暗号資産(仮想通貨)はどれくらい広まっているの?日本と世界の普及状況

暗号資産のニュースが多く流れた2017年以降、暗号資産交換業社の数は増えていますが、実際にどれくらいの人が暗号資産の取引をしているかは不透明です。

実は日本は世界に先駆けて暗号資産の法整備を行った国ですが、そのことについてはあまり知られていないのが現状です。その後、日本と世界の暗号資産を取り巻く状況はどのように変化しているのでしょうか。

この記事では暗号資産の普及状況と普及のポイントについて詳しく解説していきます。

日本の暗号資産の普及状況はどうなっている?

暗号資産の普及状況
日本では2017年以降、SNSを中心に暗号資産が話題となりました。

暗号資産で億単位の資産を築いた人がテレビや雑誌などで大きく取り上げられたことなどで、暗号資産の存在は広く知られるようになりました。

こうした暗号資産ブームの中で、日本は世界に先駆けて暗号資産に関する法整備を行いました。

暗号資産に関する法理が日本で施行

暗号資産に関する法律が日本で施行されたのは、2017年4月1日のことです。暗号資産に関する事項が盛り込まれたのは「改正資金決済法」という法律です。

従来の資金決済法は、商品券や電子マネーに関するルールを定めるものでしたが、今回の改正で暗号資産に関するルールも定められることになりました。

この法律によって、暗号資産とは何か、暗号資産交換業とは何かといった定義の部分、そして暗号資産交換業者に対する規制が行なわれることになったのです。

暗号資産の交換業に登録制が導入

暗号資産交換業者にとっての大きな変化は、暗号資産の交換業に登録制が導入されたことです。

この登録制によって、金融庁の登録を受けていない業者は、暗号資産の取扱いができないことになりました。また、消費者にとっては、暗号資産に関わる課税体制が強化されたことが、大きなインパクトとなりました。

日本での暗号資産の普及率が高くない理由とは?

日本
世界の中でも一早く法整備が行なわれた日本ですが、今のところ暗号資産の普及率は決して高いとはいえません。

また、暗号資産は知らなくても、暗号資産の1つであるビットコイン(BTC)については聞いたことがある、という人もいるでしょう。他にも、暗号資産とビットコイン(BTC)は同一のものだと思っている人、あるいは暗号資産とビットコイン(BTC)は全くの別物と思っている人もいるかもしれません。

このように暗号資産やビットコイン(BTC)などの単語を聞いたことがあっても、暗号資産やビットコイン(BTC)の仕組みをしっかりと理解している人は多くありません。このような背景もあってか、日本では暗号資産の普及率は高いとは言えない状況が続いています。

他国における暗号資産の活用例

日本では暗号資産は投資商品としての側面が大きく取り上げられますが、世界に目を向けると、他の用途を目的に暗号資産が利用されている場合もあります。

例えば、政情不安や経済危機のリスクがある開発途上国では、自国通貨が利用できなくなった場合の非常手段として、暗号資産が活用される場合もあります。

実際に、ギリシャで債務不履行の問題が起きた際には、多額の資金が暗号資産に流入しました。暗号資産は有事の際のリスク分散先の1つとして、有効活用されたのです。

また、法定通貨に比べて基本的に送金コストが低い暗号資産は、国際送金にも活用されています。

例えば、海外に出稼ぎで働いている人が母国に国際送金をすることは珍しくないため、その際の送金ツールとして利用されている場合もあります。

他国とは異なる日本の環境

一方、日本での暗号資産の必要性は、上記でご紹介したような国と比べると、そこまで高くはないのが現状です。

日本国内でも法定通貨である日本円への信頼性が高いことに加えて、世界的にも米ドルが下がると安全な通貨として日本円が買われる場合もあったりします。

また、日本で最初に暗号資産が一般に知られるようになったきっかけが、2014年のマウントゴックス事件と呼ばれる、ビットコイン(BTC)の消失事件でした。この消失事件で問題があったのは、ビットコイン(BTC)それ自体の仕組みではなく、事業者側の管理体制でした。

ですが、マウントゴックス事件により、日本では暗号資産に「危ないもの」「怪しいもの」というメージが先行して定着してしまったとも言えます。このような事件があったことなども、日本での暗号資産の普及率に影響しているかもしれません。

世界の暗号資産の普及状況はどうなっている?

世界の暗号資産の普及状況
それでは、世界では暗号資産はどれくらい普及しているのか見てみましょう。

ドイツのオンライン統計企業であるスタティスタの行った調査によると、欧米を中心とした15カ国で暗号資産の保有率が最も高いのは、トルコの18%であることが分かりました。

次いで、ルーマニア12%、ポーランド11%、スペイン10%、チェコ9%、アメリカ8%となっています。なお、この調査での有効回答数は14,828人で、各国約1,000人から回答を得たそうです。

詳しくはこちら:How Many Consumers Own Cryptocurrency?

トルコで暗号資産の普及率が高い理由とは?

トルコ
ほとんどの国で暗号資産の保有率は10%未満である中で、なぜトルコでは国民の約5人に1人が暗号資産を持っているのでしょうか。

その理由は、トルコの政情不安と金融危機があると考えられます。政情不安の原因は、大統領による独裁政権です。

トルコでは2013年には大規模な反政府デモが行なわれ、2016年にはクーデター未遂事件が発生しました。これらの事件によって、トルコ国民の政府に対する信用が下がったため、トルコリラ以外の通貨を保有する国民が増えたとの見方もあります。

このような政情不安は、トルコリラの価格にも影響が出ています。2007年から2018年までのトルコリラの暴落率は80%を超えています。

また、政策金利も高い水準となっており、トルコは政情的にも経済的にも不安定な状況が続いているといえるでしょう。

こうしたことから、法定通貨であるトルコリラよりも、暗号資産を保有した方が安全と考える人が、トルコには増えているのかもしれません。

教育水準が暗号資産の普及状況に影響する?

教育水準
暗号資産の普及率は低くても、日本は認知度の面では高いという調査結果もあります。

ドイツの市場調査会社であるダリアリサーチは、日本と韓国ではインターネットを利用できる人の60%以上から「暗号資産を知っている」との回答が得られたと発表しています。

なお、この調査はアメリカ・イギリス・ドイツ・ブラジル・日本・韓国・中国・インドの合計29,492人を対象に、2018年3月に行われました。

詳しくはこちら:HOW MANY PEOPLE ACTUALLY OWN CRYPTOCURRENCY?

暗号資産の認知度の高さは、必ずしも保有率の高さには結びついていませんが、ダリアリサーチの調査結果によると、教育水準が高い人ほど暗号資産の保有率が高いという示唆も出ているようです。

暗号資産の普及率を上げるための課題とは?

暗号資産
日本で暗号資産が普及するためには、どのような条件が必要なのでしょうか。

日本では暗号資産の認知度自体は高いことを考えると、暗号資産に対するイメージが改善されることに加えて、支払いや決済手段として暗号資産を利用できる場所が増えることによっても、暗号資産の普及率が高まる可能性はあるでしょう。

投資面だけではなく実用面での条件を整えることも大切で、このように暗号資産の実用性が高まるにつれて、より暗号資産が身近な存在になっていくと考えられます。

また、暗号資産の魅力の1つは、法定通貨よりも送金コストが低いことです。

ですが、暗号資産の代表格であるビットコイン(BTC)の場合は、2017年に多くの人が購入して価格が急激に高騰した際に送金手数料も高騰してしまい、必ずしも送金コストが低いとは言えない状況になってしまいました。

このように、ビットコイン(BTC)などの暗号資産には、スケーラビリティなどの様々な問題などが残されています。そのため、それらの問題を一つ一つ改善していくことなども、暗号資産の普及につながるでしょう。

暗号資産の技術であるブロックチェーンにも注目を

ブロックチェーン
暗号資産の普及状況は、日本よりも他国の方が進んでいる場合もあります。

暗号資産は日本では投資の側面が強調されていますが、世界では暗号資産の技術であるブロックチェーン技術も注目されており、ブロックチェーン技術を用いたサービスも次々と誕生しています。

そのため、これから暗号資産の利用を検討している方は、日本のみならず世界での普及状況や、暗号資産を支えるブロックチェーン技術などについても理解を深めておくと良いでしょう。