
Web3.0(Web3)とは、ブロックチェーンやP2P(Peer to Peer)などの技術によって実現する「次世代の分散型インターネット」のことです。最近では「Web3.0」や「ブロックチェーン」というキーワードが話題になっているため、もっと詳しく知りたい、メリットやデメリットを知りたいという方も多いのではないでしょうか?
この記事では、以下のようにWebの歴史や各時代の特徴をお伝えしながら、Web3.0について解説し、サービスへの活用例などについて紹介します。
目次
1.Web3.0とは?概要や特徴をわかりやすく解説
Web3.0とは、ブロックチェーンやP2P(Peer to Peer)などの技術によって実現する「次世代の分散型インターネット」のことです。
現在、私たちが利用しているインターネットを「Web2.0」と定義し、プライバシーやセキュリティなどの問題を解決するために構想されたのがWeb3.0という概念です。
2022年現在でトレンドとなっているWeb3.0は、ブロックチェーン・暗号資産・NFT・DAO関連の場で議論されています。
Web3.0の概念自体もまだ発展途上であるため、今後の技術の進展によってはWeb3.0の概念が変わる可能性があります。そのため、Web3.0を深く理解するためには、ブロックチェーンやNFTなどのWeb3.0における重要キーワードの最新情報を常に仕入れ、持っている知識をアップデートする姿勢が大切になります。以下では、Web3.0における重要キーワードを解説しています。それぞれのキーワードについて詳しく知りたい方は、あわせてご覧ください。
2.Webの歴史とは?Web1.0から3.0までの変遷
Web3.0という概念を深く理解するためには、現在私たちが使っているインターネットの特徴を知る必要があります。つまりWebの起源である「Web1.0」、現在私たちが使っている「Web2.0」、そしてWeb2.0がかかえる問題を解決するために構想された「Web3.0」について、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
2-1.Web1.0の特徴とは
Web1.0とは一言でいうと「Webが誕生した頃のインターネット」を指す概念です。具体的な年代としては、1990年代中頃から2000年代前半にかけて普及してきたインターネット(もしくはWeb)の総称だとされています。
Web1.0時代のWebは「情報の流れが一方向で中央集権型」であることが特徴です。
当時のWebでは、管理者個人がホームページを持ち、ユーザーはそれを閲覧するだけというものでした。Web1.0時代では、現在ではありふれた機能である「コメント機能」などの実装もあまりありませんでした。閲覧できる情報は情報作成者によってのみ管理され、閲覧ユーザーによるデータの編集はできません。
ホームページの管理者は自分でサーバーを用意し、データベースとHTMLを構築していました。このため、Web1.0時代に情報発信するには、それ相応のWebの知識が不可欠でした。また、現在に比べて通信速度が低速だったため、特にインターネットが登場してすぐの頃は、動画はもちろん、画像やCSSを扱う動的なページを扱うケースは稀だったと言えるでしょう。
また、Web1.0時代でのユーザー同士のコミュニケーションツールは、2ちゃんねるなどを代表とした掲示板サイトだったと言えます。掲示板サイトは基本的に文字だけのやり取りでデータ容量をあまり必要としないため、Web1.0時代でも利用できていたのでしょう。
この時代のWebユーザーは匿名性を重視し、一般的な使用方法ではほとんど実名や年齢や住んでいる地域すらも公開することはありませんでした。ネットで繋がった人と実際に会うことは気軽にされなかったことも特徴です。
2-2.Web2.0の特徴とは
Web2.0とは、一言でいうと「現在私たちが使っているインターネット」を指す概念です。具体的な年代としては、2000年代中頃から2020年代中盤の現在まで続いているインターネット(もしくはWeb)の総称だとされています。
Web2.0時代のWebは「情報の流れが双方向で中央集権型」であることが特徴です。
Web2.0ではプラットフォームの運営者が登場し、ユーザーはそのプラットフォーム上で情報発信を行ったり、コミュニケーションを行ったりし始めました。YouTubeやTwitter、Instagram、Facebookなどが登場し、データベースやHTML、サーバーなどへの知識が無くても情報発信が容易になったのです。
Web2.0時代は、SNSなどを用いて様々な人との双方向の情報のやり取りができるようになった時代と言えるでしょう。Web2.0時代のユーザーは、FacebookなどのSNSの隆盛からわかるように、実名や顔写真を公開することに比較的抵抗が無いことも特徴として挙げられます。
また、Webの知識が無いと扱えない個人ホームページに代わり、AmebaやFC2、WIXのようなブログ作成プラットフォームが台頭してきたことも、Web2.0時代の特徴と言えるでしょう。
このように、Web2.0時代はユーザーがWebを通じてより幅広く活動できるようになった一方で、プラットフォーム提供者のサービスを多用した結果、プラットフォームを提供している企業へ個人情報が集中しています。
2-3.Web2.0の課題とは
Web1.0からWeb2.0へとWebの世界が進化し、活動の幅が急激に広がるとともに、Web2.0の課題点も見えてきました。
まず、先ほども述べたように、プラットフォーム提供者へ個人情報やパスワードなどのデータが集中するようになったことで、サイバー攻撃を受けた際の流出リスクやセキュリティ問題、個人情報を含むデータの適正利用への疑念などが発生しています。
また、デジタルコンテンツをプラットフォーム上で発信する場合、アカウント停止やシャドウバン(※アカウント停止ではないが、通知されずに検索結果などから排除されること)を受けると、コンテンツの発信が難しくなります。
このような歴史的な変遷があり、Web2.0の課題を解決する新たなWebの概念としてWeb3.0が生まれました。
3.Web3.0を利用するメリットとは?ポイント3点を解説
Web3.0は「Web2.0でのデータ独占・改ざん・データ使用権の問題を解決する概念」として構想され、「情報の流れが双方向で分散型」であることを特徴とします。
その中核として大きなウェイトを占めているのが、「ブロックチェーン技術」です。ここでのブロックチェーンとは、誰もがその内容を閲覧・管理することができるパブリックチェーンを指します。
トークンで権利者情報などを管理したり、データベースとしてブロックチェーンを用いたり、分散型のネットワークを使ったりすることで、Web2.0の問題を解決しようとしています。
また、Web3.0、ブロックチェーンと密接に関わる概念として「DAO」もあわせて理解しておくとよいでしょう。DAOとは、日本語では「分散型自立組織」といい、特定の管理者を持たずに存在できる組織を指します。
それでは、実際にWeb3.0はどのような場面で使われて、ユーザーへどのような利点をもたらすのでしょうか。Web3.0のメリットは、以下の3つのようなポイントが挙げられます。
- セキュリティの強化
- 決済・契約の手数料の節約
- ユーザー主体のデータ管理
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
3-1.セキュリティが強化されている
Web3.0の世界では、データをブロックチェーンに保存することで、その仕組みならではの強固なセキュリティの恩恵を受けられます。たとえば、以下の2点が挙げられます。
- 悪意ある者によるデータの改ざんが極めて困難になる
- 分散管理により、データ流出のリスクが低減される
ブロックチェーンの仕組みや特性については、以下の記事をご覧ください。
3-2.決済・契約の手数料を節約できる
さまざまなデジタルコンテンツへの決済や個人間送金に暗号資産を用いることで、決済・契約の手数料の節約が期待できます。こちらも、ひとつめのメリットと同様に、ブロックチェーンの特性から生まれるメリットです。
Web2.0時代の決済では、プラットフォーマーや決済代行会社が決済時に手数料を徴収するため、取引額の数パーセントから多い場合は数十パーセントの手数料がかかります。
Web3.0では、暗号資産を用いた決済や契約を使うことで、第三者を必要としない決済が可能になります。このため、中間業者に対する手数料が不要になる、あるいは安くなることが期待できます。ただし、ブロックチェーンを利用することに対しての手数料は別途発生することがあるため、認識しておくとよいでしょう。
3-3.個人情報を自分自身で管理できる
Web3.0では、ユーザーが自身の個人情報や行動履歴、デジタル資産の管理ができると言われています。Web2.0のサービスは無料で扱えることが多いですが、その代償として個人情報や行動履歴がプラットフォーマーに提供されています。
たとえば、現在のWeb2.0を扱っていると、自分の住んでいる地域に関連した広告や、最近見た商品・サービスなどの広告が出てきた経験のある人は少なくないのではないでしょうか。このような広告形態をリスティング広告といい、Cookieなどの閲覧・検索履歴に基づいて配信される広告です。そのほか、地域などの特定はIPアドレスからも可能です。
Web2.0ではユーザーが意識をしないようなポイントで個人情報や行動履歴を取得・利用しているため、自身の個人情報を制限することは限りなく難しくなっているでしょう。Web3.0では、個人情報の提供の制限・管理が可能であるとされているため、ユーザーのデータ管理権限が戻ると言えます。
4.Web3.0のデメリットは?注意点を解説
Web2.0の問題を解決するためのソリューションであるWeb3.0。期待の声が多く挙げられているものの、発展途上であるためにこれから解消していくべき課題もかかえています。
また、先述の通りWeb3.0はまだ多くの方に浸透しているとは言えないため、未来から見たWeb3.0という概念は全く別物になる可能性があります。つまり、実際に実現したWeb3.0はブロックチェーンや暗号資産、NFT、DAOが絡んでいないという場面も想定ができるのです。
個人としてできることは、Web3.0がどのように進化していくのか注意を払いつつ、利用するかどうかを検討するとよいでしょう。Web3.0がかかえる主なデメリットとしては、以下の2点が挙げられます。ここでは、利用する際の注意点とともに紹介していきます。
- ユーザー個人が知識を身につける必要がある
- 巨大企業との利益相反や国の規制を受ける可能性がある
ユーザー個人が知識を身につける必要がある
ブロックチェーンを用いたWeb3.0を構築した場合、ユーザーはブロックチェーンや暗号資産、NFT、DAOへの深い知識・リテラシーが求められます。
広告などで莫大な収益を上げられるWeb2.0のサービスは、無料でハイクオリティなものになっています。インターネットへの知識が不十分なユーザーでも気軽に利用することができるため、積極的にWeb3.0への移行が検討されない可能性があるのです。
一般的なWebユーザーがWeb3.0への知識をつけ、Web2.0からの移行が可能になるか否かというポイントは、今後のWeb3.0の発展において重要な観点です。また、利用する個人の立場としては、Web2.0の世界から一気に求められる知識のハードルが高くなる可能性があることに注意しましょう。
巨大企業との利益相反や国の規制を受ける可能性がある
Web3.0の概念は、Web2.0の巨大プラットフォーマーと利益相反が起きています。巨大プラットフォーマーは小国の経済規模を超えるほどの経済力を持っており、Web上であらゆる機能を独占し、利益を生み出しています。
そのため、本格的にWeb3.0の隆盛が訪れた場合、その流れを阻止しようと、巨大プラットフォーマーがWeb3.0のプロジェクトやサービスを排除・制限しようとする可能性が生じます。
また、革新的なサービス・概念が生まれて間もない段階では、法整備が追いつかないということがよく起こり、Web3.0についてもまさにそれが発生していると言えます。国や行政機関・立法機関はこれから規制を強めていく可能性があり、ユーザーの視点では「規制が厳しくなっていく」と見えるかもしれません。
個人としては、Web3.0の世界はただ無制限に広がっていくだけでなく、さまざまな既存システムと相互に影響しながら発展していくものである、と理解したうえで利用するとよいでしょう。
5.Web3.0のサービス紹介
Web3.0へ投資をしてみたいという場合は、Web3.0系のサービスに関連した暗号資産への投資という方法が挙げられます。
- Brave:BAT
- イーサリアム:ETH
- The Sandbox:SAND
Web3.0ブラウザであるBrave
Coincheckが扱っている暗号資産では、Web3.0系のブラウザ「Brave」で使われるBAT(Basic Attention Token)がWeb3.0銘柄と言えます。
現状のWeb広告では、意図しない広告が表示されたり、電力・通信容量を大幅に消費したりといった、ユーザーへの不利益が存在しています。
Web3.0ブラウザ「Brave」は、初期設定でWeb広告がブロックされており、ブラウザ上で広告を有効にすると暗号資産である「BAT」を取得することができます。
つまり、ユーザーは表示する広告と追跡のためのデータ取得を制限しながら、ブラウザで任意の広告を見ながら暗号資産を獲得できるのです。
※日本では資金決済法の制約により、BATではなくBATポイントが付与されます。
BATはAmazonのギフト券に交換したり、実店舗で利用したりすることができ、クリエイターやサイト運営者へ直接支援することも可能です。
現在の広告システムでは、広告収益はほとんどプラットフォーマーが取っており、サイト運営者の収益は小さくなっています。Braveでは広告主から直接広告料が支払われるため、サイト運営者は収益アップにつながるとされています。BATについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
DAppsの基盤となるイーサリアム
DApps(分散型アプリケーション)の基盤となるイーサリアム(ETH)もWeb3.0銘柄といえます。
DAppsとはDecentralized Applicationsの略称で、日本語では分散型アプリケーションと呼ばれています。従来のアプリケーションではアプリを管理する「中央管理者」が存在し、権限が中央管理者に集中していました。一方でDAppsではブロックチェーン技術を採用することで、中央管理者のいない分散管理を実現しています。この「中央集権から分散へ」という流れも、Web3.0の大きな特徴と言えるでしょう。
現状では、ほとんどのDAppsはイーサリアムのプラットフォーム上で開発されています。これは、DAppsを利用したサービスの多くがイーサリアムのスマートコントラクトを基盤として開発されているのが理由です。
なお、スマートコントラクトとは、イーサリアムをはじめとするブロックチェーン上に実装されている、自動的に契約が実行される仕組みのことです。
イーサリアムを活用したDAppsの具体例としては、メタバースプロジェクト「Decentraland(ディセントラランド)」や、実名のサッカー選手を用いたデジタル・トレーディングカードゲームの「Sorare(ソラーレ)」、さらには世界初のブロックチェーンゲームである「クリプトキティーズ(CryptoKitties)」や、中央管理者のいない分散型取引所(DEX)である「ユニスワップ(Uniswap)」などが挙げられます。
メタバース上で楽しめるNFTゲーム『The Sandbox』
NFTゲームの『The Sandbox(ザ・サンドボックス)』で使われるSAND(サンド)も、Web3.0に関連した銘柄です。The Sandboxでは、メタバース空間でユーザー間の空間を楽しむだけでなく、オリジナルのゲームやアイテム、キャラクター、サービスを作成することができます。さらに、所有するアイテムやキャラクターをNFTとしてプラットフォーム上で自由に売買することが可能です。
なお、メタバースとは、インターネット上に構築された仮想空間のことで、Web3.0とは異なる概念です。しかし、The Sandboxのように「メタバース空間内で、NFTの売買を行う」など、Web3.0と密接な関わりがあります。
またCoincheckでは、暗号資産SANDを取り扱っていることに加え、The Sandbox上のLANDと呼ばれる土地上に2035年の近未来都市「※OASIS TOKYO」を制作するプロジェクトを開始しています。(2022年10月時点)
(※)コインチェック株式会社は、「OASIS」の運営をはじめとするメタバース事業を、マネックスクリプトバンク株式会社に事業譲渡することを決定し、MCBは2025年10月2日付けで同事業を承継することといたしました。 詳しくはこちら
まとめ
Web3.0は、Web2.0時代の問題を解決するソリューションとして構想され、一部ではサービスの開発も進んでいます。その一方で、既存の社会基盤との共生や、予想し得ないさらなる進化によって、今「Web3.0」といわれているものとは違うサービス・概念が将来の「Web3.0」となっている可能性すらあります。
Web3.0はまだまだ発展途上な分野であるため、今のうちからWeb3.0に触れていたらワクワクする未来を体感できるかもしれませんね。

執筆青木一真
Ethereum Classic(ETC)にて公式日本コミュニティ立ち上げに携わったのち、暗号通貨ウォレット「もにゃ」にマーケターとして参画。その後、暗号資産関連へ参入する企業に対しリサーチャーとして介入しながら、暗号資産をはじめとしたWebライターとして活動している。 Twitter : @kiko_fintech