NFTの今後や将来性は?活用例や注目されるマーケットプレイスを紹介

デジタル資産に唯一無二の価値を持たせられるNFTですが、2025年現在では投機的な目的ではなく、実用的な目的で利用されるようになりました。本記事ではNFT誕生からの歴史に触れつつ、NFTの今後や将来性について解説していきます。また、具体的な活用例やマーケットプレイスについても触れていきます。

NFTとは?特徴を紹介

NFTとは

NFT(Non-Fungible Token)とは代替不可能なトークンを指し、デジタルデータに唯一無二の価値を付与します。イーサリアム(ETH)やイーサリアム系のブロックチェーン上で構築され、コピーや改ざんができないことが特徴です。多くの分野での活用が期待されています。

NFTの歴史

NFTの歴史

NFTの歴史は、決して長くはありません。しかし、様々なコンテンツが生み出され、世界全体に大きな影響を与えています。プログラマーや開発者がNFTを用いて夢を形にしようとした道のりは、決して楽なものではありませんでした。

NFTの誕生:2014年~

NFTの誕生は、2014年ごろといわれています。デジタルアーティストのKevin McCoy(ケビン・マッコイ)と、技術起業家のAnil Dash(アニル・ダッシュ)がチームを組み、プログラマーや開発者が集い、短時間でアプリなどを開発するイベントであるハッカソンを行ったことがきっかけです。

独学でコーティングを学んでいたMcCoyは、デジタルアート「Quantum」をブロックチェーンに登録する方法を見つけます。McCoyとDashは「monetized graphics(収益化されたグラフィックス)」という名前を付け、デジタルアート作品に対してのシステムを共同開発しました。

しかし、一部の有識者や技術者の間でしか知られていない技術になったため、広く普及しませんでした。

NFTの転換期:2017年~

2017年、NFTアートが世間からの注目を集め、NFTは転換期を迎えます。代表的な事例としては、Matt Hall(マット・ホール)とJohn Watkinson(ジョン・ワトキンソン)が作成した、「CryptoPunks(クリプトパンクス)」が挙げられるでしょう。CryptoPunksは、容姿がパンクなドットタイプのキャラクターを販売するプラットフォームです。

CryptoPunksはWebメディア「Mashable(マッシャブル)」が取り上げ、爆発的なブームとなります。2021年5月に開催されたオークションでは約16億5,000円で取引され、NFTが多くの人に認知されるきっかけを作り出しました。

NFTの普及・拡大:2018年~

2018年にはNFTアートを販売するプラットフォーム「SuperRare(スーパーレア)」が、John Crain(ジョン・クレーン)によって開発されます。SuperRareは手数料を大幅に安くするだけではなく、アーティストに10%のロイヤリティを付与する仕組みを作り出したことでも有名です。さらに、さまざまなアーティストが信じられない金額でNFTアート販売を行い、世間を騒がせました。

2021年になると、NFTの注目度が急激に拡大します。世界二大オークションハウスといわれている「Christie’s(クリスティーズ)」と、「Sotheby’s(サザビーズ)」がNFTアートの販売を開始したためです。

アメリカのデジタルアーティストBeeple(ビープル)がChristie’sに出品したNFTアート「Everydays - the First 5000 Days」が約75億円で落札され、大きな注目を集めました。

NFTの下落:2023年~

バブル的な盛り上がりを見せたNFTは、2023年にかけて急激に価値を落としていきます。暗号資産(仮想通貨)の暴落や、暗号資産取引所FTXの破綻などが影響しているともいわれています。「NFTバブルは弾けた」「NFTブームが終わった」と報じるメディアもいるほどでした。

NFTバブルの崩壊により、人気であった「Bored Ape Yacht Club」(BAYC)も、2021年のピーク時と比較すると価値が90%も下落します。くわえて、NFTプロジェクトの消滅も加速的に進みました。

NFTの現在

NFTの歴史

NFTはデジタル資産に唯一無二の価値を付与できるメリットがありますが、NFT市場としては伸び悩んでいる状態です。それでも、NFTの持つ「唯一性」や「プログラマビリティ」などが社会の需要と合致し、政府や企業も積極的にNFTを活用する動きを見せてきています。

国内NFTはどの程度普及しているのか?

国内のNFTの普及率は、決して高くない状態だといえるでしょう。消費者庁の報告によれば、20〜30代を中心にNFTは認知されるようになりましたが、NFTを所持している割合はごく一部です。「価値のあるNFTが分からない」「損しそう」と考える人が多く、リスク回避を理由としてNFTを活用しないようです。

国内NFTの動向

国内では、個人アーティストが地域活性化を目的として自治体とコラボするケースや、アイドルや漫画などでNFTが活用されています。2025年には大阪・関西万博で、NFTを活用した新たなサービスを展開しています。手に入れたNFTは第三者への譲渡や換金ができない仕様ですが、安全にNFTを認知できるイベントとなりました。

NFTの成功事例

デジタルアートのひとつである「NFTアート」が高い価値を持つことを証明した事例は、デジタルアーティストBeepleが制作した「Everydays: The First 5000 Days」が挙げられます。NFTとしてオークションで販売され、約6,900万ドルで落札されました。

また、CryptoPunksや Bored Ape Yacht ClubのようなNFTプロジェクトも、成功事例として挙げられます。ファンを惹きつける独自のキャラクターやアートを用いたコレクションで、多くの投資家やコレクターから人気です。

NFTのリスクは?法的課題や問題点

NFTのリスク

NFT市場の成長とともに、リスクや法的な課題も明確になってきました。市場のボラティリティ(価格変動)や著作権の問題、税制や規制の不備など、今後の発展に向けての課題が多くあります。

NFTの価格変動が激しい

NFT市場は価格のボラティリティが激しいため、価値の下落リスクを十分に理解したうえで購入する必要があるでしょう。人気のあるNFTプロジェクトであったとしても、些細な理由をきっかけに暴落する可能性も十分にあり得ます。

著作権・知的財産権を侵害する可能性がある

NFTの強みは、デジタル資産の所有権を明確にすることです。しかし、アニメのキャラクターや商品の画像を無断でNFT化し、販売するケースも多数報告されています。訴訟問題まで発展している事例もあります。ユーザーは、意図せずに法律違反を起こさないように気をつける必要があるでしょう。

NFTの所有が知的財産権の所有とならない場合がある

「NFTの所有」が「知的財産権の所有」とならない場合があります。知的財産権には著作権や著作者人格権が含まれるため、NFTの内容を変更したり、不特定多数の人に見られるように公開したりすることはできません。たとえば、購入したNFTをSNSのアイコンにする行為は、著作権に抵触する可能性があります。

詐欺や偽物の可能性がある

NFT市場は、入札詐欺やフィッシング詐欺などが少なからず発生しています。NFT を購入する前に「Coincheck NFT」や「OpenSea」などの公式取引プラットフォームで販売価格を確認してください。価格が相場よりもかけ離れている場合には、取引中止を検討しましょう。

また、データの改ざんが極めて困難であるNFTですが、データ自体がコピーや偽物であるケースも報告されています。実際のマーケットにも、権利者の許諾を得ていない非正規品が多く流通しているのが現実です。NFTは、「正規品であるかどうか」を保証するものではないため、購入時には注意が必要です。

NFTの今後・将来性

NFTの今後・将来性

NFTはクリエイターやアーティストに新たな機会を提供するだけではなく、業務の効率化を目指す企業でも活用されるようになりました。今後、投機的な目的だけではなく、実用目的でNFT市場が盛り上がっていく可能性は十分にあるでしょう。

NFT市場の急速な拡大

2025年のNFT販売額はゆるやかな下落傾向を示していますが、NFTの販売件数は回復の兆しを見せています。今までの投機ブームを脱し、健全で実用性の高いプロジェクトに注目が集まっているといえるかもしれません。

今後、NFT市場は様々な分野で活用されていくと予想されているようです。たとえば、MarketsandMarkets社は、2025年時点での市場規模を約280億ドルと予測し、2030年までには約970億ドルに達すると予想しています。

法整備が進む

国内のNFT関連の法整備が進むことにも期待が持てます。2022年にデジタル庁が報告した資料には、「ブロックチェーン技術を基盤とするNFTやDAOの利用等のWeb3.0の推進に向けた環境整備の検討を進める」と謳われています。政府からもブロックチェーン技術に強い期待が寄せられているため、法整備が進む可能性が高いといえるでしょう。

新たなビジネス展開

厚生労働省が公表しているデータからも読み取れるように、国内の少子高齢化の波は簡単に止められず、労働人口は減る一方です。企業が今まで以上に利益を追求するには、業務の高効率化が求められるでしょう。今後、現場で起きている問題を、NFTが解決する可能性は十分に考えられます。

NFTで今後も期待される分野・市場

NFTで今後も期待される分野・市場

NFTを活用した業界が登場して、様々なビジネスモデルが確立しつつあります。唯一無二の価値を持ったデジタル資産は、今後も大きな活躍をしていくでしょう。

デジタルアート

デジタルアートは「デジタルデバイス(PC、タブレットなど)を使って作られたアート」です。デジタルアートをNFT化すればコピーや改ざんができず、唯一無二の価値を持たせられます。

NFTアートのメリットは、ユーザーの所有欲を満たすだけではありません。誰でも簡単にデジタルアートを出品できる可能性があります。新たなマネタイズ方法が生み出されるため、クリエイターにとって強い追い風になるかもしれません。

ゲーム・トレカ

ゲームやトレカなどのネットゲームはNFTとの相性がよく、国内外問わず多く利用されている分野です。NFTゲームの特徴は、取得したキャラクター・アイテム(NFT)をゲーム外で活用できる点です。NFTゲーム・トレカをきっかけに新たなビジネス展開も期待できます。

ファッション

NFTファッションとは、「デジタルファッション」をNFT化したものです。メタバース(仮想空間)・ゲーム・SNSなどでアバターやキャラクターにNFTファッションを着用させたり、NFTファッション自体をコレクションしたりして楽しみます。LOUIS VUITTON、GUCCIなどのハイブランドもNFTファッションに参入して、コレクションを展開し始めています。

音楽・ミュージック

NFT音楽・ミュージックとは、楽曲やライブの映像などのデジタル音楽をNFT化したものです。アーティストやクリエイターは自分の作品を限定品として販売したり、所有者へロイヤリティを還元したりできます。

また、NFTには2次流通時の手数料や取引数量の制限を設定できる「プログラマビリティ」により、アーティストは新しい収益モデルを構築できます。

NFTで今後注目されるマーケットプレイス

今までは海外のマーケットプレイスからしか購入できなかったNFTですが、国内でもNFTを取り扱うマーケットプレイスが充実してきました。自分の目的に合ったマーケットプレイスを選んでみましょう。

マーケットプレイス名 特徴
Coincheck NFT 国内初のマーケットプレイスで、出品、購入にかかる手数料が無料
Opensea(オープンシー) 世界最大級の規模をもつマーケットプレイスで日本語にも対応している
Nifty Gateway(ニフティ ゲートウェイ) NFTの出品には審査制を採用し、品質や安全性が担保されている
Blur(ブラー) 外部マーケットプレイスを横断して取引が行える「アグリゲーター機能」が魅力
メルカリNFT メルカリの既存アカウントを利用できるため、ウォレットなどの新規登録の必要ない
SBINFT Market NFT発行には審査が必要なため、品質と安全性が保証された取引ができる
楽天NFT 既存の楽天IDを引き継いで利用できる。NFT購入時に楽天ポイントが貯まる

Coincheck NFT

「Coincheck NFT」は、国内初となる暗号資産交換業者が運営する「ユーザー同士でNFTと暗号資産の交換取引」ができる、オフチェーンのマーケットプレイスです。Coincheck NFTは、スケーラビリティ(拡張性)問題から発生する手数料(Gas代)などの問題を解決しました。

出品・購入にかかるネットワーク手数料(Gas代)は無料です。Coincheckの口座をお持ちの方はどなたでも、NFTの出品・購入・保管ができます。

Opensea(オープンシー)

OpenSea(オープンシー)は、アメリカを拠点にサービスを展開している、世界有数のNFTマーケットプレイスです(2023年7月時点)。暗号資産(仮想通貨)とウォレットを用意できれば、日本からでも利用できます。日本語にも対応しているため、英語が不得意な方でも安心して利用できる点がおすすめです。

Nifty Gateway(ニフティ ゲートウェイ)

Nifty Gatewayは、2018年11月にリリースされたNFTマーケットプレイスです。Nifty Gatewayの特徴は、審査制のNFTマーケットプレイスを採用している点です。出品時には審査が必要なため、品質や安全性が担保されたNFTを購入できるメリットがあります。

Blur(ブラー)

Blur(ブラー)は、アメリカのサンフランシスコを拠点にサービスを展開するNFTマーケットプレイスです。OpenSeaやX2Y2など外部マーケットプレイスを横断して取引が行える、「アグリゲーター機能」が特徴です。また、手数料が無料であることも魅力のひとつといえます。

メルカリNFT

「メルカリNFT」は、2025年1月28日にメルカリがサービスを始めたNFTマーケットプレイスです。メルカリNFTでは、既にメルカリに登録しているアカウントを利用できるため、ウォレットなどの新規登録の必要はありません。

メルペイ残高やメルカードなど、今まで利用していた決済方法も使えるため、メルカリユーザーにとって扱いやすいプラットフォームになるでしょう。

SBINFT Market

「SBINFT Market」とは、SBIホールディングス傘下のSBIグループが展開しているNFTマーケットプレイスです。前身となるnanakusaがリブランディングされ、2022年3月にリリースされました。

NFT発行には厳正な審査が必要で、公認アーティスト・パートナーしか出品できません。利用者は一定の品質と安全性が保証された作品のみ取引できます。

楽天NFT

「楽天NFT」は楽天グループが運営するNFTマーケットプレイスです。既存の楽天IDを引き継いで利用できるため、楽天ユーザーであれば簡単にNFTの取引ができます。

楽天の他のサービスと同様に、NFT購入時にも楽天ポイントが貯まるのもメリットです。販売コンテンツは、アニメ・スポーツ・音楽だけではなく、各自治体のNFTまで個人間で売買できます。

 

著者松岡響

  

製造業に20年携わり、品質管理、開発、生産技術を経験。技術全般に関心があり、ブロックチェーン、Tech、製造業などの記事を担当しています。2021年から仮想通貨投資を始め、市場の動向を確認しつつ、関連知識を深めています。