デジタルアートとは、「PCやタブレットなどのデジタルデバイスを使ってアート作品をつくること、またはそのようにしてつくられたアート作品」を指します。
NFT(Non-Fungible Token)の盛り上がりに連動するように、暗号資産の世界では今このデジタルアートが大きな注目を集めています。
そこで今回は、デジタルアートに興味をお持ちの方に向けて、
について解説していきます。
最後まで読めば、デジタルアートとは何か、その価値や魅力を理解することができるでしょう。
目次
デジタルアートとは

そもそも近年注目を集める「デジタルアート」とはどんなものでしょうか?
その定義や種類などを、あらためて理解しておきましょう。
「デジタルアート」を端的に説明すると、「PCやタブレットなどのデジタルデバイスを使ってアート作品をつくること、またはそのようにしてつくられたアート作品」を指します。
伝統的な絵画や彫刻などとは異なり、コンピューターやカメラなどの技術を利用して作り出される芸術作品を「メディアアート」と呼びますが、デジタルアートもその一種です。
デジタルアートには、すべての制作工程がコンピュータ上でゼロから作成されるものもあれば、写真など既存の素材を加工したものなどもあります。
また、イラストや絵画だけではなく、動画、ゲーム、音楽などのジャンルでも作品が展開されています。
「デジタルアート」と「NFTアートの違い」
デジタルアートの世界で近年注目を集めているのが「NFTアート」です。「NFT」とは「Non Fungible Token」の略語で、日本語にすると「代替不可トークン」や「非代替性トークン」を指します。
NFTは、主にイーサリアムのブロックチェーン上で発行される代替不可能なトークンです。その最大の特徴は、名前が示す通り「替えのきかない、唯一無二のものであること」でしょう。NFTの登場によって、デジタルアートに唯一性をもたせることができるようになりました。
デジタルアートの種類:イラスト・絵画・写真など

デジタルアートと呼ばれる作品は多種多様です。特に、CG(コンピュータグラフィックス)のようなコンピュータを使って作られたアート作品は、ほとんどがデジタルアートです。
主なデジタルアートには、以下のようなものがあります。
◎デジタルイラストレーション:デジタルツールで描かれたイラスト作品
◎デジタル絵画:水彩や油彩などの絵画の手法をコンピュータ上に応用して描かれた絵画

◎デジタル写真:フォトレタッチ:デジタルカメラで撮影された写真や、それをコンピュータ上で加工(フォトレタッチ)した作品
◎VFX(視覚効果):映像作品にCGなどを合成・加工する技術
◎ゲームデザイン:コンピュータゲームのデザイン
◎電子音楽:電子楽器を用いてつくられた音楽
◎プロジェクションマッピング:建物などの立体物にCGを投影する技術

◎アルゴリズムアート:コンピュータプログラムのアルゴリズムのみによって生成された作品

最近では、デジタルアート向けのソフトウエアやデジタルツールが手軽に入手できるようになり、「お絵かきソフト」などを使ってイラストを描くのを趣味にする人が増えています。
AIの登場したことによって、より容易にデジタルアートを作ることができるようになりました。
デジタル技術の発展に伴って、デジタルアートはますます多様化・一般化するでしょう。一方、AIのように、著作権等の問題が生じるケースもあり、よりリテラシーが求められると考えられます。
以下の記事では、コンピュータのアルゴリズムによって生成されたジェネラティブアートを主に扱うプラットフォーム「Art Blocks(アートブロックス)」について解説しています。気になる方は、ぜひ合わせてご覧ください。
なぜデジタルアートが注目されるのか?

デジタルアートとは何か、イメージがつかめたかと思います。
では、なぜいまデジタルアートが注目されるのでしょうか?その理由をいくつか掘り下げてみましょう。
NFTによってデジタルデータの“所有”が証明されるようになった
第一に、NFTの登場によってデジタルデータに唯一性が付加され、それを持っている人の「所有」が保証されるようになったことが大きいでしょう。
今までは、デジタルアートを公開すると、簡単に複製・拡散される恐れがありました。コピーとオリジナルの判別ができない場合が多く、曖昧だったのです。
しかし、「NFTアート」であれば、NFTの持つ「非代替性」によりオリジナル作品の証明ができるようになり、アート作品として所有する意味が生じました。
最近では、NFTアートを集めたオンラインミュージアムが誕生するなど、作品に接するチャンネルが増えています。
落札額75億円!高額取引されるNFTアート
.@beeple 's 'The First 5000 Days', the 1st purely digital NFT based artwork offered by a major auction house has sold for $69,346,250, positioning him among the top three most valuable living artists. Major Thanks to @beeple + @makersplaceco. More details to be released shortly
— Christie's (@ChristiesInc) March 11, 2021
NFTによってデジタルアートの価値が高まったことは前述した通りですが、下記の事例が2021年3月に話題を集めました。
Sotheby’s(サザビーズ)と並ぶ2大オークションハウスの一つであるChristie’s(クリスティーズ)で、アメリカ人アーティストBeeple(ビープル)のNFTアートのデジタルコラージュが出品され、約75億円(※1ドル108円にて算出)という高額で落札されたのです。
実際に落札されたのは、作品のJPGファイルです。これに所有を示すトークン=NFTが紐づいていることで、高額取引になったと考えられています。
最近では、デジタルアートを専門に扱うオンラインギャラリーなどが誕生し、WEB上でのアートの売買が盛り上がりを見せています。
村上隆など著名アーティストも参入
NFTアートをはじめとするデジタルアートが新しい展開を見せるにつれ、人気アーティストがこの分野に興味を示しはじめています。
2021年3月には、現代アーティストの村上隆がNFTマーケットプレイス「OpenSea」にはじめて制作したNFTアート作品を出品しました。
同月、タレントとしても活動するVRアーティスト・せきぐちあいみが「OpenSea」に出品した作品は、日本人アーティストとしてそれまでで最高額の約1,300万円で落札されています。
海外の著名アーティストも、新たにNFTアートに挑戦したり、既存の作品をNFTアートとして展開したりしていて、今後はデジタルアート全体の質向上にも期待が集まります。
デジタルアートの注目作品・注目アーティスト

このように、注目度の高まりをみせるデジタルアート界ですが、現状はどのようになっているのでしょうか?
注目作や話題作、人気のアーティストなどを紹介することで、デジタルアートの魅力に迫っていきましょう。
まず、デジタルアート最大の注目作といえば、やはり前述したアメリカ人アーティスト「Beeple(ビープル)」の「Everydays: The First 5,000 Days」でしょう。
約75億円で落札されたこの作品は、13年以上かけて1日1枚ずつ・計5,000枚の画像をコラージュしたものです。中には、トランプ大統領(第一次トランプ政権時)やコロナウィルスなど、世相を反映するモチーフもあり、作者独自の視点で切り取られた時代の移り変わりを目の当たりにできるのが見どころです。
高値がついた例としては、Hashmasks(ハッシュマスク)の作品も話題になりました。
Hashmasksは、世界中の約70人の参加するアートプロジェクトで、デジタルアート作品1万6,000点以上を発表し、すべて完売しています。中には、約6,900万円で売れた作品もありました。
現代アートの大スター、Damien Hirst(ダミアン・ハースト)などもデジタルアートに乗り出しています。
2021年2月には、日本の企業が運営するアート作品の共同保有・売買プラットフォーム「STRAYM(ストレイム)」にて「The Dead(Chocolate Oriental Gold Skull)」という作品を販売しました。
日本でもデジタルアートは盛んで、むしろ「日本人がデジタルアートで世界をリードしている」と言われるほどです。
なかでも、日本でのデジタルアートの先駆者であり、もっとも有名な存在といえば、プロジェクションマッピングで知られるデジタルコンテンツ制作集団・teamLab(チームラボ)でしょう。
東京・パレットタウンの「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless」の他に、シンガポール、ドバイ、マカオ、愛知、福岡にデジタルアートの常設展を持ち、人気を集めています。
Generativemasksは、2021年8月にクリエイティブコーダーの高尾俊介らが開始したジェネラティブアートのNFTプロジェクトです。
アルゴリズムによって、リロードするたびに配色の異なるマスクが自動的に生成される仕組みとなっています。
また、電子音楽作曲家で現代アーティストでもある池田亮司は、音とデジタルイメージ、パフォーマンスなどを融合させた独自のライブ、インスタレーションを世界中で展開しています。
世界的VRアーティストであるせきぐちあいみの「Alternate dimension 幻想絢爛」という作品は、1,300万円で落札され話題になりました。この他にも、VRアーティストとして多様な作品を生み出しています。
書道家の武田早雲が、書道作品をNFTアートとして販売しはじめました。最初の作品「SCAM退散」は、137万円で売れました。
2021年に入ってから、各界の有名アーティストたちがデジタルアート・NFTアートに参加したり、作品販売を始めたりする動きが目立ってきたようです。
この流れは今後ますます加速すると思われます。
資産としてのデジタルアート

NFTの登場でデジタルアートの価値が飛躍的に高まったことを踏まえて、デジタルアートの作品に資産や投資対象としての価値を見出す人たちが増えてきました。
そこでこの章では、資産としてのデジタルアートにフォーカスします。
デジタルアートを購入・所有するメリット
デジタルアートを資産として考えた場合、従来のアナログアートに比べて、主に以下のような点にメリットがあります。
オンライン上で売買ができる
デジタルアートはデータです。そのため、オークションハウスやギャラリーに出かけなくても、自宅で気軽に売買することができます。
NFTには取引履歴が残る
NFTは、デジタルアートを「一点もの」の芸術作品として保証するだけでなく、取引履歴を記録するという機能ももっています。
いつ誰が保有していたかが明確にわかるので、安心して取引できます。著名なギャラリーや投資家が所有していたことが分かれば、作品の価値と自分の目利きにも確信が持てるでしょう。
自慢のアート作品をWEB上で広く公開できる
コレクターの多くは「自分の愛蔵の品を人に見せて自慢したい」という気持ちを持つものです。ただ、今まではデジタルアートをWEB上に公開するとコピーされてしまい、多くの人に共有されてしまうリスクがありました。
しかし、NFTアートならオリジナルが識別できるため、全く同じものとはなりません。そのため、仮にオンラインギャラリーなどを通じて自慢の作品を世界中に公開しても、オリジナルの価値は失われないのです。
また、公開することで作品が知られて人気が高まれば、作品の価値がさらに高まるかもしれません。
デジタルアートを購入・所有する注意点
一方で、デジタルアートを売買するには、リスクやデメリットもあります。以下の点には注意してください。
売買できるプラットフォームは海外の運営が多い
現在、NFTアートを売買できるプラットフォームやマーケットプレイスは、その多くが海外企業の運営です。
そのためサイトは英語表記、取引も英語でしなければならない場合が多く、英語が得意でない人には難しいかもしれません。
詐欺や不正の恐れがある
デジタルアートはWEB上で売買されるため、その際に厳密な本人確認をするのが難しいのがデメリットです。
そのため、他の人の作品をコピーしたものを自分の作品だとして売ったり、別人に成りすまして取引したりするなどの詐欺が起こりやすいといえます。
また、NFTは誕生からまだ歴史が浅いので、法整備が十分ではありません。そのため、マネーロンダリングなどの不正に利用される恐れがあります。
売買の際には、こういった犯罪や不正に巻き込まれないようにくれぐれも注意が必要です。
デジタルアートを売買できるマーケットプレイス
では実際に、デジタルアートの売買はどこでできるのでしょうか?
現在利用できる主なプラットフォーム、マーケットプレイスをいくつか紹介しておきましょう。
Coincheck NFT

Coincheck NFTは国内初となる、暗号資産交換業者が運営するユーザー同士でNFTと暗号資産の交換取引ができるマーケットプレイスです。
Coincheckの口座をお持ちの方はどなたでも、NFTの出品・購入・保管が可能であり、出品・購入にかかるネットワーク手数料(Gas代)は無料です。
OpenSea
NFTマーケットとしては最大で、Beepleや村上隆、せきぐちあいみなども参加しています。
売買に参加する人が多く、比較的低価格で購入できる作品もあります。
Nifty Gateway
同じく大手のNFTマーケットプレイスであると同時に、アーティストや著名人とパートナーシップを結んで作品を送り出すプロデューサー的な役割をもっているプラットフォームです。
Beepleも出品していて、高価な作品だけでなく、1ドルから抽選に参加できる企画なども行っています。
SuperRare
2018年の立ち上げ以来、急速にアート作品の取引を延ばしているプラットフォームです。
取り扱う作品は厳正にキュレーションされ、審査に通過したアーティストの作品のみが販売される仕組みなので、作品の質を重視する人向けです。
デジタルアートの作り方
NFTアートを作成するには、基となるデジタルアートが必要です。しかし、多くの方は「自分でデジタルアートを作成できない」と考えている傾向があります。そのような背景から、市場のニーズに応えるようにデジタルアート製作を支援するサービスが充実してきました。未経験者の方でも指導やサポートが受けられる環境が、様々な企業から用意されています。
子どもでも作れる?デジタルアートの作り方
PCやスマホ、タブレットなどを用いれば、デジタルアートを簡単に作成できます。最近では、デジタルアート作成のための専用ソフトやお絵描きアプリが増えてきました。操作方法を覚えれば、子どもでも簡単にデジタルアートを製作できるかもしれません。
Zombie Zoo Keeper(ゾンビ・ズー・キーパー)など、若くしてNFTアートを手掛けるアーティストも存在します。
制作方法はデジタルアート教室でも学べる
何からデジタルアートを始めていいかわからない場合には、デジタルアート教室を受講することを視野に入れるといいでしょう。通信教育やオンライン教室が開催されているため、自宅の近くにデジタルアート教室が開催されていなくても大丈夫です。自身に合ったデジタルアート教室を受講してみてはいかがでしょうか。
デジタルアートのまとめ
あらためて、記事の要点をまとめてみましょう。
◎デジタルアートとは、「コンピュータなどのデジタルデバイスを使ってアート作品をつくること、またはそのようにしてつくられたアート作品」
◎デジタルアートの種類としては、
・デジタルイラストレーション
・デジタル絵画
・デジタル写真、フォトレタッチ
・VFX(視覚効果)
・ゲームデザイン
・電子音楽
・プロジェクションマッピング
・アルゴリズムアート など
◎「NFT」=「非代替性トークン」によってデジタルアートに一点ものとしての価値が生まれた
この記事で、あなたもデジタルアートの世界に一歩踏み出せるよう願っています!