WEB3.0(Web3)とは、ブロックチェーンやP2P(Peer to Peer)などの技術によって実現する「次世代の分散型インターネット」のことです。最近では「WEB3.0」や「DAO」というキーワードが話題になっているため、WEB3.0やDAOについてもっと詳しく知りたかったり、メリットやデメリットを知りたいという方も多いのではないでしょうか?
この記事では、以下のようにWEBの変遷の歴史や問題点を紹介しながら、WEB3.0を解説していきます。
目次
WEB 3.0という概念を解説
Web3.0とは、ブロックチェーンやP2P(Peer to Peer)などの技術によって実現する「次世代の分散型インターネット」のことです。
現在、私たちが利用しているインターネットを「Web2.0」と定義し、プライバシーやセキュリティなどの問題を解決するために構想されたのがWeb3.0という概念です。
2022年現在でトレンドとなっているWEB3.0は、ブロックチェーン・暗号資産・NFT関連の場で議論されています。特に最近ではDAOの分野でも注目を集めており、もはやDAOについての知識はWEB3.0を知るうえで必要不可欠だと言っても過言ではありません。
WEB3.0の概念自体もまだ発展途上であるため、今後の技術の進展によってはWEB3.0の概念が変わる可能性があります。そのため、WEB3.0を深く理解するためには、NFTやDAOなどのWEB3.0における重要キーワードの最新情報を常に仕入れ、持っている知識をアップデートする姿勢が大切になります。
WEBの歴史変遷からWEB3.0を理解する
WEB3.0という概念を深く理解するためには、現在私たちが使っているインターネットの特徴を知る必要があります。つまりWEBの起源である「WEB1.0」、現在私たちが使っている「WEB2.0」、そしてWEB2.0が抱える問題を解決するために構想された「WEB3.0」について、それぞれの特徴を理解しておく必要があります。
WEB1.0の特徴とは
WEB1.0とは一言でいうと「WEBが誕生した頃のインターネット」を指す概念です。具体的な年代としては、1990年代中頃から2000年代中頃にかけて普及してきたインターネット(もしくはWEB)の総称だとされています。
WEB1.0時代のWEBは「情報の流れが一方向で中央集権型」であることが特徴です。
当時のWEBでは、管理者個人がホームページを持ち、ユーザーはそれを閲覧するだけというものでした。WEB1.0時代では、現在ではありふれた機能である「コメント機能」などの実装もほとんどありません。閲覧できる情報は情報作成者によってのみ管理され、閲覧ユーザーがデータを編集することはできません。
ホームページの管理者は自分でサーバーを用意し、データベースとHTMLを構築していました。また、現在に比べて通信速度が低速だったため、動画はもちろん、画像やCSSを扱う動的なページを扱うケースはかなり少なかったです。
また、WEB1.0時代でのユーザー同士のコミュニケーションツールは、2ちゃんねるなどを代表とした掲示板サイトだったと言えます。掲示板サイトは基本的に文字だけのやり取りでデータ容量をあまり必要としないため、WEB1.0時代でも利用できていたのでしょう。
この時代のWEBユーザーは匿名性を重視し、一般的な使用方法ではほとんど実名や年齢や住んでいる地域すらも公開することはありませんでした。ネットで繋がった人と実際に会うこともほぼ無かったことも特徴です。
WEB 2.0の特徴とは
WEB2.0とは、一言でいうと「現在私たちが使っているインターネット」を指す概念です。具体的な年代としては、2000年代中頃から2020年代前半の現在まで続いているインターネット(もしくはウェブ)の総称だとされています。
WEB2.0時代のWEBは「情報の流れが双方向で中央集権型」であることが特徴です。
WEB2.0ではプラットフォームの運営者が登場し、ユーザーはそのプラットフォーム上で情報発信を行ったり、コミュニケーションを行ったりし始めました。YouTubeやTwitter、Instagram、Facebookなどが登場し、データベースやHTML、サーバーなどへの知識が無くても情報発信が容易になったのです。
このようにWEB2.0時代は、SNSなどを用いて様々な人との双方向の情報のやり取りができるようになった時代と言えるでしょう。WEB2.0時代のユーザーは、FacebookなどのSNSの隆盛からわかるように、実名や顔写真を公開することに比較的抵抗が無いことも特徴として挙げられます。
また、WEBの知識が無いと扱えない個人ホームページに代わり、AmebaやFC2、WIXのようなブログ作成プラットフォームが台頭してきたことも、WEB2.0時代の特徴と言えるでしょう。
WEB3.0が登場した理由と解決を目指す問題
WEB3.0時代のWEBは「情報の流れが双方向で分散型」であることが特徴です。
WEB2.0時代ではユーザーがプラットフォーム提供者のサービスを多用した結果、プラットフォームを提供している特定企業へ個人情報が集中しています。
そして、プラットフォーム提供者へ個人情報やパスワードなどのデータが集中することで、サイバー攻撃を受けた際の流出リスクやセキュリティ問題、個人情報を含むデータの適性利用への疑念などが発生しています。
また、デジタルコンテンツをプラットフォーム上で発信する場合、アカウント停止やシャドウバン(※アカウント停止ではないが、通知されずに検索結果などから排除されること)を受けると、コンテンツの発信が難しくなります。
そこで、WEB3.0は「WEB2.0でのデータ独占・改ざん・データ使用権の問題を解決する概念」として構想されています。その中核として大きなウエイトを占めているのが、「ブロックチェーン技術」です。ここでのブロックチェーンとは、誰もがその内容を閲覧・管理することができるパブリックチェーンを指します。
トークンで権利者情報などを管理したり、データベースとしてブロックチェーンを用いたり、分散型のネットワークを使ったりすることで、WEB2.0の問題を解決しようとしています。
WEB3.0によって何が変わる?3つのメリット
WEB3.0の構想は「WEB2.0でのデータ独占・改ざん・データ使用権の問題を解決する概念」と言えます。それでは、実際にWEB3.0はどのような場面で使われて、ユーザーへどのような利点をもたらすのでしょうか。WEB3.0のメリットは、以下の3つのようなポイントが挙げられます。
- セキュリティの強化
- 決済・契約の中間マージン圧縮
- ユーザー主体のデータ管理
セキュリティの強化
データをブロックチェーンで保管することにより、一度アップロードしたデータの改ざんを限りなく難しくすることができます。既存のデータベース型では、基本的には管理者が情報を編集することができるため、一部の情報への信頼度がやや低くなる傾向にあります。
比較的大規模なブロックチェーンに書き込まれたデータは、改ざんのために多大な計算能力と電力がかかるため、データの改ざんは実質的には難しいといえます。
さらに、データが分散型で管理されることにより、サイバー攻撃の際の流出リスクを軽減することができます。WEB2.0ではデータの独占が起きているために、攻撃対象を絞れば、効率的にデータを取得できます。データ自体が分散していると、攻撃対象を増やすことになるため、セキュリティの向上に寄与できます。
決済・契約の中間マージン圧縮
さまざまなデジタルコンテンツへの決済や個人間送金に暗号資産を用いることで、中間マージンの圧縮が期待できます。WEB2.0時代の決済では、プラットフォーマーや決済代行会社が決済時に手数料を徴収するため、取引額の数パーセントから多い場合は数十パーセントの手数料がかかります。
暗号資産を用いた決済や契約を使うことで、第三者を必要としない決済が可能であるため、中間業者を介さない取引が可能になるのです。
ユーザー主体のデータ管理
WEB3.0では、ユーザーが自身の個人情報や行動履歴、デジタル資産の管理ができると言われています。WEB2.0のサービスは無料で扱えることが多いですが、その代償として個人情報や行動履歴がプラットフォーマーに提供されています。
たとえば、現在のWEB2.0を扱っていると、やけに自分の住んでいる地域に関連した広告や、最近見た商品・サービスなどの広告が出てきた経験のある人は少なくないのではないでしょうか。このような広告形態をリスティング広告といい、Cookieなどの検索履歴などに基づいて配信される広告です。そのほか、地域などの特定はIPアドレスからも可能です。
WEB2.0ではユーザーが意識をしないようなポイントで個人情報や行動履歴を取得・利用しているため、自身の個人情報を制限することは限りなく難しくなっているでしょう。WEB3.0では、個人情報の提供の制限・管理が可能であるとされているため、ユーザーのデータ管理権限が戻ると言えます。
WEB 3.0のデメリットは?注意点を紹介
WEB2.0の問題を解決するためのソリューションであるWEB3.0。期待の声が多く挙げられているものの、発展途上であるためにリスクや注意点が存在しています。
また、先述の通りWEB3.0はまだ大衆へ浸透していないため、未来からみたWEB3.0という概念は全く別物になる可能性があります。つまり、実際に実現したWEB3.0はブロックチェーンや暗号資産、NFT、DAOが絡んでいないという場面も想定ができるのです。
現時点では、WEB3.0のデメリットとしては以下のような点が挙げられます。
- 一般ユーザーとの乖離
- 巨大企業や政府との利益相反
一般ユーザーとの乖離
ブロックチェーンを用いたWEB3.0を構築した場合、ユーザーはブロックチェーンや暗号資産、NFT、DAOへの深い知識・リテラシーが求められます。WEB3.0が多く語られる場面は、ブロックチェーンや暗号資産、NFT、DAO関連であるため、ユーザーの知識やリテラシー部分を考慮していないことがあります。
広告などで莫大な収益を上げられるWEB2.0のサービスは、無料でハイクオリティなものになっています。インターネットへの知識が不十分なユーザーでも気軽に利用することができるため、積極的にWEB3.0への移行が検討されない可能性があるのです。
一般的なWEBユーザーが全員WEB3.0への知識をつけ、WEB2.0から移行可能か否かというポイントは、今後のWEB3.0の発展において注意すべき点でしょう。
巨大企業や政府との利益相反
WEB3.0の概念は、WEB2.0の巨大プラットフォーマーと利益相反が起きています。巨大プラットフォーマーは小国の経済規模を超えるほどの経済力を持っており、WEB上であらゆる機能を独占し、利益を生み出しています。
そのため、本格的にWEB3.0の隆盛になった場合、巨大プラットフォーマーからのはじき出しが起こる可能性が生じます。
さらに、WEB3.0は基本的に発信や情報取得に法的制限がかからないため、国や行政機関・立法機関からの規制を受ける可能性もあります。
WEB3.0を理解するうえで欠かせない「DAO」とは?
WEB3.0を理解するうえで、欠かすことのできない概念の1つとして「DAO」があります。
DAOとは、特定の所有者や管理者が存在せずとも、事業やプロジェクトを推進できる組織を指す言葉です。正式名称はDecentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)となっており、その頭文字を取ってDAOと呼ばれています。
DAOと従来の組織の違いは?
DAOと従来の組織との最も大きな違いは「組織をまとめる人や機関が存在するかどうか」という点です。
従来の組織は、組織をまとめるために所有者や管理者、リーダーが存在します。会社であれば社長、国であれば政府、サロンであれば主催者といった具合に必ず中心となる人や機関が存在します。
一方でDAOの組織運営には特定のリーダーは存在せず、その運営方針はコミュニティメンバーの総意(投票活動)によって決定されます。この組織形態を可能にしているのがスマートコントラクト(ブロックチェーン上で契約を自動的に履行する仕組み)です。
DAOと伝統的な組織の主な相違点の一つは、スマートコントラクトの有無であるということもできます。
WEB3.0とDAOとの関係は?
DAOはブロックチェーンやNFTと同じく、WEB3.0を形成する仕組みの一つです。WEB3.0の「WEB2.0でのデータ独占・改ざん・データ使用権の問題を解決する」というミッションを達成するための仕組みが、ブロックチェーンでありNFTであり、DAOというさまざまな仕組みです。
先述した通り、WEB3.0とDAOは同じような文脈で語られることが多いため、この2つの概念を混同して理解している方も多いです。そのためWEB3.0とDAOとの関係を知ることは、この2つの概念を正しく理解するためにも非常に重要です。
WEB3.0銘柄や事例・ユースケース
WEB3.0へ投資をしてみたいという場合は、WEB3.0系のサービスに関連した暗号資産への投資という方法が挙げられます。
WEB3.0ブラウザであるBrave
Coincheckが扱っている暗号資産では、WEB3.0系のブラウザ「Brave」で使われるBAT(Basic attention token)がWEB3.0銘柄と言えます。
現状のWEB広告では意図としない広告が表示されたり、電力・通信容量を大幅に消費したりといった、ユーザーへの不利益が存在しています。
WEB3.0ブラウザ「Brave」は、初期設定でWEB広告がブロックされており、ブラウザ上で広告を有効にすると暗号資産である「BAT」を取得することができます。
つまり、ユーザーは表示する広告と追跡のためのデータ取得を制限しながら、ブラウザで任意の広告を見ながら暗号資産を獲得できるのです。
※日本では資金決済法の制約により、BATではなくBATポイントが付与されます。
BATはAmazonのギフト券に交換したり、実店舗で利用したりすることができ、クリエイターやサイト運営者へ直接支援することも可能です。
現在の広告システムでは、広告収益はほとんどプラットフォーマーが取っており、サイト運営者の収益は小さくなっています。Braveでは広告主から直接広告料が支払われるため、サイト運営者は収益アップにつながるとされています。
Dappsの基盤となるイーサリアム
DApps(分散型アプリケーション)の基盤となるイーサリアム(ETH)もWEB3.0銘柄といえます。
DappsとはDecentralized Applicationsの略称で、日本語では分散型アプリケーションと呼ばれています。従来のアプリケーションではアプリを管理する「中央管理者」が存在し、権限が中央管理者に集中していました。一方でDappsではブロックチェーン技術を採用することで、中央管理者のいない分散管理を実現しています。この「中央集権から分散へ」という流れも、WEB3.0の大きな特徴と言えるでしょう。
現状では、ほとんどのDAppsはイーサリアムのプラットフォーム上で開発されています。これは、DAppsを利用したサービスの多くがイーサリアムのスマートコントラクトを基盤として開発されているのが理由です。
イーサリアムを活用したDAppsの具体例としては、メタバースプロジェクト「Decentraland(ディセントラランド)」や、実名のサッカー選手を用いたデジタル・トレーディングカードゲームの「Sorare(ソラーレ)」、さらには世界初のブロックチェーンゲームである「クリプトキティーズ(CryptoKitties)」や、中央管理者のいない分散型取引所(DEX)である「ユニスワップ(Uniswap)」などが挙げられます。
メタバース上で楽しめるNFTゲーム『The Sandbox』
NFTゲームの『The Sandbox(ザ・サンドボックス)』で使われるSAND(サンド)も、WEB3.0に関連した銘柄です。The Sandboxでは、メタバース空間でユーザー間の空間を楽しむだけでなく、オリジナルのゲームやアイテム、キャラクター、サービスを作成することができます。さらに、所有するアイテムやキャラクターをNFTとしてプラットフォーム上で自由に売買することが可能です。
またCoincheckでは、暗号通貨SANDを取り扱っていることに加え、The Sandbox上のLANDと呼ばれる土地上に2035年の近未来都市「※OASIS TOKYO」を制作するプロジェクトを開始しています。(2022年10月時点)
(※)コインチェック株式会社は、「OASIS」の運営をはじめとするメタバース事業を、マネックスクリプトバンク株式会社に事業譲渡することを決定し、MCBは本年10月2日付けで同事業を承継することといたしました。 詳しくはこちら
まとめ
WEB3.0は、WEB2.0時代の問題を解決するソリューションとして構想されています。将来的には、ユーザーのリテラシーや意識の差異によって、使われるサービスが変わってくる可能性も予想できます。
WEB3.0はまだまだ発展途上な分野であるため、今のうちからWEB3.0に触れていたらワクワクする未来を体感できるかもしれませんね。
執筆青木一真
Ethereum Classic(ETC)にて公式日本コミュニティ立ち上げに携わったのち、暗号通貨ウォレット「もにゃ」にマーケターとして参画。その後、暗号資産関連へ参入する企業に対しリサーチャーとして介入しながら、暗号資産をはじめとしたWEBライターとして活動している。 Twitter : @kiko_fintech