暗号資産(仮想通貨)元年といわれた2017年は、暗号資産で巨額の財産を築いた「億り人(おくりびと)」と呼ばれる人たちが誕生しました。
億り人がきっかけで、暗号資産を初めて知ったという人もいるかもしれません。しかし、一時期200万円以上にまで高騰したビットコイン(BTC)の価格は2018年に入って急落しました。
その後、2019年に入って再びビットコイン価格は100万円にまで回復しましたが、ビットコイン億り人と呼ばれた人たちは今どうしているのでしょうか。
この記事では、億り人の現状と、注意すべき暗号資産の税金事情などについて解説していきます。
目次
億り人とは?
はじめに「億り人」とは何かを理解しておきましょう。合わせて、日本に億り人と呼ばれる人たちがどれくらいいるのか、気になる人数もみていきます。
億り人の意味
文字からも想像できるように「億り人」とは、株式投資やFXなどの分野で生まれた言葉で、投資や投機によって資産が1億円を超えた人のことをいいます。
2017年は暗号資産が値上がりしたため、資産が1億円を超えた暗号資産保有者が続出しました。こうした経緯があって、「億り人」は暗号資産業界でも使われるようになりました。
億り人の人数
2017年に日本で1億円以上の資産を築いた人は、一体どれくらいいたのでしょうか。
一般社団法人日本暗号資産等取引業協会の発表した資料では、1億円以上の資産があるウォレットは日本国内の取引所に268口座あるとされています(こちらの口座には一部の暗号資産交換業者の口座は含まれておりません)。
また、2017年の確定申告の総括が2018年5月に国税庁から公表されました。こちらのデータによると、雑所得の収入が1億円超あったとした納税者のうち、暗号資産の売買で収入を得ていた人が少なくとも331人に上るとされています。
ただし、暗号資産の取引をしている人の中には、自分のウォレットで資産を管理している人や、複数の口座に資産を分散している人も相当数いると考えられます。そのため、実際には協会や国税庁の把握している数よりも多くの億り人がいる可能性はあります。
暗号資産の億り人はどうして成功することができたのか?
億り人は、なぜ1億円以上の資産を築くことができたのでしょうか。億り人が生まれた背景を考えてみましょう。
ビットコインの高騰
暗号資産の中で最も有名なのはビットコインです。
ビットコイン以外のコインをアルトコインと呼ぶことで、暗号資産の勢力図は大まかにいうとビットコインとアルトコインに分けられることになりました。2017年以前の暗号資産業界では、ビットコインへの投資で資産を築いた人が多くいました。
コインの価格は需要と供給のバランスによって決まります。暗号資産の中でビットコインが他のコインよりも一足早く価格が高騰したのは、ビットコインが有名になって需要が高まったことが理由の1つです。
早い時期に世の中に出るというのは、知名度の面ではアドバンテージになるといえるかもしれません。その結果、使用が開始された2009年に1BTCあたり0.07円程度だったビットコインは、2013年には13万円程度にまで上昇しました。
4年程度のうちの価格上昇率は実に100万倍以上です。また、2017年12月には過去最高額の240万円以上にまで価格が上昇しました。
このビットコイン価格高騰の波に乗って、国内外で多くの人々が億万長者となりました。
アルトコインなどの高騰
ビットコインの価格が上昇するのに伴い、徐々にアルトコインも注目を集めるようになります。
たとえば、日本発の暗号資産であるモナコインは、2017年10月にそれまでの1MONAあたり50円台から900円近くまで高騰しました。また、同年12月、初期の頃は0.7円程度だったリップルは300円近くまで高騰しています。
モナコインは2017年の初め頃には3円程度で流通していた通貨ですので、初期の頃にモナコインを購入し、高騰時に売却できていれば、たった数カ月で「億り人」になれていたということになります。
一方、2017年の年始に1BTCあたり約12万円だったビットコインも、同年年末には150万円以上にまで上昇しました。ビットコインも10倍以上に成長しているものの、アルトコインの成長率に比べると、その成長の度合いは見劣りすると感じるでしょう。
このように個々のコインの高騰率を見てみると、暗号資産元年と呼ばれた2017年は、主にアルトコインに投資していた人が資産を大きく増やすことのできた年であったことが分かります。
暗号資産の億り人(おくりびと)の現在とは?
2017年に資産を大きく増やすことのできた暗号資産の「億り人」たちは、現在どうしているのでしょうか。
2018年以降、暗号資産の市場は下落しました。うまく下落前に利益確定させ、その資金を元手にさらに資産を増やしているのでしょうか。
2018年の暗号資産の暴落
2017年は記録的な高騰を遂げた暗号資産ですが、2018年に入ると状況は一転します。
ビットコインを含む多く通貨で価格の大きな値下がりを経験しました。暗号資産の価格下落に伴って、資産状況が悪化した億り人も少なくなかったことでしょう。
利益を確定できなかった人は損している
一時億り人になった人の中には、この暴落までに利益確定できず、損を出している人もいると考えられています。相場が下落した分、資産も目減りしてしまい億り人ではなくなった人も、相当数いるでしょう。
暗号資産で多額の利益を出した時に忘れてはいけない納税資金
暗号資産で利益を出したときに考える必要があるのは、納税資金のことです。暗号資産の場合は、暗号資産同士の交換も課税の対象となるため注意が必要です。
億り人になった人の中には、税金が払えなくなってしまう人も出ていたそうです。たとえば、暗号資産の価格が高騰しているときに利益を確定し、1億円の資産を持つことになった人のことを考えてみましょう。
その時点で他の通貨を購入し、その状態で価格の90%以上の値下がりが起こったとします。このようなケースではその暗号資産を売却しても十分な利益を上げられないため、税金を支払えないこともあり得るのです。
暗号資産は暗号資産同士なら損益通算が可能です。そのため、暗号資産同士を交換しても、通常の値動きの範囲であれば十分にその影響を吸収できます。
しかし、2018年の下落幅は想像以上のものであったため、税金だけ支払うことになってしまった人も出てしまったようです。このことから、暗号資産の交換も課税対象となるのは大きなリスクになることが分かったのです。
暗号資産における税金事情とは?
これから暗号資産の取引を始めようと考えている人は、どのように課税されるのかを正しく理解することが大切です。
暗号資産の税金の仕組み
暗号資産の税制の仕組みを理解する前に、自分に納税の義務があるのかを確認しましょう。
大前提として、暗号資産は基本的に個人で持っているだけでは課税対象となりません。円やドルなどの法定通貨や、他の暗号資産、または買い物などで暗号資産で支払ったときに所得としてみなされることになっています。
会社などに勤めている人は、暗号資産で年間に20万円以上の利益を出すことができたとき、学生や主婦などで扶養されている人は年間33万円以上の利益が出た場合には、原則確定申告と納税の義務が発生します。
暗号資産の税金は累進課税
日本の税制では、暗号資産は「雑所得」に分類されるため、他の所得との合算した金額に対して課税されることになります。
他の所得との合算に対してかかる税を「総合課税」といいます。株やFXは分離課税のため、どんなに利益を出しても税率は20.315%(所得税15.315%+住民税5% ※所得税に復興特別税を含む)です。
一方、総合課税では累進課税制度が適用されており、所得が増えるほど段階的に税率が上がる仕組みとなっています。国税庁の公式サイトによると、所得が195〜330万円以下の所得税の税率は10%となっていますが、4000万円を超えると45%の税率が適用されます。
実際に負担する税率は、税率に一律10%の住民税が加わった額になりますので、暗号資産で4000万円以上の利益を出した人は利益の55%を税金として納めなければなりません。
※税金等の詳細につきましては管轄の税務署や税理士等にお訊ねいただくか、または国税庁タックスアンサーをご参照ください。
暗号資産で買い物をしても課税対象になる
暗号資産が知られるようになるつれて、ビットコインで買い物できるお店も増えました。ただし、暗号資産では、通貨の売買だけでなく暗号資産で買い物をしたときも課税対象となるので注意が必要です。
たとえば、1BTC=10万円のときに1BTC購入し、その後値上がりして1BTC=30万円のときに30万円分の家電製品を購入したとします。所得の計算は、家電製品の購入金額30万円ービットコインの取得価格10万円となり、差額の20万円分が課税対象となります。
また、他の通貨と交換をしたときも利益を得たとみなされるため、注意が必要です。たとえば、ビットコインを1BTC=10万円で購入し、その後1BTC=50万円にまで値上がりしたとします。
価格が値上がりしてから全額を他の通貨と交換した際は、差額の40万円が課税の対象となります。
暗号資産取引における税金対策
このように暗号資産は、さまざまなシーンで課税されることが分かります。それでは、取引でなるべく税金がかからないようにするためにはどうすればよいのでしょうか。
1. 頻繁にトレードせずに保有し続ける
1つ目の対策は、なるべく頻繁にトレードをせずに1つの暗号資産を持ち続けることです。
暗号資産は利益を確定させることで課税の対象となります。そのため、トレードの回数を抑えて利益を確定させないことは、税金を抑えることができる対策の一つとして考えられます。
2. 毎年少しずつ利益を確定させる
2つ目の対策は、毎年少しずつ利益を確定させる方法です。
累進課税の税率は1年間に出した利益の総額で決まります。そのため、1度に大量に利益を確定させるよりも、数年にかけて確定させた方が税率を低く抑えることができます。
ただし、相場の変動が激しい暗号資産はこの方法には一定のリスクも伴います。少しずつ利益を確定させるこの方法は、評価額が変わらないか、右肩上がり続くことが前提となっているからです。
急な相場変動で資産が大きく目減りしてしまうと、課税の対象にはならないものの、相場が高いときに利益確定させておけばよかったと思うこともあるかもしれません。課税されるのを承知で利益を確定させるか、相場の急落リスクをとるかの判断が難しいでしょう。
3. 含み損の暗号資産は決済しておく
3つ目の対策は、含み損となっている暗号資産は決済しておくという方法です。課税対象となる利益は損失を出すことで、打ち消すことができます。
含み損とは、株式や暗号資産などの評価額が取得時の価格を下回っているときの損失のことです。含み損が発生していて、今後も価格が上がる見込みがない暗号資産を持っているのであれば、決済しておくことで税率を下げられる可能性があります。
他にも、法人を設立して事業として暗号資産取引を行うという方法もあります。個人で暗号資産の取引をしても他の所得との損益通算や赤字の繰越は認められていませんが、法人ならそれが認められているからです。
今からでも遅くない?暗号資産の億り人を目指す方法
これから暗号資産で億り人を目指すためには、一体どのような方法があるのでしょうか。
主要なアルトコインへの投資
方法の1つは、主要なアルトコインに投資するという方法です。
暗号資産の価格は2018年1月から軒並み下落してしまいました。しかし、アルトコインの中にはたびたび高騰している銘柄もあります。
たとえば、2018年9月中旬に約30円程度だったリップルは、1週間で約80円程度まで値上がりしています。そのため、タイミングよくアルトコインの市場に参入することができれば、全体が下落相場であっても短期間で資産を大きく増やせる可能性は十分あるといえるのです。
ただし、短期間で「億り人」を目指す場合は、最初にある程度の元手資金が必要となるでしょう。
マイナーコインへの投資
次に紹介するのは、マイナーコインに投資する方法です。
マイナーコインとは、アルトコインの中でもまだ世の中にあまり知られていないコインのことです。暗号資産の種類は2000種類以上あるといわれており、その中には1年で1万倍以上の値上がりをした銘柄もあります。
有望なマイナーコインを見極めることができれば、数万円の元手であっても、大きく資産を増やすことも不可能ではありません。しかし、マイナーコインの中には、詐欺コインやそのまま値上がりせずに開発が止まってしまうようなコインもあります。
最悪のケースでは、投じた資金がムダになってしまうこともあるのです。多数のマイナーコインの中からそうした将来性のあるコインを見つけられるのは非常に確率が低く、リスクも高いことを認識しておく必要があります。
暗号資産の取引は余剰資金で行おう
2018年に入ってから、暗号資産の相場はしばらく低迷していました。
然し乍ら、2019年に入って再びビットコイン価格が100万円を突破するなど、徐々に回復傾向にあります。相場が低迷しているときこそ、投資を始めるにはよいタイミングであると考えることもできますし、今からでも暗号資産で億り人になれる可能性はゼロではありません。
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