもまた、2018年11月にビットコインABCとビットコインSVに分裂しました。
ビットコインキャッシュは、2018年5月にはブロックサイズ8MBから32MBへ仕様変更が行われるなど、実用化に向けて開発が順調に進んでいました。
ところが、2018年11月の仕様変更の際に、トークン発行を可能にするWHCや、ビットコインキャッシュを決済以外で使えるようにするためのDSV実装について関係者間で意見が分かれてしまったのです。
色々な騒動がありましたが、結局はビットコインABCがビットコインキャッシュのブロックチェーンを引き継いだ形となり、ビットコインSVは新たな通貨とされました。
ビットコインキャッシュの分裂について詳しく知りたい方は、こちらの記事を合わせてご参照ください。
ビットコイン分裂によって所有者が得られる2つのメリット
ここからは、ビットコイン分裂によってビットコイン所有者が得られる下記2つのメリットについて詳しく紹介していきます。
- 新しい通貨が配布される可能性あり
- 競争が高まって機能向上が促進される可能性あり
新しい通貨が配布される可能性あり
ビットコイン分裂が起こると、ビットコイン保有数と同数の新通貨が配布されるケースがあります。つまり、ビットコイン所有者は実質無料で新通貨をもらえるということです。
新通貨の価格が上昇していけば大きな利益を得ることにつながるので、ビットコイン所有者にとってはメリットと言えるでしょう。
取引所にビットコインを保管している人は、分裂した際に新通貨が付与されるかどうかは取引所の判断に委ねられています。
例えば、Coincheckでは下記の基準をもとに新コインを付与するかどうかを判断することとしています。
- 新コインについて、二重移転を防止する措置が講じられていること。
- 新コインについて、お客様の資産を侵害する仕組みが講じられていないこと。
- 新コインの有する機能が、不法、不正な行為を誘引するものではないこと。
- HFを計画する者による過剰なプレマインなどの利益独占行為が認められないこと。
- その他、新コインの健全な流通を妨げる事象が認められないこと。
詳しくはこちら:計画されたハードフォーク及び新コインへの対応指針|Coincheck
Coincheckでは、ビットコインキャッシュはビットコインと同数の付与がなされ、ビットコインキャッシュ分裂時にはビットコインSVを現物ではなく保有数分の日本円で還元しています。
暗号資産取引所によって分裂時の対応は異なるため、取引所の発表を必ず確認するようにしましょう。
ハードフォークについては、下記記事をご参照ください。
競争が高まって機能向上が促進する可能性あり
分裂によって暗号資産同士の生き残りをかけた競争が高まり、機能向上が促進される可能性があります。
価値の低い暗号資産は自然と淘汰されていってしまうため、機能改善を目指した開発が日夜行われるようになり、ビットコインの実用化が進むかもしれません。
ビットコインの機能が充実してより実用的な暗号資産になることは、価格の上昇にもつながるため、所有者の利益になると言えます。
ビットコイン分裂によって所有者が被る恐れのある4つのデメリット
ビットコイン分裂によって所有者が被る恐れのあるデメリットについても紹介します。
- ビットコインの価格が下がる可能性あり
- ビットコインの取引が一時的にストップする可能性あり
- 分裂時の混乱に乗じて詐欺が増えることもある
- リプレイアタックによって新通貨が盗まれやすくなる
どのような分裂かによってリスクの大小は異なりますが、事前に代表的なものをチェックしておくことで、不測の事態にも慌てず対応できるようになるでしょう。
ビットコインの価格が下がる可能性あり
ビットコインの価格が下がる理由としては、世界情勢の変化や法規制など色々な理由がありますが、分裂もひとつの要因となり得ます。
分裂の元となるハードフォークは通貨の問題解決のために行われるため、基本的に機能向上が達成されます。そのため、旧通貨は「機能向上前の通貨」と見なされ、価格が下がってしまう可能性があるのです。
分裂後に開発者やマイナーが新通貨の方に流れてしまえば、旧通貨の開発やマイナーが遅れ、ビットコインが衰退していってしまう恐れがあります。
実際に同様の事例はイーサリアムクラシックで発生しています。
また、事実ではないことでも新通貨誕生による不安が市場に蔓延することで、価格下落につながってしまうことも起こり得ます。
このような理由から、ビットコイン分裂は価格が下がるひとつの要因と言われているのです。
ただ、暗号資産の価格変動に関しては様々な要因が複雑に絡み合っているために、分裂したら必ず下落するとは言い切れません。
あくまで分裂によってビットコインの価格が下がる可能性があるとしか言えず、実際にどのような値動きをするかを事前に予測するのは難しいです。
ビットコインの取引が一時的にストップする可能性あり
ビットコインがハードフォークによって分裂する際には、ビットコインの取引が一時的にストップする可能性があります。
価格の上下が激しくなったり、想定外のトラブルが起こったりなど、ハードフォークによってどのようなリスクがあるか分かりません。
そこで、分裂時に顧客の資産を守るために、取引所では基本的にビットコインの取引停止の処置を行うところもあります。
ビットコインキャッシュが誕生した際も、国内取引所でのビットコインの売買や決済は、数時間から数日停止されていました。
そのため、ビットコインの取引を予定している場合には、ハードフォークが起きる前に早めに行っておくよう注意しましょう。
分裂時の混乱に乗じて詐欺が増えることもある
ビットコイン分裂の際には詐欺が増えることもあるので注意しましょう。
ビットコイン分裂時に、新通貨が配布されるのかなどを心配する所有者の気持ちにつけ込み、偽のHPをでっち上げて「新通貨をもらうためには個人情報を入力してください」などと誘い込むこともあります。
分裂に関するあらゆる情報に振り回されることなく、冷静に情報を確かめ、詐欺の被害に合わないように気をつけましょう。
リプレイアタックによって新通貨が盗まれやすくなる
リプレイアタックとは、ハードフォーク前後に片方のチェーンで有効な取引データが、もう一方のチェーンでも有効になってしまう現象を悪用した攻撃のことです。つまり、ハードフォークのタイミングで新通貨を盗む目的でされる攻撃のことです。
リプレイアタックを受けると、所有者がビットコインを送付した時、意図していない台帳へと新通貨が送金されてしまいます。つまり、所有者の知らぬ間に新通貨が盗まれてしまうのです。
リプレイアタックに対しては暗号資産自体への機能追加によって防ぐ動きもありますが、分裂前後の不安定な期間は送金を控え、利用している取引所やウォレットがリプレイ保護に対応しているかを確認しましょう。
基本的にビットコインの送付をしなければ、リプレイアタックによって新通貨が盗まれるということはありません。
ビットコインの分裂が起きた際の2つの対処法
ビットコインの分裂が起きた際に、どのような行動をすればいいのかについてまとめました。
分裂時には多くの情報が出回り混乱することもあるかもしれませんが、詐欺やリプレイアタックの被害に合わないためにも、冷静に対処していくようにしましょう。
対処法①冷静に情報を確認する
ビットコイン分裂が起きた際には冷静に情報を確認していきましょう。
分裂時には、「今後はどちらの暗号資産が主になるのか?」や「分裂によって価格が下がるのではないか?」のような不安が高まります。
しかし、不安を煽るような情報に踊らされることなく、冷静に情報を整理して、今後取るべき対策を考えるようにしましょう。
取引の停止や新通貨の取扱いなどについて、情報を確認するようにしてください。
金融庁や金融庁が認定する自主規制団体「日本暗号資産交換業協会(JVCEA)」のHPなどをチェックしてみると良いでしょう。
引用:金融庁
対処法②新通貨の取り扱いを確認する
ビットコイン分裂が起きた際には、誕生した新通貨の取り扱いについて必ず確認するようにしましょう。
取引所にビットコインを預けている場合
ビットコインが分裂した際には、基本的に新通貨がビットコイン保有数と同数配布されます。ただ、新通貨が配布されるかどうかは取引所の判断に任されることになります。
新通貨と同額の日本円が配布されることもあれば、新通貨を配布しないこともあります。
新通貨の設計がずさんであった場合、配布することによって顧客の資産が流出してしまうなどのトラブルが起こる可能性があります。そのため、取引所は新通貨の安全性などを見極めた上で、配布の判断をしているのです。
新通貨の配布については、取引所のHPやSNSでのアナウンスメントをよく確認するようにしてくださいね。
自分で管理しているウォレットなどにビットコインを保有している場合
ハードフォークに対応したウォレットにビットコインを保有している場合には、基本的に新通貨がビットコイン保有数と同数配布されます。
ただし、こちらでも取引所と同様、安全性確保などの確認を行った上で新通貨の配布が判断されます。
取引所と同様、新通貨配布に関するアナウンスを待つようにしましょう。
また、取引所に保管していてもウォレットに保管していても、確実に新通貨をもらえるかどうかを事前に判断することは難しいということも覚えておきましょう。
今後もビットコイン分裂が起こる可能性はある
ビットコインの分裂とは、ビットコインの問題解決のためのハードフォークによって結果起こることです。現在のところビットコインにおける全ての問題が解決したとは言えないため、開発が進んでいく中で再び分裂が起こる可能性は高いでしょう。
また、ビットコインに関しては、いくつかの勢力が自身の利益を守るために複雑に絡み合って対立しているということもあり、このような視点からみても分裂が起こりやすい暗号資産とも言えます。
ビットコインから分裂した通貨としては、ビットコインに匹敵するような新通貨はビットコインキャッシュ以外今のところ誕生していませんが、今後誕生する可能性はあります。
ビットコイン所有者としては、ビットコインの分裂に備えて情報収集などを怠らないようにしておくことが大切です。
ビットコインの分裂まとめ
ビットコインの分裂とは、ビットコインの仕組みの根幹であるブロックチェーンの仕様変更の際に、「従来の通貨」と「新しい通貨」の2つに分かれることで、ビットコインの分裂の理由や注意点などのポイントは下記の通りです。
- ビットコイン分裂の理由は、関係者の意見の不一致によるもの
- ビットコインが分裂したら仕組み上は新通貨も付与されるが、取引所の判断に委ねられる
- 2026年2月時点、分裂して誕生した通貨の中では、ビットコインキャッシュ(BCH)が比較的長期間にわたり利用・開発が続いている通貨の一つです。
- ビットコイン分裂時には価格が下落したり詐欺が増えたりすることがあるので注意
- 今後もビットコイン分裂が起こる可能性はある
本記事を参考に、ビットコイン分裂について深く理解し、分裂時の混乱や不測の事態に振り回されることなく、正しい行動ができるように準備しておきましょう。