ETF(上場投資信託)は、投資信託のしくみを持ちながら、株式と同じように証券取引所で売買できる金融商品です。その中でも「現物ETF」は、実際の株式や金、暗号資産などの“現物”を保有して運用します。仕組みがシンプルで価格の透明性が高いことから、近年あらためて注目されています。
この記事では、ETFの基本や「現物型」と「先物型」の違い、金や株式、暗号資産などの代表例、投資時に押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
暗号資産の現物ETFの具体動向は ビットコインETFとは 記事にまとめています。
目次
ETF(上場投資信託)とは?
ETF(Exchange Traded Fund/上場投資信託)は、株式や債券、不動産、金(ゴールド)など、複数の資産をひとつにまとめて運用する投資信託を、株式市場で取引できるようにしたものです。通常の投資信託と違い、市場の値動きに合わせてリアルタイムに売買できます。
ETFの基本的な仕組み
ETFの多くは、日経平均株価やS&P500、金価格など、特定の指数(インデックス)に連動するよう設計されています。ひとつの商品を購入するだけで、複数の銘柄や資産に分散して投資でき、手軽に市場全体の値動きを捉えられるのが特徴です。
ETFの市場価格は、運用会社や金融機関が行う調整によって、原資産の値動きと大きく離れないように保たれています。こうした仕組みによって、ETFは「投資信託の分散性」と「株式の取引しやすさ」を兼ね備えた金融商品として広く利用されています。
ETFには3つのタイプがある
ETFは、どのような方法で価格を連動させるかによって大きく3つのタイプに分けられます。実際の資産を保有して運用する「現物型」、先物取引を通じて価格を反映させる「先物型」、そしてスワップ取引などの金融契約で指数に連動させる「シンセティック型(スワップ型)」です。
ETFの種類によって、価格の連動性やコスト、リスクの性質が異なります。次の章では、この中でも注目を集めている「現物ETF」について詳しく見ていきましょう。
現物ETFとは?
現物ETFは、実際の資産を保有して運用するタイプのETFです。株式や債券、金(ゴールド)などの従来の資産に加えて、近年は暗号資産も対象になっています。
運用会社が対象の資産を実際に保有し、その値動きがETF価格に反映されるため、仕組みがシンプルで価格の透明性が高いのが特徴です。投資家はETFを通じて、現物の暗号資産を直接保有しなくても、その価格変動に連動した投資が可能になります。たとえばビットコイン現物ETFであれば、ウォレットの管理やセキュリティ対策を自分で行う必要がなく、証券口座を通じて簡単に取引できます。
先物ETFとの違い
現物ETFと先物ETFの違いは、どのように資産の値動きを再現するかという点にあります。
次の項で、その仕組みと投資スタイルの違いを見ていきましょう。
価格連動の仕組みが違う
現物ETFは、運用会社が実際に資産を保有しているため、ETFの価格は保有している現物の価格にほぼ連動します。
一方、先物ETFは、将来の価格をあらかじめ決める「先物取引」を使って運用します。実際の資産を持たず、先物契約の価格を通じて値動きを再現するため、現物価格との間に差(乖離)が生じることがあるのが特徴です。さらに、先物契約を定期的に入れ替えるときにはコスト(ロールオーバーコスト)がかかり、長期保有では現物価格との差が広がることもあります。
長期投資・短期投資での向き不向きが違う
現物ETFは、資産を実際に保有しているため、価格の安定性が高く、長期的な資産形成に向いているタイプです。売買コストや維持コストが比較的低く、長い期間保有することで、資産の値上がりや配当などを狙うことができます。
一方、先物ETFは、先物取引を利用しているため、短期的な値動きを捉えたいときに向いています。
相場の変動に合わせて柔軟にポジションを取れるのが利点です。ただし、長期で保有すると、ロールオーバー(契約更新)によるコストや価格乖離の影響を受けやすくなります。
そのため、長期でじっくり積み立てたい人には現物ETFが、短期間で値動きを狙いたい人には先物ETFが適しているといえるでしょう。
現物ETFの代表的な種類
現物ETFには、対象となる資産の違いによっていくつかのタイプがあります。
代表的なものとして、株式や債券を対象としたETF、金(ゴールド)などのコモディティETF、そして近年注目を集めている暗号資産の現物ETFが挙げられます。
株式や債券のETF
もっとも一般的なのが、株式や債券を対象としたETFです。株式ETFでは、日経平均株価やS&P500などの株価指数に連動するよう設計されており、少額から幅広い銘柄に分散投資できます。債券ETFは、国債や社債を中心に構成されており、株式より値動きが穏やかで安定した運用をしたい人に選ばれています。
金(ゴールド)ETF
金ETFは、実際の金(ゴールド)を裏付け資産として保有するタイプのETFです。金価格に連動するように設計されており、金を現物で購入・保管する必要がないため、資産の一部を安全資産として保有したい投資家に人気があります。価格が株式市場の動きと連動しにくい傾向があるため、リスク分散の手段としても利用されています。
暗号資産の現物ETF
暗号資産の現物ETFは、運用会社が実際に暗号資産を保有し、その価格変動をETFに反映させるタイプのETFです。投資家はウォレットを管理したり、セキュリティ対策を行ったりする必要がなく、証券口座を通じて手軽に暗号資産へ投資できます。
なお、米国や香港ではすでにビットコイン現物ETFが上場しており、世界的に導入が進んでいます。
詳しくは ビットコインETFとは 記事で解説しています。
現物ETFのメリット
現物ETFには、実際の資産を保有するからこそ得られる強みがあります。
ここでは代表的なメリットを見ていきましょう。
実際の資産を保有しているため、価格の透明性が高い
現物ETFは、運用会社が実際に資産を保有しているため、ETFの価格が現物の値動きに素直に反映されるのが特徴です。
たとえば、ビットコイン現物ETFなら、運用会社が保有するビットコインの価格が上がればETFの価格も上がり、下がれば下がるというシンプルな関係になります。先物ETFのように将来の価格をもとに取引するわけではないため、複雑なズレやコストが生じにくく、価格の動きがわかりやすいのがメリットです。
分散投資がしやすく、保管の手間がかからない
ETFはひとつの商品で複数の資産に投資できるため、リスクを分散しながら幅広い市場に投資できるのが特徴です。現物ETFを活用すれば、株式や金(ゴールド)、暗号資産など、性質の異なる資産を組み合わせて運用することができます。価格が連動しにくい資産を組み合わせることで、相場が下がったときのリスクを抑えられる点もメリットです。
さらに、現物ETFは運用会社や保管機関(カストディ)が資産を安全に管理しているため、投資家自身が資産を保管する必要がありません。暗号資産の現物ETFであれば、ウォレットの管理やセキュリティ対策を自分で行わずに投資できるため、初心者でも安心して取り組めます。
上場しているため、いつでも市場で売買できる
現物ETFは証券取引所に上場しており、株式と同じように市場の営業時間内でリアルタイムに売買できます。価格を確認しながら取引できるため、相場の動きを見てタイミングを判断したい人にも使いやすい投資商品といえます。
一方で、通常の投資信託は1日1回の基準価額でしか取引できませんが、ETFなら、値動きに応じて自由に売買できるため、短期での売買にも長期での資産形成にも柔軟に対応できます。
また、暗号資産を直接売買する場合と違い、ETFなら証券口座を通じて取引できるため、税務処理や管理の手間も少なく、よりシンプルに運用できます。
現物ETFのリスク
現物ETFは、価格の透明性や管理の手軽さといった利点がある一方で、いくつかのリスクも理解しておく必要があります。ここでは、代表的な3つのリスクを紹介します。
市場価格と基準価額(NAV)に差が生じることがある
ETFは市場で売買されるため、実際の取引価格がETFが保有する資産の価値(基準価額)とズレることがあります。このズレを「価格乖離(かかくかいり)」といい、取引量の少なさや投資家の需要・供給のバランスによって起こります。
たとえば、買いたい人が多いと一時的に価格が上がり、保有資産の価値より高くなることもあります。逆に、売りが多いと安く取引される場合もあります。こうした差を小さく抑えるには、取引量が多く流動性の高いETFを選ぶことがポイントです。
管理コストが発生することがある
ETFの運用には、信託報酬や保管費用などの管理コストがかかります。これらの費用はETFの資産から自動的に差し引かれるため、長期で保有するほど運用成績に影響する可能性があります。
また、暗号資産の現物ETFでは、保管機関(カストディ)が資産を安全に管理するためのセキュリティ費用が上乗せされる場合もあります。そのため、投資前に経費率(エクスペンスレシオ)や信託報酬の水準を確認しておくことが大切です。
取引が成立しにくくなることがある
ETFは市場で売買されますが、必ずしもいつでも希望の価格で取引できるとは限りません。取引量が少ないETFでは、売りたい人と買いたい人のバランスが崩れ、スプレッド(売値と買値の差)が広がることがあります。
このような状態になると、思った価格で注文が成立しにくくなり、結果的に取引コストが増えることがあります。とくに市場が急変したときは、一時的に流動性が下がる傾向があるため、安定して取引できるETFを選ぶことがリスクを抑えるポイントです。
現物ETF投資でチェックしたいポイント
現物ETFを選ぶときは、銘柄ごとの仕組みやコスト、取引環境などを確認しておくことが大切です。
ここでは、投資判断に役立つ主なチェック項目をまとめます。
コストと運用効率を確認する
ETFの運用には、信託報酬や管理費用などのコストがかかります。これらを合計した「総経費率」が低いほど、長期で見た運用効率は高くなります。また、ETFが連動を目指す指数とのズレ(トラッキング差)もチェックしておきましょう。想定するインデックスの動きと実際の値動きがどの程度一致しているかで、運用の精度を判断できます。
規模と取引環境をチェックする
ETFの安定性を測る目安となるのが、純資産残高と取引量です。残高が大きいETFほど信頼性が高く、出来高が多いETFほど価格のブレが少なくなります。反対に、取引量が少ないETFでは売買の成立に時間がかかったり、スプレッド(売値と買値の差)が広がったりすることがあります。十分な流動性があるかどうかを確認することで、取引のしやすさを判断できます。
保管体制やリスク管理を確認する
現物ETFでは、実際に保有している資産をどのように管理しているかも重要です。金や暗号資産を対象とするETFの場合、保管機関(カストディ)や監査体制の信頼性を確認しておきましょう。また、海外市場で上場しているETFでは、取引通貨の違いから為替リスクが生じることがあります。カストディの保険契約や監査報告の有無なども、安心して投資するためのチェックポイントです。
「現物ETF」よくある質問(FAQ)
現物ETFは投資信託や株式と似た仕組みを持っていますが、細かな違いが多くあります。
ここでは、投資を始める前に知っておきたい代表的な質問をまとめました。
ETFと投資信託はどう違う?
どちらも複数の資産をまとめて運用する点は共通していますが、取引方法と価格の決まり方に違いがあります。ETFは株式と同じように市場でリアルタイムに売買でき、価格は需給によって常に変動します。一方、投資信託は1日1回算出される基準価額で取引する仕組みです。タイミングを見ながら取引したい人はETF、じっくり積み立てたい人は投資信託が向いているといえるでしょう。
NAV、iNAVとは?
NAV(基準価額)は、ETFが保有している資産の合計から計算される「本来の価値」を表します。たとえば、ETFの“中身”をすべて足し合わせて割ったときの値がNAVです。一方、iNAV(インディケーティブNAV)は、取引時間中にリアルタイムで更新される目安の価格です。ETFは市場で売買されるため、実際の取引価格とNAVがズレることがあります。そのズレを確認するときに、iNAVを参考にすると「いまの取引価格が高いか安いか」を判断しやすくなります。
金のETFと実物の金を買うのはどちらが得?
どちらが得かは、「目的」と「保有期間」によって異なります。短期的な値動きで利益を狙うなら、手軽に売買できる金ETFのほうが有利です。証券口座から取引でき、保管や保険の手間もかかりません。一方、長期的に資産として保有したい場合や「現物を持つ安心感」を重視するなら、実物の金のほうが向いています。ただし、実物の金は保管コストがかかるほか、売却時に手数料が発生することがあります。つまり、短期の運用なら金ETF、長期の保有や相続を意識するなら実物の金が選びやすいと言えます。
暗号資産の現物ETFは日本で買える?
2025年時点では、暗号資産の現物ETFは日本国内ではまだ上場していません。ただし、米国では2024年にビットコイン現物ETFが承認・上場し、同年7月にはイーサリアム現物ETFの取引も始まりました。香港でもBTC・ETHの現物ETFが上場するなど、世界的に導入が広がっています。
今後、日本でも制度やルールが整えば、暗号資産の現物ETFが上場する可能性がありますが、現時点では、海外市場で取引できるETFを通じて間接的に投資する方法が中心です。
以下の記事でビットコインETFについて解説しています。ビットコインETFとは 記事にまとめています。
「現物ETF」まとめ
現物ETFは、実際の資産を保有して運用することで、価格の動きがわかりやすく、透明性の高い投資商品です。仕組みがシンプルなため、ETFのなかでも初心者が理解しやすいタイプといえます。
ただし、価格の乖離や管理コストなど、注意すべきポイントもあります。どんなETFを選ぶかは、投資の目的や保有期間に合わせて考えることが大切です。暗号資産の現物ETFは、海外ではすでに広がりを見せており、日本でも今後の展開が注目されています。まずはETFの仕組みを知ることから始めてみましょう。
まずは、ETFの仕組みを理解しながら、自分に合った投資のスタイルを見つけていくことが第一歩です。暗号資産への投資を検討する際は、信頼できる国内の取引所で口座を開設しておくと安心です。