ドルコスト平均法とは、毎月など決まったタイミングで同じ「購入額」(1万円など)を買い続ける手法です。
積立投資で使われることが多いドルコスト平均法には、下記のようなデメリットとメリットがあります。
これをもとに、下記のようにドルコスト平均法が向いている人と向いていない人に分かれます。
ドルコスト平均法はデメリットメリット、向き不向きがあるので、両者を正しく把握した上で「ドルコスト平均法を活用するべきか」判断することが大切です。
そこでこの記事では、
- ドルコスト平均法の4つのデメリット
- ドルコスト平均法のメリット
- ドルコスト平均法に向いている人、向いていない人
を細かく解説していきます。
この記事を読めば、ドルコスト平均法のデメリットが正しく理解でき、自分の投資スタイルがドルコスト平均法に向いているのかジャッジできるようになりますよ。
目次
知っておくべきドルコスト平均法の4つのデメリット
冒頭でも説明したように、ドルコスト平均法は4つのデメリットがあります。
まずは、それぞれのデメリットを簡単にご紹介します。
収益性が低い
ドルコスト平均法は一定額をコツコツ積み立てるので、収益性が低くなってしまうところがデメリットです。
例えば、100万を運用期間10年で投資したとしましょう。順調に価格が上昇していく金融商品の場合、下記の表のように一括投資とドルコスト平均法では10年後に約60万円以上の収益の差がついてしまいます。
参考:比較シミュレーション
これは、一括投資が一度にまとまった金額を投資できるのに対し、ドルコスト平均法では定期的にコツコツ投資額を増やしていくためです。投資額が少ない間は収益も少なくなるので、緩やかにしか収益が伸びていきません。
右肩上がりになり続けることは少ないかもしれませんが、利益が得られるような市場となったとしても収益性が低いというのはデメリットとして抑えておきたいところです。
機会損失をしている
ドルコスト平均法は株価の動きを予想しなくても、自動的に一定金額ずつ金融商品を購入していけます。
裏を返せば、より多くの資産を手に入れられるチャンスを逃していることになるでしょう。
投資ではチャンスを逃すことを機会損失と呼び、最善な意思決定をしないことで起こる稼ぎ損ないをさします。
今後、株価がどのように変動するかは誰も分かりません。しかし、情勢や株価の動きを見ながら優位な情報を探れば、同じ時間でより多くの資産を手に入れられる可能性もあります。
また、充分な資金があるのにもかかわらずドルコスト平均法を選ぶことで、理想の投資金額を運用するまでに時間を要します。
例えば「100万円投資に使える」と決めていても、ドルコスト平均法を選び毎月3万円ずつ購入すると100万円を投資に回すのに3年以上かかることに。
この間に生み出せたかもしれない収益を視野にいれていないところも、機会損失に含まれます。
ドルコスト平均法では
①予想しなくてもいいという特色からの機会損失
②充分な資産がある場合、全額を投資に回すまでにかかる時間の機会損失
という2つが起こりかねません。
手数料がかさみ収益を削ってしまう
投資信託の場合は主に下記のような手数料がかかります。
手数料は相場とは関係なく発生するため、右肩下がりの場合にはどんどん増え大きな負担となる可能性もあります。
一般社団法人投資信託協会が実施した「投資信託に関するアンケート調査報告書(2017年)」でも、実際に投資信託をしている人たちが不満を感じる点として「手数料が高い」という声があがっています。
投資する商品によって異なりますが、自分が投資した金額から手数料が引かれてしまうことも懸念しておきたいポイントです。
短期的な投資には向かない
ドルコスト平均法は仕組み自体が数十年と長期的な投資を目的として考えられているため、短期間で収益を求める投資には向いていません。
投資には「中長期堅実投資型」と「短期利益追求型」の2つがあります。
ドルコスト平均法は少額をコツコツ積み上げていく「中長期堅実投資型」で、数年では投資できている金額自体が少ないので満足のいく収益が得られるとは考えにくいでしょう。
「短期間で収益が見込めるような運用をしたい」という場合には、短期利益追求型の投資方法を選んだほうが満足のいく結果が出せます。
ドルコスト平均法のメリット
ドルコスト平均法のデメリットが理解できたところで、気になるのが「ドルコスト平均法」のメリットです。
デメリットをカバーしメリットを活かした投資ができれば、ドルコスト平均法は運用しやすい方法となります。どのようなメリットがあるのか、ぜひチェックしてみてください。
相場が下落しても上がったときにチャンスとなる
ドルコスト平均法は、一度相場が下落しても上向きに修正されると大きなチャンスとなります。
これは、自分では判断できない「買い」である局面でも自動的に購入してくれるため、買い逃すことなく価格上昇したときに備えることができるからです。
例えば下記の表のように株価の下落が続いて、年末に少し巻き返したとしましょう。
このときに一括投資をした場合とドルコスト平均法を使用した場合を比べると、12月の時点でドルコスト平均法のほうが2倍以上の収益をあげていることがわかります。
ドルコスト平均法には「安いときに多くの株を購入する」という側面があり、保有株を増加させた状態で相場の上昇を迎えられます。そのため、利幅を押し上げることができて一括投資をするより収益が多い結果となるのです。
時間分散でき平均購入価格が抑えられる
ドルコスト平均法は「安いときに多く購入でき、高いときには購入を控えられる」ので、価格変動があれば平均購入価格が抑えられるところが特徴です。
分かりやすいように、投資をリンゴで例えて説明をします。リンゴ1個当たりの値段が毎月変動するとして、合計120個のリンゴを買いたいと思っています。
現在の価格で一括購入する場合と4ヶ月に分けて同じ個数を購入する場合、そしてドルコスト平均法のように120個の購入が見込める一定額ずつ購入すると下記の表のようになります。
平均購入価格を見てみると、ドルコスト平均法で購入した場合がもっとも安くなっているのが分かるでしょう。
「安いときに多く購入でき、高いときには購入を控えられる」というドルコスト平均法の仕組みは投資で「時間分散」と呼ばれており、
- 投資のタイミングを調整することで高値づかみを避ける効果
- 年間での価格変動のブレを抑える効果
が期待できます。
ドルコスト平均法では相場変動に合わせて自動的に購入調整ができるため、長期的な視点でみたときに時間分散できるところがメリットです。
参考: 日興証券、大和投資信託のNISA
少額からでもスタートできる
投資に充てるまとまった金額がなくても、投資が始められるところも大きなメリットです。
金額商品にもよりますが月々1,000円から始められるので「投資のためにまとまったお金を用意しなければならない」「生活を切り詰めないといけない」ということがないので、自分のライフスタイルに合わせて無理なくスタートできます。
また、自分で売買を繰り返さないといけない本格的な株とは異なり自動的に購入口数を調整できるので、難しい知識は必要ありません。
少額からコツコツと貯めていけて自分で操作する部分が少ないという点で、初心者でも始めやすいと言えるでしょう。
【チェックリスト付き】ドルコスト平均法が向いている人は?
ドルコスト平均法のメリット、デメリットを踏まえた上で、ドルコスト平均法が向いているのは次の3つのパターンです。
- リスクを避けたい人
- コツコツと少額投資をしたい人
- 投資の知識が浅い人
それぞれ自分に当てはまるかどうかチェックができる「チェックリスト」付きなので、ドルコスト平均法で運用するべきかどうかジャッジしてみてください。
リスクを避けたい人
ドルコスト平均法が向いているのは、投資によるリスクを避けたい人です。
第1章の「ドルコスト平均法のデメリット」でもお伝えたように、ドルコスト平均法は決して収益性が高い方法ではありません。急に、10倍や20倍の収益が発生することはないですし、それなりの収益を生み出そうとするまで時間がかかります。
一方で、莫大な資金を投資し大コケするようなこともなく、大きな不利益を背負ってしまう可能性が低いです。
そのため機会損失まで考えることなく、少しでも安全な方法で投資をしたい人に向いていると言えるでしょう。
参考書籍:お金は銀行に預けるな~金融リテラシーの基本と実践~
コツコツ少額を投資したい人
ドルコスト平均法は年金や積み立て保険に似ており、ゴールに向けてコツコツ積み立てていくことができる人に向いています。
このタイプは「将来のために少しずつ貯めておこう」「将来の資産形成をしたい」など、なぜ投資をする目的が明確である人が多く、収益性より未来への投資を重視しているところがポイントです。
少額でも積み立てていくことが自分にとってプラスになると理解できているので、長期戦であっても諦めずに取り組めます。
逆に、投資での結果を急ぐ人や長期的に投資をする先にあるゴールが見えていない人には向いていないかもしれません。
投資の知識が浅い人
ドルコスト平均法は、投資初心者に向いている投資方法だと言われることが多いです。
それは、
- 決められた時期に自動的に金融商品の購入ができる
- 売買の時期や購入口数を自分で決める必要がない
- 投資に時間をかける必要がない(毎日チェックしなくてもいい)
- 少額からスタートできるのでハードルが低い
といった負担をかけずに手軽にスタートできるポイントが多いからです。とくに、初心者にとって大きな難関となる「自分で金融商品の購入口数を決めて売買をする」ということをしなくてもいいので、投資に対して深い知識を持っている必要がありません。
逆に、投資に明るく投資資金も確保できている場合は、ドルコスト平均法では満足できず「機会損失になっている」と感じてしまう可能性が高いでしょう。
「投資を始めてみたいけれどあまり知識がない」という人の入口としておすすめです。
ドルコスト平均法での運用が向いている商品
最後に、ドルコスト平均法のメリットを活かして投資をする場合には、どのような商品や方法が向いているのかご紹介します。
価格が変動する可能性がある商品
ドルコスト平均法はメリットとデメリットを見ても分かるように、価格変動があることでメリットを発揮します。
価格が変動しない商品では、価格が高いときには購入口数を減らし価格が安いときに購入口数を増やすというメリットが発揮できません。
また、右肩上がりだと分かっている商品があるとすれば、わざわざ一定額で投資をしていく必要はないでしょう。
先ほどもお伝えしたようにドルコスト平均法に合うのは価格変動がある商品なので、下記のようなケースが当てはまります。
価格変動があれば、価格低いときと高いときの平均値を取れるドルコスト平均法のメリットが活かせます。今は下降ぎみであっても価格が上昇する可能性がある商品なら、安いときに多くの口数を購入できる特性を活かして、巻き返しが期待できるでしょう。
価格変動がある商品例は暗号資産(仮想通貨)のビットコインです。ビットコインは金融商品の中でも価格変動が大きいことが特徴なので、ドルコスト平均法のメリットを活かせやすいでしょう。
ドルコスト平均法を用いたビットコイン積立に関しては、こちらをご覧ください。
このようにドルコスト平均法で運用する場合には、価格変動があるかどうかをチェックすることで収益性を高めることにつながります。
長期的な投資を前提としている
ドルコスト平均法は「中長期堅実投資型」の投資方法なので、長期的な運用を前提としている商品に向いています。
短期期間で収益を得たい場合や結果を出したい場合は、他の方法を選ぶようにしましょう。
一般的に向いている方法だと言われているのは、長期的にコツコツと積み立てていく下記のような商品です。
どのような方法で投資をしていくのかによっても選ぶべき方法が異なるので、事前にチェックしてみてください。
ビットコインの積立投資も可能
ドルコスト平均法は、日本円だけでなくビットコインを利用した積立投資でも利用されています。
2019年11月よりCoincheckは暗号資産自動積立サービス「「Coincheckつみたて」」を開始。取引所に日本円を入金することで、自動的にビットコインでの売買を行ってくれるシステムです。
積立プランは以下の2種類あります。
- 毎日つみたてプラン
- 月イチつみたてプラン
ドルコスト平均法のメリットを引き出せる運用方法なら、日本円以外での投資でも活用できます。
「Coincheckつみたて」でドルコスト平均法を実践
暗号資産取引所であるCoincheck(コインチェック )では、ドルコスト平均法を用いた積立サービス「Coincheckつみたて」を提供しています。
2023年10月現在「Coincheckつみたて」では以下の26種類の通貨を購入することができます。「BTC」「ETH」「ETC」「LSK」「XRP」「LTC」「BCH」「XLM」「XEM」「QTUM」「MONA」「BAT」「IOST」「ENJ」「SAND」「CHZ」「LINK」「DOT」「MKR」「POL」「IMX」「APE」「AXS」「WBTC」「AVAX」「SHIB」。
最後に、Coincheckつみたてがどのようなサービスなのか紹介します。
「月イチつみたてプラン」と「毎日つみたてプラン」から選択可能
「Coincheckつみたて」には「月イチつみたてプラン」「毎日つみたてプラン」の2つのプランが存在します。
「月イチつみたてプラン」は月に一度自分で選択した金額が自動で積み立てされるプランです。毎月10,000円から1,000,000円の範囲内で金額を指定することができます。
「毎日つみたてプラン」は事前にひと月分の金額を指定し、該当月の日数で割った金額を自動で毎日積み立てるプランです。
月イチつみたてプランに比べ投資回数が多いため、比較的相場変動を受けにくく、損益の幅を抑制することができます。
月々1万円から積み立てられる
「毎月プラン」のほうは、月1万円から1,000円単位での投資額設定が可能です。もちろん予算に余裕があれば、それ以上の金額を投資して堅実な資産形成を狙うこともできます。
すべて自動処理、手数料は無料
必要な金額を口座に入金しておけば、あとは自動処理で、余計な手間はかかりません。また、Coincheckつみたては振替手数料やサービス手数料が無料です。
まとめ
いかがでしたか?
ドルコスト平均法のデメリットが把握でき、自分に向いているのかジャッジできるようになったと思います。
最後に、もう一度記事の内容を整理してみると
ドルコスト平均法のデメリットは次の4つ
- リスクを分散させている分、右肩上がりの状況でも収益性が低い
- 定期的に一定額を投資する方法なので、機会損失をしている可能性がある
- 販売手数料や管理費用などの手数料がかかる
- 短期間で収益を得たい場合に向いていない
ドルコスト平均法のメリットは次の3つ
- 相場が下がっても、上がったときにチャンスとなる
- 時間分散できるので、購入平均価格を抑えられる
- 初心者でも少額からスタートできる
ドルコスト平均法が向いているのは次の3タイプ
- リスクを避けたい人
- 目標に向かい、長期的にコツコツと投資したい人
- 投資の知識が浅い人
最後に、ドルコスト平均法が向いている商品は次の2つ
- 価格変動がある商品
- 長期的な運用を必要とする商品
この記事をもとに自分に合った投資スタイルが分かり、リスクを抑えながら目的に合わせた投資ができることを願っています。